企業向け高卒採用実践ガイド

求人票の書き方から内定後フォローまで、高卒採用の実践ノウハウを完全解説します。ハローワーク公式ガイドラインとジンジブ・JILPT調査データに基づいた、企業が今すぐ実践できる具体的方法を紹介します。

1. 高卒採用の年間スケジュール

高卒採用は全国統一のスケジュールで実施されます。企業が準備すべき重要な日程を確認しましょう。

時期企業の主な動き
4-6月求人票作成、ハローワーク説明会参加、採用計画策定
7月1日ハローワークへ求人票提出
7月1-20日高校訪問、求人票配布
7月末-8月末職場見学受け入れ(夏休み期間)
9月5日応募書類受付開始
9月16日選考開始
9月下旬-10月内定出し、内定者フォロー
10月-翌3月内定者研修、入社前フォロー

出典: 厚生労働省・文部科学省「高卒求人のルール」

準備期間の重要性

高卒採用は7月1日の求人受付開始に向けて、遅くとも4-6月には準備を開始する必要があります。この準備期間に求人票の作成、採用計画の策定、受け入れ体制の整備を完了させておくことが成功の鍵です。

2. 求人票の作成方法

2024年4月の重要な改正

職業安定法施行規則の改正により、2024年4月1日以降、求人票に以下の3項目の明示が義務化されました。

必須記載事項(2024年4月改正)

  1. 1. 従事すべき業務の変更の範囲
    入社後にどのような業務に配置転換される可能性があるかを明示
  2. 2. 就業場所の変更の範囲
    転勤の可能性がある場合、その範囲を明示
  3. 3. 有期労働契約を更新する場合の基準
    通算契約期間または更新回数の上限を明示

魅力が伝わる求人票作成の5つのコツ

高卒採用の求人票は、高校生と進路指導教員の両方が読むことを前提に作成する必要があります。以下の5つのコツを押さえましょう。

1. わかりやすい表現

難しい単語や専門用語は避け、高校生でも理解できる表現を使いましょう。

❌ NG例

募集職種: 営業職

✅ OK例

募集職種: 営業職(八百屋さんに野菜を提案する営業)

2. 就職後の具体的なイメージを持てる内容

  • • 1日の業務の流れを具体的に記載
  • • 先輩社員の入社1年目のエピソード
  • • 研修内容の詳細(社会人マナー研修、業務研修等)
  • • 職場の雰囲気や人間関係

3. 高校生に響く具体的な文言

高校生や保護者が安心できる情報を具体的に記載します。

  • • 「悩んだときに先輩に話を聞いてもらえた」
  • • 「教え方が丁寧だった」
  • • 「社会人マナー研修を1週間実施」
  • • 「新人には必ず先輩社員がメンターとして付きます」

4. 必須記載項目の完全網羅

職業安定法により、以下の項目は必ず記載する必要があります。

  • • 業務内容
  • • 契約期間・試用期間
  • • 就業場所
  • • 就業時間・休憩時間
  • • 休日・休暇
  • • 賃金(基本給、諸手当、昇給、賞与)
  • • 加入保険
  • • 募集者の氏名または名称
  • • 雇用形態

5. 避けるべき表現

  • • 性別や年齢を限定する表現
  • • 特定の人々に対する差別表現
  • • 最低賃金以下の給与
  • • 誇張表現(「絶対に」「必ず稼げる」等)

出典: ハローワーク公式ガイドライン、ジンジブ「高卒採用Lab」、厚生労働省職業安定法施行規則

3. 高校との関係構築

高校訪問の重要性

高卒採用成功の鍵は、「先生から生徒に対して、いかに自社の求人を紹介してもらえるか」にあります。進路指導教員との信頼関係構築が最も重要です。

高校訪問の基本フロー

  1. 1. アポイントを取る(6月下旬-7月上旬)
    電話で訪問日時を調整し、訪問の目的を伝えます。
  2. 2. 求人票を持参して訪問(7月1-20日推奨)
    求人票に加え、会社案内、採用パンフレット等を持参します。
  3. 3. 進路指導教員との面談
    企業の事業内容、募集職種、求める人物像、職場環境等を丁寧に説明します。
  4. 4. 職場見学の受け入れを伝える
    夏休み期間の職場見学受け入れが可能であることを伝えます。
  5. 5. 継続的な関係維持
    年に複数回訪問し、内定者・入社者の状況を報告することで信頼関係を深めます。

先生が知りたい情報

進路指導教員は生徒の将来を真剣に考えています。以下の情報を明確に伝えることで、信頼を得ることができます。

  • • 新人育成の具体的な体制(OJT、研修制度等)
  • • 過去の高卒採用者の定着率・活躍状況
  • • 職場の人間関係・雰囲気
  • • キャリアパス(昇進・昇格の事例)
  • • 福利厚生の詳細
  • • 残業時間・休日出勤の実態

出典: ジンジブ「高卒採用Lab」、JILPT企業ヒアリング調査

4. 職場見学の受け入れ方

職場見学の重要性

職場見学から応募に繋がる可能性は約50%です。高校生は平均して3社の見学に参加するため、企業側の視点では3人の見学を受け入れて1人が応募・採用できる計算になります。

職場見学の基本スケジュール

実施時期: 7月末から8月末の夏休み期間

所要時間: 1-2時間程度

参加者: 高校生本人、場合により保護者・教員が同行

職場見学で最も重要なポイント

職場見学で最も注意すべき点は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底です。職場環境の清潔さ・整理整頓は、高校生と先生の第一印象を大きく左右します。

職場見学受け入れの準備

  • 1. 職場環境の整備
    • • 5Sの徹底(整理・整頓・清掃・清潔・躾)
    • • 危険箇所の確認・安全対策
    • • 社内掲示物の整理
  • 2. 案内ルートの設定
    • • 実際の業務現場を見せる
    • • 休憩室・福利厚生施設を案内
    • • 年齢の近い先輩社員との交流時間を設ける
  • 3. 説明資料の準備
    • • 会社案内パンフレット
    • • 採用パンフレット
    • • 先輩社員インタビュー資料
    • • 研修制度の詳細資料

年齢の近い先輩社員の重要性

年齢の近い先輩社員(入社1-3年目)が対応することで、高校生が親近感を持って話すことができます。先輩社員には以下の情報を話してもらいましょう。

  • • 入社前の不安と実際に入社してからの感想
  • • 1日の業務の流れ
  • • 研修内容・育成体制の実態
  • • 職場の人間関係・雰囲気
  • • 失敗談・成長エピソード

見学後のフォロー

職場見学後は、学校経由でお礼状を送付します。高校生本人への直接の連絡は、高卒採用のルールで禁止されているため注意が必要です。

出典: ジンジブ「高卒採用Lab」、厚生労働省「高卒求人のルール」

5. 選考方法と内定出し

9月16日選考開始

選考は全国統一で9月16日から開始されます。9月5日から応募書類の受付が始まりますが、選考(面接・筆記試験等)は16日まで実施できません。

高卒採用の選考フロー

  1. 1. 応募書類の受付(9月5日以降)
    学校経由で応募書類を受け取ります。
  2. 2. 書類選考(9月5-15日)
    履歴書・成績証明書・健康診断書等を確認します。
  3. 3. 面接・筆記試験(9月16日以降)
    適性検査、面接を実施します。
  4. 4. 内定通知(9月下旬)
    学校経由で内定通知を行います。

一人一社制への配慮

9月5日から一定期間は、一人の生徒が応募できる企業を一社に限定する「一人一社制」が実施されます。この期間中、不合格となった生徒は次の企業に応募するため、選考結果は速やかに学校へ通知する必要があります。

JILPT調査によると、高卒採用の選考では以下の点が重視されています。

  • • 人物評価(意欲・コミュニケーション能力・誠実さ)
  • • 基礎学力
  • • 健康状態
  • • 職場見学時の印象
  • • 高校教員からの推薦内容

内定辞退率ほぼゼロの理由

高卒採用の内定辞退率はほぼ0%です。これは学校推薦制により、進路指導教員が生徒の適性と企業の要件を慎重にマッチングしているためです。一方、大卒採用の内定辞退率は63.7%(マイナビ調査)であり、高卒採用の大きなメリットです。

出典: 厚生労働省「高卒求人のルール」、JILPT 2005年調査、マイナビ企業新卒内定状況調査

6. 内定後フォローと定着支援

内定後フォローの重要性

高卒採用は内定辞退率ほぼゼロですが、入社後の早期離職を防ぐために、内定後フォローと入社後の定着支援が重要です。

内定後フォロー(10月-翌3月)

  • 1. 内定者研修の実施
    • • 月1回程度の集合研修
    • • 社会人マナー・基礎知識の習得
    • • 先輩社員との交流機会
  • 2. 定期的なコミュニケーション
    • • 採用担当者からの定期連絡
    • • 会社の近況報告
    • • 不安・疑問への丁寧な対応
  • 3. 保護者への情報提供
    • • 保護者向け説明会の開催
    • • 入社準備資料の配布
    • • 保護者の不安解消

入社後の定着支援

高卒3年以内離職率は38.4%(厚生労働省)です。このうち、6カ月未満の超早期離職が11.8%(リクルートワークス研究所)を占めています。入社後の丁寧なフォローが定着率向上の鍵です。

定着支援の具体的施策

  • 1. メンター制度
    年齢の近い先輩社員をメンターとして配置し、業務面・精神面でのサポートを行います。
  • 2. 定期面談
    入社1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年のタイミングで、人事担当者が面談を実施します。
  • 3. 研修体制の整備
    社会人マナー研修、業務研修、フォローアップ研修を計画的に実施します。
  • 4. 学校への報告
    入社後の状況を定期的に学校へ報告し、継続的な信頼関係を構築します。

JILPT調査データ: 一人前期間

JILPT 2005年調査によると、高卒採用者が一人前になる期間は以下の通りです。

  • • 1年未満: 2.1%
  • • 1-2年: 17.2%
  • • 3-5年: 60.3%(最多)
  • • 6-9年: 15.5%
  • • 10年以上: 4.2%

この結果から、多くの企業が3-5年かけて高卒採用者を一人前に育成していることがわかります。この期間を見据えた育成計画と定着支援が重要です。

出典: JILPT「新規学卒採用の現状と将来」(2005年)、厚生労働省「新規学卒者離職状況調査」、リクルートワークス研究所「高校生の就職になにが起こったのか」(2020年)

データ出典

  • • 厚生労働省・文部科学省「高卒求人のルール」
  • • ハローワーク公式ガイドライン(職業安定法施行規則改正、2024年4月)
  • • 株式会社ジンジブ「高卒採用Lab」
  • • 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)「新規学卒採用の現状と将来」(2005年)
  • • リクルートワークス研究所「高校生の就職になにが起こったのか」(2020年)
  • • マイナビ「企業新卒内定状況調査」(2025年卒)

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