1. 高校生は何を見て会社を選ぶのか
まず、高校生が企業を選ぶときに何を重視しているかを確認しましょう。多くの企業が「給与や福利厚生で大手に勝てない」と考えていますが、データは別の現実を示しています。
高校生が会社選びで知りたい情報
63.6%
社風・職場の
雰囲気
62.2%
休日などの
待遇
59.0%
実際の
仕事内容
54.9%
人間関係
出典: ジンジブ「高校生の就職活動に関するアンケート調査」(2019年、高校3年生908名対象)
1位は「社風・職場の雰囲気」63.6%。給与や福利厚生ではありません。「休日などの待遇」62.2%も重要ですが、「実際の仕事内容」59.0%、「人間関係」54.9%がほぼ同じ水準で並んでいます。
別の調査でも傾向は同じです。25卒の高校生に「応募の決め手」を聞いた結果では、「給与」60.9%、「仕事内容」53.7%、「年間休日」52.7%、「働く場所の雰囲気」50.0%。4つの要素が50%超でほぼ横並びです。
出典: ジンジブ「高校生就活アンケート」(2023年7月、就職希望高校生736名対象)
さらに、高校生が話を聞きたい相手は「年の近い先輩社員」68.3%が最多。「社長」22.4%を大きく上回ります。
出典: ジンジブ「20卒高校生の就職意識調査」(2019年7月、高校生634名対象)
つまり、高校生が知りたいのは「条件」だけではない
「どんな人がいるか」「どんな雰囲気か」「実際に何をするか」。これらは求人票の数字では伝わらない情報です。そして、これこそが中小企業が発信できるはずの情報です。
2. なぜ「うちには魅力がない」と感じるのか — 3つの構造的原因
「うちには魅力がない」と感じる企業には、3つの構造的な原因があります。問題は魅力の有無ではなく、発信の構造にあります。
求人票のフォーマットでは伝えようがない
ハローワーク求人票の「会社の特長」欄はわずか90文字(30文字×3行)。「仕事内容」欄でも360文字です。高校生が最も知りたい「職場の雰囲気」「人間関係」「先輩社員の声」は、このフォーマットでは物理的に表現できません。
求人票は法定書類であり、記載ルールも厳格です。「魅力が伝わらない」のは企業の努力不足ではなく、そもそも求人票はそのための道具ではないのです。
出典: 水崎事務所「ハローワーク求人票用の文字数カウンター&表記調整ツール」(求人票フォーマットの解説)
企業が発信する情報と、高校生が知りたい情報がずれている
2024年版中小企業白書の分析によると、企業が発信する情報は「給与・福利厚生」が8割超。一方、「事業・組織の本質的価値」を発信している企業は3〜4割程度にとどまります。
高校生が知りたい1位は「社風・職場の雰囲気」63.6%。しかし企業は条件面ばかりを発信している。聞きたいことと、話していることが噛み合っていない。これが「魅力がない」と感じる正体です。
出典: みらい経営者ONLINE「2024年版中小企業白書から考える『求職者目線での言語化・情報発信』の重要性」
そもそも情報が届いていない
高校生の55.4%が「1社だけを調べて、1社を受け、1社に内定」しています。情報収集が「不十分だった」との回答は合計65.7%。
情報源は「学校に届く求人票」が75.5%で圧倒的。次いで「会社のホームページ」25.1%。つまり、求人票以外に情報を届ける手段を持たない企業は、半数以上の高校生の選択肢にすら入らないのです。
出典: リクルートワークス研究所「高校生の就職とキャリア」(2020年、4,068名対象)/ ジンジブ「26卒就活高校生向けアンケート」(2025年7月、502名対象)
3つの原因が示すこと
「魅力がない」のではなく、①伝える手段が制約されている、②伝える内容がずれている、③そもそも届いていない。問題は魅力の有無ではなく、情報の届け方です。
3. 伝わらないまま採用すると何が起きるか
企業の魅力が伝わらないまま採用を続けると、応募不足だけでなく、入社後にも深刻な問題が起きます。
37.9%
高卒3年以内
離職率
5人未満は63.2%
45.9%
離職者のうち
1年以内に退職
入社直後のギャップが致命的
54.3%
離職理由1位
「人間関係」
入社前に伝えられる情報
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」令和4年3月卒 / ジンジブ「高卒早期離職に関するアンケート調査」(2021年12月、472名対象)
離職理由の1位は「人間関係によるストレス」54.3%。2位は「長時間労働」33.5%、3位は「業務内容でのミスマッチ」20%。注目すべきは、1位と3位の「人間関係」と「仕事内容のミスマッチ」は、入社前に情報を伝えることで軽減できるということです。
若者全体(16〜29歳)に対する内閣府の調査でも、離職理由の1位は「仕事が自分に合わなかった」43.4%。「入社前に聞いていた話と違った」ではなく、「そもそも十分な情報を得られないまま入社した」ケースが多いのです。
出典: 内閣府「2018年版 子供・若者白書」(16〜29歳の1万人対象)
4人に1人が初職を「0点」と評価
リクルートワークス研究所の調査では、高卒就職者に初職企業を10点満点で採点させたところ、24.1%が「0点」と回答しています。4人に1人が最低評価。「知らずに入った」結果がこの数字に表れています。
出典: リクルートワークス研究所「高校生の就職とキャリア」(2020年、4,068名対象)
入社後に「欲しかった情報」を聞いた結果も明確です。1位「社風・職場の雰囲気」57%、2位「実際の仕事内容」56.7%、3位「人間関係」42.6%。入社前に知りたかった情報と、入社後に「もっと知りたかった」と思う情報は一致しています。
出典: ジンジブ「高校生の就職活動に関するアンケート調査」(2019年、既卒社会人284名対象)
情報発信は「採用」だけでなく「定着」の問題でもある
入社前に十分な情報を伝えることは、応募を増やすだけでなく、入社後のミスマッチを防ぎ、定着率を高めることに直結します。職場見学を2社以上経験した人は定着率が高く、1社のみの人より離職リスクが低いというデータもあります。
出典: ジンジブ「高卒早期離職に関するアンケート調査」(2021年12月、472名対象)— 職場見学2社以上:初職継続者45.8% vs 3年以内離職者31%
4. 魅力の届け方を変える5つの方法
高校生が知りたいのは「雰囲気」「仕事内容」「人間関係」。企業が発信しているのは「給与・福利厚生」。このギャップを埋めるには、何を伝えるかとどう届けるかの両方を変える必要があります。
方法1. 求人票の「伝える力」を最大化する
求人票のフォーマットには限界がありますが、それでも改善できるポイントがあります。「会社の特長」欄の90文字を、高校生が知りたい情報で埋めているかどうかで差がつきます。
「会社の特長」欄の書き方
「アットホームな職場です。福利厚生充実。やる気のある方歓迎」
「先輩社員が1対1で半年間指導。20代が5人活躍中。年間休日120日」
抽象的な言葉ではなく、具体的な数字と事実を書く。「アットホーム」は人によって意味が違いますが、「20代が5人活躍中」は誰が読んでも同じ意味です。求人票の詳しい書き方は「高卒採用の求人票の書き方」をご覧ください。
方法2. 若手社員の声を形にする
高校生が話を聞きたい相手の1位は「年の近い先輩社員」68.3%。「採用担当者」60.9%を上回ります。社長やベテランの言葉ではなく、入社1〜3年目の若手社員の体験談が最も高校生に響きます。
「なぜこの会社を選んだのか」「入社前と入社後でギャップはあったか」「実際の1日の仕事の流れ」。こうした若手の声を文章にするだけでも、求人票にはない情報が生まれます。
インタビュー動画にすれば、文字では伝わらない表情や声のトーンまで届けられます。動画は職場見学に来られない高校生や、保護者にも見てもらえる手段です。
方法3. 職場見学を「選ばれる体験」にする
職場見学で高校生が最も確認したいのは「会社の雰囲気」81.0%、次いで「仕事内容」78.2%。条件面(給与・休日・福利厚生)は48.6%で3番目です。
出典: ジンジブ「20卒高校生の就職意識調査」(2019年7月、634名対象)
職場見学後に「この企業に応募したい」と思った理由の1位は「会社の雰囲気が良さそう」66.6%。「条件面」は30.6%で4番目です。つまり、職場見学は条件を確認する場ではなく、雰囲気を感じる場です。
23卒のデータでは43%が「職場見学は1社のみ」。見学先がそのまま応募先になる可能性が高い。見学に来てもらえれば、半数近くが応募を決めるのです。
出典: ジンジブ「高卒社会人アンケート(23卒)」(2023年4月、142名対象)
職場見学のポイントは、きれいに取り繕うことではなく、普段どおりの職場を見せること。若手社員と直接話す時間を作る。実際の仕事を間近で見てもらう。飾らないリアルさが、高校生にとっては最も信頼できる情報です。詳しくは「応募前職場見学の受け入れガイド」をご覧ください。
方法4. 紙媒体で学校と家庭に届ける
高校生の情報源は75.5%が「学校に届く求人票」。しかし求人票は数百社の中に埋もれます。求人票とは別に、企業の物語が詰まった紙の情報誌やパンフレットを届けることで、「数百社のうちの1枚」から「名前を知っている会社」に変わります。
紙媒体の最大の強みは、学校から家庭まで届くこと。高校生が持ち帰れば保護者の目にも触れます。デジタルの情報は画面を閉じれば消えますが、紙は手元に残ります。
先生にとっても、「この会社はこういう会社です」と生徒に見せられる資料があるかどうかは大きな差になります。求人票の1枚だけでは、先生も生徒に説明しにくいのです。
方法5. 採用ページで「調べられる企業」になる
26卒のデータでは、25.1%の高校生が「会社のホームページ」を情報源として利用しています。先生から紹介された会社名を、高校生はスマホで検索します。保護者も同様です。
出典: ジンジブ「26卒就活高校生向けアンケート」(2025年7月、502名対象)
20〜30代の求職者を対象とした調査では、94.7%が応募前に採用ページを確認し、HPがない場合は76.1%が「応募意欲が下がる」と回答しています。高校生の保護者世代にとっても、HPの有無は「信頼できる会社かどうか」の判断材料になります。
出典: アイデム「採用HPに関する求職者調査」(2022年11月、20〜30代男女300名対象)
採用専用のページに、先輩社員のインタビュー、1日の仕事の流れ、職場の写真を掲載する。それだけで、「検索しても何も出てこない」を「検索したら安心できた」に変えることができます。
5つの方法の共通点
すべて「高校生が知りたい情報を、届く形で届ける」ための手段です。求人票の改善は今すぐできる。若手の声を文章にするのは費用ゼロでできる。1つずつでも始めれば、「魅力がない」から「魅力が伝わっていなかった」に変わります。
5. 「魅力がない」のではなく「伝えていない」だけ
高校生が会社選びで最も知りたいのは「社風・職場の雰囲気」63.6%。しかし企業の8割超は「給与・福利厚生」を中心に発信しています。このギャップが「応募が来ない」「入社してもすぐ辞める」の根本原因です。
解決策は5つ。①求人票を具体的な言葉で書き直す、②若手社員の声を形にする、③職場見学を「選ばれる体験」にする、④紙媒体で学校と家庭に届ける、⑤採用ページで「調べられる企業」になる。
いずれも「会社を変える」のではなく「伝え方を変える」施策です。御社にはすでに魅力がある。それを高校生に届ける手段を持つかどうかが、採用の成否を分けます。
高校生の42.4%が「やりたいことが見つからない」と悩んでいます。「うちの仕事はこういう仕事で、こういう人に向いている」と具体的に伝えることは、企業の採用を助けるだけでなく、迷っている高校生にとっても、自分の未来を見つけるきっかけになるのです。
出典: ジンジブ「26卒就活高校生向けアンケート」(2025年7月、502名対象)
まず今日からできる一歩は、入社1〜3年目の若手社員に「なぜうちの会社を選んだか」を聞くことです。その答えの中に、御社の本当の魅力が見つかります。
6. よくある質問
Q. うちみたいな小さな会社に、高校生にアピールできる魅力なんてないのですが
高校生が最も知りたいのは「社風・職場の雰囲気」63.6%であり、企業の規模や知名度ではありません。むしろ中小企業は「社長との距離が近い」「若手でも重要な仕事を任される」「一人ひとりの顔が見える」という、大手にはない強みがあります。問題は魅力がないことではなく、その魅力を言葉にして届けていないことです。
Q. 求人票を出しているのに応募が来ません。何が悪いのでしょうか
高卒求人倍率は3.91倍。約4社に1社しか採用できない計算です。求人票は必要な第一歩ですが、「会社の特長」欄はわずか90文字。高校生が知りたい「雰囲気」「人間関係」を伝えるには物理的に足りません。求人票の「外」で情報を届ける手段(紙媒体、採用HP、動画、職場見学の充実)が必要です。詳しくは「求人票を出しても応募が来ない?」をご覧ください。
Q. 採用HPを作っても、高校生は見ないのではないですか
26卒のデータでは25.1%の高校生が会社のHPを情報源として利用しています。4人に1人です。また、HPは高校生だけでなく、先生や保護者も確認します。20〜30代の求職者対象の調査では、HPがない場合76.1%が「応募意欲が下がる」と回答。HPの有無は「信頼できる会社かどうか」の判断に直結しています。
Q. 予算がなくても始められることはありますか
はい。まず「若手社員に入社理由を聞いてメモする」ことは費用ゼロです。その内容を求人票の特記事項欄(600文字)に反映するだけでも改善になります。職場見学で若手社員と直接話す時間を設けるのも追加コスト不要。予算をかけるなら、最も費用対効果が高いのは採用に特化した1ページでも良いのでWebページを作ること、または紙媒体で学校に届けることです。
Q. 魅力を伝えれば離職率も下がりますか
データはそれを示しています。高卒離職者の離職理由1位は「人間関係」54.3%、若者全体では「仕事が自分に合わなかった」43.4%。いずれも入社前の情報不足に起因するミスマッチです。職場見学を2社以上経験した人は定着率が高いというデータもあります。入社前にリアルな情報を伝えることは、最も効果的な離職対策です。詳しくは「高卒で採用した社員がすぐ辞める」をご覧ください。
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データ出典
厚生労働省「令和6年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」(2024年)
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2025年10月公表)
リクルートワークス研究所「高校生の就職とキャリア」(2021年刊行、調査2020年9月、4,068名対象)
内閣府「2018年版 子供・若者白書」(調査2017年、16〜29歳の1万人対象)
株式会社ジンジブ「高校生の就職活動に関するアンケート調査」(2019年、高校3年生908名・既卒社会人284名対象)
株式会社ジンジブ「20卒高校生の就職意識調査」(2019年7月、高校生634名対象)
株式会社ジンジブ「高校生就活アンケート」(2023年7月、就職希望高校生736名対象)
株式会社ジンジブ「26卒就活高校生向けアンケート」(2025年7月、502名対象)
株式会社ジンジブ「高卒社会人アンケート(23卒)」(2023年4月、142名対象)
株式会社ジンジブ「高卒早期離職に関するアンケート調査」(2021年12月、472名対象)
株式会社アイデム「採用HPに関する求職者調査」(2022年11月、20〜30代男女300名対象)
みらい経営者ONLINE「2024年版中小企業白書分析記事」
水崎事務所「ハローワーク求人票用の文字数カウンター&表記調整ツール」





