佐賀県の高卒早期離職防止・定着率向上戦略
離職→福岡流出を防ぐ5つの施策と入社1年目の重点フォロー
高卒就職者の3年以内離職率は37.9%(厚生労働省、令和4年3月卒データ)。せっかくコストをかけて採用した高卒人材が3年以内に約4割離職する現実は、佐賀県の企業にとって深刻な経営課題です。
佐賀県では離職の影響が他県以上に深刻です。博多まで新幹線12分という距離にある福岡都市圏は、離職した若者の受け皿として強力な吸引力を持ちます。福岡は九州最大の求人数を誇り、佐賀県内で離職した若者が「せっかくなら福岡で」と流出してしまうケースが後を絶ちません。求人倍率2.37倍の売り手市場で採用に苦労して獲得した人材を、福岡に渡してしまうのは二重の損失です。
目次
1. 高卒就職者の離職率 -- 現状データを正しく把握する
厚生労働省が公表した「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒)によると、高卒就職者の3年以内離職率は37.9%です。産業別に見ると、宿泊業・飲食サービス業が64.7%と突出して高く、生活関連サービス・娯楽業が57.0%と続きます。
| 産業 | 離職率 | 佐賀県での関連 |
|---|---|---|
| 宿泊業・飲食サービス業 | 64.7% | 嬉野温泉・武雄温泉の旅館、飲食チェーン |
| 生活関連サービス・娯楽業 | 57.0% | 美容室、フィットネス、レジャー施設 |
| 小売業 | 48.3% | ダイレックス等の小売チェーン、地元商店 |
| 建設業 | 42.4% | 松尾建設等、県内建設業(求人22.0%) |
| 医療・福祉 | 38.8% | 県内福祉施設(求人14.4%) |
| 製造業 | 27.6% | SUMCO・トヨタ紡織九州等(求人31.7%) |
| 全産業平均 | 37.9% |
注目:佐賀県の産業構造と離職リスク
佐賀県の高卒求人は製造業(31.7%)と建設業(22.0%)で過半数を占めます。製造業は離職率27.6%と比較的低い一方、建設業は42.4%と全産業平均を上回ります。また、宿泊・飲食サービス業(4.0%)は求人割合こそ小さいものの、離職率64.7%と突出して高く、嬉野・武雄エリアの温泉旅館業は特に注意が必要です。
2. 佐賀県特有の課題 -- 離職→福岡流出の構造
佐賀県の離職問題が他県と大きく異なるのは、離職した若者の「次の選択肢」が福岡都市圏に集中している点です。博多まで新幹線12分、車で40分。離職後に佐賀県内で再就職先を探すよりも、福岡に目を向ける方が自然な環境です。
「離職=福岡流出」のメカニズム
入社後に「思っていた仕事と違う」「人間関係がつらい」と感じる
佐賀県内の転職先を探すが、中小企業が多く選択肢が限られる
「どうせ転職するなら福岡の方が求人も多いし給料も高い」と考える
福岡で再就職し、佐賀から人材が流出する
コストで考える:1人の離職がもたらす損失
採用コスト(求人票作成・学校訪問・面接・入社準備)+教育コスト(研修・OJT・先輩社員の指導時間)+機会損失(戦力化前の離職による生産性の穴)を合算すると、1人の離職コストは少なくとも100〜150万円と推定されます。求人倍率2.37倍の佐賀県では、離職した穴を埋める採用はさらに困難で、コストは膨らむ一方です。
3. 入社1年目の「危険期」と集中フォロー
高卒1年目は社会人経験がゼロの状態からスタートします。「仕事が想像と違った」「先輩と合わない」「友達がいない」という悩みが積み重なり、特定の時期に離職が集中します。
| 時期 | リスク度 | 心理状態 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 入社1ヶ月目(GW前後) | 最高 | 五月病。GWに福岡の友人と会い「福岡はいいよ」と言われる | 週1回の短い面談、GW前のケア面談 |
| 入社3ヶ月目 | 高 | 試用期間終了。「この仕事は合わない」と感じやすい | 配属部署の上長との面談、業務の振り返り |
| 入社6ヶ月目 | 中 | 慣れによるマンネリ。成長実感が薄れる | 新しい業務の付与、資格取得への挑戦提案 |
| 入社1年目の年末 | 中 | 帰省で家族や友人と話し、他の選択肢を意識 | 1年の振り返り面談、来年度の目標設定 |
佐賀県特有の注意点:GWやお盆に福岡で働く友人と会ったときに「佐賀より福岡の方がいい」と言われるケースが離職のきっかけになることがあります。長期休暇前後の声かけが特に重要です。
4. 定着率向上のための5つの施策
メンター制度:「相談できる人」を確実に用意する
入社3〜5年目の年齢が近い先輩をメンターに配置します。中小企業では同期入社がゼロという状況が一般的ですが、佐賀県の中小企業はこの問題が特に顕著です。メンターが「仕事以外のこと」も相談できる相手になることで、孤立感を防ぎます。
- •最初の3ヶ月は週1回15分の短い面談を実施
- •業務の話ではなく「最近どう?」「困っていることは?」という日常の声かけ
- •メンター自身にもメンタリング研修を事前に実施
- •同じ高校出身のOB・OGがいればメンターに最適
1on1面談:上司との定期的な対話で不満を早期発見
直属の上司と月1回の1on1面談を実施します。「やりがいを感じる瞬間」「困っていること」「改善してほしいこと」を率直に聞き出す場として機能させます。面談内容は記録し、人事部門と共有して組織的に対応します。
- •月1回30分、静かな個室で実施
- •評価面談ではなく「聴く」ことに徹する場として位置づけ
- •離職の兆候(遅刻増加・表情の変化・口数の減少)を見逃さない
- •面談で出た要望にはできる限り迅速に対応し、フィードバックする
リアリスティック・ジョブ・プレビュー(RJP):入社前のギャップを埋める
離職理由の上位に「想像していた仕事と違った」があります。入社前の職場見学・インターンシップを通じて、仕事のリアルな姿(大変なことも含めて)を事前に伝えることで、入社後のギャップショックを防ぎます。
- •応募前職場見学では「きれいな面」だけでなく実際の作業環境も見せる
- •先輩社員に「入社後に驚いたこと」「乗り越えた壁」を正直に語ってもらう
- •佐賀県のインターンシップ受入事業所一覧に登録して学校からの紹介を受ける
- •「この仕事の大変なところ」も求人票や説明会で正直に伝える
キャリアパスの見える化:「この会社で成長できる」実感
高卒入社の若者が「このまま佐賀の中小企業にいて大丈夫だろうか」と不安を感じるのは自然なことです。1年目・3年目・5年目・10年目のスキル・役職・年収モデルを示し、「この会社にいれば着実に成長できる」ことを可視化します。
- •キャリアマップを作成し入社時に共有(1年目〜10年目の役職・年収モデル)
- •資格取得支援制度を整備(受験料+テキスト代全額負担+合格報奨金)
- •先輩社員の昇進実績を「見える化」(「高卒入社7年で主任、12年で課長」等)
- •外部研修への派遣や異業種交流会への参加機会を提供
保護者との連携:「辞めなさい」と言わせない関係づくり
入社後の定着においても保護者は重要な存在です。若者が「辞めたい」と親に相談したとき、保護者が「もう少し頑張りなさい」と言ってくれるか「辞めて福岡に行きなさい」と言うかで、結果は大きく変わります。入社後も年に1〜2回の「お子様の活躍報告」を送付しましょう。
- •入社1ヶ月後:「元気に頑張っています」の報告を保護者に送付
- •入社3ヶ月後:研修終了の報告と配属先の紹介を送付
- •入社1年後:1年間の成長を振り返る報告書を送付
- •保護者から「いつもありがとうございます」の反応があれば定着の好循環
5. 佐賀県の企業が活用できる定着支援制度
| 制度名 | 内容 | 活用方法 |
|---|---|---|
| 佐賀市中小企業人材確保支援事業費補助金 | 採用HP・動画・パンフ制作等に補助率1/2、上限30万円 | 入社前の職場紹介動画の制作費に活用 |
| ジョブカフェSAGA | 45歳未満向け無料就職支援 | 離職リスクのある若手社員にカウンセリングを紹介 |
| 佐賀労働局 各種助成金 | 人材開発支援助成金、キャリアアップ助成金等 | 研修制度の整備・資格取得支援に活用 |
| ユースエール認定 | 若者の採用・育成に優良な企業を厚労大臣認定 | 認定取得で離職率の低さをアピール材料に |
まとめ:佐賀県の高卒採用において「定着」は「採用」と同等以上に重要な経営課題です。離職した若者が福岡に流出する構造がある以上、「辞めさせない仕組み」を最初から設計しておく必要があります。メンター制度・1on1面談・キャリアパスの見える化は、コストをかけずに明日からでも始められる施策です。求人倍率2.37倍の中で獲得した人材を、大切に育てましょう。
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データ出典:
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒データ)
- 佐賀新聞「高卒求人倍率2.37倍」(https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1666283)
- 佐賀市「中小企業人材確保支援事業費補助金」(https://www.city.saga.lg.jp/main/63930.html)
- 佐賀労働局「各種助成金」(https://jsite.mhlw.go.jp/saga-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kakushu_joseikin/seido11.html)



