茨城県の高卒求人倍率推移|2.94倍の背景分析
全国平均との差と、茨城県の産業構造から読み解く採用競争の実態
茨城県の令和7年3月卒の高卒求人倍率は2.94倍(令和6年9月末時点)。求人11,476人に対して求職者は3,908人です。同じ時点の全国平均3.91倍より落ち着いて見えますが、「倍率が低い=採りやすい」ではありません。茨城県は県内就職率86.4%と地元志向が強く、限られた高校生をめぐる県内企業同士の競争が起きているからです。本記事では、倍率の構造的背景を出典付きで整理します。
求人倍率の推移(各年9月末)
茨城県 新規高卒者の求人倍率(各年9月末現在・茨城労働局)
| 卒業年 | 求人数 | 求職者数 | 求人倍率 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 平成28年3月卒 | 7,941人 | 5,071人 | 1.57倍 | 過去10年で最低 |
| 平成29年3月卒 | 8,768人 | 4,937人 | 1.78倍 | 前年差+0.21 |
| 平成30年3月卒 | 9,744人 | 4,939人 | 1.97倍 | 前年差+0.19 |
| 平成31年3月卒 | 10,806人 | 4,853人 | 2.23倍 | 前年差+0.26 |
| 令和2年3月卒 | 10,912人 | 4,874人 | 2.24倍 | 前年差+0.01 |
| 令和3年3月卒 | 9,281人 | 4,392人 | 2.11倍 | 前年差−0.13(コロナ禍) |
| 令和4年3月卒 | 9,228人 | 3,936人 | 2.34倍 | 前年差+0.23 |
| 令和5年3月卒 | 10,499人 | 3,956人 | 2.65倍 | 前年差+0.31 |
| 令和6年3月卒 | 11,094人 | 3,674人 | 3.02倍 | 過去10年で最高 |
| 令和7年3月卒 | 11,476人 | 3,908人 | 2.94倍 | 前年差−0.08 |
- •求人 7,941人 / 求職 5,071人
- •過去10年で最低
- •求人 8,768人 / 求職 4,937人
- •前年差+0.21
- •求人 9,744人 / 求職 4,939人
- •前年差+0.19
- •求人 10,806人 / 求職 4,853人
- •前年差+0.26
- •求人 10,912人 / 求職 4,874人
- •前年差+0.01
- •求人 9,281人 / 求職 4,392人
- •前年差−0.13(コロナ禍)
- •求人 9,228人 / 求職 3,936人
- •前年差+0.23
- •求人 10,499人 / 求職 3,956人
- •前年差+0.31
- •求人 11,094人 / 求職 3,674人
- •過去10年で最高
- •求人 11,476人 / 求職 3,908人
- •前年差−0.08
推移の読み方
9月末時点の倍率は、平成28年3月卒の1.57倍から令和7年3月卒の2.94倍まで、約10年で1.37ポイント上がりました。求職者が約5,100人から約3,900人に減る一方、求人は約7,900人から約11,500人に増えています。なお、その後の3月末の確定値は令和7年3月卒3.00倍、令和8年3月卒2.77倍です(厚生労働省)。
出典:茨城労働局「令和7年3月新規高等学校卒業予定者の求人・求職・内定状況(令和6年9月末現在)」「過去10年間における求人数・求職者数・求人倍率等の推移」/3月末の値=厚生労働省 取りまとめ(各年3月末現在)
全国平均との比較と、隣接県との位置づけ
茨城県の2.94倍(令和6年9月末)は、同じ時点の全国平均3.91倍を0.97ポイント下回っています。3月末の確定値でも、令和8年3月卒は茨城2.77倍に対して全国4.12倍です。北関東・首都圏東部は製造業の集積地で、栃木・群馬・千葉・埼玉も高卒人材の需要が旺盛な地域です(各県の最新倍率は各県労働局の発表をご確認ください)。茨城県の特徴は、全国平均より倍率が落ち着いている一方で、県内就職率86.4%という強い地元志向がある点にあります。
「倍率が低い」を誤読しない
全国平均より低い数字は、茨城県の採用が楽であることを意味しません。高校生の大半が県内に残るため、特定エリア・特定の工業高校では大手と中小が同じ生徒を奪い合います。実感としての競争は、平均値が示すよりはるかに激しいのが実態です。
求人倍率2.94倍の背景にある3つの要因
1. 製造品出荷額14兆円超の産業基盤
茨城県の製造品出荷額は14兆8,596億円(全国7位)。神栖市1兆4,764億円、日立市1兆2,094億円、古河市1兆942億円、ひたちなか市9,028億円と、単一の市で兆円規模の出荷額を持つエリアが複数あります。この産業基盤が、製造業を中心とした旺盛な高卒求人を生み出しています。
2. 少子化と就職者数の構造的減少
令和7年3月卒の卒業者は22,298人ですが、就職するのは3,926人(17.6%)にとどまります。大学進学率の上昇と少子化が重なり、就職市場に出てくる高校生は構造的に減り続けています。求職者数3,908人(前年比6.4%増)という一時的な増加はあっても、長期トレンドは縮小です。
3. 県内就職率86.4%が生む地域内競争
県外流出はわずか13.6%(東京都185人・千葉県104人・栃木県81人)で、大部分の高校生が県内で就職します。つまり限られたパイを県内企業同士で奪い合う構造です。日立エリアではグループ企業と、鹿行エリアではコンビナート大手と、中小企業は同じ生徒をめぐって競合します。
この数字を前に、企業が打つべき手
7月1日に動く
求人公開と同時に動くのが鉄則。工業高校10校への訪問計画を6月中に確定させ、解禁初週に訪問しましょう。
一人二社制を前提に設計する
求人票に「複数応募可」を明示し、選考・内定通知のスピードを上げる。二社のうちの第一志望に選ばれる準備が要ります。
職場見学で「文字で伝わらない魅力」を見せる
倍率が示すのは数の不足。中小企業は体験を通じて、求人票では伝わらない自社の空気を見せることが最も効きます。
定着率を上げて翌年につなげる
採った人材が定着すれば学校の信頼が増し、翌年も推薦が来る。倍率の高い市場ほど、この好循環が効きます。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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