高知県の高卒採用 学校訪問マニュアル
技研・旭食品と同じ高校で、先生に名前を覚えてもらう年間アプローチ
「ハローワークに求人票を出したのに、応募が一件も来なかった」「高知工業に求人票を持って行ったけど、先生は『旭食品さんが』『技研さんが』とばかり言う」——高知県で高卒採用に取り組む中小企業の多くが、最初にぶつかる壁です。
理由は単純です。高知工業の機械科に求人票を出すのは、あなたの会社だけではありません。技研製作所(油圧式杭圧入引抜機で世界シェア9割超)、東洋電化工業、四国銀行をはじめとする数十〜百社が同じ場所に求人票を提出します。「求人票があるかないか」では戦況が決まらないのが現実です。
先生が生徒に勧めるのは「名前を知っていて、安心して任せられる会社」です。あなたの会社の名前を進路指導の先生がいつ・どこで覚えるかを設計する——それが学校訪問の本質です。
高知県で「求人票だけ出して応募ゼロ」になる構造
同じ高校に大手から中小まで集中する
高知県で工業系の人材を採れる学校は限られます。高知工業(7学科)、高知東工業(南国市)、宿毛工業(3学科)の工業3校、加えて高知農業の環境土木科、安芸桜ケ丘の環境建設科、須崎総合の機械・電気科——高校生の数自体が少ないため、求人を出す企業は同じ学校に集中します。
特に高知工業の機械科・電気科は、技研製作所・東洋電化工業をはじめとする県内製造業の中核が求人を出す場所です。求人票が並んでいる中で、中小企業の名前は先生の意識にも生徒の意識にも残りません。
先生は「卒業生がどうなったか」で会社を見る
進路指導の先生が一番気にするのは、自分が送り出した生徒がその会社で幸せに働いているかどうかです。卒業生が辞めた、職場が合わなかった、もしくはそもそも卒業生がいない会社には、先生は次の生徒を勧めません。
逆に言えば、たった1人でも自社で活躍している卒業生がいれば、その学校との関係は強い武器になります。「○○年に△△科を卒業した山田さんが、今は現場リーダーとして頑張っています」——この一文を持っているかどうかが、訪問の説得力を決めます。
求人公開直後の1〜2週間が勝負
7月1日に高卒求人が公開されると、その直後の1〜2週間に学校訪問が集中します。同じ週に何十社も訪問が入る中で、先生が個別に時間を取って話を聞いてくれるのは限られた企業だけです。
この「短期集中型の訪問期」に何を持って行くか、誰が訪問するかが、その年の採用結果を左右します。社長や役員が直接行く中小企業は、それだけで先生の記憶に残ります。担当者だけでは、ほぼ覚えてもらえません。
高知県の主要高校別 訪問先の選定
自社の業種・所在地から逆算して訪問先を決める
工業系:高知工業・高知東工業・宿毛工業
製造業・建設業の採用には最優先の3校です。
- •高知工業(高知市):機械・電気・情報技術・工業化学・土木・建築・総合デザインの7学科。県内最大規模で全業種が訪問する激戦区。同じ学科に求人を出す企業数を先生に聞いて、自社の位置を把握することから始める
- •高知東工業(南国市):物部川エリアの製造業の人材供給源。旭食品ほか食品関連企業との関係性が深い。物部川・東部の中小企業はここが最重要
- •宿毛工業(宿毛市):機械・建築・電気の3学科。県西部唯一の工業高校。卒業生数は限られるが訪問企業も少ないため、関係構築の見返りが大きい
商業系:高知商業・伊野商業・須崎総合
事務職・販売職・金融機関・サービス業の採用先です。高知商業は4マネジメント科(総合・社会・情報・スポーツ)で、四国銀行・高知銀行など金融機関への就職実績があります。中小企業は地方銀行と給与で勝負しても勝てないため、「成長スピード」「裁量権」「資格取得支援」で差別化する戦略が必要です。
農業系:高知農業・幡多農業
食品加工・農業・林業・建設業(環境土木科)の採用先です。
- •高知農業(南国市):農業総合・畜産・森林・環境土木・食品ビジネス・生活総合。環境土木科は建設業への就職に直結。意外と知られていない建設業の人材源
- •幡多農業(四万十市):アグリ環境・園芸システム・グリーン環境・生活コーディネート。県西部の農林業・関連製造業の人材源
水産系:高知海洋(四国唯一)
土佐市にある四国唯一の水産系高校です。海洋学科で航海・機関・食品系の専門教育を受けた生徒が、水産加工・食品関連企業に就職します。高幡・幡多エリアの水産業(カツオ漁・宗田節・養殖業)の人材源として唯一の選択肢です。
県東部:安芸桜ケ丘
安芸市の環境建設科・情報ビジネス科・環境エネルギー科。安芸市・東洋町・北川村など県東部の建設業・IT・サービス業に人材を供給。県東部は工業高校の選択肢がないため、安芸桜ケ丘が事実上の専門校です。
年間スケジュール — いつ何をすればいいか
「7月に行けばいい」のではなく、年間を通じた関係構築が成否を決める
| 時期 | 焦点 | 背景 | やること |
|---|---|---|---|
| 4〜5月 | 関係構築 | 新年度。進路指導主事が異動している可能性あり | 新任の先生への挨拶訪問(求人話なし) / 前年度入社の卒業生の近況報告 / 訪問先リストの作成(高知市内/東部/西部の3区分) |
| 6月 | 求人票準備 | 6月1日に求人受付開始 | ハローワークへの求人申込 / 求人票の文字情報を超える資料準備 / 社長/役員の訪問スケジュール調整 |
| 7月(最重要) | 訪問解禁 | 7月1日に求人公開・訪問解禁 | 最初の1〜2週間で重点校(高知工業・高知東工業・宿毛工業 等)を訪問 / 社長/役員が直接訪問(担当者だけにしない) / OB・OG社員の活躍報告を写真付き資料で持参 |
| 8月 | 職場見学受入 | 夏休み中 | 職場見学・インターンシップの実施 / 遠方校(宿毛・幡多)のフォロー訪問 / 先生向け企業見学会の検討 |
| 9月 | 選考 | 9月5日応募開始/9月16日選考解禁 | 応募書類の受付 / 9月16日以降に面接実施 / 内定通知は当日〜翌日に |
| 10月 | 複数応募解禁 | 10月1日以降は複数応募可 | 未充足の場合は学校への追加訪問 / 応募してくれた生徒の内定者フォロー開始 |
| 11〜12月 | 追加募集/内定者フォロー | 次の春に向けて | 内定者への定期連絡 / 保護者向けニュースレター送付 / 未充足の場合は引き続き募集 |
| 1〜3月 | 次年度準備 | 入社直前 | 内定者へ入社前研修案内 / 訪問先の先生への報告と感謝 / 次年度の訪問計画立案 |
新年度。進路指導主事が異動している可能性あり
- •新任の先生への挨拶訪問(求人話なし)
- •前年度入社の卒業生の近況報告
- •訪問先リストの作成(高知市内/東部/西部の3区分)
6月1日に求人受付開始
- •ハローワークへの求人申込
- •求人票の文字情報を超える資料準備
- •社長/役員の訪問スケジュール調整
7月1日に求人公開・訪問解禁
- •最初の1〜2週間で重点校(高知工業・高知東工業・宿毛工業 等)を訪問
- •社長/役員が直接訪問(担当者だけにしない)
- •OB・OG社員の活躍報告を写真付き資料で持参
夏休み中
- •職場見学・インターンシップの実施
- •遠方校(宿毛・幡多)のフォロー訪問
- •先生向け企業見学会の検討
9月5日応募開始/9月16日選考解禁
- •応募書類の受付
- •9月16日以降に面接実施
- •内定通知は当日〜翌日に
10月1日以降は複数応募可
- •未充足の場合は学校への追加訪問
- •応募してくれた生徒の内定者フォロー開始
次の春に向けて
- •内定者への定期連絡
- •保護者向けニュースレター送付
- •未充足の場合は引き続き募集
入社直前
- •内定者へ入社前研修案内
- •訪問先の先生への報告と感謝
- •次年度の訪問計画立案
東西200kmの県土に対応した訪問計画
高知市内・東部・西部で日程を分ける
高知県は東西に約190km。高知市から東に向かえば安芸市まで車で約1時間、西に向かえば四万十市は約2時間、宿毛市は約2時間半かかります。1日で県全域を回ることは物理的に不可能なため、エリアごとに日程を分ける必要があります。
推奨ルート(7月訪問解禁直後)
- •1〜2日目(高知市内):高知工業 → 高知商業 → 高知小津 → 高知農業(南国市)→ 高知東工業(南国市)
- •3日目(東部・安芸方面):安芸桜ケ丘 → 室戸・東洋方面の高校(業種に応じて)
- •4日目(中部・高幡方面):須崎総合 → 高知海洋(土佐市)→ 中土佐町方面
- •5〜6日目(西部・幡多方面):幡多農業(四万十市)→ 宿毛工業(宿毛市)→ 中村高校・宿毛高校。泊りがけ訪問が前提
遠方校こそ社長・役員が行く理由
宿毛工業や幡多農業は、訪問する企業数自体が少なく、先生も「わざわざ来てくれた会社」を強く記憶します。担当者を派遣する代わりに社長・役員が出向くだけで、先生の評価は変わります。遠方ほど社長・役員の訪問が効きます。
求人票だけでは伝わらないものを持って行く
先生の判断材料は「文字情報+人と顔」
最低限必要なもの
- •求人票のコピー ハローワーク受理済み・複数部
- •会社案内 写真中心・職場の雰囲気が伝わるもの
- •名刺 進路指導の先生・受付分含めて10枚以上
中小企業ならではの差別化資料
以下は大手企業のパンフレットに載っていない要素です。中小企業は「数字+顔+手触り」で勝負します。
- •OB・OG社員の活躍報告書(写真+コメント) その高校の卒業生が今どうしているか。これがあるかないかで先生の反応が変わる
- •高卒社員のキャリアパス(具体的な年収推移) 「入社1年目△△万円→3年目△△万円→5年目△△万円」。大学進学者と22歳時点での年収比較
- •通勤情報(マイカー前提) 駐車場の有無・免許取得支援・社宅/住宅手当の金額。高知県は公共交通が限られるため必須情報
- •移住支援金・奨学金返還支援の案内 県外進学した卒業生のUターン候補にも提示できる
- •職場見学会の案内チラシ 8月実施分。先生から生徒に渡してもらう
先生に信頼される会話の作り方
大手と中小の決定的な違いを聞き方に込める
「人手不足で困っています」と言わない
「うちは人が足りなくて」「採用に困っていて」と言う企業は何百とあります。先生は「で、うちの生徒にとってその会社はどんな価値があるのか」を聞いています。
代わりに次のように話します。
「うちは資格取得を全額会社負担で支援していて、入社3年で機械加工技能士を取った社員が5人います」
「高卒入社5年目で現場リーダー、10年目で工場長になった社員がいます」
会社の困りごとではなく、生徒の成長機会を語るのが原則です。
「何かいい子いませんか」も言わない
漠然とした依頼は、先生が動きようがありません。求める人物像を具体的に伝えます。
- •「ものづくりに興味があって、長く一つの会社で成長したいという気持ちが強い生徒」
- •「人と話すのは得意じゃないけど、コツコツ作業するのが苦じゃない生徒」
- •「県外に行きたい気持ちはあるけど、地元で長く働ける選択肢も知っておきたい生徒」
具体的に語ることで、先生は「あの生徒がいるかも」と頭の中で生徒の顔を浮かべられます。
県内就職率68%という事実を先生と共有する
高知県の県内就職率68%は、すでに32%の生徒が県外に出ているという意味です。先生は「地元に残ってくれる生徒の進路を、いい会社に繋ぎたい」と考えています。
「地元で長く働ける環境です」「県外に出る生徒も多い中、うちは地元で安心して成長できる選択肢を提示できます」という伝え方が、先生の問題意識と一致します。
訪問後24時間以内に御礼を送る
訪問したその日のうちにメールまたは手紙で御礼を送ります。会話の内容(先生が話した話題)を一言入れると印象に残ります。中小企業は「丁寧さ」が最大の武器です。手書きの手紙は特に効果があります。
高知県の一人一社制と日程
高知県も全国と同じ日程で運用されます。
- •6月1日:ハローワーク求人受付開始
- •7月1日:求人公開・学校への提出開始(学校訪問解禁日)
- •9月5日:応募書類提出開始(一人一社制スタート)
- •9月16日:採用選考・面接開始
- •10月1日以降:複数応募可能(一人一社制終了)
採否は原則3日以内(遅くとも7日以内)に通知する義務があります。中小企業のスピード採用——面接当日〜翌日の内定通知——は、大手にはない武器です。
出典: 高知労働局 令和7年3月卒最終報告 / 厚生労働省「高等学校卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等」
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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