「都会で稼いだ方がいい」と保護者に言われる前に
高知県の高卒採用 オヤカク完全マニュアル
高知県で高卒採用に取り組む企業から、こんな話をよく聞きます。
「9月に内定を出した生徒から、10月に入って急に辞退の連絡が来た。理由を聞くと『親に大阪の方が稼げるって言われた』『親が高知から出た方がいいって』と言われた。本人は迷っていたのに、最後は親の一言で決まってしまった」
高知県は県内就職割合68%=32%がすでに県外を選んでいます。さらに進学組では54.5%が県外に出ます。卒業時点で7割超が県外に出ていく中で、「県内に残らせていいのか」という不安を抱える保護者は少なくありません。
保護者は迷っています。「県内に残ってほしい」と「都会で稼げる方がいいんじゃないか」の二択で。企業からの情報がなければ、迷ったら「都会」に倒れます。なぜなら「都会の方が稼げる」というイメージは、テレビ・ネット・周囲の口コミで強化されているからです。
オヤカク(親確)は、この保護者の迷いを数字で解消する活動です。「県内で働く方が良い理由」を抽象論ではなく、家賃・通勤・奨学金返還支援といった具体的な数字で示します。
なぜ高知県で特にオヤカクが重要か
「県内に残るか、県外に出るか」の二択で迷う保護者
高知県の高卒就職者723人のうち県外就職は約230人(19.3%)、進学組では54.5%が県外に出ます。保護者世代も自分の世代が経験した「県外流出」を知っており、「うちの子はどっちが正解なのか」と迷います。
典型的な保護者の本音はこうです。
「地元に残ってくれた方が、孫の顔も見られるし安心」
「でも、給料は都会の方がいいって聞くし、選択肢も多い」
「ニュースでは高知の人口減少が深刻だって言ってるし、将来の地元の経済は大丈夫なのか」
この迷いは、企業側が積極的に情報を出さない限り解消されません。沈黙していると保護者の不安は膨らみます。
大手の知名度に対抗できない中小企業の不利
技研製作所・旭食品・四国銀行など大手は保護者世代にも知名度があります。中小企業は「聞いたことがない」というだけで不安の対象になります。
人口64.8万人の高知県は地域コミュニティが密接で、保護者は知り合いに「○○の会社って知ってる?」と聞きます。地元での評判が悪い・知られていない会社は、その時点で減点されます。逆に言えば、「地元で評判の良い会社」になることが、保護者を味方にする最大の方法です。
内定後の1ヶ月が勝負——「迷い」を「確信」に変える
内定通知から入社まで6ヶ月あります。この間、生徒も保護者も「本当にこの会社でよかったのか」と考え続けます。何も情報がないまま6ヶ月過ぎると、不安が積み重なって辞退に繋がります。
逆に、内定通知から1ヶ月以内に保護者向け説明会・職場見学を実施し、定期的に接点を作っていれば、迷いは確信に変わります。沈黙の期間が長いほど辞退リスクが高まるのが現実です。
保護者が抱える5つの不安と、それぞれの解消策
「うちの子はちゃんとやっていけるのか」の正体
不安1:「都会の方が稼げるんじゃないか」
高知県は賃金水準が全国平均より低い印象があります。保護者は「同じ働くなら大阪・東京の方が手取りが多いはず」と考えがちです。
解消策:初任給の額面だけでなく、「手取り+生活コスト=可処分所得」で比較する資料を作ります。
- •家賃:高知の1Kは3〜4万円。大阪市内は5〜7万円、東京23区は7〜10万円
- •通勤費:マイカー通勤で会社支給。電車通勤の都市圏は1〜2万円
- •食費・娯楽費:高知の物価は全国でも低めの水準
- •こうち奨学金返還支援事業(年間10〜30万円・最大6年)を活用すれば、奨学金返還の負担も軽減できる
「家賃3万円浮く」「通勤費2万円浮く」「奨学金返還10万円浮く」を合計すれば、年間60万円以上の可処分所得差。これを数字で見せることが、保護者の納得を作ります。
不安2:「聞いたことのない会社で大丈夫なのか」
保護者の世代は「大企業=安定」「中小=不安定」というイメージを持っています。「うちの会社、社員30人で」と言うだけで不安を掻き立ててしまいます。
解消策:会社の「実績」と「関係性」を可視化します。
- •創業年数(地元で○○年事業を続けている)
- •主要取引先(「技研製作所のサプライヤー」「四国電力の認定工事店」など大手との関係)
- •地域での活動(よさこい祭り協賛・地域のスポーツチーム支援・学校への協力)
- •従業員の平均勤続年数(5年・10年など長く働いている事実)
不安3:「高卒で入って、将来どうなるのか」
「使い捨てにされないか」「大卒に追い抜かれて出世できないのでは」と心配する保護者は多いです。
解消策:高卒入社者のキャリアパスを具体的に示します。
- •「高卒入社5年で○○技能士を取った社員がいる」
- •「高卒入社10年で課長になった社員がいる」
- •「資格取得は全額会社負担。今までに○件の資格取得実績」
- •「大卒は22歳でスタート。高卒は18歳から4年分のキャリアを積める」
不安4:「通勤手段は大丈夫なのか」
高知県は東西200km・公共交通が限られるため、通勤手段は保護者の大きな関心事です。「車がないと通えないのでは」「事故が心配」という不安があります。
解消策:通勤に関する情報を具体的に明示します。
- •マイカー通勤可・駐車場無料
- •運転免許取得費用の補助(入社前に取得できる支援)
- •社宅・借上げ住宅の整備(特に遠方からの応募者向け)
- •送迎バスがある場合は時刻表を明示
不安5:「職場でちゃんとやっていけるのか」
「パワハラはないか」「先輩は優しいのか」「うちの子は気が弱いから」など、職場の人間関係に対する不安。
解消策:職場の雰囲気を実際に見せます。
- •保護者向け職場見学会を開催(土曜開催が参加率高)
- •若手社員(できれば高卒入社)との対話の機会
- •メンター制度・1対1面談の頻度を具体的に説明
- •平均勤続年数・若手定着率の開示
内定通知から入社までの保護者対応タイムライン
6ヶ月間、定期的に接点を作る
| 時期 | やること |
|---|---|
| 9月(内定通知時) |
|
| 10月(内定後1〜2週間) |
|
| 11〜12月 |
|
| 1〜3月(入社直前) |
|
| 入社後1ヶ月・3ヶ月 |
|
- •内定通知書に保護者宛の手紙を同封(社長名義・手書き or 直筆サイン)
- •会社案内・待遇説明書を保護者用に同封
- •移住支援金・こうち奨学金返還支援の案内を同封
- •保護者からの質問を受け付ける連絡先を明記
- •保護者説明会の開催(土曜が参加率高)
- •保護者向け職場見学会の実施
- •社長・役員が直接保護者に挨拶
- •高卒先輩社員との対話機会を設定
- •社内報・ニュースレターを保護者宛に送付
- •入社前研修のスケジュール共有
- •年末の挨拶状で接点維持
- •保護者からの問い合わせに24時間以内に返信
- •入社式の案内状を保護者にも送付
- •入社後の研修スケジュール・配属先を事前通知
- •必要書類の準備リストを保護者にも共有
- •入社後の保護者連絡先を確認
- •「お子様の様子」を保護者へ手紙で報告
- •3ヶ月後に「できるようになったこと」を伝える
- •保護者と企業の関係を継続する
保護者説明会で配る「都市部との比較資料」
「都会で稼いだ方がいい」を数字で打ち消す
保護者説明会で必ず配るべき「比較資料」のサンプルです。抽象論ではなく具体的な数字で説明することが、保護者の納得を作ります。
| 比較項目 | 高知県 | 大阪市 | 東京23区 |
|---|---|---|---|
| 家賃(1K) | 3〜4万円 | 5〜7万円 | 7〜10万円 |
| 通勤時間 | 平均15〜20分(マイカー) | 平均40分(電車) | 平均50分(電車・満員) |
| 通勤費 | 会社支給(マイカー) | 1〜2万円 | 1〜3万円 |
| 食費(自炊メイン・月) | 3〜4万円 | 4〜5万円 | 5〜6万円 |
| 休日の過ごし方 | 海・山・川・温泉 | ショッピング・カフェ | ショッピング・カフェ |
| 実家までの距離 | 車で30分〜2時間 | 飛行機 or 高速バス | 飛行機 |
高知:3〜4万円
大阪:5〜7万円
東京:7〜10万円
高知:平均15〜20分(マイカー)
大阪:平均40分(電車)
東京:平均50分(電車・満員)
高知:会社支給(マイカー)
大阪:1〜2万円
東京:1〜3万円
高知:3〜4万円
大阪:4〜5万円
東京:5〜6万円
高知:海・山・川・温泉
大阪:ショッピング・カフェ
東京:ショッピング・カフェ
高知:車で30分〜2時間
大阪:飛行機 or 高速バス
東京:飛行機
※ 数字は一般的な賃貸物件相場の目安。実際の金額は地域・物件により変動します。保護者向けの資料を作る際は、自社が紹介できる社宅・住宅手当の金額を必ず併記してください。
手取り+生活コストの実質比較
仮に高知の中小企業で初任給17万円、大阪の大手企業で初任給22万円とします。額面は5万円差ですが、生活コスト(家賃・通勤・食費)を引くと、高知の手取り実質は大阪より上回ることが多いのが現実です。さらにこうち奨学金返還支援事業(年間10〜30万円)を加味すれば、奨学金返還がある人は高知の方が遥かに有利です。「額面で勝負しない、可処分所得で勝負する」が中小企業の戦略です。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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内定辞退率
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