静岡県の高校生数推移と人口の見通し|求職者減少が続く採用市場の構造変化
静岡労働局・国立社会保障・人口問題研究所データに基づく分析
静岡県は製造品出荷額約19兆円(全国3位)を誇る工業県であり、スズキ・ヤマハ発動機をはじめとする自動車・楽器産業、全国1位の製紙・パルプ産業、焼津・清水の水産食品加工など、高卒人材への需要が極めて旺盛な県です。しかしその一方で、少子化の影響は確実に進行しています。高卒求職者は2019年の6,966人から2026年には5,088人へと約27%減少。求人数が過去最高の18,435人に膨らむ中、「求人は増えるのに人が来ない」という構造的人手不足が年々深刻化しています。
1. 求職者数と求人数の推移(2019〜2026年)
静岡県の高卒採用市場は「求人数の回復・拡大」と「求職者数の長期的な減少」という2つのトレンドが同時に進行しています。この「はさみ」の構造が求人倍率を押し上げています。
| 年度 | 求人数 | 求職者数 | 求人倍率 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2019(H31) | 16,921人 | 6,966人 | 2.43倍 | コロナ前ピーク(求職者数) |
| 2020(R2) | 17,453人 | 6,871人 | 2.54倍 | コロナ前の水準 |
| 2021(R3) | 13,546人 | 6,219人 | 2.18倍 | コロナ底。求人が最も落ち込む |
| 2022(R4) | 14,253人 | 5,664人 | 2.52倍 | 回復開始 |
| 2023(R5) | 16,717人 | 5,219人 | 3.20倍 | 倍率3倍台に突入 |
| 2024(R6) | 17,868人 | 5,033人 | 3.55倍 | 求人がコロナ前(2020年)を超える |
| 2025(R7) | 17,755人 | 5,053人 | 3.51倍 | 求人・倍率ともほぼ横ばい |
| 2026(R8) | 18,435人 | 5,088人 | 3.62倍 | 過去最高水準 |
コロナ前ピーク(求職者数)
コロナ底。求人が最も落ち込む
求人がコロナ前(2020年)を超える
求人・倍率ともほぼ横ばい
過去最高水準
全8年分のデータはテーブルを参照
出典:静岡労働局「令和8年3月高校・中学新規卒業者の職業紹介状況」表3 高校卒業者職業紹介状況の推移(令和8年1月末現在・各年1月末の値)
求職者数の減少
7年間で約1,878人(27%)減少
求人数の回復・拡大
コロナ底から約4,889人(36%)増加
【データ解説】「はさみ」の構造
求職者が7年間で27%減少する一方、求人数はコロナ底から36%回復しました。この「需要増 x 供給減」の二重構造が求人倍率を1.95倍(2017年)から3.62倍(2026年)へと押し上げた原因です。少子化のペースは加速しており、求職者数の減少は今後も止まりません。
2. 少子化が静岡県の高卒採用に与える3つの影響
影響1:製造業8,294人の求人が、減り続ける求職者を奪い合う時代へ
静岡県の製造業求人は8,294人で全産業の45%を占めます。これは求職者総数5,088人を単独で上回る規模です。今後、求職者がさらに減少すれば「製造業だけで全求職者を超える」状態が常態化し、建設業・サービス業など他業種は採用がさらに困難になります。スズキ・ヤマハのサプライチェーン全体で高卒人材の争奪戦が激化する見通しです。
影響2:工業高校からの「指名買い」が既に飽和状態
静岡県には浜松工業・静岡工業・沼津工業など13の工業高校がありますが、工業科の卒業者数には上限があります。自動車・製紙・化学・金属加工の各産業が同じ工業高校を「指名買い」する構造になっており、普通科・商業科からの採用チャネル開拓が急務です。
影響3:大手企業の高卒採用枠拡大
企業規模500〜999人の求人は前年比+17.2%と急増しています。大学新卒の採用が困難になる中、大手企業が高卒採用に本腰を入れ始めました。ブランド力・知名度・初任給で優位に立つ大手との競合が増えることで、中小企業は「求人票を出しても応募ゼロ」というリスクが現実味を帯びています。
静岡県の構造変化
求人18,435人 vs 求職者5,088人
製造業だけで求職者総数を上回る求人が出ている異常事態。
「応募が来る」前提の採用活動は通用しなくなっています。
3. 企業が今から取るべき5つの対策
少子化は止められませんが、採用活動の質を高めることで「選ばれる企業」になることは可能です。静岡県の産業特性を踏まえた具体的な対策を5つ提案します。
工業高校13校+商業高校との早期パイプライン構築
浜松工業・静岡工業・沼津工業をはじめとする13の工業高校は、製造業各社が激しく争奪するターゲットです。しかし求職者減少を考えると工業科だけでは不十分。商業高校・総合学科・普通科の就職指導担当への訪問を広げ、採用チャネルを複線化しましょう。
職場見学を「体験型」にアップグレード
求人票と職場見学が採用の勝負を決める静岡県では、見学の質が直結します。「工場を案内して終わり」ではなく、先輩社員との座談会・簡単な作業体験・社員食堂でのランチなど、「ここで働くイメージ」を持てるプログラムを設計しましょう。
SNS・動画で「見えない魅力」を発信
高校生はスマホで情報収集する世代です。Instagramで職場の日常を発信、TikTokで社員のリアルな1日を公開、YouTubeで先輩インタビューを掲載するなど、求人票では伝わらない企業の雰囲気を届けましょう。
定着率向上が「次の採用」を生む
高卒入社の先輩が活き活きと働いていれば、後輩の高校生にとって最大の安心材料になります。メンター制度・キャリアパスの明示・資格取得支援など、「辞めない組織」づくりが最も効果的な採用施策です。先生は定着実績のある企業を優先的に生徒に推薦します。
地域を超えた採用エリアの拡大
清水(9.45倍)や三島(6.41倍)のように求職者が極端に少ないエリアでは、隣接地域の高校への越境アプローチが有効です。また、県内就職率89.0%(令和7年3月卒)の裏を返せば11.0%は県外就職で、就職先は愛知県が最多です。隣接する愛知県西部や神奈川県西部からのUターン志望者にもアプローチする発想が求められます。
4. よくある質問
Q. 静岡県の高卒求職者数は何人ですか?
A. 令和8年1月末時点で5,088人です。2019年(平成31年)の6,966人から約27%減少しています。少子化と大学・専門学校への進学率上昇が主な要因です。
Q. 求人数はどのくらい増えていますか?
A. 2021年(コロナ底)の13,546人から2026年には18,435人へ、約36%増加しています。製造業を中心に求人は過去最高水準に達しています。
Q. 少子化時代に中小企業が高卒採用で勝つには?
A. 工業高校・商業高校との早期関係構築、体験型職場見学の充実、SNSでの情報発信、定着率向上が有効です。大手にない「地域密着」「成長機会」をアピールしましょう。
5. まとめ|構造的人手不足は「準備した企業」だけが乗り越えられる
静岡県の高卒採用市場は、以下の構造変化が不可逆的に進行しています。
- 求職者の継続減少:6,966人(2019年)から5,088人(2026年)へ27%減。
- 求人の過去最高更新:13,546人(コロナ底)から18,435人(2026年)へ36%増。製造業8,294人だけで求職者総数を超える。
- 大手参入の加速:500〜999人規模の求人が前年比+17.2%増(500人以上全体では+6.4%)。中小企業との競合がさらに激化。
この構造変化は景気循環ではなく、人口動態に基づくものです。「今年はたまたま採用できなかった」のではなく、市場の構造自体が変わっています。今から学校との関係構築・採用ブランディング・定着支援に取り組む企業だけが、これから先も安定的に人材を確保できるでしょう。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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データ出典:
- 静岡労働局「新規高等学校卒業予定者の求人・求職・内定状況」(令和8年1月末現在) (静岡労働局 PDF)
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」(2030年推計人口) — 国立社会保障・人口問題研究所
- 文部科学省「学校基本調査」令和7年度(県内就職率・県外就職先) — e-Stat
- 経済産業省「工業統計調査」
- 厚生労働省「職業安定業務統計」



