高卒で採った社員を辞めさせない
佐賀県の中小企業が「離職=福岡流出」を止める仕組み
求人倍率2.37倍の佐賀県で、苦労してやっと1人採った高卒社員が半年で辞めた。「思っていた仕事と違いました」と言われた。何が違ったのかを聞いても、はっきりとは答えてくれなかった。
これは佐賀県では珍しい話ではありません。そして、佐賀県の中小企業にとって本当の痛みは離職そのものではなく、辞めた1人がそのまま福岡に転職してしまうことです。
全国データでは高卒就職者の3年以内離職率は37.9%(厚生労働省・令和4年3月卒)。約4割が3年以内に辞めています。佐賀県単独の離職率は公表されていませんが、産業構造と地理的環境を考えると、佐賀の中小企業の「辞められる痛み」は他県以上に重い意味を持ちます。
この記事では、佐賀県固有の「離職=福岡流出」という構造を踏まえ、「従業員40人の会社でも明日からできること」を具体的に解説します。
佐賀県の離職は「次の選択肢が福岡」だから止まらない
離職した若者の「次の選択肢」が福岡に集中している
全国どこの地方でも、若者の都市部流出は問題です。しかし佐賀県の難しさは、その「都市部」が新幹線で約12分のところにある点です。
鳥栖市から新鳥栖駅経由の九州新幹線で博多まで約12分。鳥栖駅からでもJR鹿児島本線快速で博多まで約30分。引っ越し不要、家賃も生活費も変えずに、就職先だけ福岡に変えられます。離職した若者が「次は福岡で探そう」と考えるとき、それは「東京に出る」ような大きな決断ではなく、通勤手段を変える程度の判断です。
つまり、佐賀県の中小企業で起きる離職は、ほぼそのまま佐賀県全体からの人材流出につながります。採用コストの損失だけでなく、「あの人材を福岡に渡してしまった」というロスが上乗せされるのが、佐賀の離職の本当の痛みです。
佐賀の産業構造と離職率の壁
佐賀県の高卒求人の構造を産業別に見ると、製造業1,398人(31.7%)、建設業973人(22.0%)、医療・福祉634人(14.4%)、卸売・小売448人(10.2%)、サービス207人(4.7%)、宿泊・飲食175人(4.0%)。厚労省の全国産業別3年以内離職率(令和4年3月卒)と重ねると、佐賀の高卒採用が直面する離職リスクの構造が見えます。
| 産業 | 3年以内離職率(全国) | 佐賀県内の主な就職先 |
|---|---|---|
| 宿泊業・飲食サービス | 64.7% | 武雄温泉・嬉野温泉の旅館、飲食チェーン |
| 生活関連サービス・娯楽 | 57.0% | 美容・理容、レジャー施設 |
| 小売業 | 48.3% | ダイレックス、スーパーモリナガ、地元商店 |
| 建設業 | 42.4% | 松尾建設、中野建設、佐電工、地場ゼネコン |
| 医療・福祉 | 38.8% | 病院、介護施設、デイサービス、訪問介護 |
| 製造業 | 27.6% | SUMCO、トヨタ紡織九州、小糸九州、有田焼窯元等 |
| 全産業平均 | 37.9% | — |
佐賀の主な就職先
武雄温泉・嬉野温泉の旅館、飲食チェーン
佐賀の主な就職先
美容・理容、レジャー施設
佐賀の主な就職先
ダイレックス、スーパーモリナガ、地元商店
佐賀の主な就職先
松尾建設、中野建設、佐電工、地場ゼネコン
佐賀の主な就職先
病院、介護施設、デイサービス、訪問介護
佐賀の主な就職先
SUMCO、トヨタ紡織九州、小糸九州、有田焼窯元等
佐賀の主な就職先
—
製造業の離職率27.6%は他業種より低く、佐賀の最大セクター(求人31.7%)を支える数字でもあります。一方で武雄・嬉野温泉地域の宿泊業(離職率64.7%)、ダイレックス等の小売業(48.3%)、松尾建設等が活躍する建設業(42.4%)は、業種特性として離職リスクが高い領域です。「業種としての離職率」を踏まえずに採用を続けると、構造的に毎年同じ離職が再生産されます。
いつ辞めるか — 危険なタイミングと佐賀特有のサイン
離職の多くは突然ではなく、長期休暇前後にサインが出ます
GW明け(入社後1ヶ月)— 最も危険
4月に必死で頑張った反動と、GW中に高校時代の同級生と会って「比較」してしまうこと。この2つが重なるGW明けが、最も離職リスクの高い時期です。
佐賀の特殊事情として、GWに福岡で働く同級生と会う高校生は珍しくありません。彼らから「うちの会社、土日完全休みで」「博多でランチ食べ放題」「同期が20人いて楽しい」と言われた直後の出社で、心が揺らがない方が不自然です。
「辞めたい」の前に出る行動変化
- 1.朝の挨拶が小さくなる
- 2.休憩時間にひとりでスマホを見ている時間が増える
- 3.質問しても「特にないです」が増える
- 4.欠勤ではなく遅刻が増える(辞めたいが朝起きられなくなるのが先行サイン)
- 5.先輩や上司との雑談を避けるようになる
これらのサインが2つ以上見えたら、すぐに1対1で話す機会を作ってください。「何かあった?」ではなく、「最近、仕事で一番しんどいことは何?」と具体的に聞くことが重要です。
夏のお盆明け — 佐賀特有の第2危険期
GW明けに何とか乗り切っても、夏のお盆休みでまた福岡の同級生と会います。「夏のボーナス出た?」「うちの会社、夏季休暇1週間あった」という会話で、もう一度心が揺らぎます。
対応:お盆休み前に「夏のボーナス額」「秋以降の業務予定」「資格取得の計画」を本人に伝えておく。お盆明けの初日には必ず1on1の機会を持ち、長期休暇中の様子(誰と会ったか、福岡に行ったか)を雑談ベースで聞いてください。
3ヶ月目 — 「成長していない」不安
試用期間が終わる頃。最初の緊張が解けて、逆に「自分は何もできるようになっていないのでは」という不安が芽生えます。特に製造業では、3ヶ月で一人前になれる仕事はほぼありません。本人がそのことを理解していないと、「自分には向いていない」と結論づけてしまいます。
対応:3ヶ月時点で「入社時にはできなかったけど今できるようになったこと」を一緒にリストアップする。本人は気づいていなくても、必ず成長している部分がある。それを言語化して見せることです。
6ヶ月目 — 友達との比較が深刻になる
手取り14〜15万円の生活に慣れてきた頃、大学進学した友人はバイトで同じくらい稼いでいる。福岡の会社に就職した友人が「ボーナス出た」と投稿している。自分の夏のボーナスは寸志だった。
対応:半年間の昇給・賞与実績を見せたうえで、「3年後・5年後の年収モデル」を提示する。大卒が22歳でスタートするのに対し、高卒は18歳からキャリアを積んでいるという事実を、数字で見せることが効果的です。
1年目の終わり — マンネリか、次のステージか
仕事に慣れてきた。しかし「慣れた」は「飽きた」に変わりやすい。特に製造業のライン作業では、同じ工程を1年間繰り返した後のマンネリ感は深刻です。
対応:1年目の終わりに「次の担当」や「新しい工程」へのステップアップを用意する。あるいは後輩指導の役割を与える。「この会社で、来年は今年とは違うことができる」と思えるかどうかが、2年目を迎えられるかの分岐点です。
従業員40人の会社で、現実的にできること
大企業向けの教科書ではなく、佐賀県の中小企業の現実に合わせた対策
「メンター」がいないなら、社長がやる
「メンター制度を導入しましょう」は正論です。でも入社3年目がいない会社で、誰がメンターになるのか。
答え:社長がやる。
中小企業の最大の構造的優位は、社長が社員の顔を全員知っていることです。大手企業では不可能な「社長が新入社員と週1回15分話す」が、佐賀の中小企業ではできます。SUMCOや久光製薬の新入社員は社長と話す機会がほぼありませんが、従業員40人の会社では当たり前にできる行動です。
- •月曜の朝、「週末何してた?」と声をかける
- •月1回、昼食を一緒に食べる
- •「困ったことがあったらいつでも言ってくれ」ではなく、「今月一番大変だったことは何?」と具体的に聞く
「困ったことがあったら言ってね」は機能しません。18歳が社長に「困ってます」とは言えない。聞き方を具体的にすることが全てです。
面談で使える問いかけ — 「大丈夫?」は聞いたことにならない
「困ってない?」「大丈夫?」と聞いても、18歳は「大丈夫です」としか答えません。以下の問いかけに変えてください。
答えやすい問いかけの例
- Q.「先週、仕事で一番楽しかったことは何?」
- Q.「今、一番わからないことって何?」
- Q.「家に帰ってから何してる?」(生活リズムの異変をキャッチ)
- Q.「この会社に入って、思ってたのと違ったことってある?」
- Q.「GW(お盆)、福岡で働いてる同級生に会った?」
最後の質問は佐賀特有の重要設問。会っていれば「何の話したの?」まで踏み込んで聞ける関係性を作る。
「思ってたのと違ったことある?」を聞くときは、「違って当然だよ。自分もそうだった」と前置きしてください。「正直に答えていい」と思える空気がないと、本音は出てきません。
入社前のリアル体験で「思ってたのと違う」を防ぐ
離職理由の上位「思ってたのと違った」を入社前に潰しておきます。応募前職場見学やインターンシップで、実際の作業環境・休憩時間・先輩との交流を見せる。「ここはきれいです」だけでなく「ここは暑いです」「夏場の繁忙期はこれくらい忙しいです」も正直に伝える。
この体験で辞退する生徒が出る可能性はあります。しかし、入社後3ヶ月で辞められて福岡に転職されるよりはるかにマシです。採用活動の1年分のコストが無駄になるのと、内定辞退1人分のコスト。どちらが重いかは明白です。
手取りのギャップを防ぐ — 初任給シミュレーション
基本給17万円。でも手取りは14万円台。この3万円の差に、初任給日に失望する高卒社員は少なくありません。
内定後の懇親会やオリエンテーションで:
- •給与明細の見方を教える(額面・控除・手取りの仕組み)
- •先輩社員の手取り推移を見せる(1年目→3年目→5年目)
- •「大卒は22歳スタート。あなたは18歳から4年分のキャリアを積める」という事実を伝える
- •福岡で働く場合の家賃差額(佐賀との生活コストの違い)を見せる
「知らなかった」を「わかったうえで働く」に変える。それだけで、初任給日のショックは大幅に減ります。
保護者への「定着報告」— 辞める前のセーフティネット
高卒社員は18歳。「辞めたい」と最初に相談するのは、上司ではなく保護者です。そのとき保護者が「もう少し頑張ってみたら」と言えるか、「うちの子は福岡で就職してれば良かった」と言うかは、企業と保護者の関係がどれだけ構築されているかで決まります。
- •入社1ヶ月後に保護者へ「お子様の様子」を手紙で報告する
- •3ヶ月後に「できるようになったこと」を具体的に伝える
- •佐賀の中小企業は地元の口コミが強い。保護者が「うちの子はいい会社に入った」と地域に言える状態を作ることが、翌年の応募数にも直結する
詳しくはオヤカク完全マニュアルで解説しています。
入社1年目 — 時期別の定着アクション
先手を打つためのチェックリスト(佐賀特有:GW + お盆の二重チェック)
| 時期 | リスク | 本人の状態 | やるべきこと |
|---|---|---|---|
| 内定〜入社前 | 中 | 期待と不安。「本当にこの会社でいいのか」 | 月1回のニュースレター / 入社前職場体験 / 給与明細の見方説明 / 先輩社員との座談会 |
| 入社〜2週間 | 高 | 環境激変。「居場所がない」 | 歓迎ランチ / メンター(社長)初回面談 / 毎日の声かけ / 2週間のスケジュールを事前に提示 |
| 1ヶ月(GW明け) | 最高 | 五月病+福岡の同級生比較 | 週1回の1対1対話 / 保護者への状況報告 / GW明け翌日の特別フォロー / 小さな成功の承認 |
| 3ヶ月 | 高 | 「成長していない」不安 | 成長の棚卸し(入社時→今の比較) / 次の3ヶ月の目標設定 / 本採用決定の面談 |
| 5ヶ月(お盆明け) | 高 | 夏の福岡同級生比較・ボーナス額の落差 | 夏のボーナス前後の面談 / 秋以降の業務予定共有 / お盆明け初日の声かけ |
| 6ヶ月 | 中 | 友達との比較。「あっちの方がよさそう」 | 昇給・賞与実績の提示 / 3年後の年収モデル提示 / 資格取得の提案 |
| 1年 | 中 | マンネリ。「このままでいいのか」 | 新しい工程・担当へのステップアップ / 後輩指導役 / 1年間の成果発表の機会 |
期待と不安。「本当にこの会社でいいのか」
- •月1回のニュースレター
- •入社前職場体験
- •給与明細の見方説明
- •先輩社員との座談会
環境激変。「居場所がない」
- •歓迎ランチ
- •メンター(社長)初回面談
- •毎日の声かけ
- •2週間のスケジュールを事前に提示
五月病+福岡の同級生比較
- •週1回の1対1対話
- •保護者への状況報告
- •GW明け翌日の特別フォロー
- •小さな成功の承認
「成長していない」不安
- •成長の棚卸し(入社時→今の比較)
- •次の3ヶ月の目標設定
- •本採用決定の面談
夏の福岡同級生比較・ボーナス額の落差
- •夏のボーナス前後の面談
- •秋以降の業務予定共有
- •お盆明け初日の声かけ
友達との比較。「あっちの方がよさそう」
- •昇給・賞与実績の提示
- •3年後の年収モデル提示
- •資格取得の提案
マンネリ。「このままでいいのか」
- •新しい工程・担当へのステップアップ
- •後輩指導役
- •1年間の成果発表の機会
佐賀県で活用できる定着支援
ユースエール認定
若者の採用・育成に積極的で雇用管理状況が優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度。離職率の低さの社外証明として、翌年以降の採用ブランディングに使える。
補助金・助成金の詳細は佐賀県の採用支援・補助金ガイドをご覧ください。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
For Companies
佐賀県採用でお悩みではありませんか?
採用に毎年400万円以上…
本当に回収できてる?
3人に2人が内定辞退。
また振り出しに…
求人票を出しても
応募が来ない…
採用しても3年で辞める…
育成コストが無駄に
採用活動に手が回らない…
何から始めれば?


佐賀でゆめスタが解決します
採用コスト
50%削減
607万円 → 300万円607万円 → 300万円
内定辞退率
ほぼ0%
一人一社(二社)制一人一社制(一人二社制)で確実採用
採用満足度
81.1%
大卒採用より+3.5pt大卒採用より+3.5pt
ゆめスタが解決します
高校生採用に特化した3つのサービスで、採用課題をトータルサポート



