島根県 製造業の高卒採用ガイド
プロテリアル・島根富士通がいる市場で、中小工場はどう人材を確保するか
島根県の製造業は従業者45,245人、求人数は696件。高校生の最多希望職種が「工場などの生産工程」であるように、製造業は高卒採用の主戦場です。
しかし、この主戦場にはプロテリアル安来製作所(特殊鋼・世界ブランドYSSヤスキハガネ)、島根富士通(電子部品)、パナソニックインダストリー、日本セラミック(センサー・世界シェア)がいます。松江工業高校・出雲工業高校の主要な就職先はこれらの大手が占めており、中小製造業にとっては「戦っている相手が見えている」分だけ厳しい状況です。
しかし、勝ち目がないわけではありません。大手の採用枠には限りがあり、工業高校の全生徒が大手に行くわけではないのです。先生は生徒一人ひとりの性格や適性を見て就職先を推薦します。「この子にはアットホームな小さい会社の方が合う」と先生が判断すれば、それがあなたの会社へのチャンスになります。
この記事では、島根県の製造業——特殊鋼・鋳造・電子部品・食品加工——それぞれの分野で、中小企業がどの学校に行き、何を伝え、どう採用するかを具体的に解説します。
1. あなたの分野ではどの学校に行くべきか
「製造業」と一口に言っても、特殊鋼の工場と食品加工の工場では求める人材が違います。学校選びを間違えると、訪問しても成果が出ません。以下の表で、自社の分野に合った学校を確認してください。
| あなたの分野 | 最優先で訪問すべき学校 | 狙う学科 | 知っておくべきこと |
|---|---|---|---|
| 特殊鋼・鋳造・金属加工 | 松江工業 / 出雲工業 | 機械科・電子機械科 | プロテリアルが最大のライバル。同じ学科を狙うことになるが、プロテリアルの採用枠に入れなかった生徒への推薦を先生に依頼するのが現実的な戦略 |
| 電子部品・精密機器 | 松江工業 / 情報科学 | 電子科・電気科・情報系 | 島根富士通・パナソニックインダストリーと競合。電子・電気系の生徒は数が限られるため、早い段階で先生との関係を作ることが鍵 |
| 機械加工・プレス・板金 | 出雲工業 / 江津工業 | 機械科 | 出雲エリアは製造業が県内で最も集積しており競合が多い。江津工業は石見西部唯一の工業校で、訪問企業が少ないため関係を築きやすい |
| 食品加工・水産加工 | 浜田水産 / 出雲農林 / 松江農林 | 食品流通科・食品科学科 | 工業高校ではなく農水系の高校が対象。訪問する製造業企業が少ない分、先生に覚えてもらいやすい |
| IT・ソフトウェア | 情報科学 / 松江工業 | 情報処理科・情報技術科 | Ruby City松江のIT企業44社と競合。高卒IT人材は供給が少ないため、学校との長期的な関係構築が必須 |
| 建設機械・設備保全 | 松江工業 / 益田翔陽 | 電気科・電子機械科 | 製造業と建設業の境界領域。益田翔陽は県西端だが多様な学科を持ち、機械・電気の人材を輩出 |
特殊鋼・鋳造・金属加工
訪問すべき学校:松江工業 / 出雲工業
狙う学科:機械科・電子機械科
プロテリアルが最大のライバル。同じ学科を狙うことになるが、プロテリアルの採用枠に入れなかった生徒への推薦を先生に依頼するのが現実的な戦略
電子部品・精密機器
訪問すべき学校:松江工業 / 情報科学
狙う学科:電子科・電気科・情報系
島根富士通・パナソニックインダストリーと競合。電子・電気系の生徒は数が限られるため、早い段階で先生との関係を作ることが鍵
機械加工・プレス・板金
訪問すべき学校:出雲工業 / 江津工業
狙う学科:機械科
出雲エリアは製造業が県内で最も集積しており競合が多い。江津工業は石見西部唯一の工業校で、訪問企業が少ないため関係を築きやすい
食品加工・水産加工
訪問すべき学校:浜田水産 / 出雲農林 / 松江農林
狙う学科:食品流通科・食品科学科
工業高校ではなく農水系の高校が対象。訪問する製造業企業が少ない分、先生に覚えてもらいやすい
IT・ソフトウェア
訪問すべき学校:情報科学 / 松江工業
狙う学科:情報処理科・情報技術科
Ruby City松江のIT企業44社と競合。高卒IT人材は供給が少ないため、学校との長期的な関係構築が必須
建設機械・設備保全
訪問すべき学校:松江工業 / 益田翔陽
狙う学科:電気科・電子機械科
製造業と建設業の境界領域。益田翔陽は県西端だが多様な学科を持ち、機械・電気の人材を輩出
穴場を狙う戦略
松江工業・出雲工業は大手が殺到する最激戦区です。中小製造業が現実的に狙えるのは、矢上高校(邑南町・産業技術科)のような中山間地域の小規模校や、普通科高校の就職希望者です。普通科の生徒でも製造業に興味を持つ子はいます。工業高校だけにこだわらず、視野を広げることが中小企業の勝ち筋です。
2. 工場見学が全てを変える——「見せる」が最強の採用活動
製造業の最大のハンデは「見えない」ことです。高校生は工場の中で何が行われているか知りません。先生ですら、あなたの工場の現場を見たことがないかもしれません。
だからこそ、製造業の採用で最も効果的なのは「工場見学」です。言葉で説明するよりも、実際の現場を見せる。CNCマシニングセンタが金属を削る精密さ、ロボット溶接の迫力、クリーンルームでの電子部品の組み立て——現代の製造現場は、高校生が想像する「3K(きつい・汚い・危険)」とは全く違います。
先生を工場に招待するのも極めて効果的です。先生が自分の目で現場を見れば、自信を持って生徒に「あの会社は良いぞ」と言えるようになります。
高校生向け工場見学のポイント
- •体験させる——見るだけでなく、簡単な作業を実際にやってもらう。ボルトを締める、検査器を使う、CADの画面に触れる。体験した記憶は見ただけの記憶より何倍も残る
- •若手社員をガイドにする——入社2〜3年目の先輩が案内役になると、高校生は「自分もこうなれる」とイメージしやすい
- •製品の「行き先」を見せる——「この部品は○○という製品に使われて、世界中で使われています」。自分の仕事が社会につながっている実感を持たせる
- •所要時間は2時間以内——長すぎると集中力が切れる。見学→体験→質問→昼食が理想的な流れ
先生向け技術見学会のポイント
- •年1〜2回、夏休み中に開催——先生が参加しやすい時期を選ぶ
- •社長が直接説明する——「うちの技術はこういうもので、高校で学んだことがこう活きます」と語る
- •教育体制を見せる——研修室、資格取得の掲示物、安全管理体制。先生は「生徒を預けても大丈夫か」を見ている
- •OB・OGに会わせる——「○○高校出身の△△さんが今こんな仕事をしています」。先生にとって教え子の成長は何より嬉しい報告
中山間地域の生徒には交通の配慮を
島根県の中山間地域には公共交通機関が限られる地域が多くあります。工場見学に来てくれる生徒がいたら、送迎バスの手配や交通費の補助を検討してください。「わざわざ迎えに来てくれた」という事実自体が、生徒と先生に誠意を伝えます。島根県のインターンシップ支援補助金(上限50万円)を活用すれば、こうした受入れ費用の一部を補助してもらえます。
3. 求人票で「ものづくり」の魅力を伝える
製造業の求人票は「製造オペレーター」「検査業務」といった抽象的な記載になりがちです。これでは高校生にも先生にも仕事の中身が伝わりません。
求人票と会社案内には、「この工場で何を作っていて、それがどこで使われているか」を書いてください。製品の写真、使用する機械の写真、先輩社員の写真。視覚で伝わる情報が、文字だけの求人票との差を生みます。
伝わらない書き方
- •「製造業務全般」
- •「機械オペレーター」
- •「検査・梱包」
- •「やりがいのある仕事です」
伝わる書き方
- •「CNCマシニングセンタで自動車部品を加工(入社半年で独り立ち)」
- •「鋳造工程の品質検査(入社1年でJIS溶接技術検定取得可)」
- •「半導体製造装置の組立(クリーンルーム勤務・空調完備)」
- •「当社が作った部品は○○に使われ、世界○カ国に出荷されています」
製造業の求人票に必ず書くべき項目
- •取得できる資格と会社負担——「フォークリフト・JIS溶接・危険物取扱者の取得費用を全額会社負担」。製造業の資格は生涯使える財産であり、先生も保護者も重視するポイント
- •入社後の教育体制——「最初の3か月は先輩社員がマンツーマンで指導」「半年間の研修プログラムあり」。いきなり現場に放り込まれるのではないことを示す
- •安全対策の具体的な取り組み——「月1回の安全パトロール実施」「労災ゼロ○○日達成中」。保護者が最も心配するのは「うちの子が怪我しないか」
- •先輩社員の実績——「高卒入社3年目で技能検定2級合格」「入社5年目で班長に昇進」。先生はこの情報を一番信頼する
- •通勤・生活情報——マイカー通勤可否、駐車場、社宅、冬場の通勤事情。島根県では必須
4. 大手と同じ学科を狙うときの現実的な戦い方
松江工業の機械科から採用したい。でもプロテリアルも同じ学科を狙っている。この状況で中小企業はどうするか。
まず理解すべきは、先生は「全員を大手に送りたい」わけではないということです。先生は一人ひとりの生徒の性格、適性、家庭環境を見ています。「この子は大人数の職場より少人数の方が力を発揮する」「この子は自宅から通える会社がいい」——そういう判断で、中小企業の方が合う生徒を推薦してくれるケースは珍しくありません。
あなたの仕事は、先生がそういう生徒を思い浮かべたときに「あの会社がある」と思い出してもらう存在になることです。
大手にはできないこと:社長が毎年来る
プロテリアルの社長は松江工業には来ません。人事部の担当者が来るだけです。中小企業は社長が直接学校に行ける。「社長さんが毎年来てくれる会社」——先生はそういう会社を信頼します。詳しくは中小企業の採用戦略で解説しています。
大手にはできないこと:即日内定
大手は採用の意思決定に本社稟議が必要です。中小企業は社長が面接に同席し、その場で内定を出せます。「あなたと一緒に働きたい」を誰よりも早く伝えられるのは中小企業だけです。9月16日の選考開始日に面接し、当日に内定を出す体制を整えてください。
大手にはできないこと:「転勤なし」の約束
プロテリアル安来製作所の親会社は東京、島根富士通の親会社は神奈川です。将来的に県外転勤の可能性があります。地元の中小企業は「この町でずっと働ける」と言い切れます。県内就職希望率83%の島根県で、「転勤なし」は大手には出せない強力なカードです。
5. 「島根のものづくり」で働く意味を伝える
島根県の製造業には、他県にはない固有の物語があります。この物語を採用活動に活かしてください。
古代出雲のたたら製鉄から続く鉄鋼技術、安来鋼(YSSヤスキハガネ)として世界に知られる特殊鋼、銑鉄鋳物生産量全国3位の鋳造技術——島根県は千年以上の「ものづくりの地」です。
高校生にとって「自分の地元にそんな歴史があったのか」という発見は、仕事への誇りにつながります。求人票に「創業○年」と書くだけでなく、「なぜこの場所でものを作り続けているのか」という文脈を伝えることで、工場の仕事に意味が生まれます。
自社と地域産業を結びつける例
- •鋳造業:「安来鋼のサプライチェーンの一翼を担い、たたら製鉄の技術を現代に受け継いでいます」
- •電子部品:「松江発のIT技術と製造技術を融合させ、世界に出荷される部品を作っています」
- •食品加工:「日本海の豊かな食材を、浜田の技術で全国に届けています」
- •機械加工:「出雲の製造業集積の中で、○○年この地で技術を磨き続けてきました」
よくある質問
Q. 工業高校以外から製造業に採用できますか?
A. 可能です。普通科高校の就職希望者や、農業系高校の食品科学科からも製造業に入る生徒はいます。特に中山間地域の普通科高校は就職希望者が一定数おり、訪問する製造業企業が少ないため、丁寧にアプローチすれば成果が出やすいポジションです。
Q. 製造業の「3K」イメージはどう払拭すればいいですか?
A. 言葉で説明するより工場見学に招くのが最も効果的です。現代の製造現場はCNC、ロボット溶接、クリーンルームなど高校生のイメージとは大きく異なります。先生と生徒の両方に実際の現場を見せてください。見学後に「イメージと違った」と言わせたら勝ちです。
Q. 採用ブランディングに使える補助金はありますか?
A. 島根県の「採用ブランディング支援補助金」(上限75万円・補助率1/2)が使えます。パンフレット、採用サイト、動画制作の費用が対象です。製造業は視覚的な訴求力(工場の映像、製品写真)が重要なので、この補助金でプロのクオリティの採用ツールを整備するのは非常に効果的です。詳しくは補助金ガイドを参照してください。
Q. 高卒で入社した社員にどんな資格を取らせるべきですか?
A. 分野によりますが、フォークリフト(製造業全般で必須)、JIS溶接技術検定(鋳造・金属加工)、危険物取扱者(化学系)、電気工事士(電子部品・設備保全)が代表的です。入社1年以内に1つ以上の資格を取得させ、その実績を翌年の学校訪問で先生に報告してください。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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採用コスト
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内定辞退率
ほぼ0%
一人一社(二社)制一人一社制(一人二社制)で確実採用
採用満足度
81.1%
大卒採用より+3.5pt大卒採用より+3.5pt
ゆめスタが解決します
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データ出典:
- 経済センサス-活動調査 島根県分(製造業従業者数)
- 島根労働局「高校新卒者の求人・求職・内定状況」(求人数)
- 島根県立地情報ポータル「しまねスタイル」 — 島根県公式



