和歌山県の高卒求人倍率推移【H29〜R7年度】
1.46倍から2.88倍へ。9年で約2倍になった構造的要因を分析
和歌山県の高卒求人倍率(各年度3月末)は、H29年度の1.46倍からR7年度(令和8年3月卒)には2.88倍へと、9年間でほぼ2倍に上昇しました。この上昇は、求職者数が1,785人から1,114人へ38%減少する一方で、求人数が2,609人から3,211人へ23%増加するという「需要増と供給減の二重構造」によるものです。厚生労働省の公表データ(都道府県別・各年度3月末)に基づき、9年分の推移とその背景を分析します。
1. 求人倍率推移(H29〜R7年度)
和歌山県 新規高卒求人倍率の推移(各年度3月末現在・厚生労働省)
| 年度 | 求人数 | 求職者数 | 求人倍率 | 就職内定率(3月末) | 前年差 |
|---|---|---|---|---|---|
| H29年度 | 2,609人 | 1,785人 | 1.46倍 | 99.4% | +0.15 |
| H30年度 | 3,026人 | 1,787人 | 1.69倍 | 99.7% | +0.23 |
| R1年度 | 3,339人 | 1,719人 | 1.94倍 | 99.4% | +0.25 |
| R2年度 | 2,781人 | 1,335人 | 2.08倍 | 98.9% | +0.14 |
| R3年度 | 2,746人 | 1,276人 | 2.15倍 | 99.6% | +0.07 |
| R4年度 | 2,991人 | 1,170人 | 2.56倍 | 99.7% | +0.41 |
| R5年度 | 3,148人 | 1,134人 | 2.78倍 | 99.3% | +0.22 |
| R6年度 | 3,121人 | 1,121人 | 2.78倍 | 99.7% | ±0.00 |
| R7年度 | 3,211人 | 1,114人 | 2.88倍 | 98.6% | +0.10 |
- 求人数2,609人
- 求職者数1,785人
- 就職内定率(3月末)99.4%
- 前年差+0.15
- 求人数3,026人
- 求職者数1,787人
- 就職内定率(3月末)99.7%
- 前年差+0.23
- 求人数3,339人
- 求職者数1,719人
- 就職内定率(3月末)99.4%
- 前年差+0.25
- 求人数2,781人
- 求職者数1,335人
- 就職内定率(3月末)98.9%
- 前年差+0.14
- 求人数2,746人
- 求職者数1,276人
- 就職内定率(3月末)99.6%
- 前年差+0.07
- 求人数2,991人
- 求職者数1,170人
- 就職内定率(3月末)99.7%
- 前年差+0.41
- 求人数3,148人
- 求職者数1,134人
- 就職内定率(3月末)99.3%
- 前年差+0.22
- 求人数3,121人
- 求職者数1,121人
- 就職内定率(3月末)99.7%
- 前年差±0.00
- 求人数3,211人
- 求職者数1,114人
- 就職内定率(3月末)98.6%
- 前年差+0.10
出典:厚生労働省「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」第3表(各年度3月末現在。R7年度=令和8年3月卒は令和8年3月末)・過去分
2. 求職者数38%減の構造分析
H29年度に1,785人いた求職者数は、R7年度には1,114人まで減少しました。8年間で671人、率にして38%の減少です。この減少は一時的なものではなく、人口動態に根差した構造的なトレンドです。
| 年度 | 求職者数 | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| H29年度 | 1,785人 | — | 基準年 |
| H30年度 | 1,787人 | +2人(+0.1%) | 横ばい |
| R1年度 | 1,719人 | -68人(-3.8%) | 減少 |
| R2年度 | 1,335人 | -384人(-22.3%) | コロナ影響で急減 |
| R3年度 | 1,276人 | -59人(-4.4%) | コロナ後の水準で定着 |
| R4年度 | 1,170人 | -106人(-8.3%) | 少子化進行 |
| R5年度 | 1,134人 | -36人(-3.1%) | 減少続く |
| R6年度 | 1,121人 | -13人(-1.1%) | 微減 |
| R7年度 | 1,114人 | -7人(-0.6%) | 微減 |
注目:R2年度の急減について
R2年度(2020年度)の求職者数は前年比384人減(-22.3%)と突出して大きく減少しています。コロナ禍による経済不安から進学志向が高まったことが影響したと考えられます。R3年度以降はこの低い水準が定着し、1,100〜1,200人台で推移しています。コロナ前の1,700〜1,800人台には戻っていません。
求職者減少の3つの要因
- 少子化の進行:和歌山県の出生数は2025年度(2025年4月〜2026年3月)に4,319人と、5,000人を大きく下回っています(和歌山県人口調査)。15-19歳人口は1980年の73,128人から2020年には40,218人に減少しています(国勢調査)。
- 大学進学率の上昇:全国的に大学進学率は上昇傾向にあり、高卒での就職を希望する生徒の絶対数が減少しています。
- コロナ禍の構造転換:R2年度に急減した求職者数はその後も回復せず、「新しい水準」として定着しました。
3. 求人数23%増の背景
求人数はH29年度の2,609人からR7年度の3,211人へ、602人(23%)増加しました。ただし直線的な増加ではなく、R1年度の3,339人をピークにコロナ禍で一度落ち込み、R5年度に再び3,000人台を回復するという推移です。
| 年度 | 求人数 | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| H29年度 | 2,609人 | — | 基準年 |
| H30年度 | 3,026人 | +417人(+16.0%) | 3,000人台突破 |
| R1年度 | 3,339人 | +313人(+10.3%) | コロナ前ピーク |
| R2年度 | 2,781人 | -558人(-16.7%) | コロナ影響で大幅減 |
| R3年度 | 2,746人 | -35人(-1.3%) | コロナ影響継続 |
| R4年度 | 2,991人 | +245人(+8.9%) | 回復基調 |
| R5年度 | 3,148人 | +157人(+5.2%) | 3,000人台回復 |
| R6年度 | 3,121人 | -27人(-0.9%) | 横ばい |
| R7年度 | 3,211人 | +90人(+2.9%) | 過去2番目の水準 |
産業構造から見た求人増加の要因
和歌山県の製造品出荷額は基礎素材型産業(鉄鋼・石油・化学)が約6割を占めています(和歌山県企業立地ガイド)。石油・石炭、鉄鋼業、化学工業、はん用機械の4業種で全体の約2/3に達します。これらの産業では設備の維持・更新に伴う技術者需要が恒常的に高く、高卒人材への需要は安定しています。加えて、建設業やサービス業でも人手不足が進行しており、求人数全体を押し上げています。
4. コロナ禍の影響と回復
和歌山県の高卒採用市場はR2〜R3年度にコロナ禍の影響を受けましたが、他県と比較して特徴的な回復パターンを示しました。
| 指標 | R1年度(コロナ前) | R2年度(コロナ直撃) | R7年度(最新) |
|---|---|---|---|
| 求人数 | 3,339人 | 2,781人(-16.7%) | 3,211人(-3.8%) |
| 求職者数 | 1,719人 | 1,335人(-22.3%) | 1,114人(-35.2%) |
| 求人倍率 | 1.94倍 | 2.08倍 | 2.88倍 |
| 就職内定率(3月末) | 99.4% | 98.9% | 98.6% |
和歌山県のコロナ回復パターンの特徴
和歌山県では、コロナ禍でも求人倍率は下がらずむしろ上昇しました。これは求職者数(-22.3%)の減少幅が求人数(-16.7%)の減少幅を上回ったためです。求人数はR4年度以降に回復基調となりR5年度には3,000人台を回復しましたが、求職者数はコロナ前の水準(1,700人台)には戻っていません。結果として、求人倍率は「戻らない求職者数」に押される形で上昇を続けています。
最終就職率の安定性
注目すべきは、最終就職率(3月末時点)がコロナ禍のR2年度でも98.9%を維持した点です。H29〜R7年度の9年間で、3月末の就職内定率は98.6%〜99.7%と極めて高い水準で安定しています。就職を希望する高校生はほぼ全員が就職先を確保できており、問題は「企業側が採用できるか」にあります。
5. 全国平均および一般有効求人倍率との比較
和歌山県の高卒求人倍率2.88倍(令和8年3月末)を同じ時点の全国の高卒求人倍率と比較し、一般の有効求人倍率との違いも確認します。
| 指標 | 倍率 | 出典 |
|---|---|---|
| 和歌山県 高卒求人倍率(令和8年3月末) | 2.88倍 | 厚生労働省 |
| 全国平均 高卒求人倍率(令和8年3月末) | 4.12倍 | 厚生労働省 |
| 和歌山県 一般有効求人倍率(2025年12月) | 0.99倍 | 和歌山労働局(季節調整値) |
| 全国平均 一般有効求人倍率(2025年12月) | 1.19倍 | 厚生労働省 |
高卒市場と一般市場の乖離に注目
和歌山県の一般有効求人倍率は0.99倍(2025年12月時点)と全国平均1.19倍を下回っています。一般の労働市場では求人不足の傾向があるのに対し、高卒市場では2.88倍の売り手市場です。この乖離は、高卒人材の希少性を明確に示しています。若い人材を求める企業にとって、高卒採用は競争が激しい市場であることを認識する必要があります。
全国平均との差:和歌山県は全国平均の約7割の水準
和歌山県の高卒求人倍率2.88倍は、同じ時点の全国平均(4.12倍)の約70%の水準です。全国的に見ると相対的に低い水準にあり、これは和歌山県の産業構造(基礎素材型産業が中心で大手企業が多い)と、県外就職者が一定数いることが背景にあります。ただし、県内で採用活動を行う企業にとっては、1人の高卒生を約2.9社が取り合う環境であることに変わりはありません。
6. 就職内定率(3月末)の推移
求人倍率だけでなく、卒業直前(3月末時点)の就職内定率の推移を見ることで、採用活動の実態がより鮮明になります。
| 年度 | 卒業者 | 就職内定率(3月末) |
|---|---|---|
| H29 | H30.3卒 | 99.4% |
| H30 | H31.3卒 | 99.7% |
| R1 | R2.3卒 | 99.4% |
| R2 | R3.3卒 | 98.9% |
| R3 | R4.3卒 | 99.6% |
| R4 | R5.3卒 | 99.7% |
| R5 | R6.3卒 | 99.3% |
| R6 | R7.3卒 | 99.7% |
| R7 | R8.3卒 | 98.6% |
出典:厚生労働省「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」第3表(各年度3月末現在。R7年度=令和8年3月卒は令和8年3月末)・過去分
ほぼ全員が就職する一方で積み上がる「選ばれなかった求人」
3月末の就職内定率は毎年99%前後で、就職を希望する高校生はほぼ全員が就職先を決めています。一方で求人数は求職者数の約2.9倍あり、企業側から見ると「選ばれなかった求人」が積み上がっていることを示します。企業にとっての課題は「自社が選ばれるか」にあります。
7. 今後の見通しと企業が取るべきアクション
和歌山県の15-19歳人口は、2020年の40,218人から2045年には23,096人まで減少すると推計されています(国立社会保障・人口問題研究所・令和5年推計)。高卒就職者の母数となる若年人口が今後も縮小する中、求人倍率のさらなる上昇は避けられない見通しです。
短期(1〜2年)
- ・職場見学・インターンシップの受入れ体制を整備
- ・求人票の記載内容を見直し他社との差別化を図る
- ・学校訪問を早期から計画的に実施
中長期(3〜5年)
- ・学校との継続的な信頼関係を構築
- ・採用ブランディングで「選ばれる企業」になる
- ・定着率を高めて学校からの信頼を積み上げる
求人倍率上昇は「脅威」ではなく「準備の合図」
求人倍率が高いということは、高卒人材がそれだけ価値のある存在であることを意味します。若い人材は長期間にわたって企業の戦力となり、技術の継承にも貢献します。今から計画的に採用基盤を整えることが、5年後・10年後の企業競争力に直結します。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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データ出典:
- 厚生労働省「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」(令和8年3月末現在)第3表・過去各年度3月末分
- 文部科学省「高等学校卒業者の就職状況」
- 和歌山県企業立地ガイド(産業構造データ)
- 厚生労働省「職業安定業務統計」(一般有効求人倍率データ)



