1. 応募前職場見学とは — 制度と基本の流れ
応募前職場見学とは、就職を希望する高校生が応募先を決める前に企業を訪問し、職場の雰囲気や仕事内容を自分の目で確認する機会です。高卒採用では、大卒のようなインターンシップや会社説明会が一般的ではないため、この職場見学が企業と高校生が直接会える事実上唯一の場になります。
高卒採用スケジュールにおける位置づけ
| 時期 | イベント |
|---|---|
| 6月1日〜 | ハローワークへの求人申込開始 |
| 7月1日〜 | 求人票が学校に届き始める |
| 7月末〜8月末 | 応募前職場見学(夏休み期間) |
| 9月5日〜 | 推薦・応募開始 |
| 9月16日〜 | 選考(面接・試験)開始 |
職場見学は7月末から8月末の夏休み期間に集中します。求人票が届いてから応募を決めるまでの約2ヶ月間で、高校生はこの見学を通じて「ここに応募するかどうか」を判断します。
申込から実施までの流れ
学校から企業に連絡
進路指導の先生が企業に電話し、生徒の見学希望を伝え、日程を調整します。
日程確定・社内準備
日時が決まったら、社内に周知し、受け入れ準備を進めます。
当日実施
生徒が来社し、会社説明・現場見学・先輩社員との対話などを行います。所要時間は1〜2時間が一般的です。
参加報告書の提出
生徒は「職場見学のお願い・職場見学確認書」を持参します。企業は押印して学校に返送します。
ポイント:大手企業は見学日程をあらかじめ決めていることが多いですが、中小企業ではその都度日程を調整するケースが一般的です。「いつでも受け入れます」と学校に伝えておくことで、見学の申込を受けやすくなります。
2. なぜ職場見学が採用の成否を分けるのか — 3つのデータ
職場見学は単なる「施設案内」ではありません。採用の成否と入社後の定着、その両方に直結するステップです。3つのデータで見てみましょう。
データ1: 見学→応募率は約50%
高卒採用Lab(株式会社ジンジブ)の調査によると、職場見学に参加した高校生のうち約50%が応募に至ります。高校生の平均見学社数は3社(ジンジブ調べ)であることから、1社あたりの応募率は約33.3%になります。
つまり、1名を採用したければ、最低3名の見学を受け入れるのが目安です。見学を受け入れるだけで、採用に直結するチャンスが生まれます。
データ2: 見学不足は早期離職に直結する
ジンジブの「高卒早期離職に関するアンケート調査」(2021年12月、n=472)によると、3年以内に離職した人の22.9%が職場見学を1社も行わないまま就職しています。
さらに、2社以上の見学に参加した割合は、初職を継続中の人が45.8%であるのに対し、3年以内に離職した人は31%と大きな差がありました。職場見学は「入社後に辞めない人材」を確保するためにも不可欠です。
データ3: 応募をやめた理由の45%は「職場環境」
高卒採用Lab(ジンジブ)の調査では、見学後に応募をためらった理由の45%が、職場の清潔さ(5S)に関するものでした。「会社が汚かった」「玄関が散らかっていた」といった印象が、応募辞退に直結しています。逆に言えば、職場環境を整えるだけで応募率は改善できるのです。
まとめ:職場見学は「採用数」と「定着率」の両方に効くステップです。見学を受け入れないこと、あるいは準備不足の見学を行うことは、採用機会と定着の両面でマイナスになります。
3. 企業が守るべき3つのルール
応募前職場見学は「選考の場」ではありません。あくまで生徒が企業を知るための場であり、以下のルールを必ず守る必要があります。
ルール1: 書類提出を求めない
生徒は「職場見学のお願い・職場見学確認書」を持参しますが、それ以外の書類(応募書類、履歴書、アンケート、個人情報を含む書面等)の提出を求めてはいけません。
ルール2: 選考につながる質問をしない
「なぜこの会社に興味を持ちましたか?」「入社したら何を頑張りたいですか?」など、採用選考で聞くような質問は禁止されています。公正な採用選考を妨げる「違反質問」に該当するため、注意が必要です。
ルール3: 内定と受け取れる話をしない
「ぜひうちに来てほしい」「あなたなら採用できると思う」など、内定を示唆するような発言も禁止されています。見学はあくまで情報提供の場です。
補足:見学に参加したかどうかを、後の選考の判断基準にすることもルール違反です。見学はあくまで生徒が企業を知る機会であり、企業が生徒を選ぶ場ではありません。
4. 受け入れ前の準備チェックリスト
職場見学の成否は、当日までの準備で8割決まります。以下の7項目を事前に確認してください。
参加人数の目標を設定する
職場見学からの応募率は約33.3%(ジンジブ調べ)です。つまり、1名採用したければ最低3名の見学が必要です。採用目標が2名なら6名以上の見学受入を目指しましょう。「何人来てほしいか」を数字で把握しておくと、学校訪問時のコミュニケーションにも活かせます。
日程を柔軟に確保する
見学は7月末〜8月末の夏休み期間が中心です。9時〜16時の間で、1回1〜2時間を想定して複数日程を確保してください。中小企業では、学校からの連絡に応じてその都度日程を調整するケースが多いため、柔軟に対応できる体制が理想です。
社内全体に周知する
見学の1週間前には社内全体に告知しましょう。「〇日に高校生が見学に来ます」と伝え、すれ違った際の挨拶を徹底します。高校生にとって、社員から挨拶されるかどうかは「この会社で働きたいか」を判断する大きな材料になります。
5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を徹底する
見学後に応募をためらった理由の45%が職場環境(5S)に関するものです(ジンジブ調べ)。玄関、受付、通路、トイレ、作業場 — 見学ルート上のすべてを点検してください。特に玄関の第一印象は決定的です。先生が事前に会社の前を確認するケースもあります。
若手社員を担当者に選出する
見学対応は、高校生に年齢の近い若手社員が最適です。役職者よりも、入社数年目の先輩のほうが高校生の目線に近く、「自分もこうなれるかもしれない」というイメージを持たせやすくなります。実際に高校生からは「話しやすかった」「入社後のイメージが持てた」という声が多く挙がっています(高卒採用Lab、ジンジブ)。
説明資料を準備する
会社概要、事業内容、仕事の1日の流れ、福利厚生などをまとめた資料を用意しましょう。高校生は緊張しているため、口頭だけでは情報を受け取りきれません。写真や図を多めに使い、分かりやすい資料にしてください。
見学ルートを確認・安全対策
工場や建設現場など、安全管理が必要な場所を見学する場合は、ヘルメットや安全靴の準備、危険箇所の明示など安全対策を講じてください。事前にルートを歩いて確認し、スムーズに案内できるようにしておきましょう。
5. 当日のプログラム例 — 90分モデル
職場見学の所要時間は1〜2時間が一般的です。以下は90分を想定したプログラム例です。自社の業種や規模に応じてアレンジしてください。
| 時間 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 5分 | 受付・挨拶 | 笑顔で迎える。緊張をほぐす声かけを意識する |
| 20分 | 会社説明・業務紹介 | 資料を使いながら、事業内容・仕事の種類・1日の流れを説明。専門用語は避ける |
| 30分 | 職場・設備見学 | 実際の仕事現場を見てもらう。働いている社員の姿を見せることが最も効果的 |
| 20分 | 先輩社員との対話 | 入社のきっかけ、やりがい、大変なこと。年齢の近い先輩が話すと効果大 |
| 10分 | 質疑応答 | 「何でも聞いてください」と声をかけ、質問しやすい空気を作る |
| 5分 | 送り出し | 確認書に押印。感謝を伝え、玄関まで見送る |
ポイント:高校生は緊張しています。冒頭で「今日は選考ではないので、リラックスして見てください」と一言伝えるだけで、空気が変わります。先輩社員との対話パートでは、椅子を向かい合わせではなく90度の角度にするなど、圧迫感を減らす工夫も有効です。
6. 応募率を高める5つの工夫
準備とプログラムの基本を押さえた上で、応募につなげるための工夫を紹介します。
1.若手社員に「自分の言葉」で語らせる
会社説明はパンフレットで伝わりますが、「なぜこの会社に入ったか」「実際にどんな1日を過ごしているか」「入社前と後で印象が変わったこと」は、先輩社員の生の言葉でしか伝わりません。台本を渡すのではなく、自分の経験を自分の言葉で話してもらうことが大切です。高校生が聞きたいのは「会社の宣伝」ではなく「リアルな声」です。
2.「働く自分」を想像させる
説明だけでなく、実際の仕事を見せる工夫をしましょう。製造業なら加工の工程、建設業なら図面を広げた打ち合わせ風景、事務系なら実際に使うシステムの画面 — 「この仕事をするのが自分かもしれない」と思えるかどうかが、応募の決め手になります。可能であれば、簡単な作業体験を取り入れるのも効果的です。
3.質問しやすい空気を作る
高校生は社会経験がほとんどなく、大人の前で質問すること自体がハードルです。「質問ありますか?」と聞いても沈黙になることは珍しくありません。先輩社員が「私も入社前にこういうことが気になりました」と自分から話題を出す、あるいは「給料のこと、休みのこと、何でも聞いてください」と具体的に促すと、質問が出やすくなります。
4.見学後に学校へお礼の連絡をする
見学が終わったら、先生に電話やメールでお礼を伝えましょう。「本日はありがとうございました。〇〇さんは熱心に見学されていました」と生徒の様子を添えると、先生にとっても安心材料になります。この一手間が先生との信頼関係を強化し、翌年以降の見学申込にもつながります。
5.交通費支給を検討する
見学への参加障壁を下げるために、交通費の支給を検討しましょう。特に公共交通機関が充実していない地域では、交通費が見学参加を妨げる要因になります。「交通費支給」と学校に伝えるだけで、見学希望者が増える可能性があります。
7. 先生が見ているポイント
高卒採用では、進路指導の先生が企業を生徒に紹介する立場にあります。先生は職場見学の結果も含めて、「この企業を生徒に推薦してよいか」を判断しています。
玄関・職場の清潔さ
先生の中には、見学の数日前に会社の前を確認する人もいます(高卒採用Lab、ジンジブ)。玄関の印象は、生徒だけでなく先生の評価にも直結します。
社員の挨拶と表情
「社員が挨拶してくれなかった」「暗い雰囲気だった」は、見学後に先生にも伝わります。すれ違う社員が笑顔で挨拶できるかどうかは、企業の第一印象を決めます。
安全管理の状態
特に製造業・建設業では、安全管理が行き届いているかどうかは先生にとって最重要項目のひとつです。ヘルメットの着用、整理された作業場は、先生の安心感につながります。
定着実績と入社後フォロー
先生は「この企業に送った生徒が辞めていないか」を気にしています。過去の高卒入社社員の定着状況や、入社後のフォロー体制(メンター制度、研修等)を具体的に伝えられると、先生の推薦につながりやすくなります。
関連記事:先生が企業を評価する5つの視点、学校訪問の効果や信頼関係の築き方については、「先生に選ばれる企業になるために」で詳しく解説しています。
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 職場見学は法律で義務付けられていますか?
法律上の義務ではありません。ただし、高卒採用を行うほとんどの企業が実施しており、ハローワークも積極的な実施を推奨しています。見学を受け入れないことは、事実上「応募機会を逃す」ことと同義です。
Q2. 何名くらいの受入れを想定すればよいですか?
職場見学からの応募率は約33.3%(ジンジブ調べ)です。1名採用したい場合、最低3名の見学受入れが目安です。2名採用なら6名以上を目標にしましょう。
Q3. 見学当日に聞いてはいけない質問は具体的に何ですか?
「志望動機」「入社後の抱負」「他にどこを見学したか」「家族の職業」など、採用選考に直結する質問や、本人に責任のない事項に関する質問はすべて禁止です。これらは厚生労働省が定める「公正な採用選考」のガイドラインで違反質問とされています。
Q4. 見学に来た生徒が応募しなかった場合、何かすべきですか?
応募しなかったからといって、生徒や学校に連絡する必要はありません。ただし、自社の見学プログラムを振り返る機会にはなります。見学後の応募率が低い場合、5S・先輩社員の対応・説明内容などに改善の余地がないか検討してみてください。
Q5. オンラインでの職場見学は可能ですか?
コロナ禍以降、オンライン職場見学を導入する企業も増えています。ただし、高校生にとっては実際の職場の空気や社員の表情を直接感じることが応募意欲に大きく影響するため、可能な限り対面での実施が推奨されます。遠方の生徒向けにオンラインを併用するのは有効な選択肢です。
関連記事
出典・参考資料
- ・ 高卒採用Lab(株式会社ジンジブ)「応募前職場見学の基本と注意すべきポイント」
- ・ 高卒採用Lab(株式会社ジンジブ)「高卒採用で"職場見学"って重要なの?高校生と先生が見ているポイント3つ」
- ・ 株式会社ジンジブ「高卒早期離職に関するアンケート調査」(2021年12月、n=472)PR Times プレスリリース
- ・ 厚生労働省「新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況」(令和3年公表)
- ・ 東京労働局「新規学校卒業者の採用について」
- ・ ハイスク!「応募前職場見学では何に気を付ける?企業側の意識にも注目!」
- ・ 栃木採用.com「応募前職場見学とは?応募に繋げるための3つの注意点を解説!」
- ・ takumi-base「高校生向け会社見学の基本と高卒採用の重要ポイント解説」
- ・ 福島採用.com「応募に繋がる"応募前職場見学"実施のポイントはこの3つ!」
For Companies
こんなお悩みはありませんか?
採用に毎年400万円以上…
本当に回収できてる?
3人に2人が内定辞退。
また振り出しに…
求人票を出しても
応募が来ない…
採用しても3年で辞める…
育成コストが無駄に
採用活動に手が回らない…
何から始めれば?


ゆめスタなら、解決できます
採用コスト
50%削減
607万円 → 300万円
内定辞退率
ほぼ0%
一人一社制で確実採用
採用満足度
81.1%
大卒採用より+3.5pt
ゆめスタが解決します
高校生採用に特化した3つのサービスで、採用課題をトータルサポート



