カウンセラー・相談員という仕事
人の話を聴いて、一緒に考える人
「話を聴く」——それだけで仕事になるの?と思うかもしれない。でも、悩んでいる人にとって「ちゃんと聴いてくれる人がいる」ことは、それだけで救いになる。福祉の現場には、高卒から始められる「人の話を聴いて、一緒に考える」仕事がある。


この仕事って何?
カウンセラー・相談員は、生活に困っている人、障がいのある人、子ども、高齢者——さまざまな立場の人の相談に乗り、解決策を一緒に考える仕事です。「心理カウンセラー」のイメージが強いかもしれませんが、福祉の現場ではもっと幅広い「支援」の仕事があります。
「困った」に寄り添う仕事
生活保護の相談、障がい者の就労支援、子どもの居場所づくり、高齢者の介護相談——「困っている」と声を上げた人に寄り添い、使える制度や支援につなぐのが仕事です。
支援員・相談員・指導員——いろんな名前がある
生活支援員、相談支援専門員、児童指導員、就労支援員など、呼び名はさまざまですが、共通するのは「人の話を聴いて、一緒に考える」こと。福祉施設・行政・NPOなど、働く場所も多様です。
資格なしで始められるポジションがある
生活支援員や児童指導員は、高卒・無資格でも就ける場合があります。現場で経験を積みながら、社会福祉士などの国家資格を目指す道もあります。
こんな人に向いてる
この仕事は「話すのが得意な人」よりも「聴くのが得意な人」に向いています。こんなタイプの人はこの仕事で力を発揮できるかもしれません。
- 人の話を聴くのが苦にならない。むしろ聴きたいと思う。
- 友達から相談されることが多い
- 人の気持ちに敏感で、「あの人、今日元気ないな」と気づくタイプ
- 困っている人を見ると「なんとかしてあげたい」と思う
- 正解がない問題でも、一緒に考えることができる
- 自分の感情と向き合うことができる(感情に振り回されすぎない)
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高卒で、なれるの?
なれます。高卒で福祉施設の生活支援員や児童指導員として働き始めることができます。資格がなくても採用してくれる施設はたくさんあります。現場で経験を積みながら、社会福祉士の国家資格を目指すことも可能です。
厚生労働省の調査によると、医療・福祉業界の高卒初任給は196,900円です。福祉の相談職は、介護職と同じ医療・福祉業界に含まれます。社会福祉士の資格を取得すると資格手当がつくほか、相談支援専門員やケアマネジャーなど、より専門性の高い職種への道が開けます。
社会福祉士の資格は、実務経験ルートでも取得できます。高卒の場合、福祉施設で4年間の実務経験+一般養成施設(通信課程1年半〜2年)を経て国家試験に挑戦できます。働きながら取得を目指す人も多く、社会福祉振興・試験センターによると毎年約5万人が受験しています。
公務員として福祉の仕事に就く道もあります。市区町村の福祉課で社会福祉主事として生活保護のケースワーカーや児童相談所の相談員になるルートです。公務員試験は高卒区分でも受験でき、安定した雇用と福利厚生が魅力です。
196,900円
高卒初任給(医療・福祉)
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査
4年
実務経験で社会福祉士受験資格
社会福祉振興・試験センター
49.2%
医療・福祉 3年以内離職率
厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況
なるためのルート
高卒→福祉施設の生活支援員
障がい者支援施設やグループホームで、利用者の日常生活をサポート。無資格でもOK。食事・入浴の介助だけでなく、日々のコミュニケーションや活動のサポートが中心です。
高卒→児童指導員(児童福祉施設)
児童養護施設や放課後等デイサービスで、子どもたちの生活支援・学習支援を行います。高卒でも2年以上の実務経験があれば児童指導員として認められる場合があります。
実務経験→社会福祉士(通信課程で取得可能)
福祉施設で4年の実務経験を積んだ後、一般養成施設(通信課程あり)で学び、国家試験を受験。働きながらキャリアアップできる道です。合格率は約30%で、しっかり勉強が必要。
ある1日の流れ
障がい者支援施設で働く生活支援員の1日を紹介します。利用者さんの日常生活を支えながら、活動プログラムの企画や相談対応も行います。
出勤・申し送り
夜勤スタッフからの引き継ぎ。利用者さんの体調変化や夜間の出来事を共有します。
朝の活動サポート
利用者さんの朝食後の片付け、身支度のサポート。一人ひとりのペースに合わせて声かけします。
日中活動プログラム
作業活動(軽作業、創作活動など)のサポート。利用者さんが「できた」と感じられるよう見守ります。
昼食・食事介助
食事の配膳、必要な方の食事介助。食事中の様子を観察して記録します。
昼休み
交代で休憩。午後のプログラムの準備をすることも。
個別支援・面談
利用者さんとの個別面談。困っていることはないか、やりたいことはないか、じっくり話を聴きます。
レクリエーション
散歩、音楽、スポーツなどの余暇活動。利用者さんが楽しめる時間を一緒に過ごします。
記録・ケース会議
支援記録の入力。チームで利用者さんの支援方針について話し合います。
夕食準備・引き継ぎ
夕食の準備を手伝い、夜勤スタッフに申し送り。今日の出来事を共有して退勤。
退勤
入所施設の場合、夜勤シフトがある月もあります。通所施設なら日勤のみ。
※ 障がい者支援施設(入所型)の例です。通所施設や相談支援事業所では1日の流れが異なります。
身につくスキル
人の話を聴く仕事を通じて身につくスキルを紹介します。これらは福祉の世界だけでなく、あらゆる人間関係で活きる力です。
- 傾聴力——「ただ聴く」のではなく「受け止めながら聴く」技術。相手が安心して話せる場を作る力が身につきます
- 記録力・文章力——支援記録、ケース記録、報告書。人の状態を正確に言葉にする力が日々鍛えられます
- チームワーク——医師、看護師、ケアマネジャー、行政職員など多職種と連携する力。一人で抱え込まない働き方が身につきます
- 法制度の知識——障害者総合支援法、生活保護法、児童福祉法など。利用者さんが使える制度を知り、つなぐ力が身につきます
- 資格取得(社会福祉士・精神保健福祉士等)——実務経験を積みながら国家資格を目指せます。資格があれば活躍の場がさらに広がります
キャリアステップ
相談・支援の仕事は、現場経験を積みながら資格を取得し、段階的にキャリアを広げていけるのが特徴です。「人の話を聴く」スキルは年齢を重ねるほど深まり、経験がそのまま専門性になります。公務員、独立型社会福祉士、施設管理者——将来の選択肢は幅広いです。
生活支援員 / 児童指導員
利用者さんの日常生活を支えながら、福祉の基本を学びます。コミュニケーション力と観察力がこの時期に一番伸びます。
年収250〜300万円
リーダー / サービス管理責任者
後輩の指導、支援計画の作成、関係機関との調整を担当。チームの中心として動くようになります。
年収300〜370万円
相談員 / 相談支援専門員
利用者さんやご家族の相談窓口として、サービス利用計画の作成や関係機関との連絡調整を行います。より専門的な「聴く力」が求められます。
年収350〜420万円
社会福祉士(国家資格取得)
実務経験+養成施設での学びを経て国家試験に合格。福祉のプロフェッショナルとして認められ、活躍の場が大きく広がります。
年収370〜450万円
施設長 / 管理者 / 独立型社会福祉士
施設全体の運営・管理を担うポジション。または独立して相談事務所を開設する道も。福祉の政策に関わる仕事に進む人もいます。
年収450〜600万円
この仕事のリアル
医療・福祉の高卒3年以内離職率は49.2%——約2人に1人が3年以内に辞めている(厚生労働省 令和3年3月卒業者)
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」
感情労働の難しさは、この仕事の一番の壁です。利用者さんの悩みや苦しみに毎日触れるため、自分自身の心が疲れてしまうことがあります。「燃え尽き症候群(バーンアウト)」という言葉があるほど、感情のコントロールが求められる仕事です。
すぐに結果が見えない仕事でもあります。何か月も支援を続けても、状況が良くならないこともある。「自分がやっていることに意味があるのか」と悩む瞬間は、ベテランでも経験します。でも、長い目で見たときに「あのとき支えてくれたから今がある」と言ってもらえることがある。
制度や書類仕事も多いです。支援記録、個別支援計画、行政への報告書——「人と向き合う時間」だけでなく、デスクワークもかなりあります。法律や制度が変わるたびに勉強し直す必要もあります。
それでも多くの支援者が続けているのは、利用者さんの「変化」を見られる仕事だから。できなかったことができるようになる瞬間、暗かった表情に笑顔が戻る瞬間——その積み重ねが、この仕事を続ける力になっています。
福祉の職場を選ぶときのチェックポイント
新人研修やスーパービジョン(先輩からの指導・助言)の体制があるか
職員同士のコミュニケーションが良好か(見学時にスタッフの雰囲気をよく見る)
支援の方針が明確か(「利用者さん本位」を口だけでなく実践しているか)
メンタルケアの仕組みがあるか(定期的な面談、外部相談窓口など)
資格取得支援制度があるか(社会福祉士の養成施設の学費補助、勉強時間の確保など)
先輩たちの「やっててよかった」
福祉の相談・支援の仕事で感じるやりがいを紹介します。
利用者さんの笑顔。「あなたがいてくれて助かった」「あなたに相談してよかった」——その言葉が一番の報酬です。
人の人生の転機に立ち会える。「仕事が見つかった」「家族と和解できた」「一人暮らしができるようになった」——変化の瞬間を一緒に喜べる仕事。
「聴く力」はどこでも通用する。福祉で身につけたコミュニケーション力は、どんな仕事・どんな人間関係にも活きます。
全国どこでも需要がある。高齢化・福祉ニーズの増加で、この仕事がなくなることはありません。地元でも都市でも働けます。
この仕事がある業界
カウンセラー・相談員が活躍できる業界を見てみよう。
この記事のデータ出典
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」
社会福祉振興・試験センター「社会福祉士国家試験の概要」
厚生労働省「障害者総合支援法」


