埼玉県の高校生数推移と今後の見通し
就職者割合9.4%時代の高卒採用戦略|文部科学省「学校基本調査」・埼玉県データに基づく分析
埼玉県は人口約729万人(2026年9月1日現在)を擁する全国第5位の大県ですが、高卒採用市場は「量」ではなく「割合」の問題に直面しています。令和7年3月卒の卒業者51,118人のうち就職を選んだのはわずか9.4%(9年連続低下で過去最低)。大学等進学率66.9%は過去最高を更新し続け、就職市場に出てくる高校生は年々減少しています。さらに県外就職率32.4%(関東で最も高い)が加わり、県内企業が実際にアプローチできる高卒人材は一層限られます。本記事では、埼玉県固有の構造的課題を整理し、2030年に向けた採用戦略を提案します。
1. 埼玉県の卒業者数・進路状況の推移
埼玉県の高校卒業者数は年間約5万人で推移していますが、就職者の割合は年々低下しています。首都圏には大学が多く、「大学に行くのが当たり前」という環境の中で、就職という進路選択はますます少数派になっています。
卒業者数・就職者割合の推移(令和3年〜令和7年3月卒)
| 年度 | 卒業者数(人) | 就職者割合 | 大学進学率 | 就職者数 |
|---|---|---|---|---|
| 令和3年3月卒 (2021) | 55,098 | 11.7% | 60.7% | 6,451 |
| 令和4年3月卒 (2022) | 54,053 | 10.9% | 63.4% | 5,880 |
| 令和5年3月卒 (2023) | 52,446 | 10.5% | 64.6% | 5,507 |
| 令和6年3月卒 (2024) | 50,543 | 9.5% | 65.9% | 4,813 |
| 令和7年3月卒 (2025) | 51,118 | 9.4% | 66.9% | 4,794 |
卒業 55,098人/進学 60.7%/就職者 6,451人
卒業 54,053人/進学 63.4%/就職者 5,880人
卒業 52,446人/進学 64.6%/就職者 5,507人
卒業 50,543人/進学 65.9%/就職者 4,813人
卒業 51,118人/進学 66.9%/就職者 4,794人
※ 出典:文部科学省「学校基本調査」(高等学校 卒業後の状況・国公私立計)。就職者割合・大学等進学率は卒業者数に対する割合です。
埼玉県の特徴:「卒業者は多いが就職者は少ない」
埼玉県の卒業者数51,118人(令和7年3月卒)は全国でもトップクラスの規模ですが、就職者割合9.4%は全国平均13.7%を大幅に下回ります。首都圏の大学アクセスの良さが進学率を押し上げ、「5万人の卒業者のうち就職は4,794人」という状況です。令和7年3月卒では、就職者4,794人のうち1,551人が県外に就職し、県内で就職したのは3,243人にとどまります(文部科学省「学校基本調査」)。
2. 県外就職率32.4%の構造と影響
埼玉県は県外就職率32.4%と関東で最も高い水準です(令和7年3月卒・全国で6番目)。この「3人に1人が県外に出る」構造は、高卒採用市場に根本的な影響を与えています。
首都圏の県外就職率比較
| 都道府県 | 県外就職率 | 主な流出先 | 背景 |
|---|---|---|---|
| 埼玉県 | 32.4% | 東京都 | 都心へのアクセスが良く、賃金格差が大きい |
| 千葉県 | 19.8% | 東京都 | 東京に隣接するが、埼玉県より県内就職の割合が高い |
| 神奈川県 | 19.8% | 東京都 | 県内の製造業が雇用を吸収 |
| 全国平均 | 18.9% | — | — |
流出先:東京都
都心へのアクセスが良く、賃金格差が大きい
流出先:東京都
東京に隣接するが、埼玉県より県内就職の割合が高い
流出先:東京都
県内の製造業が雇用を吸収
流出先:—
—
出典:統計リアル「県外就職者比率ランキング」
県外流出の実数インパクト
令和7年3月卒では、就職者4,794人のうち1,551人が県外に就職し、県内就職者は3,243人でした(文部科学省「学校基本調査」)。一方で県内の高卒求人数は19,268人(ハローワーク・令和7年3月末)にのぼります。この構造を理解した上で、県外に出る理由を一つでも打ち消す採用戦略が求められます。
3. 少子化が高卒採用に与える3つの影響
埼玉県は人口減少のペースが全国と比較して緩やかですが、18歳人口の減少と大学進学率の上昇という二重の圧力が高卒採用市場を直撃しています。
影響1:就職者割合の低下が止まらない
9年連続で低下し、令和7年3月卒で9.4%(過去最低)まで落ち込みました。大学等進学率66.9%の裏側で、就職を選ぶ高校生は10人に1人を下回りました。専修学校等への進学も19.6%(令和6年3月卒)あり、高校卒業後すぐに働く選択は急速にマイノリティ化しています。就職市場に出てくる人数そのものが構造的に減っているため、求人を増やしても応募が来ない状況が加速します。
影響2:工業高校卒業生の争奪戦が激化
埼玉県内には工業系高校が16校、商業系高校が18校、農業系高校が4校あります。特に工業高校卒業生は製造業にとって最も重要な人材供給源ですが、少子化に伴い定員の見直しも進んでいます。浦和工業・大宮工業・川口工業・川越工業といった伝統校は毎年安定した就職者を輩出していますが、複数の企業が同じ高校にアプローチするため、学校との関係構築が以前にも増して重要になっています。
影響3:大手企業の高卒採用枠拡大
大学新卒の採用が困難になる中、しまむら・ヤオコー・ベルクなど埼玉県に本社を置く上場企業も高卒採用枠を拡大しています。2026年9月からの1人2社制導入により、こうした知名度の高い企業への応募が集中しやすくなります。中小企業にとっては「応募すら来ない」リスクが高まります。
埼玉県の高卒採用市場の現実
卒業者5万人中、就職はわずか9.4%
県外就職32.4%で県内就職は3,243人(令和7年3月卒)
4. 2030年に向けた企業の対策
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、埼玉県は首都圏では比較的人口維持力が高いものの、18歳人口の減少は避けられません。大学進学率の上昇傾向と合わせ、高卒就職者数は減少が続くと見込まれます。
工業高校16校・商業高校18校との早期パイプライン構築
求人票を送るだけでなく、出前授業・工場見学・インターンシップを通じて高校1・2年生から自社を認知させる。埼玉県には工業高校16校があり、特に浦和工業・大宮工業・川口工業・熊谷工業は毎年多くの就職者を輩出しています。
「地元で働く」価値の見える化
県外就職率32.4%の背景には「東京の方が給料が高い」「知らない企業ばかり」という認識があります。通勤時間の短さ、転勤なし、地元の生活コストの低さ、先輩社員の定着率など「地元で働くメリット」を具体的な数値で訴求しましょう。
探究型インターンシップの活用
埼玉県教育局が推進する「探究型インターンシップ」は、高校生が企業課題に対する解決案を提案・発表するプログラムです。単なる職場体験ではなく、企業の魅力を深く知ってもらう機会として活用できます。
保護者向けの情報発信
高卒就職では保護者の影響力が大きく、内定辞退の約30%が保護者の反対によるものです。企業説明会での保護者向けセッション、Webサイトでの社員インタビュー、福利厚生の可視化など、保護者が安心できる情報発信が必要です。
定着率向上が最強の採用施策
先輩社員が長く活躍している企業は、学校からの信頼を勝ち取りやすくなります。メンター制度・資格取得支援・キャリアパスの明示など、入社後の育成に投資することが、結果として次年度以降の採用力向上につながります。
5. エリア別の専門高校分布と採用市場の特徴
埼玉県には工業系16校・商業系18校・農業系4校の専門高校があり、エリアごとに分布に偏りがあります。自社の所在エリアや採用ターゲットエリアの高校分布を把握しておくことが重要です。
| エリア | 主な専門高校 | 主要産業 | 採用の特徴 |
|---|---|---|---|
| さいたま・県南 | 浦和工業・大宮工業・川口工業・浦和商業・大宮商業 | IT・金属加工・サービス | 工業高校が最多で企業数も最多。東京との人材争奪が最も激しい。 |
| 川越・県央 | 川越工業・市立川越(商業科)・上尾高校 | 食品・化学・物流・小売 | 圏央道沿線の物流企業が急増。商業科卒は小売本社が吸収。 |
| 東部・東南 | 春日部工業・三郷工業技術・越谷総合技術 | 樹脂・印刷・食品加工・物流 | 中小製造業が多く、工業高校との関係が採用直結。 |
| 西部・秩父 | 狭山工業・秩父農工科学・所沢商業 | 輸送機械・精密機器・セメント | 地元密着型。秩父エリアは通学圏が限定されるため地元就職率が高い。 |
| 北部・利根 | 熊谷工業・久喜工業・熊谷農業・杉戸農業・深谷商業 | 機械・食品・物流 | 農業高校2校があり食品製造業との親和性が高い。工業団地への就職も多い。 |
浦和工業・大宮工業・川口工業・浦和商業・大宮商業
工業高校が最多で企業数も最多。東京との人材争奪が最も激しい。
川越工業・市立川越(商業科)・上尾高校
圏央道沿線の物流企業が急増。商業科卒は小売本社が吸収。
春日部工業・三郷工業技術・越谷総合技術
中小製造業が多く、工業高校との関係が採用直結。
狭山工業・秩父農工科学・所沢商業
地元密着型。秩父エリアは通学圏が限定されるため地元就職率が高い。
熊谷工業・久喜工業・熊谷農業・杉戸農業・深谷商業
農業高校2校があり食品製造業との親和性が高い。工業団地への就職も多い。
エリア選定のポイント
- ✔さいたま・県南:東京への流出を食い止めるため「通勤時間ゼロ・地元の安定」を武器に。
- ✔北部・利根:東京から距離がある分、地元志向が比較的強い。工業団地内の企業は合同で学校訪問するのも有効。
- ✔西部・秩父:通学圏が限定されるため県外流出リスクは低め。地元高校との密な関係構築で採用安定化が可能。
6. よくある質問
Q. 埼玉県の高校卒業者数は何人ですか?
A. 令和7年3月卒で51,118人(全日制・定時制合計)です。就職者は4,794人(9.4%)で、大学等進学率66.9%は過去最高、就職者割合は9年連続低下の過去最低です(文部科学省「学校基本調査」・埼玉県)。
Q. 埼玉県の県外就職率はなぜ高いのですか?
A. 東京都に隣接し、電車で容易にアクセスできる立地条件が最大の要因です。東京の高卒求人倍率は15.71倍(令和7年3月末)と桁違いに高く、賃金水準も高いため約3人に1人が県外就職を選択しています。
Q. 埼玉県に工業高校は何校ありますか?
A. 16校あります。浦和工業・大宮工業・川口工業・川越工業・春日部工業・熊谷工業・久喜工業・三郷工業技術・狭山工業・越谷総合技術・新座総合技術・進修館・秩父農工科学・児玉白楊・いずみ・清和学園の16校です。
Q. 中小企業が東京の企業に勝つ方法はありますか?
A. 通勤時間の短さ、転勤なし、生活コストの低さ、入社後の成長機会を具体的に訴求しましょう。また工業高校・商業高校への早期訪問で「顔の見える関係」を構築することが、大手やエリア外の企業にはできない強みになります。
7. まとめ|埼玉県の高卒採用市場を勝ち抜くために
埼玉県は人口700万人超・製造品出荷額全国6位の産業県ですが、高卒就職市場では「5万人の卒業者のうち就職はわずか9.4%」「その3割が県外流出」という二重の縮小構造に直面しています。
- •量ではなく割合の問題:卒業者は多いが就職者は少ない。9.4%(令和7年3月卒)という低い就職者割合を前提にした採用計画が必要。
- •県外流出を食い止める:「地元で働くメリット」を具体的に伝えられない企業は、東京に人材を奪われ続ける。
- •学校との関係が最重要:工業高校16校・商業高校18校との早期関係構築が、中小企業にとって最も確実な採用チャネル。
2030年に向けて高卒採用市場は確実に縮小します。今から「選ばれる企業」になるための準備を始めた企業だけが、少子化と県外流出の時代を乗り越えられます。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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