1. 数字で見る早期離職の現実
「せっかく採用したのに辞めてしまった」。高卒採用に取り組む企業にとって、これほど辛い経験はありません。しかし、これは個別の企業の問題ではなく、高卒採用市場の構造的な課題です。
高卒の3年以内離職率
37.9%
約5人に2人が3年以内に辞めている
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」令和4年3月卒業者(令和7年10月公表)
さらに深刻なのは、入社してすぐに辞める「超早期離職」です。
半年未満で離職
11.8%
3年以内離職者の30.1%が
半年未満で辞めている
3ヶ月未満で離職
7.4%
13人に1人が
3ヶ月もたない
出典: リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2020」(対象: 初職正規社員34歳以下、n=5,822)
業種別 — 離職率の差は大きい
| 業種 | 3年以内離職率 |
|---|---|
| 宿泊業・飲食サービス業 | 64.7% |
| 生活関連サービス業・娯楽業 | 61.5% |
| 教育・学習支援業 | 53.6% |
| 医療・福祉 | 49.2% |
| 小売業 | 48.3% |
| 製造業 | 相対的に低い |
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」令和4年3月卒業者
事業所規模別 — 中小企業ほど深刻
| 事業所規模 | 3年以内離職率 |
|---|---|
| 5人未満 | 63.2% |
| 5〜29人 | 54.6% |
| 30〜99人 | 45.2% |
| 100〜499人 | 36.7% |
| 500〜999人 | 29.9% |
| 1,000人以上 | 26.3% |
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」令和4年3月卒業者
中小企業にとっての早期離職
5人未満の事業所では63.2%が3年以内に辞めています。しかしこれは「中小企業だから仕方ない」で片づけてよい数字ではありません。同じ中小企業でも、離職率が高い会社と低い会社があります。その差を分けるのが、入社前の情報量と入社後のフォロー体制です。
2. なぜ辞めるのか — 離職理由の構造
高卒で入社した社員が辞める理由は、大きく3つに集約されます。
離職理由ランキング(ジンジブ調査)
| 順位 | 離職理由 | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | 人間関係によるストレス | 54.3% |
| 2 | 長時間労働のため | 33.5% |
| 3 | 業務内容でのミスマッチ | 20.0% |
| 4 | 待遇や福利厚生に対する不満 | 13.9% |
| 5 | 他にやりたいことが見つかった | 13.5% |
出典: ジンジブ「高卒早期離職に関するアンケート調査」(2021年12月、n=245 離職者)複数回答
別の調査でも裏付けがあります。エン・ジャパンの「早期離職実態調査(2025年)」では、離職理由の最多は「仕事内容のミスマッチ」(57%)でした。
出典: エン・ジャパン「早期離職実態調査(2025)」人事のミカタ(n=1,010社の人事担当者)
すべての離職理由に共通するもの
人間関係、労働時間、仕事内容。一見バラバラに見えるこれらの理由には、ひとつの共通点があります。
「聞いていたのと違う」
職場の人間関係が事前に分からなかった。残業時間が求人票と違った。仕事内容が想像と違った。すべて、入社前に得られた情報と入社後の現実とのギャップが原因です。
超早期離職者が語る離職理由からも、このギャップは明確です。
「職場環境が、言われていたより過酷で体力的に限界だった」
「もともと想像していたような仕事ではなかった」
「職場に相談できる人がおらず孤立していた」
出典: リクルートワークス研究所「高卒就職者の超早期離職に関する研究」
問い
「聞いていたのと違う」で辞められるのは、企業にとって理不尽に感じるかもしれません。しかし逆に言えば、「聞いていた通りだった」と思ってもらえれば辞めないということです。ではなぜ、高卒採用では情報のギャップが生まれやすいのか。次のセクションで構造を解き明かします。
3. 「見学0社」の衝撃 — 入社前の情報量と離職の関係
大卒採用では、学生は平均して10社以上の企業を訪問し、インターンシップにも参加し、複数の内定の中から就職先を選びます。一方、高卒採用は構造が根本的に異なります。
3年以内離職者のうち22.9%が、職場見学を1社もしないまま就職している
出典: ジンジブ「高卒早期離職に関するアンケート調査」(2021年12月、n=472)
職場を一度も見ないまま入社する。その会社の空気も、働いている人の表情も、実際の仕事の現場も知らない。これで「入社後のギャップ」が起きないほうが不自然です。
職場見学の参加社数と定着の関係
2社以上見学した人の割合
初職を継続中
45.8%
2社以上見学した人の割合
3年以内に離職
31.0%
出典: ジンジブ「高卒早期離職に関するアンケート調査」(2021年12月)
14.8ポイントの差があります。複数の職場を見学した人は、比較検討したうえで納得して入社しているため、入社後のギャップが小さく、定着しやすい。
なぜ高卒は情報不足になるのか — 構造的な理由
①一人一社制
高卒採用のルールでは、生徒は一度に1社にしか応募できません。複数社を比較検討する機会が構造的に制限されています。
②短期間での意思決定
7月に求人票が届き、9月に応募開始。わずか2ヶ月で就職先を決めなければなりません。じっくり企業研究する時間がほとんどないのです。
③求人票の情報量の限界
高卒求人票は50年以上変わっていないフォーマットです。A3用紙1枚に、給与・勤務時間・仕事内容を詰め込むしかない。職場の雰囲気、先輩社員の声、仕事のリアルな1日の流れ — こうした「入社後の現実」を伝えるスペースはありません。
④企業に直接アクセスできない
高卒採用では、企業が生徒に直接アプローチすることは禁止されています。すべて学校経由。つまり、企業が自社の情報を生徒に届けるには、先生を経由するか、学校に届く媒体を使うしかないのです。
構造の問題は、構造で解く
高卒の早期離職は、個人の問題でも企業の育成力不足でもありません。入社前に十分な情報が届かない構造が原因です。つまり解決策は、求人票だけに頼らず、入社前に届ける情報の量と質を増やすことにあります。
4. 入社前にできること — 「知っている会社」にする
早期離職を防ぐ最大の手段は、入社前に「この会社を十分に知っている」状態を作ることです。採用の世界ではこれを「RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)」と呼びます。良い面だけでなく、大変な面も含めて正直に伝える。それによって入社後のギャップが減り、結果的に定着率が上がることが研究で確認されています。
参考: Premack & Wanous(1985)のメタ分析により、RJPが離職率を統計的に有意に低下させることが示されている
しかし高卒採用では、生徒に直接アプローチできない制約があります。求人票の情報量には限界がある。職場見学も1〜2社が限界。では、どうやって「知っている会社」になるのか。
求人票の外で情報を届ける3つの手段
① 紙媒体 — 学校に届き、先生の手を経由し、生徒が家に持ち帰る
就活情報誌に企業紹介を掲載すれば、求人票では伝えきれない情報を届けることができます。社員の声、仕事の1日の流れ、職場の雰囲気。A3の求人票1枚では伝えられないことが、見開き2ページの紹介記事なら伝わります。
さらに重要なのは「生徒が家に持ち帰れる」こと。求人票は学校から持ち出せませんが、情報誌なら教室で受け取って家に持ち帰れます。保護者の目にも届く。保護者にとって「知らない会社」は不安の種です。「見たことがある会社」に変わるだけで、「この会社に就職したい」と言い出した子どもを応援しやすくなります。
定着への効果: 入社前に企業のリアルな情報を読んでいる生徒は、「聞いていたのと違う」が起きにくい。保護者も含めて「知っている会社」になることで、入社後の不安が減り、壁にぶつかったときに「辞めろ」ではなく「もう少しがんばってみたら」と後押ししてもらえる環境ができます。
② 動画 — 文字では伝わらない「空気」を見せる
職場の空気、先輩社員の表情、仕事の手さばき。これらは文字や写真だけでは伝わりません。1〜2分の採用動画があれば、「この職場は自分に合いそうか」を感覚的に判断できます。
離職理由の1位「人間関係によるストレス(54.3%)」。入社前に先輩社員の人柄や職場の雰囲気が伝わっていれば、入社後に「思っていた人たちと違った」というショックを軽減できます。
定着への効果: 動画を見て「この雰囲気は自分に合わない」と感じた生徒は、そもそも応募しません。それは企業にとってもマイナスではなく、「合わない人が入社して辞める」という最悪のパターンを防ぐことになります。
③ 採用専用HP — 「調べたら情報があった」を作る
ジンジブの調査(2025年12月、26卒対象)によると、企業がミスマッチ防止のために取り組んでいることの上位は「インターンシップ受け入れ(29.5%)」「高校生と話せるイベント参加(28.7%)」「職場見学・先輩社員との対話(27.8%)」です。
出典: ジンジブ「高卒採用の充足状況と採用活動に関する調査」(2025年12月、n=1,010社)
しかし、これらは「会える生徒」にしか届きません。先生や保護者は、気になった企業をネットで調べます。そのとき、コーポレートサイトに採用情報がほとんど載っていなければ「情報を出さない会社」と判断されます。採用に特化したWebサイトに、求人票の補足情報、社員インタビュー、1日の仕事の流れを掲載しておくことで、「調べたら出てきた → ちゃんとした会社だ」という信頼が生まれます。
定着への効果: 入社前に自分で調べて納得した生徒は、入社後に「こんなはずじゃなかった」と感じにくい。情報を自分で確認するプロセスそのものが、入社後の覚悟と定着につながります。
3つの手段は「組み合わせ」で効く
紙媒体で「知る」→ 動画で「感じる」→ 採用HPで「確認する」。この3段階で企業の情報が生徒に届けば、求人票だけに頼っていた頃とは比較にならない情報量になります。入社前の情報量が増えれば、入社後のギャップが減り、「聞いていたのと違う」で辞める確率が下がる。早期離職の防止は、入社後ではなく入社前から始まっているのです。
5. 入社後にできること — 最初の3ヶ月が勝負
入社前の情報開示で「聞いていたのと違う」を減らしても、入社後のフォローがなければ定着は難しい。特に高卒社員は18歳。社会人経験がゼロの状態で職場に飛び込みます。最初の3ヶ月で壁にぶつかることは避けられません。問題は、壁にぶつかったときに「辞める」以外の選択肢があるかどうかです。
超早期離職のリスクが高い時期
| 時期 | リスク | 心理 |
|---|---|---|
| 入社1〜2週間 | 高 | 「ここは自分の居場所じゃない」 |
| 入社1ヶ月(GW前後) | 最高 | 「GWに休んだら、もう行きたくない」 |
| 入社3ヶ月 | 最高 | 「仕事がつまらない」「成長している実感がない」 |
| 入社6ヶ月 | 中 | 同期や友人との比較が始まる |
効果が確認されている施策
直属上司との定期面談
エン・ジャパンの調査で、早期離職防止に「効果があった施策」の1位(24%)が「直属上司との定期面談」でした。今後新たに実施したい施策でも「上司など受け入れ側への研修(39%)」が最多です。
出典: エン・ジャパン「早期離職実態調査(2025)」
最初の3ヶ月は週1回、3ヶ月以降は隔週で15分。仕事の進捗だけでなく、「困っていることはないか」「職場に馴染めているか」を聞く場を作ることが重要です。
メンター制度(直属上司とは別の相談役)
離職理由の1位は「人間関係によるストレス(54.3%)」。直属上司には言いにくいこともあります。入社3〜5年目の先輩社員をメンターとして配置し、「困ったときに気軽に話せる人」を作ることで、孤立を防ぎます。18歳にとって「職場に味方がいる」という感覚は、定着の大きな支えになります。
保護者との継続的なコミュニケーション
高卒社員が「辞めたい」と言い出したとき、最初に相談するのは親です。保護者が御社のことを知っていれば「もう少しがんばってみたら」と後押ししてくれます。入社1ヶ月・3ヶ月の節目に、保護者宛に「元気に働いています」「こんなスキルが身につきました」と経過報告を送る。この小さなアクションが、保護者を「辞めるのを止める側」に変えます。
キャリアパスの可視化
「3ヶ月後にはこの作業ができるようになる」「1年後にはこの資格を取れる」「3年後にはチームリーダーを目指せる」。成長の見通しが見えれば、目の前の辛さを乗り越えるモチベーションになります。入社時にキャリアパスを紙に書いて渡し、定期面談で進捗を確認する。それだけで「自分はここで成長できる」という実感が生まれます。
6. 早期離職のコスト — 「また採用すればいい」では済まない
「辞めたらまた採用すればいい」。そう考える方もいるかもしれません。しかし、高卒採用の現実はそう甘くありません。
採用の難易度が上がっている
26卒の高卒採用、計画通りに充足した企業はわずか29.4%
約7割の企業が、計画通りの人数を採用できていない
出典: ジンジブ「高卒採用の充足状況と採用活動に関する調査」(2025年12月、n=1,010社)
そもそも採用すること自体が難しい市場で、1人辞めたら「もう1人採る」が簡単にはできないのです。
金銭コストだけではない3つの損失
① 採用コスト
高卒1人あたりの採用コストは10〜50万円(ジンジブ「高卒採用Lab」)。大卒の70〜100万円と比べれば低いものの、辞めれば丸ごと無駄になります。さらに再募集のコストが上乗せされます。
② 育成コスト
入社から数ヶ月間、先輩社員が時間を割いてOJTを行った労力がゼロに戻ります。先輩社員のモチベーション低下にもつながります。
③ 学校との信頼関係
これが最も重い損失です。先生は送った生徒が辞めると「あの会社に送ったのは間違いだった」と感じ、翌年以降の推薦に慎重になります。早期離職は「今年の採用の失敗」で終わらず、「来年以降の採用パイプラインが閉じる」ことを意味します。
定着こそが最大の「採用戦略」
高卒人材を1人定着させることは、翌年に新たに1人採用するよりも価値があります。定着した社員がいれば、「あの会社で元気に働いています」と先生に報告でき、来年の推薦につながります。定着→信頼→推薦→採用→定着。この好循環を回すことが、人材不足時代の最も確実な採用戦略です。
7. よくある質問
Q. 高卒の離職率は大卒より高いですか?
高卒37.9%、大卒33.4%(厚生労働省、令和4年3月卒)で、差は4.5ポイント。よく言われるほど大きな差ではありません。むしろ事業所規模の影響のほうが大きく、1,000人以上の企業なら高卒でも26.3%まで下がります。中小企業の高卒離職率が高いのは「高卒だから」ではなく、「入社前の情報量」と「入社後のフォロー体制」の差が大きいためです。
Q. 職場見学を充実させれば離職は防げますか?
職場見学は入社前の情報開示の中で最も効果が大きい施策のひとつです(2社以上見学した人の定着率は離職者より14.8pt高い)。ただし職場見学だけでは十分ではありません。見学では「良い部分」を見せがちですが、入社後に「大変な部分」に直面してギャップが生じることもあります。見学に加えて、紙媒体やWebで日常的な情報を発信し、入社後のメンター・面談でフォローすることが重要です。
Q. 入社後のフォローにかけるリソースがありません。
最も効果が高い「直属上司との定期面談」は、週1回15分で始められます。特別な研修プログラムや専任担当者は不要です。最初の3ヶ月だけ、週1回15分の面談を「仕組み化」すること。これだけで「困っていることを言えない → 孤立 → 退職」の流れを断ち切ることができます。
Q. 応募が来ない問題と離職の問題、どちらを先に解決すべきですか?
同時に取り組むのが理想ですが、どちらか一方なら離職対策が先です。離職を出すと翌年の採用パイプラインが閉じます。逆に、定着実績を作れば先生からの信頼が上がり、翌年の推薦が増えます。まず「辞めない仕組み」を作り、その上で「応募を増やす」施策を重ねてください。応募が来ない原因と対策は「高卒採用で応募が来ない?4つの壁と突破法」で詳しく解説しています。
Q. 保護者へのアプローチはどうすればいいですか?
入社前と入社後、それぞれにできることがあります。入社前は、生徒が持ち帰れる紙媒体(就活情報誌)で企業情報を保護者の目に届ける。入社後は、1ヶ月・3ヶ月の節目に保護者宛に経過報告(手紙でもメールでも)を送る。保護者が御社のことを「知っている」状態を作ることが、入社前の安心にも入社後の定着にもつながります。
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