転職先が無限の東京で、高卒社員を辞めさせない
採用した人材を失わないための、定着の仕組みづくり
高卒就職者の3年以内離職率は全国平均で37.9%(厚生労働省・令和4年3月卒)。約4割が3年以内に辞めています。全国トップの売り手市場を勝ち抜いてやっと採用した人材が、入社後すぐに辞めてしまう——これは東京の企業にとって、採用そのものより深刻な経営課題です。
東京には特有の離職リスクがあります。転職先が無限にあり「辞めても次がある」という空気。生活コストの高さからくる手取りへの不満。通勤ラッシュ。地方出身者のホームシック。同業他社の求人が日常的に目に入ること——。
都道府県別の高卒離職率は公表されていませんが、転職市場が最も活発な東京で「辞めるハードルが低い」のは確かです。だからこそ、「辞めない理由」を意図的に作る仕組みが要ります。この記事では、離職の構造と、従業員数の少ない会社でも明日からできる5つの定着策を解説します。
業種で離職率は大きく違う
全国の高卒3年以内離職率(厚生労働省・令和4年3月卒・産業別)
| 業種 | 3年以内離職率 | 東京での特徴 | 主な離職要因 |
|---|---|---|---|
| 宿泊・飲食サービス業 | 64.7% | 新宿・渋谷・銀座等に飲食店が集中 | シフト制・長時間・対人ストレス |
| 生活関連サービス・娯楽業 | 61.5% | 美容・エステ等が原宿・表参道に集積 | 立ち仕事・休日の少なさ |
| 教育・学習支援業 | 53.6% | 学習塾・専門学校等 | 精神的負担・不規則な勤務 |
| 医療・福祉 | 49.2% | 高齢化で介護需要が拡大 | 夜勤・人間関係・精神的負担 |
| 小売業 | 48.3% | 商業施設・コンビニ等 | 土日出勤・立ち仕事 |
| 製造業 | 比較的低い | 大田区・墨田区・板橋区の町工場 | 安定しているが待遇改善が課題 |
新宿・渋谷・銀座等に飲食店が集中
要因:シフト制・長時間・対人ストレス
美容・エステ等が原宿・表参道に集積
要因:立ち仕事・休日の少なさ
学習塾・専門学校等
要因:精神的負担・不規則な勤務
高齢化で介護需要が拡大
要因:夜勤・人間関係・精神的負担
商業施設・コンビニ等
要因:土日出勤・立ち仕事
大田区・墨田区・板橋区の町工場
要因:安定しているが待遇改善が課題
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒)
「辞めない理由」をつくる5つの施策
施策1:メンター制度(メンターがいないなら社長がやる)
離職理由の上位は「職場の人間関係」です。OJT担当とは別に、精神的な相談役となるメンターを置きます。入社3〜5年目の年齢が近い先輩が理想ですが、いなければ社長が務めて構いません。最初の3ヶ月は週1回・15分の短い対話を。地方出身者には「東京の生活」全般の相談も受けるとなお効果的です。
ポイントは聞き方です。「困ってない?」では「大丈夫です」しか返ってきません。「今月いちばん大変だったことは何?」と具体的に聞いてください。
施策2:入社前に「リアルな職場」を見せる(RJP)
入社前のミスマッチを防ぐには、良い面だけでなく大変な面も正直に伝えることです。きれいに整えた状態ではなく通常の業務風景を見せる。30分〜1時間の作業体験を職場見学に組み込む。「入社前に知りたかったこと」をテーマに先輩との座談会を開く——東京は求人情報が溢れ「もっと良い会社があるかも」と目移りしやすいからこそ、入社後のギャップを最小化しておくことが重要です。
施策3:定期的な1on1面談
業務連絡ではなく「対話」の時間を定期的に。入社後3ヶ月は週1回、その後は月2回、15〜30分で十分です。
答えやすい問いかけの例
- Q.「先週、仕事で一番楽しかったことは何?」
- Q.「今、一番わからないことって何?」
- Q.「この会社に入って、思ってたのと違ったことってある?」
- Q.「もしうちの会社を友達に紹介するとしたら、何て言う?」
最後の質問で出てくる言葉が「別に…」なら危険サイン。ポジティブな言葉が出れば定着の兆しです。
施策4:キャリアパスを「見える化」する
東京は転職先が多いからこそ、「この会社にいる先に何があるか」を具体的に示す必要があります。入社1年目〜10年目までの役職・スキル・年収モデルを可視化し、資格取得支援(費用会社負担・合格祝い金・資格手当)を制度化し、高卒入社で管理職まで昇進した先輩の事例を見せましょう。「ここにいれば成長できる」が、最大の引き止め要因です。
施策5:同期コミュニティを意図的につくる(東京で特に重要)
「辞めやすい環境」だからこそ、「辞めたくない理由」を人間関係から作ります。同期入社の横のつながりを会社が意図的に支援しましょう。
- •会社公式の同期グループで日常的なやり取りを促す
- •月1回、会社が費用補助する同期ランチ会
- •地方出身者には、同郷・近隣の社員との交流の場をつくる
入社1年目 — 時期別の重点フォロー
先手を打つためのチェックリスト
| 時期 | リスク | 本人の状態 | やるべきこと |
|---|---|---|---|
| 内定〜入社前 | 中 | 「東京で大丈夫か」期待と不安 | 内定者懇親会 / 社宅見学・生活オリエン / 先輩との座談会 |
| 入社〜2週間 | 高 | 環境激変「通勤がつらい」「覚えることが多い」 | 歓迎ランチ / メンター初回面談 / 毎日の声かけ |
| 1ヶ月(GW前後) | 最高 | 五月病「やっぱり合わない」「地元に帰りたい」 | 週1回の1on1 / 保護者への状況報告 / GW明けの特別フォロー |
| 3ヶ月 | 高 | 「成長していない」不安 | 本採用面談 / 成長の振り返り / 次3ヶ月の目標設定 |
| 6ヶ月 | 中 | 「友達の会社の方がいいかも」 | 給与明細の見方説明 / 昇給シミュレーション / キャリア面談 |
| 1年 | 中 | マンネリ「このままでいいのか」 | 後輩指導役 / 新しい担当・工程 / 2年目の目標設定 |
「東京で大丈夫か」期待と不安
- •内定者懇親会
- •社宅見学・生活オリエン
- •先輩との座談会
環境激変「通勤がつらい」「覚えることが多い」
- •歓迎ランチ
- •メンター初回面談
- •毎日の声かけ
五月病「やっぱり合わない」「地元に帰りたい」
- •週1回の1on1
- •保護者への状況報告
- •GW明けの特別フォロー
「成長していない」不安
- •本採用面談
- •成長の振り返り
- •次3ヶ月の目標設定
「友達の会社の方がいいかも」
- •給与明細の見方説明
- •昇給シミュレーション
- •キャリア面談
マンネリ「このままでいいのか」
- •後輩指導役
- •新しい担当・工程
- •2年目の目標設定
最重要:入社後1ヶ月が勝負
1年目の離職が最も多く、GW前後の1ヶ月目が最大のリスク期間です。東京では地方出身者のホームシックもこの時期にピークを迎えます。ここで集中的にフォローできるかどうかで、3年後の定着率が大きく変わります。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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