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愛知の高卒採用市場から自社戦略を組み立てる5ステップ
求人倍率4.71倍。愛知県の高卒採用は過去最高の売り手市場です。市場データを「見る」で終わらせず、自社の立ち位置を判定し、6月から翌3月の年間スケジュールに沿って具体的な打ち手を組み立てるための、中小企業の採用担当者向けガイドです。
愛知県の高卒採用市場は、令和8年(2026年)3月卒で求人倍率4.71倍と過去最高を記録しました(2025年7月末時点、愛知労働局)。求人数39,798件に対して、就職を希望する高校生は8,457人。数字だけ見れば「企業の方が圧倒的に有利」な状況です。
ところが、現場の人事担当者からはこんな声をよく聞きます。「求人倍率が高いと言われても、うちには応募が来ない」「同じ求人票を毎年出しているのに、年々苦しくなっている」「市場データのページを見ても、結局自社が何をすればよいのか分からない」。
この記事では、愛知労働局・厚生労働省・文部科学省などの公式データを土台に、市場全体の数字を 自社の採用戦略を組み立てるための判断材料 として使う5ステップを提示します。データを読み解く視点と、6月の求人申込から翌3月の入社までの年間スケジュールに紐づけた打ち手を、中小企業の制約(人員・予算・知名度)を前提に整理しました。
市場データの羅列が知りたい方は、姉妹記事の愛知県の高卒採用市場データ2025や愛知県の有効求人倍率・地域別・業種別データ一覧をあわせて参照してください。本記事はそれらのデータを「自社で使う」観点で再構成したものです。
5ステップの全体像
結論からお伝えすると、市場データを自社の戦略に変換する流れは以下の通りです。順番が大切で、STEP1の自社ポジション判定を飛ばして求人票だけ改善しても、効果が出にくい構造になっています。
- STEP 1市場データから自社のポジションを判定する(39,798件中の立ち位置)
- STEP 2ターゲット高校を選定する(県内95.1%地元志向 + 工業科全国1位を踏まえる)
- STEP 3求人票と職種設計を市場特性に合わせる(製造業46.8%集中市場での差別化)
- STEP 4年間スケジュールに沿った接点設計を行う(4月から翌3月の月別チェックリスト)
- STEP 5内定後フォローと次年度への引き継ぎを設計する(県内口コミネットワーク活用)
STEP 1:市場データから自社のポジションを判定する
求人倍率4.71倍を平均値として受け取ると、戦略が立てられません。重要なのは、自社が39,798件の求人の中で 応募する高校生から見て何番目に位置するか という視点です。
愛知県では1人の高校生が応募できる企業数が制度で制限される時期があります(いわゆる1人1社制)。この制約があるため、高校生は応募先を選ぶ前に学校で先生と面談し、限られた候補を絞り込みます。つまり、自社が選ばれるかどうかは 先生のフィルター を通過できるかで大きく決まります。
ポジション判定の4つの軸
自社の現在地を整理するために、以下の4軸でチェックしてみてください。
軸1:業種ポジション
愛知県の高卒求人の46.8%は製造業に集中しています。自社が製造業なら「他の製造業との差別化」が論点。製造業以外なら「製造業以外という選択肢があると知ってもらう」段階から始まります。
軸2:地域ポジション
名古屋市・西三河(豊田・岡崎・刈谷)・東三河(豊橋・豊川)・尾張西部(一宮)など、エリアごとに高校生の進路選好が異なります。自社の所在地が高校から通勤可能な圏内にあるかを地図で確認します。
軸3:初任給ポジション
トヨタ系大手の高卒初任給は19万円前後です。中小企業が同額で並べる必要はありませんが、地域の最低賃金や同業他社との位置関係を先生は把握しています。「なぜこの金額なのか」を説明できる根拠が必要です。
軸4:接点ポジション
職場見学を受け入れているか、先生と面識があるか、地域で名前を聞いたことがあるか。求人票の文面以前に「知っている会社かどうか」が応募の前提になります。ここの差が中小企業では最も大きい要素です。
判定のコツ:4軸のうち1つでも「他社より明確に劣る」項目があれば、そこが今期の最優先テーマです。すべてを同時に改善しようとせず、最も低い軸から手を打つほうが投資対効果は高くなります。
STEP 2:ターゲット高校を選定する
愛知県の高卒の県内就職率は約95.1%で、県外への流出は非常に少ない地域です。つまり、自社の採用競合は基本的に 県内の他社 に絞られます。東京・大阪の県外大手と直接競合する場面は限定的で、勝負は地元のフィールドで決まります。
さらに愛知県は工業科の学科数が全国1位という特徴があります。愛知総合工科・豊田工科・刈谷工科・豊橋工科などの工科系高校が県内に多数あり、製造業の即戦力人材の供給源となっています。一方で、求人の46.8%が製造業に集中しているため、工業高校への求人は過剰気味です。
ターゲット高校の3つのレイヤー
やみくもに高校を訪問しても限られた人員では回り切れません。以下の3レイヤーで優先順位をつけます。
レイヤー1:既存の関係校
過去5年以内に応募・採用実績がある高校。先生との関係が残っていれば、新年度の早い時期に挨拶と求人案内を持参するだけで効果が大きい層です。退職や異動で先生が入れ替わっているケースも多いため、まずは現在の進路指導担当者を確認します。
レイヤー2:通学圏内の未接触校
自社の所在地から高校生が通える範囲(一般に電車・自転車で1時間以内)にあるが、まだ接点がない高校。普通科・商業科を含めると候補が一気に広がります。年に1〜2校ずつ新規開拓を進めるペースが現実的です。
レイヤー3:戦略的に攻める学科
工業高校が混雑しているなら、商業科や普通科の就職組にあえて寄せるという選択肢があります。事務・営業・接客などの職種を設計できる企業にとっては、競合が薄く先生にも喜ばれるアプローチです。
ゆめスタが愛知県内40校以上に毎月配布している就活情報誌「ゆめマガ」は、レイヤー2やレイヤー3の高校に対して「自社の名前を先に知ってもらう」入口として活用できます。求人票や訪問の前段階で先生・生徒・保護者に届く接点になります。
STEP 3:求人票と職種設計を市場特性に合わせる
求人票はハローワークが認める枠の中で記載できる文字数が限られています。市場が4.71倍の売り手市場でも、求人票の文面で先生のフィルターを通過できなければ応募には繋がりません。愛知県の市場特性を踏まえた書き分けポイントは2つあります。
ポイント1:「製造業以外の選択肢」を見せる
求人の46.8%が製造業という偏りは、裏を返せば「製造業以外の職種は競合が少ない」ことを意味します。建設業(求人比率14.2%)・運輸業(6.8%)・卸売小売業・サービス業の企業は、求人票の冒頭に 製造業ではないこと を明示することで、製造業を回避したい生徒からの応募余地が生まれます。
製造業の企業であっても、現場配属だけでなく事務・営業・品質管理・購買・設計補助などの多様な職種を持っている場合は、それを求人票で見える化することで「製造=現場一択」の印象から抜け出せます。詳細は製造業の高卒採用|職種設計を参照してください。
ポイント2:「地元で完結する」キャリアを書く
県内就職率95.1%という数字が示す通り、愛知県の高校生の多くは地元で働く前提でキャリアを考えています。転勤がない・通勤圏内に本社がある・親元から通えるという情報は、保護者と先生の両方にとって安心材料になります。
求人票の特記事項欄に「通勤圏」「転勤の有無」「寮の有無と費用」を具体的に書くだけで、他社との差が見えやすくなります。求人票の書き方の詳細は求人票の書き方・添削事例にチェックリスト付きで整理しています。
STEP 4:年間スケジュールに沿った接点設計
高卒採用は厚生労働省・文部科学省・全国高等学校長協会の三者申し合わせに基づく日程で動きます。愛知県でも、求人申込開始(6月1日頃)、求人公開(7月1日頃)、応募開始(9月5日頃)、選考開始(9月16日頃)という日程に沿って動くのが原則です(年度ごとに細部が変わるため、毎年愛知労働局の最新案内を確認してください)。
ここで重要なのは、解禁日は「打ち手の起点」ではなく「準備の締切」だという視点です。6月1日に求人を出す段階で、職種設計・賃金水準・職場見学の枠は確定している必要があります。
月別チェックリスト
12月〜3月:前年度の総括と今年度の設計
- ・前年度の応募数・採用数・辞退理由を整理する
- ・賃金水準・初任給を業界・地域と比較して見直す
- ・求人票の改訂方針を決める(特記事項欄の再構成)
- ・職場見学の受入枠・時期を確保する
4月〜5月:求人票の確定と学校挨拶
- ・新年度の進路指導担当者を確認する(異動が多い時期)
- ・既存関係校に挨拶訪問を実施する
- ・求人票の最終版をハローワークと事前確認する
6月〜7月:求人申込と求人公開
- ・6月1日頃にハローワークへ求人申込
- ・7月1日頃に求人公開(高校で先生が閲覧できる状態に)
- ・新規開拓したい高校へ求人票持参で訪問する
7月〜8月:職場見学
- ・職場見学の受入を本格化する(応募意欲を高める最重要接点)
- ・夏休み期間中に保護者同伴の見学枠も用意する
9月〜10月:応募受付・選考
- ・9月5日頃に応募開始、9月16日頃に選考開始
- ・面接の評価軸を事前に揃える(評価シートの作成)
- ・合否は学校経由で通知する(直接連絡は原則禁止)
11月〜翌3月:内定後フォロー
- ・学校経由でできるフォロー施策(社内報・近況通信など)を継続
- ・保護者向けの情報提供(入社前研修・健康診断・労働条件通知書)
- ・翌年度の採用計画の起点として、現在の内定者の声を活用する
採用スケジュール全体の解説は採用スケジュール徹底解説、職場見学の受入設計は応募前職場見学の受け入れ完全ガイドをご覧ください。
STEP 5:内定後フォローと次年度への引き継ぎ
内定通知から入社までの約6ヶ月は、辞退と早期離職を左右する重要な期間です。直接連絡が制度上できない制約の中で、学校経由でできることは限られていますが、愛知県の高い県内就職率という構造は追い風になります。
県内就職率95.1%という数字は、内定者の家族・親戚・先生・友人が同じ地域に住み続けるということを意味します。地元での評判が次年度の応募に直結する構造です。逆に言えば、内定者が「この会社に決めてよかった」と地元で語ってくれることが、最も効果の高い次年度の採用施策になります。
内定後フォローの3つの軸
軸1:紙の媒体で「親と一緒に読める」情報を届ける
郵送できる社内報・近況通信・先輩社員からのメッセージなど、保護者の目にも触れる形で届ける情報は、辞退抑止に効果的です。直接連絡の制約があっても、学校経由・郵送経由なら問題ありません。
軸2:採用専用HPで動画・写真を継続更新する
内定者・保護者が安心して見られる採用専用ホームページに、職場の日常風景や先輩社員の動画を継続的に追加していくと、内定期間中の不安を軽減できます。コーポレートサイトとは別の、採用に特化したHPが効果的です。
軸3:入社前研修と労働条件の事前通知を丁寧に
労働基準法第15条に基づく労働条件通知書、健康診断、身元保証、入社前研修の案内は、内定者と保護者の双方に郵送で送付します。事務的に処理せず、社長からの一言を添えるなど人格的なつながりを示すことが重要です。
早期離職の構造とその対策は高卒で採用した社員がすぐ辞める、内定後フォローの全体設計は内定後フォロー完全ガイドをご覧ください。
よくある質問
Q. 愛知県の求人倍率4.71倍という数字を、自社の採用戦略にどう使えばよいですか?
4.71倍は「8,457人の就職希望者を39,798件の求人が取り合っている」という構造を示します。中小企業が見るべきは平均値ではなく、自社が応募者から見て39,798件の中の何番目に位置するかです。本記事のSTEP1で、自社のポジション判定軸(業種・所在地・初任給・職場見学の有無)を提示しています。
Q. 愛知県の高校生は本当に地元志向が強いのですか?
愛知県の高卒の県内就職率は約95.1%で、全国でも県外流出が少ない地域です。つまり東京・大阪等の県外大手と直接競合する場面は限定的で、勝負は「県内の他社」との比較で決まります。中小企業にとってはこの構造が追い風になります。
Q. 工業高校以外の高校生にも採用の門戸を広げるべきですか?
愛知県は工業科の学科数が全国1位で、製造業の即戦力人材の供給基盤は確かに厚いですが、求人の46.8%が製造業に集中している影響で工業高校への求人が過剰集中している状況でもあります。普通科・商業科の生徒にも開かれた職種設計にすることで、競合の少ない層にリーチできます。
Q. 求人申込開始は6月1日と聞きますが、自社の準備はいつから始めるべきですか?
6月1日は「ハローワークへの求人申込が始まる日」であって、準備の起点ではありません。前年度の振り返り・職種設計・賃金水準の見直し・職場見学の枠確保は前年12月から3月のうちに着手するのが現実的です。STEP4の月別チェックリストを参照してください。
Q. 内定後の辞退や入社後の早期離職を防ぐ、愛知県ならではの工夫はありますか?
愛知県は県内就職率が高い分、内定者の親・先生の口コミネットワークが密で、地元での評判が次年度の採用に直結します。内定後の連絡が学校経由しか取れない制約下で、ゆめマガ等の紙の媒体や採用専用HPなど「親と一緒に読める情報」を継続的に届けることが、辞退抑止と次年度の応募増の両方に効きます。
まとめ:市場データを「自社のために使う」視点
愛知県の高卒採用市場は、求人倍率4.71倍という追い風と、求人の46.8%が製造業に集中している偏り、県内就職率95.1%という地元完結性が同居する独特の構造を持っています。中小企業がこの市場で勝つには、平均値の数字を眺めるのではなく、自社のポジションを4軸で判定し、年間スケジュールに沿って前年12月から準備を進める姿勢が大切です。
本記事の5ステップは、ゆめスタが愛知県内40校以上の高校と日常的に接点を持ち、進路指導の先生・高校生・保護者・採用担当者の声を継続的に集める中で見えてきた、現場での実効性が高い順序です。市場データの羅列ではなく、自社が明日から動ける具体策として活用してください。
個別のご相談、自社のポジション判定のサポート、ゆめマガでの企業紹介などは、以下からお問い合わせください。
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Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
出典・参考資料
- ・愛知労働局「職業安定関係統計」(新規高校卒業者の求人・求職・内定状況/令和8年3月卒・2025年7月末時点)(取得日:2026-05-23)
- ・愛知労働局「新規中学校・高等学校等卒業者の就職に係る推薦及び選考開始日等の申し合わせについて」(取得日:2026-05-23)
- ・厚生労働省「若年者雇用対策」(取得日:2026-05-23)
- ・文部科学省「学校基本調査」(高校生数・卒業生数)(取得日:2026-05-23)
※ 求人倍率・求人数・就職希望者数・県内就職率・産業別構成比は、令和8年3月新規高校卒業者(2025年7月末時点)の愛知労働局公表値に基づきます。各年度の公表時期や数値は毎年更新されるため、最新の数値は愛知労働局の公表をご確認ください。



