富山県の高校に「また来てほしい」と言われる学校訪問
工業高校5校・商業高校2校の攻め方
富山県の高卒求人倍率は3.39倍(過去最高)。就職者数は1,422人(うち工業科665人)。県内就職率94.7%(全国2位)。高校生はほぼ全員が就職でき、ほぼ全員が県内に残ります。
高卒採用において、進路指導の先生は生徒と企業を結ぶ「ゲートキーパー」です。高卒就職者の約80%が、先生からの紹介や学校に届いた求人票の中から応募先を決定しています。先生に自社を知ってもらわない限り、高校生が応募することはありません。
この記事では、富山県の実情に合わせた学校訪問の手順を解説します。
なぜ「学校訪問」が高卒採用の成否を分けるのか
大卒採用と高卒採用の決定的な違いは、「学校(先生)」の介在度合いにあります。大学生がスマートフォンで自由に企業を探すのに対し、高校生の就職活動は学校の指導下で行われます。
富山県はYKK・三協立山・不二越・北陸電力など大手企業が集積する「ものづくり県」です。大手企業との人材獲得競争が激しいエリアで、中小企業が学校訪問なしに高卒人材を確保するのは、ほぼ不可能です。
富山県の一人一社制(最新ルール)
富山県では9月5日の応募開始から10月31日まで「一人一社制」が適用されます。11月1日以降は一人三社まで応募可能に切り替わります(富山県高等学校就職問題連絡協議会の申し合わせによる)。一次募集で採りきれなかった場合でも、11月以降の複数応募制を活用した追加募集にチャンスがあります。
学校訪問の年間スケジュール
7月に行けばいいというものではありません。年間を通じた計画的なアプローチが鍵です
| 時期 | 目的 | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| 4月〜5月 | 関係構築・情報収集 | 新年度の挨拶訪問。進路指導主事の異動確認。前年度採用した卒業生の活躍報告 |
| 6月 | 求人票準備 | ハローワークへの求人申込み。訪問先リストの作成と優先順位付け |
| 7月(最重要) | 求人公開・学校訪問解禁 | 7月1日に求人公開と同時に訪問解禁。最初の1週間で優先校を訪問。求人票・会社案内・OBリストを持参 |
| 8月 | 職場見学受け入れ | 夏休み中の職場見学・インターンシップの実施 |
| 9月 | 選考開始 | 9月5日以降に応募書類受付。9月16日以降に選考開始 |
| 10月 | 内定・二次募集準備 | 一次選考の結果通知。充足できなかった場合は二次募集の準備 |
| 11月〜 | 複数応募制・追加募集 | 11月1日から一人三社まで応募可能に移行。追加訪問で二次募集の案内 |
| 1月〜3月 | 次年度準備 | 内定者フォロー。入社前研修の案内。次年度に向けた先生への報告・感謝 |
新年度の挨拶訪問。進路指導主事の異動確認。前年度採用した卒業生の活躍報告
ハローワークへの求人申込み。訪問先リストの作成と優先順位付け
7月1日に求人公開と同時に訪問解禁。最初の1週間で優先校を訪問。求人票・会社案内・OBリストを持参
夏休み中の職場見学・インターンシップの実施
9月5日以降に応募書類受付。9月16日以降に選考開始
一次選考の結果通知。充足できなかった場合は二次募集の準備
11月1日から一人三社まで応募可能に移行。追加訪問で二次募集の案内
内定者フォロー。入社前研修の案内。次年度に向けた先生への報告・感謝
7月1日の重要性
富山県では7月1日に求人公開と学校訪問が同時に解禁されます。工業高校には解禁直後から多くの企業が殺到するため、最初の1週間以内に訪問することが重要です。事前にアポイントを取り、解禁日当日〜翌週に訪問できるよう準備しましょう。
訪問先の選定 — どの高校に行くべきか
自社の業種に合った高校を戦略的に選定する
| 学校名 | 所在地 | 主な学科 | 訪問のポイント |
|---|---|---|---|
| 富山工業高校 | 富山市 | 機械・電子機械・電気・建築・土木 | 県内最大。建設系2学科を併設する唯一の工業校。大手との競合必至で早期訪問が必須 |
| 高岡工芸高校 | 高岡市 | 機械・電気・建築・土木環境・デザイン絵画 | 県西部の建設・製造業人材の中核。伝統工芸×ものづくりの独自カラー |
| 魚津工業高校 | 魚津市 | 機械・電気・情報環境 | 新川エリアの製造業就職の中核。YKKグループとの競合に注意 |
| 砺波工業高校 | 砺波市 | 機械・電気・電子 | 県西部の中小製造業が主な就職先。地元志向が特に強い |
| 不二越工業高校(私立) | 富山市 | 機械・電子機械 | 不二越グループとの連携が強い。グループ外企業も訪問の価値あり |
| 富山商業高校 | 富山市 | 流通経済・国際経済・会計・情報処理 | 事務・金融・IT就職に強い。小売・サービス業はここが最優先 |
| 高岡商業高校 | 高岡市 | 流通経済・国際経済・情報処理 | 県西部の商業人材供給源 |
| 氷見高校 | 氷見市 | 水産科・農業科・商業科 | 水産科は県内唯一。水産加工業はこの高校以外に選択肢がない |
機械・電子機械・電気・建築・土木
県内最大。建設系2学科を併設する唯一の工業校。大手との競合必至で早期訪問が必須
機械・電気・建築・土木環境・デザイン絵画
県西部の建設・製造業人材の中核。伝統工芸×ものづくりの独自カラー
機械・電気・情報環境
新川エリアの製造業就職の中核。YKKグループとの競合に注意
機械・電気・電子
県西部の中小製造業が主な就職先。地元志向が特に強い
機械・電子機械
不二越グループとの連携が強い。グループ外企業も訪問の価値あり
流通経済・国際経済・会計・情報処理
事務・金融・IT就職に強い。小売・サービス業はここが最優先
流通経済・国際経済・情報処理
県西部の商業人材供給源
水産科・農業科・商業科
水産科は県内唯一。水産加工業はこの高校以外に選択肢がない
訪問先選定のコツ
自社の事業所から通勤圏内(車で30分以内)の高校をリストアップし、過去に採用実績のある高校を最優先で訪問しましょう。次に、同業他社が採用している高校、そして新規開拓校の順に訪問計画を立てます。普通科高校にも就職希望者は一定数いるため、接客・サービス業は視野に入れてください。
訪問時の持ち物チェックリスト
必須持参物
- •求人票のコピー — ハローワークで受理済みのもの。余分に数部用意
- •会社案内パンフレット — 写真が多く、職場の雰囲気が伝わるもの
- •名刺 — 先生用・受付用を含め多めに(10枚以上)
- •OB・OGリスト — その高校の卒業生の在籍状況・活躍ぶりをまとめた資料
- •職場見学会の案内チラシ — 日程・内容・申込方法を記載
あると差がつく準備物
- •若手社員の紹介シート — 入社1〜3年目の写真付きインタビュー
- •研修カリキュラム資料 — 入社後の教育体制を示す資料
- •資格取得支援制度の一覧 — 取得可能な資格と支援内容
- •先輩社員の動画QRコード — 職場紹介動画へのリンク
- •訪問記録ノート — 前回の訪問内容・先生の名前・話題をメモ
富山県ならではの注意点
富山県は県内就職率94.7%と全国2位の地元志向です。先生方は「地元で長く安定して働けるか」を非常に重視します。転勤の有無、マイカー通勤の可否、寮や社宅の有無など、「通いやすさ」「住みやすさ」に関する情報は必ず資料に盛り込みましょう。
先生に信頼される7つのコミュニケーション
事前アポイントを徹底する
電話は授業時間を避け、放課後(16:00〜17:00頃)にかけるのがマナーです。「高卒採用の件で進路指導のご担当の先生はいらっしゃいますか」と丁寧に。工業高校には求人が殺到するため、アポなし訪問は門前払いされることもあります。
OB・OGの活躍報告から始める
過去に採用実績がある場合は「○○さんが3年目でリーダーに昇格しました」など卒業生の近況を報告することから始めます。先生にとって教え子の活躍は何よりの喜びであり、最強の信頼構築ツールです。
「生徒のメリット」を中心に話す
「人手不足で困っている」ではなく、「当社なら生徒さんにこんな技術を身につけさせられます」「資格取得を全面支援します」と、生徒目線のメリットを伝えましょう。先生は常に「生徒の幸せ」を第一に考えています。
具体的な数字で労働条件を伝える
「残業は月平均○時間」「年間休日120日」「初任給○万円」など、数字で明確に伝えます。保護者が気にする福利厚生(社会保険・退職金・寮の有無)も具体的に。
先生の話をよく聞く
「今年は女子の就職希望者が多い」「機械科の生徒は地元志向が強い」といったヒントを聞き逃さないようにしましょう。一方的な売り込みではなく、対話を心がけることが信頼につながります。
職場見学に先生を招待する
生徒向けの見学会だけでなく、先生を企業見学に招待するのも効果的です。実際に現場を見てもらうことで、先生自身の言葉で生徒に自社を勧めてもらえるようになります。
訪問後24時間以内に御礼を送る
訪問したその日のうちに御礼のメールまたは手紙を送ります。「本日お聞きした○○の件、社内で対応を検討します」など、会話の内容を盛り込むと印象に残ります。
やってはいけないNG行動
- •アポなし突撃訪問 — 先生の時間を奪う行為は信頼を一瞬で失います
- •「誰かいい子いませんか」 — 求める人物像を明確にしましょう
- •求人条件を即答できない — 給与・休日・勤務時間は暗記しておくこと
- •採用した生徒が辞めても連絡しない — 報告と改善策を伝えないと二度と紹介されません
- •求人時期だけの年1回訪問 — 年間を通じた関係構築が重要です
よくある質問
Q. 富山県の高卒採用で学校訪問はいつから始めるべきですか?
A. 4月の新年度開始直後から関係構築を始めるのが理想です。進路指導主事が異動で交代している場合があるため、4月〜5月に挨拶訪問を行い、7月1日の求人公開・学校訪問解禁日に合わせて本格的な訪問を開始しましょう。
Q. 富山県の一人一社制はいつまでですか?
A. 富山県では9月5日の応募開始から10月31日まで一人一社制です。11月1日以降は一人三社まで応募可能に切り替わります(富山県高等学校就職問題連絡協議会の申し合わせ)。一次募集で充足できなかった場合は、11月以降の複数応募制を活用した追加募集も検討しましょう。
Q. 工業高校と商業高校、どちらを優先的に訪問すべきですか?
A. 自社の業種によります。製造業・建設業・技術職であれば工業高校(富山工業、高岡工芸、魚津工業、砺波工業)を優先。事務職・販売職・サービス業であれば商業高校(富山商業、高岡商業)。普通科高校にも就職希望者は一定数います。
Q. 学校訪問でアポイントは必須ですか?
A. はい、必須です。富山県は求人倍率3.39倍と高水準で、工業高校には求人が殺到します。電話は授業時間を避け、放課後(16:00〜17:00頃)にかけるのがマナーです。
Q. 中小企業が学校訪問で差別化するには?
A. OB・OGの活躍報告が最も効果的です。卒業生が自社でどう成長しているかを写真付きで報告することで、先生は安心して推薦できます。社長が直接訪問する、職場見学会に先生を招待する、も大手にはできない中小企業の武器です。
学校訪問は「営業」ではなく「パートナーシップ」
求人倍率3.39倍、県内就職率94.7%という富山県の市場で、学校訪問は単なる人材獲得手段ではありません。地域社会と共に若者を育てるというパートナーシップの表明です。
- •先生は「生徒の幸せ」を第一に考えていることを理解する
- •年間を通じた計画的な訪問で、「求人時期だけの企業」から脱却する
- •OB・OGの活躍報告こそが、大手に勝る最大の武器
- •訪問後のフォローで、来年・再来年につながる信頼関係を築く
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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