京都府の高校生数推移と2030年予測
進学率全国トップ級が生む構造的人材不足|京都労働局・統計京都・社人研データに基づく分析
京都府の高卒採用市場には、他の都道府県にない独特の構造があります。それは進学率73.0%(全国トップクラス)という圧倒的な進学志向です。京都大学をはじめ多くの大学・短大が集中する「学生のまち」京都では、高校卒業者の約4人に3人が大学等に進学し、就職市場に出てくる高校生は極めて限られています。その結果、求職者数は5年間で1,534人から1,255人へと約18%減少し、求人倍率は5.38倍に達しました。本記事では、この「進学率×少子化」がもたらす将来の採用市場と、企業が今から取り組むべき対策を解説します。
高卒求職者数の推移(令和3〜7年3月卒)
京都府の高卒求職者数は一貫した減少トレンドにあります。5年間で279人減少しており、毎年平均で約56人ずつ就職市場から人が減っている計算です。
出典: 京都労働局
減少ペースの意味
5年間で求職者数は279人減少しました。年平均56人ずつ減っている計算です。京都府の高卒求人数は同期間に約1,950人増えているため、需要と供給のギャップは毎年拡大し続けています。
進学率73.0%(全国トップ級)が高卒採用に与える影響
京都府の進学率の高さは高卒採用市場に決定的な影響を及ぼしています。全国平均と比較すると、その特異性が浮き彫りになります。
| 項目 | 京都府 | 全国平均 | 差 |
|---|---|---|---|
| 大学・短大等進学率 | 73.0% | 約60.8% | +約12ポイント |
| 就職希望割合(推計) | 約5〜6% | 約15〜17% | 約3分の1 |
| 高卒求人倍率 | 5.38倍 | 約4.10倍 | +1.28倍 |
| 府内就職率 | 56.7% | 約63.2% | -約6.5ポイント |
京都 73.0% / 全国 約60.8%(差 +約12ポイント)
京都 約5〜6% / 全国 約15〜17%(差 約3分の1)
京都 5.38倍 / 全国 約4.10倍(差 +1.28倍)
京都 56.7% / 全国 約63.2%(差 -約6.5ポイント)
出典: 統計京都2024年2月号 / 京都労働局
進学率全国トップ級のインパクト
京都府の高卒就職希望者は高校卒業者全体のわずか5〜6%と推計されます。全国平均(15〜17%)の3分の1以下です。京都大学・同志社大学・立命館大学をはじめとする大学が集中する「学生のまち」という環境が、「とりあえず大学に行く」という進路選択を強く後押ししています。結果として、就職を希望する高校生は少数精鋭であり、企業にとっては「見つけること自体が難しい」という根本的な課題が生じています。
少子化と進学率の「ダブルパンチ」
京都府の高卒採用市場は、「少子化による高校生数の減少」と「進学率の高さ」という2つの圧力を同時に受けています。この複合効果が他府県以上に厳しい採用環境を生み出しています。
圧力1:少子化による母数の縮小
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、京都府の人口は今後も減少が続きます。高校卒業者数も連動して減少しており、就職市場に供給される高校生の絶対数が年々縮小しています。
圧力2:進学率の高さが供給をさらに細らせる
京都府の進学率は既に73.0%と全国トップ級です。奨学金制度の拡充やリカレント教育の普及で「まず大学に」という流れは強く、就職を選ぶ高校生は少数にとどまります。母数が小さいうえに進学率が高いという二重の構造が、就職市場の供給をさらに細らせます。
圧力3:大阪圏への人材流出
府内就職率56.7%は全国平均(約63.2%)を下回ります。限られた求職者のうち約4割が大阪などの府外に就職するため、府内企業が実際に採用できる母数はさらに絞り込まれます。
京都府の構造的課題
進学率73.0%(全国トップ級)+ 府内就職率56.7%
= 府内で就職する高校生は卒業者全体のわずか数%
2030年に向けた見通し
京都府の高卒求職者数を減らしてきた2つの力——少子化による高校生数の減少と、全国トップ級の進学率——は、今後も働き続けます。求職者の供給が細り続ける限り、求人倍率が下がる構造的な理由はありません。国立社会保障・人口問題研究所の人口推計をふまえると、府内で就職する高校生の数は今後さらに減り、企業間の人材獲得競争は一層激しくなることが予想されます。
企業が今やるべきこと:「応募が来てから動く」のでは間に合いません。求職者の母数が構造的に減っていく市場では、就職を選ぶ高校生の母数自体を増やす(早期キャリア教育への関与)、限られた就職希望者から確実に選ばれる(差別化)、大阪に流れる前に地元就職の価値を伝える(保護者対策・情報発信)の3つを、今から仕込む必要があります。
企業が今から取り組むべき5つの対策
工業高校・商業高校との「指名される関係」を築く
京都には京都工学院高校をはじめ実業系の高校が複数あります。これらの学校の進路指導教員と「顔が見える関係」を構築し、インターンシップや出前授業を通じて2年生の段階から接点を持つことが重要です。求人票を送るだけでは見てもらえない時代です。
「大阪に行かない理由」を用意する
府内就職率56.7%の最大の要因は大阪への流出です。「京都で働くメリット」を明確に言語化しましょう。通勤時間の短さ・地域への貢献実感・転勤なし・住居補助など、大阪の大企業にはない「地元で働く価値」を訴求する必要があります。
保護者への情報発信を強化する
進学率が高い京都では「とりあえず大学に行かせたい」という保護者が多い傾向にあります。高卒就職の内定率97.1%・待遇改善のトレンドなど、保護者が知らない「高卒就職の今」を伝える取り組み(保護者向け会社説明会・パンフレット配布等)が効果的です。
SNS・動画で「働く日常」を可視化する
高校生の情報収集はスマートフォンが主流です。Instagram・TikTok・YouTubeで若手社員の1日・職場の雰囲気・先輩インタビューなどを発信し、求人票では伝えきれない職場の魅力を可視化しましょう。京都ならではの風景や文化を背景にした映像は差別化につながります。
定着率の向上を「最強の採用施策」と位置づける
少数精鋭の市場で1人を失うダメージは大きく、定着率の向上が何よりの採用施策です。メンター制度・キャリアパスの明示・資格取得支援・定期面談など、入社後のフォロー体制を整えることで、高校の進路指導教員からの信頼も獲得できます。
よくある質問
Q. 京都府の高卒求職者数は何人ですか?
A. 令和7年3月末時点で1,255人です。5年前(令和3年3月卒)の1,534人から279人(約18%)減少しています。
Q. 京都府の進学率は全国でどのくらいの水準ですか?
A. 京都府の大学・短大等への進学率は73.0%で全国トップクラスです(統計京都2024年2月号特集・全国60.8%)。2023年春卒で全国第1位を記録し、直近年も東京と首位を競う水準にあります。
Q. 京都府の府内就職率が低い理由は?
A. 府内就職率56.7%は大阪府への通勤利便性が主因です。JR・阪急・京阪で大阪中心部まで30〜50分であり、京都の高校生にとって大阪は十分な通勤圏です。
Q. 進学率が高い京都で高卒採用を成功させるには?
A. 進路指導教員との早期関係構築、保護者向けの情報発信、「大阪に行かない理由」の明確化、職場体験の充実が鍵です。進学を前提としている生徒・保護者に「高卒就職のメリット」を具体的に伝える取り組みが必要です。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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