愛媛県のインターンシップ活用ガイド

受入れプログラム設計と成功事例|造船・製紙・タオル製造のプログラム例付き

愛媛県は造船(今治造船:国内建造量約35%)、紙パルプ(四国中央市:紙製品出荷額日本一)、今治タオル(全国工場の51.7%)、住友系重化学(新居浜)など、スケールの大きな「ものづくり」が集積する県です。高卒求人倍率3.75倍(令和7年3月卒)という売り手市場において、求人票だけでは伝わらない職場の魅力を体感してもらう「インターンシップ」は、採用の決め手となる施策です。

さらに愛媛県では「えひめジョブチャレンジU-15」として全公立中学校で5日間の職場体験を実施しており、中学生の段階から地元企業への関心を育む土壌があります。本ガイドでは、この仕組みと高卒採用向けインターンシップの両面を活用し、採用成功につなげる実践的なプログラム設計を解説します。

3.75倍
愛媛県 求人倍率
令和7年3月卒
71.2%
県内就職率
前年比-4.1pt
6,270人
求人数
求職者1,674人
全校実施
ジョブチャレンジU-15
全公立中学校・5日間

1. なぜインターンシップが愛媛県の高卒採用に効くのか

求人倍率3.75倍の愛媛県では、1人の高校生に対して約3.7件の求人が存在します。この状況下で企業が採用を成功させるには、「求人票を出すだけ」の受け身の姿勢では不十分です。インターンシップは、企業の魅力を能動的に伝えるための最も効果的な手段です。

県外流出防止の切り札

愛媛県は県内就職率71.2%と約3割の高卒就職者が県外に流出しています。転出超過は年間4,779人(2023年)で四国最大です。インターンシップを通じて「地元にこんなすごい会社がある」と実感してもらうことは、県外流出を食い止める有効な施策でもあります。巨大な船舶の建造現場、紙を生産する巨大プラント、世界ブランドの今治タオル工場など、愛媛県にはスケール感のある「見せ場」が豊富です。

学校・先生との信頼関係構築

高卒採用では進路指導の先生の推薦が極めて重要です。インターンシップを通じて学校との継続的なパイプを作ることで、先生からの信頼を獲得し、翌年以降の安定した応募にもつながります。特に社名を知らないBtoB企業や中小企業にとっては、事業内容を知ってもらう絶好のチャンスです。

2. えひめジョブチャレンジU-15の活用(中学生からの種まき)

愛媛県は全国でも先進的な取り組みとして、全公立中学校で5日間の職場体験「えひめジョブチャレンジU-15」を実施しています。年間4,000人以上がジョブカフェ愛workを利用するなど、若年者のキャリア教育に力を入れている県です。

ジョブチャレンジU-15を高卒採用に活かすポイント

  • 中学生時代に自社を体験した生徒が、高校進学後に就職先として自社を選ぶケースがある。早期の「種まき」として非常に有効。
  • 受け入れ実績は学校との信頼関係の証。高校の進路指導の先生にも「中学校の頃からお世話になっている企業」として認知されやすい。
  • 中学生向けプログラムは「仕事の楽しさを伝える」ことに注力。体験後のアンケートを活用して、将来の採用活動に活かす。

出典:愛媛県教育委員会「えひめジョブチャレンジU-15」

3. インターンシップの種類と期間(1日型・3日型・5日型)

高校生向けインターンシップには主に3つの形式があります。自社の採用目的やリソースに合わせて最適な形式を選びましょう。

形式期間実施時期内容・目的向いている企業
1日型(職場見学)1日6〜8月会社説明・工場見学・若手社員との座談会。応募前職場見学を兼ねることが多い。企業の雰囲気を短時間で伝える。初めて受け入れる企業、人手が限られる中小企業
3日型(短期体験)2〜3日7〜8月座学+実務体験のバランス型。1日目は会社説明と見学、2日目は実務体験、3日目は振り返りと発表。造船・製紙・タオルなど体験要素が豊富な企業
5日型(実習型)5日〜2週間夏休み・2学期本格的な実務体験。工業高校の実習授業と連携するケースも多い。生徒の適性を深く見極められる。工業高校と連携したい製造業、技術職採用企業

愛媛県の高校スケジュールとの調整ポイント:愛媛県の県立高校では、夏休み期間(7月下旬〜8月末)にインターンシップを実施するのが一般的です。松山工業高校・新居浜工業高校・今治工業高校など規模の大きい学校は受け入れ先の確保に苦労することもあるため、早め(4〜5月)のアプローチが有効です。

4. プログラム設計例(愛媛県の主要産業別)

愛媛県の産業構造に合わせた、業種別のプログラム設計例を紹介します。「見せるだけ」で終わらず、生徒に「ここで働きたい」と思わせるプログラムを設計しましょう。

造船業向けプログラム例(今治エリア)

今治造船は国内建造量の約35%を占める日本最大の造船グループです。巨大な船舶の建造現場は圧倒的なスケール感があり、インターンシップの「見せ場」として非常に効果的です。

日程午前午後
1日目会社説明・安全教育(安全帯装着体験)ドック・建造中船舶の見学ツアー・若手社員との座談会
2日目溶接のデモ体験・鉄板への名前入れ体験設計部門見学・CADの簡易操作体験
3日目塗装工程の見学・品質検査体験振り返りワーク・成果発表・修了式

ポイント:造船所は安全管理が極めて重要です。インターンシップ中の事故防止のため、必ず事前安全教育と適切な保護具の着用を徹底してください。「自分の名前を溶接で鉄板に入れる」体験は記念品にもなり、満足度が大幅に向上します。

紙パルプ・製紙業向けプログラム例(四国中央市エリア)

四国中央市は紙製品出荷額日本一の「紙のまち」です。大王製紙・丸住製紙をはじめ、紙関連企業が集積しています。

  • 抄紙機(しょうしき)の見学:巨大な抄紙機で紙が高速に生産される様子は圧巻。「身近な紙がこう作られている」という発見を提供
  • 紙すき体験:手作業での紙すきを体験し、紙づくりの原点を学ぶ。完成品を持ち帰れるようにすると記念になる
  • 品質管理体験:紙の厚み・強度・白色度の測定を体験。精密な品質管理の重要性を学ぶ
  • 環境への取り組み見学:リサイクル工程やバイオマスボイラーなど、環境対応の最前線を紹介

タオル製造業向けプログラム例(今治エリア)

今治タオルは全国のタオル工場の51.7%が集積するブランドです。「世界に誇るものづくり」を体感させるプログラムが効果的です。

  • 織機の操作体験:実際にタオルが織り上がるプロセスを見学し、簡単な操作を体験
  • 品質検査(5秒テスト):今治タオルの品質基準「5秒以内に水に沈む」テストを実施。品質へのこだわりを体感
  • デザイン・企画体験:タオルの色や柄をデザインするワークショップ。創造性を発揮する場を提供
  • 自分だけのオリジナルタオル作成:名前入りのミニタオルを製作し、持ち帰り。最高の記念品になる

サービス業・観光業向けプログラム例

松山市(道後温泉)を中心に、観光・宿泊・飲食業のインターンシップ需要もあります。

  • 接客ロールプレイング:実際の場面を想定した接客練習。フィードバック付き
  • バックヤード見学:普段は見えない裏側の仕事を紹介し、全体像を理解させる
  • お客様への提案企画ワーク:チームで新メニューや観光プランを考案し、プレゼン

全業種共通のポイント:プログラムの比率は「説明3:体験7」を意識しましょう。座学ばかりでは生徒は退屈し、放置は不安を感じさせます。常に「手を動かす」「人と話す」時間を確保することが、満足度向上の鍵です。

5. 受入準備チェックリスト

インターンシップの成功は、事前準備の質で8割が決まります。以下のチェックリストを活用して、漏れのない受け入れ体制を整えましょう。

実施2〜3か月前

  • 受け入れ目的・ゴールの明確化(採用直結型 or 認知度向上型)
  • プログラム内容・タイムスケジュールの策定
  • 指導担当者(メンター)の選定(年齢の近い若手社員が理想)
  • 学校への受け入れ申し出・進路指導担当の先生と打ち合わせ
  • 保険加入の確認(傷害保険・賠償責任保険)

実施1か月前

  • 安全管理マニュアルの整備・危険箇所の洗い出し(造船所・工場は特に重要)
  • 受け入れ部署への周知・協力依頼
  • 名札・作業着・安全装備(ヘルメット・安全靴・保護メガネ等)の準備
  • 生徒向け事前資料(会社概要・当日の持ち物・服装等)の作成
  • 昼食の手配方法の決定(社員食堂・弁当・各自持参)

実施前日〜当日

  • 受け入れスペース・会議室のセッティング
  • 体験で使う材料・工具・備品の最終確認
  • 全社員への「本日インターン生が来ます」の周知
  • アンケート用紙・修了証の準備
  • 緊急連絡先リスト(学校・保護者)の確認

注意:NG行動

  • - 雑用ばかりさせる:コピー取りや掃除だけでは職業体験になりません
  • - 放置・ほったらかし:「見ておいて」と放置するのは厳禁です
  • - 過度な業務負荷:高校生に長時間労働や危険な作業は絶対に避けてください
  • - 実質的な労働をさせる:教育目的を逸脱した場合、労働基準法上の「労働者」とみなされます

6. インターンシップから採用につなげるフォロー術

インターンシップは「やりっぱなし」では効果が半減します。終了後のフォローアップが、実際の応募・内定承諾につながる決め手です。

1

終了時アンケートで生徒の声を収集

満足度・印象に残ったプログラム・改善点を聞き取り、次回の改善に活用します。「造船所のスケール感に驚いた」「タオル作りが楽しかった」など、生徒の率直な感想はプログラム改善の最も貴重な情報源です。

2

お礼状・修了証の送付

参加してくれた生徒には後日、お礼の手紙と修了証を学校経由で送付します。手書きのメッセージを添えると、企業の誠実さが伝わります。

3

学校への報告・フィードバック

進路指導の先生に、生徒の様子や取り組み姿勢を報告します。ポジティブなフィードバックを伝えることで、先生からの信頼が厚くなり、翌年の推薦にもつながります。

4

社内報・SNSでの発信

インターンシップの様子を社内報やSNS(Instagram等)で発信します。「高校生を大切に受け入れている企業」というイメージは、次年度以降の応募にもプラスに働きます。

5

応募前職場見学への再招待

インターンシップに参加した3年生には、正式な応募前職場見学への参加を案内します。すでに関係性ができているため、スムーズに選考プロセスへ移行できます。

7. よくある質問

Q. 愛媛県で高校生のインターンシップを受け入れるにはどうすればいい?

A. ハローワークや愛媛県教育委員会を通じて受け入れ企業として登録します。その後、各高校の進路指導担当の先生に直接連絡し、受け入れ可能な時期やプログラム内容を伝えましょう。工業高校では学校側がインターンシップ先を探しているケースも多いため、積極的にアプローチすることが重要です。

Q. えひめジョブチャレンジU-15とは何ですか?

A. 愛媛県が全公立中学校で実施している5日間の職場体験プログラムです。中学生向けですが、受け入れ企業として参加することで、将来の高卒採用に向けた「種まき」ができます。中学時代に自社を体験した生徒が、高校進学後に就職先として自社を選ぶケースもあります。

Q. 造船業のインターンシップで安全面が心配です。どうすればいいですか?

A. 造船所は危険を伴う作業現場が多いため、事前安全教育・保護具(ヘルメット・安全靴・安全帯)の着用・立入禁止区域の設定を徹底してください。見学ルートの事前確認と、緊急時の連絡体制の整備も必須です。学校への安全管理体制の説明資料を用意すると、先生も安心して生徒を送り出せます。

Q. インターンシップの受け入れにかかる費用は?

A. 基本的にインターンシップは教育目的のため賃金は発生しません。企業側の費用としては、材料費・保険料・昼食代・指導者の人件費などが主な項目です。人材開発支援助成金など公的支援制度の活用も検討しましょう。

Q. 求人倍率3.75倍の愛媛県でインターンシップは本当に差別化になる?

A. はい、大きな差別化になります。求人票だけでは企業の魅力は伝わりにくいため、造船所のスケール感や紙すき体験、今治タオルのものづくりなど、愛媛県ならではの「体験」を提供できるインターンシップは生徒の志望度を大きく高めます。

まとめ|愛媛県でインターンシップを採用成功につなげる3つの鍵

求人倍率3.75倍、県内就職率71.2%の愛媛県において、インターンシップは高卒採用の成否を分ける重要な施策です。成功のために押さえるべき3つのポイントを確認しましょう。

  1. 愛媛県ならではの「体験価値」を最大化する
    造船所の巨大ドック、紙すき体験、今治タオルの品質テスト。愛媛県にはスケール感と専門性を兼ね備えた「見せ場」が豊富です。求人票では伝わらない魅力を体験で届けましょう。
  2. えひめジョブチャレンジU-15と高校インターンの二段階活用
    中学生向けの5日間職場体験で「種をまき」、高校生向けインターンシップで「刈り取る」。この二段階アプローチは、愛媛県ならではの強みです。
  3. 終了後のフォローアップを徹底する
    お礼状・修了証の送付、学校への報告、応募前職場見学への再招待。インターンシップから採用までの導線を設計し、「体験して終わり」にしないことが重要です。

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データ出典:

  • 愛媛労働局「令和7年3月新規高等学校卒業者の求人・求職・就職内定状況」
  • 愛媛県教育委員会「えひめジョブチャレンジU-15」
  • ジョブカフェ愛work
  • 厚生労働省「新規高等学校卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等について」
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