1. 全国の求人倍率推移
高卒の求人倍率は過去30年で最も高い水準にある。厚生労働省が公表する「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」によると、令和7年3月卒の求人倍率は4.10倍で過去最高を更新しました。
| 年度 | 求人倍率 | 備考 |
|---|---|---|
| 令和7年3月卒 | 4.10倍 | 過去最高 |
| 令和6年3月卒 | 3.98倍 | |
| 令和6年9月末 | 3.91倍 | |
| 大卒(参考) | 1.75倍 |
求人数
約49万9千人
求職者数
約12万1千人
バブル期の1992年には求人167万人・求職50万人でしたが、現在は求人約49万9千人・求職約12万1千人です。求人数はピーク時の3分の1以下に減っているにもかかわらず、求職者がそれ以上に減少しているため、倍率は上昇し続けています。
出典: 厚生労働省「令和7年3月末現在 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」
4.10倍の意味
求人倍率4.10倍とは、高校生1人に対して4件以上の求人がある状態です。企業から見れば、4社に1社しか採用できない計算になります。「求人票を出せば誰か来る」時代はすでに終わっています。
2. なぜ倍率が上がっているのか
求人倍率上昇の主因は「求人増」ではなく「求職者減」(少子化+進学率上昇)である。企業の採用意欲が高まっているだけでなく、そもそも高校を卒業して就職する若者の数が構造的に減少しています。
高校卒業者数
約92万5千人
令和6年3月卒
就職希望者数
約12万9千人
全体の13.8%
5年間の減少数
約6万人減
就職希望者ベース
高校卒業者のうち就職を希望する生徒は全体のわずか13.8%です。大学・短大・専門学校への進学率が上昇し続けており、就職市場に出てくる高校生の絶対数が減っています。5年間で就職希望者は約6万人減少しました。
この変化は一時的なものではありません。少子化の進行と進学率の上昇は構造的なトレンドであり、今後も高卒求職者の減少は続くと見られています。つまり、企業にとって高卒人材の確保はこれからさらに難しくなります。
出典: 文部科学省「学校基本調査」/ プログラマカレッジ「高卒就職者数の推移」
構造的な変化が意味すること
求人倍率の上昇は「景気が良いから」ではなく、「若者が減っているから」です。景気に関係なく、高卒人材の獲得競争は激化し続ける。待っているだけでは人は来ません。
3. 学科別の求人倍率と就職率
工業高校の求人倍率は20.6倍で、全学科中で圧倒的に高い。学科によって求人倍率と就職率には大きな差があります。企業が「どの学科の生徒を採りたいか」を明確にすることが、採用戦略の出発点になります。
| 学科 | 卒業者数 | 就職割合 | 就職率 |
|---|---|---|---|
| 工業科 | 63,695人 | 63.3% | 99.5% |
| 商業科 | 51,570人 | 33.6% | 98.9% |
| 農業科 | 21,324人 | 47.5% | 98.7% |
| 普通科 | 691,147人 | 6.1% | 95.9% |
出典: 文部科学省「学校基本調査」学科別進路状況
工業科は卒業者の63.3%が就職し、就職率は99.5%。ほぼ全員が就職を決めています。一方で卒業者数は約6万3千人と、普通科の約69万人と比べて圧倒的に少ない。この「需要と供給のギャップ」が20.6倍という高倍率の背景です。
普通科は卒業者が最多ですが、就職割合はわずか6.1%。就職率も95.9%と他学科より低く、「就職先が見つからなかった」ケースが一定数あることを示しています。普通科の生徒は進路選択の幅が広い分、企業に対する情報提供がより重要になります。
企業にとっての示唆
工業高校の生徒を採りたいなら、学校との関係構築は必須です。20.6倍の倍率で「求人票を送っただけ」では候補にすら入りません。逆に普通科の生徒は就職割合が低い分、丁寧な情報提供で「就職」という選択肢を見せることで、まだ開拓の余地があります。
4. 産業別の求人構成
高卒求人の約40%は製造業が占める。高校生向け求人の産業構成を見ると、製造業が圧倒的な割合を占めていることがわかります。
| 産業 | 求人構成比 |
|---|---|
| 製造業 | 39.9% |
| 卸売・小売業 | 10.6% |
| 建設業 | 8.6% |
| 医療・福祉 | 約8% |
| サービス業 | 約7% |
出典: Alternative Work「高卒就職者の産業別データ分析」
製造業が約4割を占める背景には、工場のライン作業や技術職では即戦力となる高卒人材への需要が根強いことがあります。特に東海地方は自動車・機械関連の製造業が集積しており、製造業の求人比率はさらに高くなります。
一方で、卸売・小売業、建設業、医療・福祉、サービス業もそれぞれ7〜10%台の求人を出しています。「高卒=製造業」というイメージは強いものの、実際には幅広い産業が高卒人材を求めているのが実態です。
製造業以外の企業が知るべきこと
製造業以外の業種は、高校生にとって「高卒で就職できる会社」として認知されにくい傾向があります。「うちの業界でも高卒で活躍できる」ということを、具体的な仕事内容とともに伝えることが重要です。特にIT・サービス業は、高校生の認知が低いにもかかわらず実際の求人は増えています。
5. 地域別データ(東海地方)
愛知県の高卒求人倍率は4.24倍で、全国平均を上回る。東海地方は製造業の集積地であり、高卒人材への需要が特に高い地域です。
| 都道府県 | 高卒求人倍率 | 備考 |
|---|---|---|
| 愛知県 | 4.24倍 | 就職決定者数 全国1位 |
| 三重県 | - | 有効求人倍率 1.15 |
| 岐阜県 | - | 有効求人倍率 1.44 |
| 静岡県 | 3.34倍 | 過去最高 |
出典: 中日BIZナビ / みえプラス / ヒトクル / 日本経済新聞
愛知県は高卒の就職決定者数が全国1位です。トヨタ自動車をはじめとする製造業の裾野が広く、高卒人材への需要が極めて高い。求人倍率4.24倍は全国平均の4.10倍を上回っており、東海地方の製造業企業にとって高卒人材の獲得は一段と厳しい状況です。
静岡県の3.34倍も過去最高を更新。三重県・岐阜県は高卒限定の求人倍率データが公表されていないものの、有効求人倍率(全年齢対象)がそれぞれ1.15倍・1.44倍と1倍を超えており、人手不足の傾向は同様です。
東海地方の企業が直面する現実
愛知県では高校生1人に対して4.24件の求人がある。求人票を送るだけで採用できる時代は完全に終わりました。学校訪問、職場見学の充実、指定校求人の獲得が、東海地方での高卒採用には不可欠です。
6. まとめ — 企業が今すべきこと
高卒の求人倍率は4.10倍(厚生労働省 令和7年3月末現在)で過去最高を更新した。主因は少子化と進学率上昇による求職者の構造的な減少であり、1992年に50万人いた高卒求職者は現在約12万人にまで減少している。この状況に対応するには、①学校との関係構築による指定校求人の獲得、②具体的な職種名を明示した求人設計、③キャリアパスの見える化による差別化が不可欠である。
特に工業高校は20.6倍と突出しており、企業にとって工業高校卒の人材獲得は年々困難になっている。構造的な変化のため今後も倍率の上昇が続く可能性が高い。
数字が示す現実は明確です。求人票を出して待つだけの採用は、もう成立しません。しかし、この構造的な変化は「採用活動の質」で差がつく時代が来たことも意味します。
学校との関係を構築する
先生に「この会社なら安心して生徒を送り出せる」と思ってもらうことが、指定校求人や優先推薦につながります。
求人設計を見直す
「製造スタッフ」ではなく「自動車部品の精密加工」のように、具体的な職種・仕事内容を明示する。高校生が「自分がやる仕事」をイメージできるかが鍵です。
キャリアパスを見せる
「入社3年で班長」「5年で技能検定取得」「10年で管理職」。入社後の成長の道筋を具体的に示すことで、保護者や先生の不安も解消できます。
求人倍率4.10倍の時代に必要なのは、「選ばれる企業」になるための行動です。高卒採用の全体像と具体的な進め方については「高卒採用の完全ガイド」をご覧ください。
7. よくある質問
Q. 高卒の求人倍率とは?
求職者1人に対する求人の数を示す指標です。4.10倍なら、1人の高校生に対して4件以上の求人がある状態を意味します。厚生労働省がハローワーク経由の求人・求職データをもとに集計しています。倍率が高いほど、企業にとっては採用が難しい「売り手市場」です。
Q. 高卒と大卒の求人倍率の差は?
高卒の求人倍率は4.10倍に対し、大卒は1.75倍です。高卒は大卒の2倍以上の売り手市場であり、企業にとって高卒人材の採用は大卒以上に競争が激しい状況です。大卒採用と同じ感覚で「求人を出せば来る」と考えていると、高卒採用では苦戦します。
Q. 工業高校の求人倍率が高い理由は?
工業高校の求人倍率は20.6倍です。製造業を中心に、実践的な技術を持つ人材への需要が高い一方、工業科の卒業者数は約6万3千人と限られています。卒業者の63.3%が就職し、就職率は99.5%とほぼ全員が内定を得ている状態です。需要が供給を大きく上回っていることが高倍率の理由です。
Q. 今後も倍率は上がる?
少子化が続く限り高卒の求職者数は減少するため、構造的に倍率の上昇が継続する見込みです。高校卒業者のうち就職希望者は約12万9千人(全体の13.8%)で、5年間で約6万人減少しています。進学率の上昇も続いており、就職市場に出てくる高校生はさらに減ると考えられます。
Q. 求人倍率が高い中で採用するには?
学校との関係構築と指定校求人で優先推薦を獲得することが最も有効です。高卒採用は先生の推薦が大きな役割を果たすため、「この会社なら安心」と思ってもらうことが鍵になります。また、具体的な職種を明示した求人設計、入社後のキャリアパスの見える化、職場見学の充実も効果的です。詳しくは「指定校求人の獲得方法」をご覧ください。
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データ出典
厚生労働省「令和7年3月末現在 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」
厚生労働省「令和6年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」(各時点集計)
文部科学省「学校基本調査」(学科別進路状況)
プログラマカレッジ「高卒就職者数の推移」
Alternative Work「高卒就職者の産業別データ分析」
中日BIZナビ(愛知県 高卒求人倍率データ)
みえプラス(三重県 有効求人倍率データ)
ヒトクル(岐阜県 有効求人倍率データ)
日本経済新聞(静岡県 高卒求人倍率データ)
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター





