愛媛県のオヤカク完全マニュアル
「大阪のもっと大きい会社へ」を覆して内定承諾を取る
内定通知を出した松山工業の生徒の親から電話があった。「大阪の知り合いの会社にお願いすることになりました」。本人は「この会社で働きたい」と言っていた。本人の意向は親に勝てなかった。
愛媛県の県内就職率は71.8%(令和8年3月卒・前年同期比 -4.3pt)。約 3 割が県外に流出します。背景には「東京・大阪・広島のほうが給料がいい」「もっと大きい会社のほうが安心」という保護者の思い込みがあります。残り 7 割の中から自社を選んでもらえるかは、本人ではなく保護者にどれだけ自社の真実を届けられるかで決まります。
マイナビ調査(2024)では企業の約 6 割がオヤカク(親確)を実施しており、もはや標準活動です。この記事は、愛媛県固有の「大阪のもっと大きい会社へ」「東京の方が給料がいい」「今治造船・住友のほうが安定」という保護者の言葉を、どう真正面から覆すかを、手紙・面談・職場見学会のすべての場面で具体的に書いたものです。
愛媛の保護者が持つ 4 つの本音
本音 1:「うちの子は東京・大阪に行ったほうが給料がいいんじゃないか」
保護者の世代(40〜50 代)には、まだ「都会のほうが稼げる」という感覚が残っています。実際、求人票の額面では東京・大阪のほうが高く見えます。
対応:「額面ではなく手取り」で比較する資料を作る。例:松山実家暮らし手取り 17 万円・東京一人暮らし手取り 20 万円。東京は家賃 7 万 + 食費 4 万 + 光熱通信 1.5 万 = 12.5 万。残り 7.5 万。松山実家暮らしは食費家計入れ 3 万 + 光熱通信 1 万 = 4 万。残り 13 万。毎月 5.5 万円、年間 66 万円、3 年で約 200 万円の差を実数で見せる。
本音 2:「中小企業より、今治造船や住友のほうが潰れないし安心」
愛媛の保護者は地元の大手の名前を知っています。「今治造船」「住友化学」「大王製紙」「ユニ・チャーム」「東レ」「フジ」——これらに比べると、自社の社名は保護者には届きません。
対応:自社が地元の産業集積の中でどう役立っているかを具体的に示す。「うちは今治造船グループの○○工程の協力会社で、世界 3 位の建造実績を支えています」「四国中央市の紙パ集積の中で、大王製紙・ユニ・チャーム以外の紙加工○○種を担当しています」「住友重機械の○○部品を 10 年以上連続納入しています」。具体的な納入実績や得意先の名前(許可取得済みの範囲で)は、保護者の不安を一気に下げます。
本音 3:「工場の仕事は危険じゃないか」
愛媛は造船・紙パ・化学・繊維など製造業の県。保護者は「工場 = 危険・きつい・汚い」の印象を持っています。
対応:労災ゼロ実績を年単位で開示する。「労災ゼロ○年継続中」「年間の安全教育時間○時間」「○年に空調を全フロアに導入」「危険作業は自動化済み(○年で○億円投資)」。加えて、保護者向け工場見学会で実際の現場を見せる。「思っていたよりきれいだった」が最大の安心材料になります。
本音 4:「困ったとき、誰が助けてくれるのか」
18 歳の社会経験のない子を送り出す保護者にとって、「困ったときに頼れる大人がいるか」が最大の関心事です。
対応:「うちの社長は新入社員と週 1 回 15 分話します」「直接話せる距離です」と具体的に伝える。大手では絶対にできない距離感が、愛媛の中小企業の最大の武器です。連絡網を見せる(社長 → 工場長 → 主任 → 本人)。「困ったときの 3 段階の相談ライン」を可視化する。
オヤカク 月別タイムライン
求人票準備から入社式まで、各段階で打つ手
| 時期 | アクション | ポイント |
|---|---|---|
| 6〜7月 | 求人票準備 | 保護者が読むことを前提に、福利厚生・キャリアパス・安全実績を数字で記載 |
| 7〜8月 | 応募前職場見学 | 保護者同伴を明記して案内。「お父さんお母さんもどうぞ」 |
| 9月(選考・内定) | 内定通知 + 保護者宛挨拶状 | 社長名義で「お子様をお預かりします」と手書き 1 行を添えた挨拶状を同封 |
| 9〜10月 | 保護者説明会・職場見学会 | 土曜日開催・所要 2 時間・質疑応答 30 分以上。社長が直接話す |
| 11〜12月 | 社内報・季節の挨拶状 | お子様の活躍や会社のイベントを月 1 で保護者に送る |
| 1〜2月 | 入社準備の案内 | 入社前研修の内容・持ち物・通勤手段を保護者にも届ける |
| 3月 | 入社式への招待 | 保護者の同席を歓迎する。「ご家族と一緒に節目を祝いたい」と明記 |
保護者が読むことを前提に、福利厚生・キャリアパス・安全実績を数字で記載
保護者同伴を明記して案内。「お父さんお母さんもどうぞ」
社長名義で「お子様をお預かりします」と手書き 1 行を添えた挨拶状を同封
土曜日開催・所要 2 時間・質疑応答 30 分以上。社長が直接話す
お子様の活躍や会社のイベントを月 1 で保護者に送る
入社前研修の内容・持ち物・通勤手段を保護者にも届ける
保護者の同席を歓迎する。「ご家族と一緒に節目を祝いたい」と明記
保護者説明会の設計
2 時間で「この会社なら任せられる」と思ってもらう構成
推奨:土曜日 10:00〜12:00 + 12:00〜13:00 ランチ付き工場見学
- •10:00〜10:15 社長挨拶:自分の言葉で「お子様を預かる責任」を直接話す
- •10:15〜10:45 会社の事業説明:何を作っているか、誰に納めているか、地元産業集積でどう役立っているか
- •10:45〜11:15 待遇の詳細:基本給・手当・賞与・年間休日・残業時間・社員寮・通勤手当を数字で開示
- •11:15〜11:45 先輩社員(高卒入社)の声:本人が直接「入社して良かったこと、思ってたのと違ったこと」を話す。1〜3 年目を 2〜3 人
- •11:45〜12:00 質疑応答:保護者から本音の質問を引き出す(社長・先輩・人事の 3 人で受ける)
- •12:00〜13:00 工場見学 + 食堂で昼食:実際の現場を見て、社員と同じ昼食を食べる
資料:保護者向け 1 枚パンフレット
説明会で使う資料は、口頭で説明する内容を 1 枚にまとめ、家に持って帰って配偶者と相談できるようにする。盛り込むべき項目:
- •会社概要(設立・本社所在地・従業員数・主要取引先)
- •初任給と手取り・3 年後の年収モデル
- •年間休日・残業時間の実績(過去 3 年)
- •労災ゼロ年数・安全教育時間
- •資格取得支援(フォークリフト・玉掛け・JIS 溶接・電気工事士など)
- •社員寮(南予出身者向け)または住居支援
- •松山実家暮らし vs 大阪・東京一人暮らしの手取り比較
- •連絡網(困ったときの相談ラインを図示)
内定後の保護者フォロー
9 月内定 → 4 月入社の半年間で保護者の不安を再発させない
内定後から入社までの半年間で、保護者は何度も「本当にこの会社でいいのか」と思い返します。SNS で大学進学した同級生の楽しそうな投稿を見るたびに、「うちの子は社会人だから自由がない」と引き戻されます。この半年間に企業が連絡を絶やすと、3 月直前の辞退につながります。
必ずやる 5 つのフォロー
- •10 月:社長名義の挨拶状(手書き 1 行で「お預かりする責任を全うします」)
- •11 月:社内報を保護者にも送付。先輩社員の活躍や社内イベント
- •12 月:年末挨拶状 + 入社前準備の進捗(持ち物・通勤手段の確認)
- •1 月:入社前研修の案内(日程・場所・服装・持ち物を本人と保護者の両方に)
- •3 月:入社式の招待状を保護者にも。「ぜひご家族でお越しください」
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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