1. 高卒の離職率推移(年度別)
まず、高卒と大卒の3年以内離職率の推移を確認します。近年の高卒離職率は37〜38%台で推移しており、大卒との差は約3〜5ポイントです。
| 卒業年度 | 高卒 3年以内離職率 | 大卒 3年以内離職率 |
|---|---|---|
| 令和4年3月卒(2022年) | 37.9% | 33.8% |
| 令和3年3月卒(2021年) | 38.4% | 34.9% |
| 令和2年3月卒(2020年) | 37.0% | 32.3% |
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」各年度
令和2年3月卒(2020年)はコロナ禍の影響で離職率がやや低下しましたが、令和3年・4年と再び上昇傾向にあります。高卒の約4割が3年以内に辞めるという構造は、ここ数年変わっていません。
ポイント:全体の平均値だけを見ると「高卒は辞めやすい」という印象を持ちがちですが、実態は産業・学科・地域によって大きく異なります。以降のセクションで詳しく分析します。
2. 産業別離職率ランキング
同じ「高卒3年以内離職率37.9%」でも、産業別に見ると電気・ガスの約11%から宿泊業の64.7%まで、6倍近い差があります。以下は、離職率が高い順に並べた一覧です。
| 順位 | 産業分類 | 3年以内離職率 |
|---|---|---|
| 1 | 宿泊業・飲食サービス業 | 64.7% |
| 2 | 生活関連サービス業・娯楽業 | 61.5% |
| 3 | 教育・学習支援業 | 53.6% |
| 4 | 医療・福祉 | 49.2% |
| 5 | 小売業 | 48.3% |
| 6 | 不動産業・物品賃貸業 | 約36% |
| 7 | サービス業(他に分類されないもの) | 約36% |
| 8 | 学術研究・専門・技術サービス業 | 約33% |
| 9 | 建設業 | 約29% |
| 10 | 卸売業 | 約28% |
| 11 | 情報通信業 | 約28% |
| 12 | 運輸業・郵便業 | 約26% |
| 13 | 金融業・保険業 | 約25% |
| 14 | 鉱業・採石業・砂利採取業 | 約20% |
| 15 | 製造業 | 約19-28% |
| 16 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 約11-12% |
※上位5位は厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒)」公式発表値。6位以降はJILPT(労働政策研究・研修機構)等の引用データに基づく推定値。
出典: 厚生労働省, JILPT, nippon.com
離職率が高い産業の共通点
離職率ワースト5の産業には共通する特徴があります。
不規則な勤務時間
宿泊業・飲食サービス業は深夜勤務やシフト制が多く、体力的な負担が大きい
対人ストレスの高さ
接客業はクレーム対応など精神的負荷が高く、特に社会経験の少ない高卒者には辛い環境になりやすい
賃金水準の低さ
サービス業全般は他産業と比較して初任給が低い傾向にあり、「割に合わない」と感じやすい
キャリアパスの不透明さ
昇進・昇給のルートが見えにくく、「ずっとこのままなのか」という不安が離職の引き金になる
離職率が低い産業の共通点
一方、電気・ガス(約11%)、製造業(約19-28%)、金融・保険(約25%)といった離職率が低い産業には、安定した労働環境と明確なキャリアパスという共通点があります。福利厚生が充実しており、資格取得支援制度も整備されているケースが多く見られます。
自社の立ち位置を確認しましょう。自社が属する産業の平均離職率と比較して、自社が高いか低いかを把握することが改善の第一歩です。業界平均より高い場合は、セクション5の施策が参考になります。
3. 工業高校卒だけは離職率が極端に低い
高卒全体の離職率37.9%に対し、工業高校卒の3年以内離職率はわずか16.3%です。これは全体の半分以下であり、大卒の33.8%と比べても大幅に低い水準です。
工業高校卒
16.3%
高卒全体
37.9%
大卒
33.8%
工業高校卒: 全工協調べ(2020年度)/ 高卒全体・大卒: 厚労省(令和4年3月卒)
なぜ工業高校卒は辞めないのか
専門教育と就職先のマッチ度が高い
工業高校では電気・機械・建築等の専門知識を3年間学んでおり、就職先の業務内容と直結しています。「思っていた仕事と違った」というミスマッチが起きにくい構造です。
学校推薦の精度が高い
工業高校の先生は、生徒の適性と企業の求める人物像の両方を熟知しています。長年の信頼関係に基づく推薦が、マッチング精度を高めています。
在学中の実習経験
工場実習やインターンシップなどの実践的な経験を在学中に積んでいるため、入社後のギャップが小さくなります。
出典: コクリコ(講談社), 全国工業高等学校長協会(全工協)
企業が得られる示唆:「高卒だから辞める」のではなく、「マッチしていないから辞める」のです。工業高校卒の低い離職率は、専門性のマッチと事前の情報提供がいかに重要かを示しています。普通科卒の採用でも、職場見学や業務体験を充実させることで同様の効果が期待できます。
4. 東海地方の定着率が高い理由
全国的に見ると、東海地方(特に愛知県)は高卒新卒の定着率が高い地域です。その背景には、いくつかの構造的な要因があります。
愛知県の特徴的なデータ
全国最低水準 = 地元志向が最も強い県。生徒が地元で働きたいと思っているため、通勤圏内での就職が多く、生活環境の変化によるストレスが少ない
愛知県はトヨタをはじめとする製造業の集積地。製造業は離職率が低い産業(約19-28%)であり、県全体の定着率を押し上げている
求人倍率が高く、生徒が複数の選択肢から自分に合った企業を選べる環境がある。結果として、ミスマッチが起きにくい
出典: ハイスク, 高卒採用Lab
東海地方の企業が有利な理由:製造業の集積 + 地元志向の強さ + 高い求人倍率という3つの要因が重なり、高卒新卒の定着に有利な環境が整っています。ただし、これに安心せず、セクション5の施策を取り入れることで、さらに離職率を下げることが可能です。
5. 離職率を下げる5つの施策
産業別データと離職理由の分析から、離職率を下げるための具体的な施策を5つ紹介します。共通するのは「入社前後の情報ギャップをなくす」という考え方です。
採用段階のミスマッチ防止(職場見学の充実)
離職の最大の原因は「思っていたのと違う」というミスマッチです。応募前職場見学の質を高めることが、最もコストパフォーマンスの高い離職防止策です。見学では、良い面だけでなく仕事の大変さも正直に伝えることで、入社後のギャップを小さくできます。
具体策:職場見学に先輩社員との質疑応答の時間を設ける、実際の作業場を見せる、1日の業務スケジュールを資料にまとめて渡す
入社後のフォロー体制(メンター制度)
高卒新卒者にとって、入社後に「誰に相談すればいいかわからない」状態が最も危険です。年齢が近い先輩社員をメンターとして配置し、業務だけでなく生活面の相談にも乗れる体制を作ることで、入社直後の不安を大幅に軽減できます。
具体策:入社後3か月間はメンターとの週1回の面談を設定。業務の悩みだけでなく「困っていることはないか」を聞く場を制度化する
キャリアパスの明示(昇進ルート・年収の見える化)
「3年後、5年後にどうなれるのか」が見えないことは、特に若手社員の離職につながります。入社1年目から、昇進・昇給のルートを具体的な数字で示すことが重要です。先輩社員の実際のキャリアパスを事例として見せることが最も説得力があります。
具体策:「入社3年で主任→5年で係長→年収〇万円」のような具体的なモデルケースを採用HPや求人票に記載。先輩社員インタビューで実例を示す
資格取得支援(モチベーション維持)
資格取得支援は、社員の成長実感とモチベーション維持に直結します。特に製造業や建設業では、取得した資格が直接的に昇給・昇進に結びつくため、定着率向上の効果が高い施策です。受験費用の補助だけでなく、合格時の報奨金制度も有効です。
具体策:受験費用の全額補助、合格報奨金の支給、勉強時間の確保(業務時間内の学習許可)、資格手当の明示
工業高校・商業高校からの採用比率を高める
工業高校卒の離職率が16.3%と極端に低い理由は、専門教育と就職先のマッチ度の高さにあります。自社の業務内容に合った専門高校との関係を構築することで、マッチング精度を高め、結果として離職率を下げることができます。
具体策:地元の工業高校・商業高校への求人票の提出、学校への定期訪問、出前授業・職業講話への参加、インターンシップの受け入れ
5つの施策の共通点:すべてに共通するのは「入社前後の情報ギャップを埋める」という視点です。離職の根本原因は「知らなかった」「思っていたのと違った」です。採用段階から入社後まで一貫して情報を開示し続けることが、最も本質的な離職防止策です。
6. 自社の離職率を業界平均と比較する方法
自社の離職率を改善するためには、まず「自社が業界平均と比べてどの位置にいるのか」を正確に把握する必要があります。
確認手順
厚生労働省のデータを確認する
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」で、自社が属する産業の平均離職率を確認します。毎年10月頃に最新版が公表されます。
自社の離職率を算出する
自社の「入社3年以内に離職した人数 ÷ 同期入社人数 × 100」で算出します。過去3〜5年分を算出し、推移も確認してください。
業界平均と比較する
自社の離職率が業界平均より高い場合は、セクション5の施策を参考に改善に取り組みます。業界平均より低い場合は、それ自体が強みです。
業界平均より低い場合は「強み」として活用する
自社の離職率が業界平均より低い場合、それは求人票や採用HPで訴求すべき強みです。高校生や先生にとって「この会社は辞める人が少ない」という事実は、強力な安心材料になります。
記載例:「当社の3年以内離職率は15%です。製造業の平均(約19-28%)を下回っており、長く働ける環境が整っています。」
注意:離職率を求人票に記載する際は、集計期間と対象を明記してください。「離職率0%」と書いても、それが直近1年間で入社者が1人しかいない場合と、10年間で50人全員が定着している場合では意味がまったく異なります。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 高卒の離職率は大卒より高いですか?
全体では高卒37.9%に対し大卒33.8%で、高卒のほうが約4ポイント高い水準です(令和4年3月卒、厚生労働省)。ただし、工業高校卒に限ると16.3%(全工協調べ、2020年度)で、大卒より大幅に低い水準です。学科と職種のマッチ度が離職率を大きく左右します。
Q2. 離職率が最も低い業界はどこですか?
電気・ガス・熱供給・水道業の約11〜12%が最も低い水準です。インフラ系は待遇が良く雇用が安定しているため、離職率が低い傾向にあります。次いで製造業(約19〜28%)、鉱業(約20%)が低い水準です。
Q3. 製造業の高卒離職率はどのくらいですか?
約19〜28%で全産業の中で低い水準です。特に大手メーカーほど離職率が低い傾向にあります。工業高校で学んだ専門知識を活かせる職場環境がマッチ度を高めています。
Q4. 建設業の高卒離職率はどのくらいですか?
約29%で、宿泊業・飲食サービス業の64.7%等と比べると大幅に低く、全産業平均の37.9%も下回っています。資格取得制度が充実している企業ほど定着率が高い傾向です。
Q5. 高卒が離職する主な原因は何ですか?
最大の原因は情報不足によるミスマッチです。求人票だけでは伝わらない「社風・雰囲気・人間関係」のギャップが離職の引き金になります。高卒採用は1人1社制で比較検討の機会が限られるため、職場見学や採用HPなど入社前の情報提供が定着率を大きく左右します。
関連記事
出典・参考資料
- ・ 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」令和7年10月公表 — 3年以内離職率(高卒37.9%、大卒33.8%)、産業別上位5業種の離職率
- ・ 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」各年度 — 令和2年・3年・4年3月卒の年度別推移データ
- ・ JILPT(労働政策研究・研修機構)— 産業別離職率の詳細分析データ
- ・ nippon.com — 産業別離職率の整理・比較データ
- ・ 全国工業高等学校長協会(全工協)— 工業高校卒の3年以内離職率16.3%(2020年度)
- ・ コクリコ(講談社)— 工業高校卒の低い離職率の要因分析
- ・ ハイスク — 愛知県の県外就職率4.6%、就職決定率99.9%
- ・ 高卒採用Lab(株式会社ジンジブ)— 東海地方の定着率に関するデータ
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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