オヤカク(保護者対策)完全マニュアル(鹿児島県版)
内定辞退を防ぐ保護者コミュニケーション戦略
「せっかく内定を出した高校生から辞退の連絡が来た。理由を聞くと『親が県外の会社を勧めている』と言われた」——鹿児島県の採用担当者が頻繁に経験するこの場面は、オヤカク不足が原因です。
マイナビ調査(2024年)によると企業の約6割がオヤカクを実施しており、内定辞退理由の約3割が「保護者の反対」です。鹿児島県では県内就職率59.7%と4割超が県外に流出する環境であるため、保護者対策の重要性は全国平均以上です。
鹿児島県の保護者は大きく2つのタイプに分かれます。「子どもには県外で経験を積んでほしい」タイプと、「地元で安定した仕事に就いてほしい」タイプです。さらに離島(奄美大島・種子島・屋久島等)出身者の保護者は「島を出るなら福岡や東京のほうがいい」という独自の心理を持つケースがあります。本記事ではこの3つの保護者心理に対応するオヤカク戦略を解説します。
1. オヤカクとは何か?
「オヤカク(親確)」とは「親への確認」の略語で、内定を出す際や入社前に保護者から入社の承諾を得る活動です。高卒採用においては古くから事実上行われてきた重要プロセスですが、近年はより戦略的・体系的な取り組みが求められています。
高卒採用は学校斡旋ルートで進みますが、最終的な就職先の決定には保護者の意向が決定的に大きく影響します。特に高校生は18歳未満の場合、労働契約の締結にあたって保護者同意が法的にも必要です。
鹿児島県の高卒採用における現実
内定辞退理由の約3割が「保護者の反対」
県外流出率4割超の鹿児島では、保護者が県外就職を推すケースも
2. なぜ鹿児島県でオヤカクが特に重要なのか
保護者タイプA:「県外に出て経験を積んでほしい」派
鹿児島県の保護者には「子どもには広い世界を見てほしい」「鹿児島にいても将来性が不安」という考えを持つ方が一定数います。特に進学校に近いエリアや、親自身が県外経験を持つ家庭に多い傾向です。このタイプの保護者に対しては、地元企業で得られるキャリアの将来性と生活の充実度を具体的な数字で示す必要があります。
保護者タイプB:「地元で安心して働いてほしい」派
一方で「子どもには近くにいてほしい」「地元の安定した企業に勤めてほしい」という保護者も多数存在します。このタイプには、企業の安定性(創業年数・売上推移・地域での実績)と、福利厚生の充実度をアピールすることが効果的です。
保護者タイプC:離島出身者の保護者
奄美大島・種子島・屋久島などの離島出身者の保護者には独自の心理があります。「どうせ島を出るなら、鹿児島本土より福岡や東京のほうが将来性がある」「せっかく島を出るのだから都会を経験させたい」という考えです。このタイプには、鹿児島本土のアクセスの良さ(帰省のしやすさ)と、寮・社宅などの生活基盤サポートの手厚さで差別化します。
| 保護者タイプ | 心理 | 有効なアプローチ |
|---|---|---|
| A:県外推進派 | 「鹿児島では将来性が不安」 | 地元企業のキャリアパス・年収モデル・生活コスト優位を数字で提示 |
| B:地元安定派 | 「近くで安心して働いてほしい」 | 企業の安定性・福利厚生・地域貢献実績をアピール |
| C:離島出身者の保護者 | 「島を出るなら都会がいい」 | 帰省のしやすさ・寮完備・帰省支援・離島出身先輩の紹介 |
3. オヤカク実践5ステップ
ステップ1:内定通知と同時に保護者向け資料を送付
内定通知書を生徒に渡す際、保護者向けの「会社案内・待遇詳細書」を必ず同封します。ここで重要なのは、保護者が知りたい情報に絞った専用の資料を作ることです。
- 社長からの挨拶文:「お子様の内定を心より嬉しく思います」から始まる手書きまたは手書き風の挨拶
- 待遇一覧表:月給・賞与・年間休日・社会保険・退職金制度を一覧化
- 生活モデル:手取り月収と鹿児島での生活費シミュレーション
- 先輩社員の声:高卒入社3〜5年目の社員のインタビュー(顔写真付き)
ステップ2:保護者向け職場見学会の開催
内定後1〜2週間以内に保護者向けの職場見学会を開催します。土曜日開催が参加率を上げるポイントです。
- 実際の職場を見せ、安全管理体制(ヘルメット・安全靴・防護設備等)を説明
- 社員食堂・休憩室・更衣室など福利厚生施設も案内
- 質疑応答の時間を十分に確保(最低30分)
- 離島からの保護者にはオンライン参加のオプションを用意
ステップ3:社長・役員からの直接電話
保護者にとって「社長が直接電話をくれた」というインパクトは絶大です。大手では絶対にできないこの一手が、中小企業最大の武器になります。
- 「お子様の内定おめでとうございます。大切にお預かりします」と伝える
- 保護者の不安や質問に直接答える姿勢を見せる
- 通話時間は5〜10分が目安(長すぎると負担になる)
ステップ4:入社までの定期連絡
内定(9〜10月)から入社(4月)までの約半年間、保護者との接点を維持し続けます。
- 11月:社内報や会社ニュースレターを保護者宛に送付
- 12月:年末の挨拶状(社長名義)
- 1月:新年の挨拶と入社準備スケジュールの案内
- 3月:入社式の案内と「保護者も参列歓迎」の連絡
ステップ5:入社後も保護者との関係を継続
入社後の定着にも保護者の存在は大きく影響します。「辞めたい」と子どもに相談された保護者が「もう少し頑張ってみたら」と言ってくれるか、「辞めていいよ」と言うかは、企業への信頼度で決まります。
- 入社1ヶ月後に「お子様の成長報告」を手紙で送付
- 入社3ヶ月後に「試用期間終了と本採用決定」の報告
- 入社1年後に「1年間の成長レポート」を送付(できれば写真付き)
4. 離島出身者の保護者対策(鹿児島県特有)
鹿児島県には奄美大島・種子島・屋久島・徳之島・喜界島・沖永良部島・与論島など多くの有人離島があります。離島の高校生が本土で就職する際、保護者の不安は本土出身者とは質的に異なります。
| 保護者の不安 | 企業の対応策 |
|---|---|
| 住む場所はあるのか | 寮・社宅の写真と間取りを送付。入居可能日と家賃を明示 |
| 一人暮らしが心配 | 寮であれば同年代の仲間がいることを強調。食堂の有無も伝える |
| 帰省できるのか | 帰省支援制度(年2回の往復航空券・船賃補助等)を明示 |
| 何かあったとき駆けつけられるのか | 緊急連絡体制と最寄りの医療機関情報を提供。上司の連絡先を共有 |
| 鹿児島本土より東京・福岡のほうが将来性があるのでは | 鹿児島本土の生活コスト優位性と帰省のしやすさを数字で比較 |
ポイント:離島の保護者は対面での説明が難しい場合が多いため、オンライン面談(Zoom・LINE通話等)を積極的に活用しましょう。職場や寮の様子をスマホで生中継する「オンライン見学会」も効果的です。保護者説明会をオンラインで同時配信すれば、離島からの参加ハードルが大きく下がります。
5. 食品加工業・製造業の安全性を保護者に伝える方法
鹿児島県は食料品製造業が製造業出荷額の48%を占めています。食品工場や水産加工場で働くことに対して、保護者が「体力的にきつくないか」「衛生面は大丈夫か」「将来性はあるのか」と不安を感じることは珍しくありません。
- 安全管理体制の数字を開示:「労災事故ゼロ:連続○年」「年間安全教育時間:○時間」「安全設備投資額:年間○万円」など具体的な数字で示す
- 職場環境の改善実績を見せる:エアコン完備・最新設備の導入・休憩室のリニューアルなど、「昔の工場」イメージとは違う現代の職場環境を写真で伝える
- キャリアアップの道筋を明示:高卒入社→班長→主任→係長→課長のキャリアパスと各段階のモデル年収を提示
- 「鹿児島ブランド」の誇りを共有:「お子様が加工する鹿児島黒豚は全国のお客様に届きます」「鹿児島の食文化を支える仕事です」という誇りのストーリーを伝える
まとめ:鹿児島県のオヤカクは「県外に出したい保護者」「地元に残したい保護者」「離島から送り出す保護者」という3つの心理に対応する必要があり、全国的に見ても難易度が高いと言えます。しかし、内定通知と同時の保護者資料送付、社長からの直接電話、保護者見学会の開催、入社後の成長報告という一連の流れを丁寧に実行すれば、保護者を最大の味方に変えることができます。「この会社なら安心して子どもを預けられる」——その一言を引き出すために、今日からオヤカクを始めましょう。
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