香川県の学校訪問完全マニュアル
タダノ・今治造船・番の州の大手と同じ学校で中小企業が選ばれる方法
香川県の主要工業高校は 5 校(高松工芸・坂出工業・多度津・観音寺総合・志度)。ここに香川を代表する大手——タダノ、今治造船丸亀事業本部、川崎重工業坂出工場、三菱ケミカル坂出事業所、コスモ石油坂出製油所、大倉工業、アオイ電子——が一斉に求人票を持ってきます。
求人票を出しただけでは、先生の記憶にすら残りません。「どの学校に、いつ、何を持って、どう話すか」を事前に設計しておくことが、中小企業が大手と同じ学校で選ばれるための前提条件です。
この記事では、香川県の主要工業高校 5 校 + 商業高校 3 校 + 香川高専 2 キャンパスへの具体的な訪問計画と、年間スケジュール、訪問時の持ち物、NG 事例まで解説します。
なぜ学校訪問が成否を分けるのか
大卒採用と高卒採用の決定的な違いは、学校(進路指導の先生)の介在度合いです。大学生がスマートフォンで企業を探すのに対し、高校生の就職活動は学校の指導下で行われます。一人一社制のもと、生徒は先生が推薦した 1 社にしか応募できません。
香川県では一人一社制が 10 月 31 日まで続きます(11 月 1 日以降に複数応募解禁)。9 月の応募開始から 10 月末まで、先生が推薦した 1 社で勝負することになります。その 1 社に自社を選んでもらうために、7 〜 8 月の訪問で関係を築いておく必要があります。
先生の影響力
高卒就職者の応募先は、進路指導の先生の助言と学校に届いた求人票の中から決まります。香川県は学校と企業の関係が密接な地域です。先生から見て「信頼できる中小企業」になれるかが、応募の有無を左右します。
主要工業高校 5 校 — 中小が選ばれる訪問戦略
各校の学科構成と、競合する大手企業を明示。中小企業の現実的なアプローチを具体化
高松工芸高校(高松市番町2-9-30)
機械・電気・工業化学・建築・デザイン・美術(6学科)
県内最大規模の工業高校。機械科と電気科に企業が殺到する。
この学校で競合する大手
タダノ・大倉工業・アオイ電子・百十四銀行(事務系)・四国電力
中小企業の現実的なアプローチ
- •機械科・電気科が満員なら、工業化学科・建築科に焦点を絞る
- •デザイン科・美術科は工業高校の中で見落とされがち。クリエイティブ系企業はここで採用機会あり
- •6 学科ある分、学科別の単独求人で先生の記憶に残る
坂出工業高校(坂出市御供所町1-1-2)
機械・電気・化学工学・建築(4学科)
番の州臨海工業団地に隣接。化学工学科は県内唯一。
この学校で競合する大手
川崎重工業坂出工場・三菱ケミカル坂出事業所・コスモ石油坂出製油所
中小企業の現実的なアプローチ
- •化学工学科は番の州の大手3社の指定校状態。中小は機械科・電気科を狙う
- •通勤30 分以内の工場ならアピールポイント。番の州への通勤は朝の渋滞で 1 時間超になることがある
- •建築科は地元工務店・設計事務所に流れやすい。早期接触で先取り
多度津高校(仲多度郡多度津町栄町1-1-82)
機械・電気・土木・建築・海洋技術・海洋生産(6学科)
海洋系学科は今治造船グループへの実質指定校。
この学校で競合する大手
今治造船丸亀事業本部・多度津造船・四国フェリーボート関連
中小企業の現実的なアプローチ
- •海洋技術科・海洋生産科は今治造船グループに事実上直行。中小造船・舶用機械は厳しい
- •土木科は瀬戸大橋関連インフラ・地元建設業に強い。中小建設業はここを最優先
- •機械科・電気科は造船以外の製造業(食品機械・農業機械・ポンプ等)に振り分ける余地あり
観音寺総合高校(観音寺市古川町1010)
機械・電気・電子・総合学科
西讃エリア唯一の工業系。観音寺市・三豊市の人材供給源。
この学校で競合する大手
西讃の食品メーカー・三豊地域の中小製造業
中小企業の現実的なアプローチ
- •大手企業の訪問が比較的少ない=中小企業が先生に覚えてもらえる
- •通勤距離で勝てる:観音寺・三豊地域の事業所は徒歩・自転車・原付通勤可能なケースが多い
- •総合学科は商業系・サービス系の求人も対象に。普通科生が「就職に切り替え」する経路
志度高校(さぬき市志度366)
電子機械・商業(複合校)
東讃の工業系。隣接高松市の企業との競合が激しい。
この学校で競合する大手
東讃・高松東部の中堅企業
中小企業の現実的なアプローチ
- •電子機械科は FA・メカトロニクス系企業との相性が良い
- •商業科併設:技術職と事務職を同時に提案できる学校
- •東讃エリアの企業は「自宅から通える」が最強の武器。高松まで通勤させる大手より優位
商業高校 3 校 — 事務職・サービス職の人材源
技術職以外の採用なら、商業系・複合校が主戦場
高松商業高校(高松市松島町1-18-54)
商業・情報数理・英語実務
商業科の名門。簿記2級・情報処理検定の取得率が高い。主な就職先は事務職・経理・営業事務・金融・小売の即戦力。
英語実務科は貿易事務・国際物流での採用機会。中小でも輸出入関連業務があるなら強み。
坂出商業高校(坂出市寿町2-2-12)
商業
坂出・宇多津エリアの事務職人材供給源。主な就職先は番の州周辺企業の事務職・坂出駅前商業の販売職。
宇多津・坂出の中小企業は通勤距離で大手と差別化できる学校。
観音寺第一高校(観音寺市茂木町4-1-15)
普通・商業(観光ビジネス)
進学校でありながら商業科を併設。観光ビジネス科は四国遍路観光・讃岐うどん観光に対応。主な就職先は西讃の観光業・小売・サービス・地域金融。
進学校の就職組は人数が少ないが学力が高い。スキル教育より責任ある仕事を任せる方針で訴求。
香川高専 2 キャンパス — 5 年制の技術者
高卒採用とは別ルート。高度な専門技術を持つ 20 歳の人材を採れる
香川高専 高松キャンパス(高松市勅使町355)
機械工学・電気情報工学・機械電子工学・建設環境工学(4学科)
主な就職先:製造業の設計・開発職、電気・情報系エンジニア、建設コンサルタント
5 年制。高卒の一人一社制は適用外。進路指導は 4 〜 5 年生時に活動。
香川高専 詫間キャンパス(三豊市詫間町香田551)
通信ネットワーク工学・電子システム工学・情報工学(3学科)
主な就職先:IT 企業のシステムエンジニア・通信インフラ・組込みソフト開発
5 年制。詫間は三豊市にあるため、西讃エリアの IT 企業との連携機会。
高専生は大卒と高卒の中間
高専生は 5 年間で大卒に近い専門知識を身につけ、20 歳で社会に出ます。給与体系は「高専卒」として大卒と高卒の中間に設定されるのが一般的です。技術力は高いため、中小企業にとっても有力な採用チャンネル。就職担当教員へのアポイントは必須で、訪問時期は 4 〜 5 年生の就職活動が始まる 4 月が理想です。
年間スケジュール — いつ・何のために訪問するか
「7 月だけ訪問」では関係は築けない
| 時期 | 訪問の目的 | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| 4〜5月 | 関係構築・情報収集 | 新年度の挨拶訪問。進路指導主事の異動確認。前年度の採用実績がある学校は卒業生の活躍報告を持参 |
| 6月 | 求人票準備・戦略立案 | 求人票の最終確認。ハローワークへの求人申込み。訪問先リスト・優先順位付け。6 月中にアポイント確保 |
| 7月(最重要) | 求人公開・学校訪問解禁 | 7 月 1 日に解禁。最初の 1 週間で高松工芸・坂出工業・多度津・観音寺総合を訪問。求人票・会社案内・OB/OG リストを持参 |
| 8月 | 職場見学受け入れ | 夏休み中の職場見学・会社説明会の実施。先輩社員(できれば入社 1 〜 3 年目)との交流タイムを設ける |
| 9月 | 応募・選考開始 | 9 月 5 日応募書類受付開始。9 月 16 日選考開始。応募から内定通知まで原則 3 日以内(遅くとも 7 日以内)の通知義務 |
| 10月 | 一人一社制継続 | 香川県の申し合わせで 10 月末まで一人一社制が続く。未充足の場合は学校との連携を強化 |
| 11月 | 複数応募解禁・追加募集 | 11 月 1 日以降は複数応募が可能。未充足企業は追加募集。再度の学校訪問 |
| 12〜3月 | 内定者フォロー・次年度準備 | 内定者への定期連絡。入社前研修。次年度に向けた先生への報告と感謝 |
新年度の挨拶訪問。進路指導主事の異動確認。前年度の採用実績がある学校は卒業生の活躍報告を持参
求人票の最終確認。ハローワークへの求人申込み。訪問先リスト・優先順位付け。6 月中にアポイント確保
7 月 1 日に解禁。最初の 1 週間で高松工芸・坂出工業・多度津・観音寺総合を訪問。求人票・会社案内・OB/OG リストを持参
夏休み中の職場見学・会社説明会の実施。先輩社員(できれば入社 1 〜 3 年目)との交流タイムを設ける
9 月 5 日応募書類受付開始。9 月 16 日選考開始。応募から内定通知まで原則 3 日以内(遅くとも 7 日以内)の通知義務
香川県の申し合わせで 10 月末まで一人一社制が続く。未充足の場合は学校との連携を強化
11 月 1 日以降は複数応募が可能。未充足企業は追加募集。再度の学校訪問
内定者への定期連絡。入社前研修。次年度に向けた先生への報告と感謝
11 月 1 日の意味
香川県は 10 月 31 日まで一人一社制が続きます。全国的には 9 月末や 10 月初旬に複数応募が解禁される県もありますが、香川県は遅めの設定です。つまり、9 月の応募開始から 10 月末までの 2 ヶ月間、先生が推薦した 1 社で生徒は勝負します。その 1 社に選ばれるための関係構築が 7 〜 8 月の訪問です。
訪問時の持ち物
「準備が 8 割」
必須持参物
- •求人票のコピー(ハローワーク受理済・複数部)
- •会社案内(写真多めで職場の雰囲気が伝わるもの)
- •名刺(先生用・受付用で 10 枚以上)
- •OB・OG リスト(その学校の卒業生の在籍状況)
- •職場見学会の案内チラシ(日程・内容・申込方法)
あると差がつく準備物
- •若手社員のインタビューシート(入社 1 〜 3 年目の写真付き)
- •研修カリキュラム資料(入社後の教育体制)
- •資格取得支援制度の一覧
- •先輩社員の動画 QR コード(職場紹介動画)
- •訪問記録ノート(前回の話題・先生の名前をメモ)
香川県ならではの注意点
香川県は面積が全国最小です。「通勤圏」の感覚が他県とは異なります。高松市から観音寺市まで車で約 1 時間、さぬき市まで約 30 分。「県内どこからでも通勤可能」を資料に明記すると先生は安心して推薦できます。マイカー通勤の可否・駐車場の有無は必ず記載しましょう。
やってはいけない NG 事例
学校で一度失った信頼を取り戻すのは難しい
アポなし訪問
先生の時間を奪う行為。求人倍率が高水準である以上、工業高校には殺到する企業が多く、先生の時間は逼迫している。電話アポイントは授業時間(8:50〜15:30)を避け、放課後(16:00〜17:00)にかける。
「誰かいい子いませんか」という漠然とした依頼
求める人物像を明確に伝える。「機械科で旋盤実習に取り組んだ生徒を 1 名」のように学科 + 学習内容を具体化する。
求人条件を即答できない
給与・休日・勤務時間・残業時間・社会保険・寮の有無は暗記する。曖昧な回答は先生に「採用本気度が低い」と判断される。
採用した生徒が辞めても連絡しない
早期離職の報告と改善策を伝えないと、二度と推薦されない。香川は学校と企業の口コミネットワークが密接。
求人時期だけの「年 1 回訪問」
4 〜 5 月の挨拶訪問・7 月の解禁訪問・10 月の状況報告・3 月の卒業報告で年 4 回が目安。
大手との比較で自社をアピール
「タダノさんよりうちの方が…」は厳禁。先生はタダノにも生徒を推薦している。「うちは中小だからこそできること」を語る。
面接で禁止質問をする
本籍地・家族構成・宗教・支持政党・恋人の有無は法律で禁止。発覚すれば学校から全面取引停止。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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