宮崎県の高卒求人倍率推移【2017〜2026年】
1.87倍が「採れる数字」ではない理由と九州各県比較
宮崎県の高卒求人倍率は 2026 年卒で1.87 倍(令和 6 年 7 月末・宮崎労働局)。全国平均 3.70 倍の約半分です。数字だけ見れば「企業にとって採用しやすい県」に見えます。しかし実態は異なります。
宮崎県の県内就職率は63.1%・全国 45 位。就職者 2,333 人のうち約 860 人が県外に流出しています(宮崎県学校基本調査・宮崎日日新聞)。求人倍率が低い理由は「需要が少ない」のではなく「県内に残った高校生だけで需給を計算したから」です。
本記事では、宮崎県の求人倍率の推移、九州各県との比較、低い理由の構造的分析、そして熊本 TSMC 効果を踏まえた 2030 年予測を解説します。
求人倍率推移(2017〜2026 年)
各年 7 月末現在の新規高卒求人倍率(宮崎労働局)
| 年度(3月卒) | 求人数 | 就職希望者 | 求人倍率 | 前年差 |
|---|---|---|---|---|
| 2017(H29) | 2,800人 | 2,680人 | 1.04倍 | — |
| 2018(H30) | 3,050人 | 2,620人 | 1.16倍 | +0.12 |
| 2019(H31) | 3,280人 | 2,560人 | 1.28倍 | +0.12 |
| 2020(R2) | 3,350人 | 2,510人 | 1.33倍 | +0.05 |
| 2021(R3) | 2,600人 | 2,470人 | 1.05倍 | -0.28(コロナ) |
| 2022(R4) | 2,950人 | 2,440人 | 1.21倍 | +0.16 |
| 2023(R5) | 3,400人 | 2,400人 | 1.42倍 | +0.21 |
| 2024(R6) | 3,800人 | 2,380人 | 1.60倍 | +0.18 |
| 2025(R7) | 4,100人 | 2,360人 | 1.74倍 | +0.14 |
| 2026(R8) | 4,370人 | 2,333人 | 1.87倍 | +0.13 |
求人 2,800 人 / 希望 2,680 人 / 前年差 —
求人 3,050 人 / 希望 2,620 人 / 前年差 +0.12
求人 3,280 人 / 希望 2,560 人 / 前年差 +0.12
求人 3,350 人 / 希望 2,510 人 / 前年差 +0.05
求人 2,600 人 / 希望 2,470 人 / 前年差 -0.28(コロナ)
求人 2,950 人 / 希望 2,440 人 / 前年差 +0.16
求人 3,400 人 / 希望 2,400 人 / 前年差 +0.21
求人 3,800 人 / 希望 2,380 人 / 前年差 +0.18
求人 4,100 人 / 希望 2,360 人 / 前年差 +0.14
求人 4,370 人 / 希望 2,333 人 / 前年差 +0.13
出典: 宮崎労働局
九州各県・全国平均との比較
宮崎は九州でも低水準。熊本 TSMC 効果が要警戒
| 都道府県 | 高卒求人倍率 | 主要産業 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 福岡県 | 約3.0〜3.5倍 | 自動車・半導体・IT | 九州最大の経済圏 |
| 大分県 | 約2.5〜3.0倍 | 石油化学・半導体・鉄鋼 | 大分コンビナート |
| 熊本県 | 約2.5〜3.0倍 | 半導体(TSMC)・農業 | TSMC効果で急上昇 |
| 鹿児島県 | 約1.8〜2.2倍 | 食品加工・農業・観光 | 農業県・宮崎と類似構造 |
| 宮崎県 | 1.87倍 | 食料品製造・農業・建設 | 農業県・県外流出が課題 |
| 全国平均 | 3.70倍 | — | 宮崎は全国平均の約半分 |
九州最大の経済圏(自動車・半導体・IT)
石油化学・半導体・鉄鋼の大分コンビナート
TSMC 効果で急上昇中
宮崎と類似する農業県構造
農業県・県外流出が課題
宮崎は全国平均の約半分
熊本 TSMC 効果が県北の流出を加速させる
隣県・熊本では TSMC 進出によって半導体関連の雇用が急増しています。県北の延岡・日向エリアからは通勤圏ではないものの、若手の転職先として熊本が新しい選択肢に加わりました。「採用しやすい」と油断していると、気づいた時には人材が熊本に流れていた、という事態になりかねません。
求人倍率が全国平均より低い理由
理由 1:県外就職率の高さ(約 37%)
宮崎県の県内就職率は63.1%(令和 7 年 3 月卒)・全国 45 位。就職者 2,333 人のうち約 860 人が県外に流出しています。福岡・大阪・東京の企業が宮崎県内の高校に直接求人を出しており、特に好条件の求人ほど県外企業が獲得しています。県内の求人倍率が低く見えるのは、県外就職者が「分母」から抜けているためでもあります。
理由 2:大手企業が限られる雇用構造
宮崎県内の大手企業は旭化成(延岡市・約 5,000 人)が突出しており、それ以外は中小規模の企業が大半です。大量採用を行う大手が少ないため求人数の総量が伸びにくく、結果として求人倍率が低く抑えられています。裏を返せば、中小企業にとっては大手との激烈な競争が少ない環境ともいえます。
理由 3:農業県ゆえの産業構造
宮崎県は食料品製造業が製造品出荷額で県内 1 位の「農業・食品加工県」です。農業関連の雇用は季節変動が大きく、通年での正規求人が相対的に少ない傾向にあります。一方で福岡・熊本のような自動車・半導体産業の大規模工場が少なく、大量の高卒求人を生み出す製造業基盤がやや弱いのが特徴です。
2030 年予測シミュレーション
少子化と熊本 TSMC 効果を踏まえた推計。条件が変われば数値は変動
| 年度 | 求人数(推計) | 希望者数(推計) | 倍率(推計) | 前提 |
|---|---|---|---|---|
| 2027(R9) | 約 4,500 人 | 約 2,200 人 | 約 2.0 倍 | 少子化 + 求人横ばい |
| 2028(R10) | 約 4,600 人 | 約 2,050 人 | 約 2.2 倍 | 高校生人口の減少加速 |
| 2030(R12) | 約 4,800 人 | 約 1,800 人 | 約 2.5〜3.0 倍 | 人口 95 万人台・採用困難時代 |
求人約 4,500・希望約 2,200。少子化 + 求人横ばい
求人約 4,600・希望約 2,050。高校生人口の減少加速
求人約 4,800・希望約 1,800。人口 95 万人台
採用戦略への示唆
宮崎県の人口は約 104 万人から 2030 年には 95 万人台に減少する見通しです(国立社会保障・人口問題研究所)。「今はまだ採用できている」企業も、5 年後には状況が一変します。隣県・熊本の TSMC 効果による人材吸引力も脅威です。今から高校との関係構築やインターンシップ体制の整備に着手することが、将来の採用力を左右します。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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