徳島県の若者流出と Uターン採用
明石海峡大橋経由の関西流出を止める高卒採用戦略
徳島県の大学進学時県外転出率は66.9%。20-24歳の転出超過は男性146人・女性215人で、女性の流出が男性の1.4倍です。徳島県の若者は、関西圏に出ていきます。
理由は明確です。明石海峡大橋でバス2時間の大阪・神戸が「日帰り圏」に入っているからです。鳴門・板野エリアからは特に近く、徳島市内からでも梅田まで2時間程度。「すぐ手の届く都会」が、進学・就職の選択肢として常に視界に入っています。
徳島経済研究所の推計では、2050年に県人口は33.2%減少(全国7番目の減少率)、県内高卒就職者は473人まで減少する見通しです。今の3.21倍の求人倍率は通過点で、若者を地元に残せない企業は、加速度的に採用が難しくなります。
この記事では、徳島県の若者流出の実態を出典付きで整理し、サテライトオフィス72社(全国2位)の文脈をどう中小企業が活用するか、そしてUターン採用のタイミング設計までを解説します。
徳島県の若者流出の実態
大学進学時の流出と就職時の流出、2つの波がある
| 項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 大学進学時県外転出率 | 66.9% | 3人に2人が県外の大学へ進学。県内大学は徳島大学・鳴門教育大学・四国大学等に限られる |
| 20-24歳転出超過(男性) | 146人 | 就職・転職による流出 |
| 20-24歳転出超過(女性) | 215人 | 男性の1.4倍。事務系・サービス系の県外就職が多い |
| 徳島県人口 | 67.6万人 | 四国で最も少ない(2025年9月現在) |
| 2050年人口減少率 | -33.2% | 全国7番目の減少率。約48万人まで減少 |
| 2050年高卒就職者推計 | 473人 | 現在の797人から約40%減(徳島経済研究所推計) |
| サテライトオフィス進出数 | 72社 | 全国2位。神山町・美波町が中心 |
3人に2人が県外の大学へ進学。県内大学は徳島大学・鳴門教育大学・四国大学等に限られる
就職・転職による流出
男性の1.4倍。事務系・サービス系の県外就職が多い
四国で最も少ない(2025年9月現在)
全国7番目の減少率。約48万人まで減少
現在の797人から約40%減(徳島経済研究所推計)
全国2位。神山町・美波町が中心
どこからどこへ流出しているか
エリア別に出ていく先と理由が違う
| 流出元 | 流出先 | 主な要因 | 採用への影響 |
|---|---|---|---|
| 徳島市・小松島周辺 | 大阪・神戸・京都 | 大学進学・大手就職 | 事務系・サービス系・IT 系の流出が多い |
| 阿南市・南部 | 徳島市内・大阪 | 日亜化学以外の選択肢の少なさ | 中小製造業・サービス業の人材不足が深刻 |
| 三好市・西部山間部 | 徳島市内・関西圏 | 生活インフラ・公共交通の不足 | 農林業・建設業・観光業の担い手不足 |
| 鳴門市・板野郡 | 大阪・神戸 | 明石海峡大橋経由でアクセス最速 | 製造業・サービス業の早期離職が多発 |
要因
大学進学・大手就職
影響
事務系・サービス系・IT 系の流出が多い
要因
日亜化学以外の選択肢の少なさ
影響
中小製造業・サービス業の人材不足が深刻
要因
生活インフラ・公共交通の不足
影響
農林業・建設業・観光業の担い手不足
要因
明石海峡大橋経由でアクセス最速
影響
製造業・サービス業の早期離職が多発
サテライトオフィス72社の文脈を中小企業が活用する
「徳島=何もない田舎」のイメージは過去のものになった
徳島県は2011年から全国に先駆けてサテライトオフィスの誘致に取り組み、累計72社が県内に拠点を構えました。全国2位の実績です。神山町は「サテライトオフィスの聖地」として全国的に知られ、美波町でもIT・クリエイティブ系の企業集積が進んでいます。
これは中小企業の採用にも有利な文脈を提供します。10年前は「徳島=東京・大阪より遅れている」というイメージが強かったところ、今は「徳島=地方でも先端的な働き方ができる場所」という再評価が、地元の高校生・保護者にも届いています。
中小企業が神山モデルを採用メッセージに取り込む方法
- •求人票・会社案内に「光回線完備」「テレワーク可」「サテライトオフィス連携実績」を明記する
- •神山町・美波町のサテライトオフィス進出企業と協業実績があれば取引先一覧で開示
- •「神山バレー」「美波のIT拠点」など地域ブランドを採用パンフレットに織り込む
- •自社のIT化・DX推進実績(IoT導入・3D設計・業務システム自社開発等)を見せる
- •「徳島で IT × ものづくり をやる会社」というポジショニングを打ち出す
高卒人材の地元定着 5 つの施策
「待遇」だけでなく「徳島で働く意味」を伝える
施策 1:高校1〜2年生からの早期接点づくり
就職活動が3年生で始まる前に「徳島の中小企業=こんな会社がある」という認識を高校生に持たせます。具体的には、ジョブカフェとくしまや学校経由の職場見学・出前授業・職業講話の機会を積極的に取りに行く。1〜2年生のうちに自社を知ってもらえれば、3年生での求人票を見て「あ、あの会社」と認識してもらえます。
施策 2:「徳島で暮らすメリット」を数値で提示
「地元の方がいい」と感情論で説得しないこと。可処分所得・生活時間・通勤ストレス・実家活用での貯蓄可能額——これらを具体的な数字で見せます。徳島市の1Kの家賃4〜5万円 vs 大阪市7〜8万円、月3万円の差は年間36万円。実家暮らしの場合は年間100万円以上の貯蓄も現実的、という事実は知らない高校生が多いです。
施策 3:「徳島の暮らしの魅力」を仕事と切り分けて発信
Z世代はワークライフバランスを重視します。仕事の魅力だけでなく、徳島での暮らしそのものの魅力をSNSで発信しましょう。「阿波おどりの本番に参加できる」「週末は海陽町でサーフィン」「祖谷渓・大歩危小歩危でラフティング」——徳島の自然・文化資源は実際に大きな価値です。社員の休日の過ごし方を Instagram・TikTok で発信することが、地味だが効きます。
施策 4:キャリアパスの可視化
「地元の中小企業に入ったら一生そのまま」というイメージを払拭するために、3年・5年・10年後の昇進と年収モデルを具体的に提示します。資格取得支援制度(費用全額会社負担・勤務時間中の勉強OK)を明示することで、「この会社で成長できる」という未来像が見えるようにします。
施策 5:公的支援の最大活用
ジョブナビとくしま(県運営の就職情報サイト・求人掲載無料)、ジョブカフェとくしま(合同企業説明会・キャリアカウンセリング無料)、とくしまジョブステーション(就職マッチング支援)を全部使う。ハローワーク徳島の学卒ジョブサポーターとも連携。これらは無料で、徳島県内の高校生とのマッチング機会を最大化できます。
Uターン採用 — 県外に出た若者を呼び戻す
66.9%の流出のうち、一定数は「いずれ徳島に戻りたい」と考えている
タイミング 1:お盆・年末年始の帰省シーズン(8月・12月〜1月)
帰省で徳島に戻っている若者向けの会社説明会・工場見学会を開催。「帰省のついでに見学」のハードルを下げる。土曜日午前中の開催が参加率高い。
タイミング 2:大学3年生の春休み(2月〜3月)
就職活動を始める時期。県外大学の徳島県出身者をターゲットに、SNS・ジョブナビとくしま・ハローワーク徳島と連携した情報発信を実施。
タイミング 3:30代の転職・結婚・出産タイミング
「子育ては徳島でしたい」という意識が出る時期。中途採用枠で迎え入れる準備をしておく。地元の保育園情報・住宅情報も会社案内に同梱できると親切。
Uターン採用は高卒採用とは別の戦線ですが、根は同じです——徳島での暮らしの魅力を継続的に発信し、「いつでも戻ってきていい」と思える環境を作っておくこと。1人のUターン採用が、保護者世代に「あの会社は徳島出身者を呼び戻してくれる」と認識されれば、次年度の高卒採用にも追い風になります。
2050 年 473 人時代を見据えて、今から
徳島県の若者流出は明石海峡大橋という構造に根ざしていて、これは変えられません。変えられるのは、出ていった若者が戻ってこれる道と、地元に残った若者が誇りを持てる仕事の中身です。サテライトオフィス72社という追い風を中小企業が活用し、ジョブカフェとくしま・ジョブナビとくしまという公的支援を使い倒し、生活コスト比較を可処分所得で見せる——これらを地道に積み上げることが、10年後の競争力を作ります。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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