税理士という仕事
数字の向こう側にある、経営者の人生に寄り添うプロ
確定申告の書類を作るだけの仕事? いいえ。税理士は中小企業の経営者にとって「最も身近な相談相手」。数字を通じて会社の未来を一緒に考え、時には人生相談まで受ける。お金の専門家であり、経営のパートナーでもある仕事。


この仕事って何?
税理士は、個人や企業の税金に関するあらゆる業務を担う専門家です。確定申告書の作成、税務相談、節税のアドバイス、税務調査への対応——税に関する「独占業務」を持つ国家資格者です。
税務代理 — 納税者の代わりに申告する
個人の確定申告から法人の決算申告まで、税務署への申告手続きを代行します。日本の中小企業の約8割が税理士に申告を依頼しており、なくてはならない存在です。
経営コンサルティング — 数字で会社の未来を見る
毎月の帳簿をチェックしながら、資金繰り、設備投資、事業承継の相談に乗ります。「先生、うちの会社大丈夫ですか?」——その問いに数字で答えるのが税理士の仕事です。
相続・資産税 — 人生の節目を支える
相続税の申告、生前贈与の設計、不動産の評価。家族の大切な財産を守り、次の世代に引き継ぐお手伝いをします。人の人生に深く関わる場面です。
こんな人に向いてる
- 数字を扱うのが苦にならない人。電卓やExcelと友達になれる
- 人の話をじっくり聞ける人。経営者の悩みは数字の裏にある
- コツコツ積み上げるのが好きな人。5科目合格は長期戦
- 「ありがとう」と言われると頑張れる人。感謝が直接届く仕事
- 変化についていける人。税法は毎年改正される
実際に覗いてみよう!

高卒で、なれるの?
なれます。2023年の制度改正で、簿記論と財務諸表論は学歴・年齢に関係なく誰でも受験できるようになりました。高卒で会計事務所に就職し、働きながら合格を目指すのがこの業界の王道ルートです。
税理士の平均年収は 856万円(令和6年賃金構造基本統計調査)。全産業平均の約1.8倍。資格を取れば生涯使える「手に職」です。
2025年の税理士試験で、高卒受験者の合格率は 24.7%。大卒の20.8%を上回っています。学歴ではなく、どれだけ本気で勉強したかがすべて。
税理士試験は 5科目合格制。一度に全部受ける必要はなく、1科目ずつ合格を積み重ねられます。働きながら毎年1〜2科目ずつ——10年かけて合格する人も珍しくありません。
856万円
税理士の平均年収
令和6年賃金構造基本統計調査
24.7%
高卒受験者の合格率
大卒20.8%を上回る(2025年)
5科目合格制
1科目ずつ積み重ねられる
一発勝負じゃない。働きながらでも
なるためのルート
商業高校 → 会計事務所 → 働きながら5科目合格
簿記の知識がある商業高校出身者は即戦力。日商簿記2級を持っていれば採用で有利。会計事務所で実務経験を積みながら、試験勉強を並行する王道ルート。
普通科 → 会計事務所の事務職 → 簿記論から挑戦
簿記未経験でも大丈夫。まず日商簿記3級から始めて、会計事務所に就職。実務を覚えながら簿記論・財務諸表論に挑戦する。
高卒 → 国税専門官(税務署職員)→ 税理士資格取得
税務署で23年以上勤務すると、試験免除で税理士資格が得られる制度がある。公務員として安定した収入を得ながら、将来は税理士として独立も可能。
ある1日の流れ
中小企業の顧問を担当する、会計事務所スタッフ3年目のある1日を紹介します。
出社・メールチェック
顧問先からの質問メールを確認。「消費税の仕入税額控除について教えてください」——こういう質問に正確に答えるのが日常
朝ミーティング
事務所スタッフ全員で今日の予定を共有。「今日はA社の月次訪問とB社の決算です」
顧問先を訪問(月次巡回)
顧問先の中小企業を訪問。帳簿をチェックしながら社長と面談。「先月の売上、少し落ちましたね。原因は何でしょう?」
経営相談
「新しい設備を入れたいんだけど」——投資の採算性を試算し、使える補助金や税制優遇を提案。数字を見せながら一緒に考える
昼休憩
顧問先の近くで昼食。社長と一緒にランチすることも。仕事の話だけでなく、趣味の話で盛り上がることもある
帰社・決算業務
事務所に戻り、決算期の法人の申告書を作成。仕訳データを確認し、税額を計算。ミスが許されない集中作業
後輩の質問対応
「この仕訳、どう処理すればいいですか?」——1年目のスタッフに教えながら、自分も学び直す
税務署からの問い合わせ対応
顧問先に関する税務署からの質問に回答。根拠条文を確認し、正確に説明する
翌日の訪問準備
明日訪問する顧問先の資料を確認。前月の数字と比較して、気になるポイントをメモ
退社
今日も3社の数字に触れた。社長が「助かるよ」と言ってくれた。小さな達成感を持って帰路へ
※ 確定申告時期(2〜3月)や決算期は残業が増えます。繁忙期と閑散期の差が大きい業界です
身につくスキル
税理士で身につくスキルは、ビジネスの根幹を理解する力です。
- 会計・簿記の知識 — お金の流れを読む力。どんなビジネスにも通用する基礎体力
- 税法の専門知識 — 毎年変わる税制を追いかけ続ける。この専門性が「独占業務」の根拠
- 経営分析力 — 数字の裏にある経営の課題を読み取る。コンサルタントとしての視点
- コミュニケーション力 — 経営者から本音を引き出し、難しい税の話をわかりやすく伝える
- ITリテラシー — 会計ソフト、電子申告、クラウド帳簿。ITと税務の融合が加速中
- 問題解決力 — 「税金を減らしたい」「節税したい」——合法的な解決策を見つける創造力
キャリアステップ
税理士のキャリアは「勤務税理士」として安定的に働く道と、「独立開業」して自分の事務所を持つ道の2つがあります。
どちらを選んでも、5科目合格後の選択肢は広い。中小企業の顧問、相続専門、国際税務、コンサルティング——専門分野を持てば、さらに活躍の場が広がります。
会計事務所スタッフ(補助業務)
記帳代行、仕訳入力、資料整理からスタート。簿記と税務の基礎を実務で叩き込まれる。並行して簿記論・財務諸表論の試験勉強。
月収18〜22万円
担当者(顧問先を持つ)
自分の担当顧問先を持ち、月次巡回や決算を任される。税法科目の合格を目指しながら実務力を磨く。
月収22〜30万円
税理士(5科目合格・登録)
正式に税理士として登録。署名のある申告書を作れるように。事務所の中核メンバーとして後輩指導も。
月収30〜45万円
独立開業 or パートナー
自分の事務所を開く人も多い。顧問先が増えれば年収1,000万円超も。事務所に残り、パートナーとして経営に参画する道も。
年収600〜1,500万円以上
この仕事のリアル
税理士試験は 5科目すべてに合格するまで平均8〜10年 かかると言われています。1科目あたりの合格率は約15〜20%。長期戦を覚悟する必要があります。
国税庁「税理士試験結果」各年度
税理士の正直な課題は 繁忙期の忙しさ です。確定申告時期(2〜3月)と法人決算期は深夜まで残業することもあります。逆に閑散期は比較的ゆとりがあり、メリハリが大きい働き方です。
また、AI・クラウド会計の進化 により、記帳代行や単純な申告業務は自動化が進んでいます。ただし、経営相談、節税提案、税務調査対応といった「人にしかできない仕事」はむしろ需要が増えています。
一方で、中小企業の経営者から直接感謝される のは税理士ならではの魅力。「先生のおかげで会社が助かった」——その言葉を年に何度も聞ける仕事はそう多くありません。
会社を選ぶときの見極めポイント
試験休暇制度があるか確認する(受験日前の有給取得や、勉強時間の確保ができるか)
繁忙期の残業時間を具体的に聞く(「忙しい」の度合いは事務所によってかなり違う)
担当を持てるまでの期間を確認する(早い事務所は1年目から、遅い事務所は3年以上)
所長の年齢と事務所の将来性を見る(高齢の所長が多いため、事業承継の機会もある)
じゃあ、どうすればいい?
求人票だけでは、その会社の本当の雰囲気はわかりません。
だからこそ、自分の目で確かめることが大切です。

応募前職場見学に行こう。
実際の職場の空気、働いている人の表情は、行かないとわからない。
会社のホームページを見てみよう。
高校生の目線に立った採用ページがあるか?動画や社員の声で雰囲気を伝えようとしているか?
求人票以外の情報を探そう。
SNS、ブログ、就活情報誌——求人票に載っていない情報を出している会社ほど、あなたに届けたい想いがある。
職場見学はまず先生に相談してみてください。
行きたい会社の見学ができなかった場合は、
先生を通じてゆめスタにご相談ください。
「ゆめマガで紹介してほしい」などのご相談も大歓迎です。できる限り力になります!
先輩たちの「やっててよかった」
「先生がいてくれるから安心して経営できる」——その信頼が最大のやりがい。
顧問先の社長から「先生のおかげで今年も黒字でした」と言われたとき。自分の提案した節税策や資金繰りのアドバイスが、会社の経営に直接役立ったと実感できる。
(MS-Japan「税理士のやりがい・魅力」)
相続の案件で、遺族の方から「おかげで家族が揉めずに済みました」と感謝されたとき。数字だけでなく、家族の関係まで守れる仕事だと感じる瞬間。
(スタディサプリ進路「税理士のやりがい」)
資格に定年がないこと。独立すれば70歳、80歳でも現役で働ける。実際に税理士登録者の平均年齢は60歳を超えており、生涯現役が当たり前の世界。
(日本税理士会連合会 統計情報)
この仕事がある業界
税理士が活躍できる業界を見てみよう。
この記事のデータ出典
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」
国税庁「第75回(2025年度)税理士試験結果」
国税庁「税理士試験受験資格の概要」
MS-Japan「税理士事務所の1日のスケジュールと仕事内容」
MS-Japan「税理士のやりがい・魅力」
スタディサプリ進路「税理士の1日のスケジュール」
スタディサプリ進路「税理士のやりがい」
日本税理士会連合会 統計情報






