鹿児島県の若年人口の見通しと県外流出
15〜19歳人口は2050年に約36%減・県内就職率55.7%の鹿児島県で企業が取るべき戦略
鹿児島県の高卒採用市場は、2つの構造的な圧力にさらされています。1つは全国共通の少子化による18歳人口の減少。もう1つは鹿児島県固有の深刻な県外流出です。県内就職率55.7%は全国でも低い水準で、毎年4割超の高卒就職者が県外に就職しています。15〜19歳人口は2020年の71,270人から2050年には45,526人へと約36%減少する見通し(国立社会保障・人口問題研究所 令和5年推計)で、さらに県外流出が続けば、県内で採用可能な高校生の実数は加速度的に減少していきます。本記事では、この「ダブル減少」の実態をデータで明らかにし、鹿児島県の企業が今から取るべき採用戦略を解説します。
1. 鹿児島県の15〜19歳人口の見通し
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」によると、鹿児島県の15〜19歳人口は2020年の71,270人(国勢調査)から、2030年に66,802人、2040年に50,997人、2050年には45,526人へと減少する見通しです。2030年代に入ると減少のペースが速まります。鹿児島県の場合はここに県外流出率の高さが加わるため、実質的な採用可能人数の減少はより深刻です。
| 年 | 15〜19歳人口(人) | 2020年比 |
|---|---|---|
| 2020年(実績) | 71,270 | — |
| 2025年 | 68,942 | -3.3% |
| 2030年 | 66,802 | -6.3% |
| 2035年 | 58,094 | -18.5% |
| 2040年 | 50,997 | -28.4% |
| 2045年 | 47,395 | -33.5% |
| 2050年 | 45,526 | -36.1% |
- 15〜19歳人口(人)
- 71,270
- 2020年比
- —
- 15〜19歳人口(人)
- 68,942
- 2020年比
- -3.3%
- 15〜19歳人口(人)
- 66,802
- 2020年比
- -6.3%
- 15〜19歳人口(人)
- 58,094
- 2020年比
- -18.5%
- 15〜19歳人口(人)
- 50,997
- 2020年比
- -28.4%
- 15〜19歳人口(人)
- 47,395
- 2020年比
- -33.5%
- 15〜19歳人口(人)
- 45,526
- 2020年比
- -36.1%
※ 2020年は国勢調査の実績値、2025年以降は推計値(コーホート要因法による推計)。出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」
「ダブル減少」の衝撃
高校生世代の人口減少だけでなく、県内就職率の低下(令和6年3月卒59.7%→令和8年3月卒55.7%)も同時に進行しています。母集団が縮むなかで県外に出る割合も増えれば、県内で採用できる高校生はさらに少なくなります。この「ダブル減少」に対応するには、早期からの学校との関係構築が不可欠です。
2. 県外流出率44%の実態と流出先
鹿児島県の県内就職率は55.7%(令和8年3月卒・鹿児島労働局)で、令和6年3月卒の59.7%から2年で4ポイント低下しました。4割超の高校生が県外に就職しています。学校基本調査(令和7年3月卒)でも58.5%と全国で最も低い水準です。
主な県外流出先
| 流出先 | 推定割合 | 主な吸引要因 |
|---|---|---|
| 福岡県 | 最多 | 九州最大の経済圏。サービス・IT・商業の求人豊富。距離的にも近く帰省しやすい |
| 関東圏(東京・神奈川) | 多い | 最高水準の賃金。「一度は東京で」という志向を持つ生徒が一定数存在 |
| 関西圏(大阪・兵庫) | 一定数 | 製造業・サービス業の高賃金求人。鹿児島からの移住コミュニティが存在 |
| 熊本県 | 増加傾向 | TSMC進出による半導体関連の求人急増。鹿児島から通勤圏内の生徒も |
- 推定割合
- 最多
- 主な吸引要因
- 九州最大の経済圏。サービス・IT・商業の求人豊富。距離的にも近く帰省しやすい
- 推定割合
- 多い
- 主な吸引要因
- 最高水準の賃金。「一度は東京で」という志向を持つ生徒が一定数存在
- 推定割合
- 一定数
- 主な吸引要因
- 製造業・サービス業の高賃金求人。鹿児島からの移住コミュニティが存在
- 推定割合
- 増加傾向
- 主な吸引要因
- TSMC進出による半導体関連の求人急増。鹿児島から通勤圏内の生徒も
なぜ鹿児島の高校生は県外を選ぶのか
経済的な要因
- 県内初任給と県外(福岡・関西)の初任給格差
- 食品製造・農業関連は他産業と比べて賃金がやや低い
- 「稼ぎたい」という意欲の高い生徒ほど県外を志向
情報・環境の要因
- 県内企業の情報発信が不足し、「何をしている会社かわからない」
- 保護者の「都会に出た方がいい」という助言
- 県外企業の採用パンフレットやSNSの情報量が圧倒的
裏を返せば:県外流出の主因は「情報不足」と「賃金差」です。賃金差はすぐに埋められなくても、情報発信は今日から改善できます。自社の仕事内容・職場の雰囲気・先輩社員の声を採用HPやSNSで発信し、学校訪問で先生に自社の魅力を具体的に伝えること。それだけで「知らないから県外を選ぶ」生徒の一部に届くチャンスが生まれます。
3. 県内就職率の推移と全国比較
鹿児島県の県内就職率は近年60%前後で推移しており、全国平均(約80%)を大きく下回っています。前年比-1.3ポイントという低下傾向は、県内企業にとって警戒すべきシグナルです。
| 年度(3月卒) | 県内就職率 | 前年差 | 学校基本調査の値(参考) |
|---|---|---|---|
| 令和4年(2022) | 60.9% | +4.1pt | 64.5% |
| 令和5年(2023) | 61.0% | +0.1pt | 63.2% |
| 令和6年(2024) | 59.7% | -1.3pt | 62.2% |
| 令和7年(2025) | 55.7% | -4.0pt | 58.5% |
| 令和8年(2026) | 55.7% | 0.0pt | 未公表 |
- 県内就職率
- 60.9%
- 前年差
- +4.1pt
- 学校基本調査の値(参考)
- 64.5%
- 県内就職率
- 61.0%
- 前年差
- +0.1pt
- 学校基本調査の値(参考)
- 63.2%
- 県内就職率
- 59.7%
- 前年差
- -1.3pt
- 学校基本調査の値(参考)
- 62.2%
- 県内就職率
- 55.7%
- 前年差
- -4.0pt
- 学校基本調査の値(参考)
- 58.5%
- 県内就職率
- 55.7%
- 前年差
- 0.0pt
- 学校基本調査の値(参考)
- 未公表
出典:鹿児島労働局「新規高等学校卒業者職業紹介状況」(各年3月末現在。学校・ハローワークの紹介による就職内定者に占める県内の割合)、令和8年3月卒。参考列は文部科学省「学校基本調査」(就職者全体に占める県内就職者の割合。令和7年3月卒は全国最低、全国平均81.1%)
注目すべきトレンド:県内就職率は令和5年3月卒の61.0%から令和7年3月卒の55.7%へ5.3ポイント低下し、令和8年3月卒も55.7%と横ばいでした。熊本県のTSMC関連求人の増加や、県外企業の積極的なリクルーティングが影響していると考えられます。この傾向が続けば、県内就職率が55%を下回る可能性もあります。
4. 就職内定率95.3%が示すマッチングの課題
鹿児島県の就職内定率は3月末時点で95.3%と、全国最低水準にとどまっています。約5%の生徒が卒業時点で就職先が決まっていないという状況は、単なる「就職難」ではなく、企業と生徒のマッチングに構造的な課題があることを示しています。
未内定が残る要因
- 離島部・半島部では求人の選択肢自体が限られる
- 「やりたい仕事」と「地元にある求人」のミスマッチ
- 情報不足で企業研究が進まず、応募に踏み切れない生徒
企業側から見た機会
- 11月以降の二次募集で採用できる余地がある
- 未内定の生徒に対する丁寧なアプローチが効果的
- ハローワーク経由の紹介で追加採用のチャンスあり
5. 「ダブル減少」時代に企業が取るべき5つの戦略
18歳人口の減少と県外流出の加速という「ダブル減少」に対応するためには、従来の「ハローワークに求人票を出して待つ」だけの採用から脱却する必要があります。
1. 学校との関係を7月より前から構築する
高卒採用は7月の求人公開がスタートラインと思われがちですが、学校訪問は5〜6月から始められます。先生に「顔を知ってもらう」ことが最初の一歩です。特に鹿児島県では先生の推薦が生徒の進路選択に大きな影響を持つため、信頼関係の構築が採用の成否を左右します。
2. 「鹿児島で働く意味」を言語化する
県外流出の背景には「鹿児島にいても仕方ない」という漠然とした不安があります。家賃の安さ、通勤時間の短さ、家族の近くで暮らせること、地元の食や自然環境など、鹿児島で働く具体的なメリットを求人票や採用HPで可視化しましょう。
3. 保護者向けの情報発信を行う
高卒採用では保護者の意向が進路に大きく影響します。「うちの子を県外に出した方が将来性がある」と考える保護者に対して、自社の安定性・成長機会・福利厚生を伝える手段(パンフレット・HP・オープンファクトリー)を用意することが重要です。
4. 職場見学・インターンシップの受け入れ体制を整える
百聞は一見にしかず。求人票では伝わらない職場の雰囲気や先輩社員の人柄は、実際に来てもらうことで初めて伝わります。特に食品製造業は「工場=きつい」というイメージを持たれがちですが、実際の清潔な職場環境を見せることでイメージを覆せます。
5. 定着率の向上が最大の採用戦略になる
高卒の3年以内離職率は全国平均で約36〜40%です。せっかく採用した人材が早期退職すると、翌年の学校からの信頼も失われます。入社後のフォロー体制(メンター制度・定期面談・スキルアップ支援)を整え、「この会社に入ってよかった」と先輩が言える環境を作ることが、結果的に翌年以降の採用力を高めます。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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内定辞退率
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採用満足度
81.1%
大卒採用より+3.5pt大卒採用より+3.5pt
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データ出典:
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」
- 厚生労働省「新規高卒者就職状況」
- 鹿児島労働局「新規高等学校卒業予定者の求人・求職状況」



