求人倍率3.39倍でやっと採った子を辞めさせない
富山県の中小企業ができる定着の仕組み
求人倍率3.39倍の富山県で、やっと1人採った高卒社員が半年で辞めた。「思ったのと違った」と言われた。何が違ったのかを聞いても、はっきりとは答えてくれなかった。
この経験をした企業は、富山県では珍しくありません。就職率99.9%の富山県では高校生は全員就職できます。企業にとっては「採れなかった」だけでも痛手なのに、「採れたのに失った」は取り返しがつきません。
全国データでは高卒就職者の3年以内離職率は37.9%(厚生労働省・令和4年3月卒)。約4割が3年以内に辞めています。富山県単独の離職率データは公表されていませんが、富山県の産業構造——就職者の61%が製造業、3交代制の工場が多い、中小企業が大半——を考えると、この問題は富山県の企業にとって特に重い意味を持ちます。
この記事では、「なぜ辞めるのか」を富山県の現場から考え、「従業員40人の会社でも明日からできること」を具体的に解説します。
富山県の中小企業で、高卒社員が辞める理由
「ものづくり」のイメージと現場のギャップ
富山県は人口1万人当たり製造業従業者数が全国1位の「ものづくり県」です。工業高校から製造業に就職する生徒にとって「ものづくり」は前向きなイメージ。しかし現場で待っているのは:
- •3交代制のシフト勤務。高校まで朝起きて夜寝ていた18歳にとって、生活リズムの激変は想像以上のストレスです
- •医薬品工場のクリーンルーム。防塵服を着て同じ動作を8時間。「薬を作る」イメージと「無菌室での反復作業」のギャップ
- •機械加工の騒音・油のにおい・夏の暑さ。求人票の文字情報では伝わらない感覚的な環境
- •アルミ鋳造の高温作業。高岡エリアの金属加工では溶解炉の前で40度超の環境で働くこともある
面接で「交代勤務は大丈夫ですか?」と聞けば、18歳は「大丈夫です」と答えます。やったことがないのだから、本当の意味で想像できていない。これはミスマッチではなく「体験の不足」です。
同期がいない孤立
YKK・三協立山・不二越・日医工・北陸電力は1度に数十人を採用します。同期がいる。同じ年齢の仲間と愚痴を言い合える環境がある。
中小企業は1人か2人。入社初日から、周囲は全員年上です。「見て覚えろ」と言われても、何を見ればいいかわからない。わからないことを聞ける相手がいない。
富山県の中小製造業は平均年齢が高い傾向があり、10代と50代の間に20代・30代がほとんどいない「年齢層の断裂」が起きている会社も少なくありません。この環境で18歳が孤立しない方が不自然です。
SNSで見える「別の人生」
入社して数ヶ月。SNSを開くと、大学に進学した友人がサークルで楽しそうにしている。他の会社に就職した友人が「うちの会社、土日完全休みで」と投稿している。
自分は交代勤務で土曜も出勤。手取りは額面より3〜4万円少ない(税金・社会保険の天引きを知らなかった)。「本当にこれでよかったのか」という気持ちが膨らむのは自然なことです。
富山県特有:辞めても次がある安心感
県内就職率94.7%の富山県では、辞めた後も県内で次の就職先を見つけやすい環境があります。求人倍率3.39倍は「企業が人を選ぶ」のではなく「人が企業を選ぶ」市場です。
18歳にとって「ここを辞めても他がある」という感覚は、離職のハードルを下げます。これは富山県の企業がとくに意識すべき構造です。「うちの会社にいる理由」を本人に持ってもらわないと、次の求人票1枚で引き抜かれる。
いつ辞めるか — 危険なタイミングと見逃せないサイン
離職の多くは突然ではなく、予兆があります
GW明け(入社後1ヶ月)— 最も危険
4月に必死で頑張った反動と、GW中に高校時代の友人と会って「比較」してしまうこと。この2つが重なるGW明けが、最も離職リスクの高い時期です。
「辞めたい」の前に出る行動変化
- 1.朝の挨拶が小さくなる
- 2.休憩時間にひとりでスマホを見ている時間が増える
- 3.質問しても「特にないです」が増える
- 4.欠勤ではなく遅刻が増える(辞めたいが朝起きられなくなるのが先行サイン)
- 5.先輩や上司との雑談を避けるようになる
これらのサインが2つ以上見えたら、すぐに1対1で話す機会を作ってください。「何かあった?」ではなく、「最近、仕事で一番しんどいことは何?」と具体的に聞くことが重要です。
3ヶ月目 — 「成長していない」不安
試用期間が終わる頃。最初の緊張が解けて、逆に「自分は何もできるようになっていないのでは」という不安が芽生えます。医薬品工場の品質管理も、機械加工のNC旋盤も、3ヶ月で一人前になれる仕事ではありません。本人がそのことを理解していないと、「自分には向いていない」と結論づけてしまいます。
対応:3ヶ月時点で「入社時にはできなかったけど今できるようになったこと」を一緒にリストアップする。本人は気づいていなくても、必ず成長している部分がある。それを言語化して見せることです。
6ヶ月目 — 友達との比較が深刻になる
手取り14〜15万円の生活に慣れてきた頃、大学進学した友人はバイトで同じくらい稼いでいる。他社に就職した友人が「ボーナス出た」と投稿している。自分の夏のボーナスは寸志だった。
対応:半年間の昇給・賞与実績を見せたうえで、「3年後・5年後の年収モデル」を提示する。大卒が22歳でスタートするのに対し、高卒は18歳からキャリアを積んでいるという事実を、数字で見せることが効果的です。
1年目の終わり — マンネリか、次のステージか
仕事に慣れてきた。しかし「慣れた」は「飽きた」に変わりやすい。製造業のライン作業では、同じ工程を1年間繰り返した後のマンネリ感は深刻です。
対応:1年目の終わりに「次の担当」や「新しい工程」へのステップアップを用意する。あるいは後輩指導の役割を与える。「この会社で、来年は今年とは違うことができる」と思えるかどうかが、2年目を迎えられるかの分岐点です。
従業員40人の会社で、現実的にできること
大企業向けの教科書ではなく、富山県の中小企業の現実に合わせた対策
「メンター」がいないなら、社長がやる
「メンター制度を導入しましょう」は正論です。でも入社3年目がいない会社で、誰がメンターになるのか。
答え:社長がやる。
中小企業の最大の強みは、社長が社員の顔を全員知っていることです。YKKや三協立山では不可能な「社長が新入社員と週1回15分話す」が、中小企業ではできます。
- •月曜の朝、「週末何してた?」と声をかける
- •月1回、昼食を一緒に食べる
- •「困ったことがあったらいつでも言ってくれ」ではなく、「今月一番大変だったことは何?」と具体的に聞く
「困ったことがあったら言ってね」は機能しません。18歳が社長に「困ってます」とは言えない。聞き方を具体的にすることが全てです。
面談で使える問いかけ — 「大丈夫?」は聞いたことにならない
「困ってない?」「大丈夫?」と聞いても、18歳は「大丈夫です」としか答えません。以下の問いかけに変えてください。
答えやすい問いかけの例
- Q.「先週、仕事で一番楽しかったことは何?」
- Q.「今、一番わからないことって何?」
- Q.「家に帰ってから何してる?」(生活リズムの異変をキャッチ)
- Q.「この会社に入って、思ってたのと違ったことってある?」
- Q.「もしうちの会社を友達に紹介するとしたら、何て言う?」
最後の質問で出てくる言葉が「別に...」なら危険サイン。ポジティブな言葉が出れば定着の兆し。
4番目の質問をするときは、「違って当然だよ。自分もそうだった」と前置きしてください。「正直に答えていい」と思える空気がないと、本音は出てきません。
3交代のギャップを防ぐ — 入社前に体験させる
面接で「交代勤務は大丈夫ですか?」→「大丈夫です」。このやり取りは無意味です。やったことがないから「大丈夫」と言っている。
代わりにやること:内定後〜入社前の期間に、実際の交代勤務を1〜2日体験させる。夜勤の時間帯に来てもらい、実際の作業環境を見せる。医薬品工場ならクリーンルームの防塵服を着てみる。金属加工なら工場の騒音と油のにおいを体験する。そのうえで「それでもこの会社で働きたいか」を本人に判断させる。
この体験で辞退する生徒が出る可能性はあります。しかし、入社後3ヶ月で辞められるよりはるかにマシです。採用活動の1年分のコストが無駄になるのと、内定辞退1人分のコスト。どちらが重いかは明白です。
手取りのギャップを防ぐ — 初任給シミュレーション
基本給17万円。でも手取りは14万円台。この3万円の差に、初任給日に失望する高卒社員は少なくありません。
内定後の懇親会やオリエンテーションで:
- •給与明細の見方を教える(額面・控除・手取りの仕組み)
- •先輩社員の手取り推移を見せる(1年目→3年目→5年目)
- •「大卒は22歳スタート。あなたは18歳から4年分のキャリアを積める」という事実を伝える
「知らなかった」を「わかったうえで働く」に変える。それだけで、初任給日のショックは大幅に減ります。
保護者への「定着報告」— 辞める前のセーフティネット
高卒社員は18歳。「辞めたい」と最初に相談するのは、上司ではなく保護者です。富山県は共働き率58.3%(全国4位)。両親とも仕事をしている家庭が多い。帰宅が遅い日に子供から「辞めたい」と言われたとき、疲れた保護者が「あの会社のことは何も知らないからわからない」と言うか、「社長さんが手紙くれてたよね。一度話を聞いてみたら」と言うかは、企業と保護者の関係がどれだけ構築されているかで決まります。
- •入社1ヶ月後に保護者へ「お子様の様子」を手紙で報告する
- •3ヶ月後に「できるようになったこと」を具体的に伝える
- •富山県は地元の口コミが強い地域です。保護者が安心して周囲に「うちの子はいい会社に入った」と言える状態を作ることが、次年度の採用にも直結します
詳しくはオヤカク完全マニュアルで解説しています。
入社1年目 — 時期別の定着アクション
先手を打つためのチェックリスト
| 時期 | リスク | 本人の状態 | やるべきこと |
|---|---|---|---|
| 内定〜入社前 | 中 | 期待と不安。「本当にこの会社でいいのか」 | 月1回のニュースレター / 交代勤務の体験 / 給与明細の見方説明 / 先輩社員との座談会 |
| 入社〜2週間 | 高 | 環境激変。「居場所がない」 | 歓迎ランチ / メンター(社長)初回面談 / 毎日の声かけ / 2週間のスケジュールを事前に提示 |
| 1ヶ月(GW明け) | 最高 | 五月病。「やっぱり合わないかも」 | 週1回の1対1対話 / 保護者への状況報告 / GW明け翌日の特別フォロー / 小さな成功の承認 |
| 3ヶ月 | 高 | 「成長していない」不安 | 成長の棚卸し(入社時→今の比較) / 次の3ヶ月の目標設定 / 本採用決定の面談 |
| 6ヶ月 | 中 | 友達との比較。「あっちの方がよさそう」 | 昇給・賞与実績の提示 / 3年後の年収モデル提示 / 資格取得の提案 |
| 1年 | 中 | マンネリ。「このままでいいのか」 | 新しい工程・担当へのステップアップ / 後輩指導役 / 1年間の成果発表の機会 |
期待と不安。「本当にこの会社でいいのか」
- •月1回のニュースレター
- •交代勤務の体験
- •給与明細の見方説明
- •先輩社員との座談会
環境激変。「居場所がない」
- •歓迎ランチ
- •メンター(社長)初回面談
- •毎日の声かけ
- •2週間のスケジュールを事前に提示
五月病。「やっぱり合わないかも」
- •週1回の1対1対話
- •保護者への状況報告
- •GW明け翌日の特別フォロー
- •小さな成功の承認
「成長していない」不安
- •成長の棚卸し(入社時→今の比較)
- •次の3ヶ月の目標設定
- •本採用決定の面談
友達との比較。「あっちの方がよさそう」
- •昇給・賞与実績の提示
- •3年後の年収モデル提示
- •資格取得の提案
マンネリ。「このままでいいのか」
- •新しい工程・担当へのステップアップ
- •後輩指導役
- •1年間の成果発表の機会
富山県で活用できる定着支援
ヤングジョブとやま(富山県若者就業支援センター)
44歳までの若者対象。キャリア相談・セミナー・業界研究会をワンストップ提供。企業向けの若手定着相談にも対応。富山市湊入船町「とやま自遊館」2F。
ヤングジョブとやま 公式サイト就活ラインとやま(富山県公式就活プラットフォーム)
企業1,404社・求人1,430件掲載。企業見学バスツアー・就活祭等のイベントも実施。企業の認知度向上と若手との接点づくりに活用できます。
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Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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