三重県の若者流出とUターン採用
県外就職率13.9%の構造と「三重を選ぶ理由」の作り方
三重県の高卒就職者のうち13.9%(約442人)が県外に就職しています(文部科学省・令和7年3月卒確定値)。86.1%は県内に残っている——これは決して悪い数字ではありません。
しかし問題は、流出している442人のほとんどが隣の愛知県に向かっていること。そして、大学進学者の県外流出率はさらに高いこと。三重県の企業が「若者流出」と向き合うためには、「止める」のではなく「三重を選ぶ理由を作る」ことが必要です。
1. 三重県の若者流出の実態データ
高卒就職者の県内就職率
86.1%
県内就職者 2,727人 / 就職者 3,169人
高卒就職者の県外就職率
13.9%
県外就職者 442人 / 就職者 3,169人
高卒よりも深刻なのは「大学進学者」の流出
三重県教育委員会のデータ(令和5年度実績)によると、大学進学者のうち約7割が県外の大学に進学しています。そしてその多くが、卒業後もそのまま県外で就職します。高卒者の県外流出率13.9%と比較すると、大学進学→県外就職のルートのほうがはるかに大きな流出経路です。
つまり、三重県の企業にとって高卒採用は「県内に人材を留めるための最も確実なチャネル」です。高卒で入社してくれた人材は86%が県内に残る。この事実を前提に採用戦略を立てるべきです。
2. エリア別の流出構造 — 流出先が違えば対策も違う
三重県は南北に長く、エリアによって「どこに流出するか」が全く異なります。北勢は名古屋に、伊賀は大阪に、東紀州は和歌山に。同じ「県外流出」でも構造が違うため、全県一律の対策では効果がありません。
北勢エリア(四日市・桑名・鈴鹿)→ 愛知県(名古屋)
近鉄名古屋線で桑名→名古屋が約30分。通勤圏であるため、「県外就職」のハードルが極めて低い。愛知の企業が三重の高校に直接求人票を送ることも珍しくない。
対策の方向: 初任給の差を「可処分所得」の比較で埋める(後述)。「転勤なし」「マイカー通勤」「実家暮らし」を前面に。
伊賀・名張エリア → 大阪府・奈良県
近鉄大阪線で名張→大阪難波が約70分。通勤圏とは言いにくいが、大阪の求人情報が自然と入ってくる。特に名張は生活圏が関西に近い。
対策の方向: 伊賀で暮らすメリット(家賃の安さ・自然環境・通勤ストレスの少なさ)を明確に。DMG森精機やミルボンなど「地元にも良い企業がある」という情報発信。
東紀州エリア(尾鷲・熊野)→ 津・四日市方面 or 和歌山
若者の流出先は県外というより「県内の都市部」。東紀州→津・四日市への県内流出が深刻。「地元に仕事がない」という認識が根強い。
対策の方向: 「この地域で暮らし続けることの意味」を伝える。医療・介護・建設・林業など、地域の存続に直結する仕事としてのやりがいを訴求。
3. なぜ流出するのか — 3つの構造的理由
理由1:愛知県の求人倍率4.82倍という引力
愛知県の高卒求人倍率は4.82倍(令和7年3月卒確定値)で、三重の3.06倍の1.6倍。求人数40,097人という巨大市場は「選択肢が多い」「条件の良い企業が見つかりやすい」という魅力があります。高校生にとって、選択肢が多い場所に目が向くのは自然な流れです。
理由2:「名古屋の大手」というブランド志向
保護者にとって「トヨタ系」「デンソー」「アイシン」という名前の安心感は絶大です。「知らない三重の会社」より「聞いたことがある名古屋の会社」を勧めたくなる気持ちは理解できます。この「保護者のブランド志向」が流出を後押ししています。
理由3:初任給の差(表面上の数字)
愛知県の大手企業は高卒初任給18〜20万円を提示する企業が多く、三重県の中小企業の16〜18万円とは月額で1〜2万円の差があります。年間で12〜24万円の収入差として見えるため、数字だけを比較すると愛知が選ばれます。
しかし「手残り」で考えると逆転するケースがある
愛知の大手に就職して一人暮らしを始めると、家賃5〜6万円+光熱費1〜2万円+食費が毎月かかります。初任給19万円から差し引くと、手残りは10〜12万円程度。一方、三重の中小で実家暮らしなら、初任給17万円がほぼそのまま可処分所得になります。この「表面上の数字 vs 実際の手残り」のギャップを、先生と保護者に伝えられるかどうかが勝負です。
4. 「三重を選ぶ理由」を作る — 企業ができる5つのアクション
「若者の流出を止める」のは不可能です。止めるのではなく、「それでも三重を選ぶ理由」を作るのが企業の仕事です。
1. 求人票に「三重で暮らすメリット」を具体的に書く
「転勤なし」「マイカー通勤可・駐車場無料」「実家から通えます」。これらは愛知の大手企業が書けないことです。さらに「年間休日○日」「残業月平均○時間」など、ワークライフバランスの具体的な数字を入れましょう。
求人票の具体的な書き方は 差別化戦略 で詳しく解説しています。
2. 保護者向けの情報発信を強化する
「名古屋にしなさい」と言う保護者が最大の壁です。保護者に対して「一人暮らしの生活費を差し引いた手残りの比較」「転勤リスク」「通勤時間」など、冷静な比較情報を提供しましょう。保護者説明会の開催や、自社サイトに保護者向けQ&Aページを設けることも有効です。
保護者対策の詳細は オヤカク完全マニュアル をご覧ください。
3. OB・OGの声を最大限活用する
「この高校の先輩が、この会社で元気に働いている」——これが先生にとって最も信頼できる情報です。若手社員の母校訪問を業務扱いにし、後輩に「三重で働くリアル」を語ってもらいましょう。
4. 職場見学で「実物」を見せる
求人票の文字だけでは伝わらない「職場の雰囲気」「先輩社員の人柄」を、夏休みの職場見学で体感してもらいましょう。見学に来た生徒がそのまま応募するケースは非常に多いです。保護者同伴の見学会も効果的です。
5. 「成長スピード」で大手と差別化する
大手企業では入社後数年間、限られた工程しか担当できないことがあります。中小企業なら入社1〜2年で多工程を経験でき、資格取得も早い。「大手に入るより早く一人前になれる」——これは事実であり、中小企業にしか言えない強みです。キャリアパス(1年目→3年目→5年目)を求人票や職場見学で見せましょう。
5. Uターン採用 — 一度出た人材を呼び戻す
高卒で県外に出た若者、大学進学で県外に出た若者の中には、数年後に「やっぱり三重に戻りたい」と考える人が一定数います。このUターン希望者を確実に採用するための仕組みを作りましょう。
Uターン採用の3つの打ち手
- •帰省シーズンにWeb広告を出す — お盆・年末年始に三重県関連のキーワードで広告を出稿。「三重 転職」「三重 Uターン」で検索する層にリーチする
- •オンライン面接を用意する — 県外在住者が応募しやすいよう、一次面接はオンライン完結にする。「平日夜・土日対応可」をアピール
- •移住支援制度を求人情報に明記する — 三重県の移住支援金(東京圏からの移住:単身60万円/世帯100万円)や奨学金返還支援制度を、求人票や採用サイトで大きくアピール
6. 活用できる行政の支援制度
三重県には若者の県内定着やUターンを後押しする行政制度があります。これらを自社の採用パッケージの一部として求職者に提示しましょう。
| 制度名 | 内容 | 窓口 |
|---|---|---|
| 移住支援金 | 東京圏等から三重県に移住し就業した方に支給(単身60万円/世帯100万円) | 三重県・各市町 |
| おしごと広場みえ(ジョブカフェ三重) | 若者向けワンストップ就職支援。企業向けの合同説明会も開催 | 三重県 |
| みえ企業まるわかりNAVI | 県内企業情報ポータル。求職者に自社を見つけてもらう接点 | 三重県 |
| 奨学金返還支援制度助成 | 従業員の奨学金返還を支援する企業に対し、県が費用の一部を補助 | 三重県 |
東京圏等から移住し就業した方に支給(単身60万円/世帯100万円)
若者向けワンストップ就職支援。合同説明会も開催
県内企業情報ポータル
従業員の奨学金返還を支援する企業への補助
制度の内容は年度や自治体によって変更される場合があります。最新情報は各窓口にお問い合わせください。詳細は 採用支援制度・補助金ガイド をご覧ください。
まとめ:「止める」のではなく「選ばれる」企業になる
三重県の若者流出は構造的な問題であり、一社の努力で止められるものではありません。しかし、86.1%の高校生は今も三重に残っています。
企業ができることは明確です。
- 1.初任給の差ではなく「可処分所得」で比較する視点を、先生と保護者に提供する
- 2.「転勤なし・実家暮らし・マイカー通勤」を求人票に明記する
- 3.エリアごとの流出先を理解し、そのエリアに合った対策を打つ
- 4.行政の支援制度を採用パッケージに組み込む
「愛知に近い」という地理的条件は変えられません。しかし「三重で働くメリット」を言語化し、伝える力は今日から高められます。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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