広島県のインターンシップ活用ガイド
高卒採用につなげる職場体験プログラムの設計
マツダ・JFEスチール・造船大手・中国電力――広島県には日本を代表する製造業が集積し、高卒人材の需要は年々高まっています。求人倍率4.33倍(全国6位)の激戦区で、求人票を出すだけでは人材を確保できない時代に入りました。
この状況を打開する切り札が「インターンシップ(職場体験)」です。実際の現場で仕事のやりがいと職場の雰囲気を体感してもらうことで、生徒の志望度を大きく引き上げ、入社後のミスマッチも防止できます。広島県にはインターンシップ促進協議会や応募前合同企業説明会といった支援の仕組みも整っています。本ガイドでは、広島県の採用担当者向けに実践的なインターンシッププログラムの設計方法を解説します。
1. 広島県の高卒採用でインターンシップが有効な理由
求人倍率4.33倍の広島県では、1人の高校生を約4社が奪い合っています。求人票の情報だけでは自社の魅力が伝わりにくく、大手企業の知名度に埋もれてしまうのが現状です。インターンシップは「求人票では伝わらない現場の空気」を直接体感してもらえる最も効果的な手段です。
広島県特有の事情:製造業の厚みと人材需要
広島県は自動車(マツダとサプライチェーン約600社)、造船(全国1位の建造量)、鉄鋼(JFEスチール西日本製鉄所)が三本柱です。県立広島工業高校・広島市立広島工業高校・福山工業高校・呉工業高校など、技術人材を輩出する工業高校が各エリアに分布しており、これらの高校からの応募を得るにはインターンシップによる「体験の提供」が欠かせません。
インターンシップ参加者の効果
参加者の内定承諾率 85%超
(非参加者は約60%)
学校・先生との信頼関係構築にも直結
インターンシップを受け入れることは、学校に対して「高校生の育成に真剣に向き合う企業」というメッセージを発信することになります。先生からの信頼は翌年以降の推薦にもつながり、安定した採用パイプラインの構築に貢献します。
2. 広島県の支援制度を活用する
広島県にはインターンシップや高卒採用を支援する複数の公的制度があります。これらを最大限に活用して、効率的にプログラムを構築しましょう。
広島県インターンシップ促進協議会
広島県教育委員会・広島労働局・経済団体が連携して運営する協議会です。高校生のインターンシップ受入企業のマッチングを支援しており、登録すると県内の高校に受入可能企業として紹介されます。特に中小企業にとっては、個別に高校を回らなくても認知度を高められる有効な仕組みです。
応募前合同企業説明会(広島・三次・福山 3会場)
広島労働局と広島県教育委員会が連携して開催する「生徒と先生のための応募前合同企業説明会」です。広島会場(広島市)、三次会場(三次市)、福山会場(福山市)の3か所で毎年7〜8月に実施されます。高校生が応募先を決める前に企業と直接話ができる場であり、求人票だけでは伝えきれない自社の強みをアピールする絶好の機会です。
開催情報はわーくわくネットひろしままたは各ハローワークで確認
採用力向上ハンズオン支援
広島県が中小企業向けに実施している支援制度です。専門のアドバイザーが企業を個別に訪問し、インターンシッププログラムの設計、求人票の改善、職場見学の効果的な運営方法など、採用活動全般について実践的なアドバイスを提供します。無料で利用できるため、初めてインターンシップを受け入れる企業には特におすすめです。
わーくわくネットひろしま
広島県の若者向け就職支援ポータルサイトです。インターンシップ情報、合同企業説明会の日程、求人情報などが集約されています。企業側も求人情報やインターンシップ情報を掲載することができ、高校生・保護者・先生へのアプローチチャネルとして活用できます。
出典:わーくわくネットひろしま・広島労働局
3. インターンシップの種類と期間
高校生向けインターンシップには主に3つの形式があります。自社の業種、受入体制、採用目的に合わせて最適な形式を選びましょう。
| 形式 | 期間 | 実施時期 | 内容・目的 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|---|
| 1日型(職場見学) | 1日 | 7〜8月 | 会社説明・工場見学・若手社員との座談会。応募前職場見学を兼ねることが多い。短時間で企業の雰囲気を伝える。 | 初めて受入する企業、人員に余裕がない中小企業 |
| 3日型(短期体験) | 2〜3日 | 7〜8月 | 座学+実務体験の組合せ。1日目は説明と見学、2日目は体験作業、3日目は振り返り発表。 | 製造業・建設業など体験要素が豊富な企業 |
| 5日型(実習型) | 5日〜2週間 | 夏休み・2学期 | 本格的な実務体験。工業高校の実習カリキュラムと連携するケースもある。適性を深く見極められる。 | 工業高校と連携したい技術系企業 |
4. 業種別プログラム設計(広島県の産業構造に対応)
広島県の産業特性を活かした、業種別のインターンシッププログラム設計例を紹介します。
自動車関連産業(マツダサプライチェーン等)
広島県にはマツダを頂点とする自動車サプライチェーン約600社が集積しています。部品加工・組立・検査の各工程を体験させるプログラムが効果的です。
| 日程 | 午前 | 午後 |
|---|---|---|
| 1日目 | 会社説明・安全教育・製造ライン見学ツアー | 自動車部品の組立体験・品質検査の実演 |
| 2日目 | 測定器の使い方講習・寸法測定の実習 | 溶接のデモ見学・簡単な溶接体験(安全管理下で) |
| 3日目 | CAD/CAMのデモ操作体験・3Dプリンタ見学 | 振り返りワーク・成果発表・修了証授与 |
造船・鉄鋼産業(呉市・福山市エリア)
広島県は造船建造量全国1位であり、呉市にはジャパンマリンユナイテッドをはじめとする造船所が集積しています。福山市にはJFEスチール西日本製鉄所があり、鉄鋼関連企業も多数。スケールの大きい現場を見せられるのが広島県ならではの強みです。
- 造船所のドック見学:大型船舶の建造現場を安全な距離から見学。スケール感に圧倒される体験が志望度を引き上げる
- ブロック組立の体験:小規模な模型を使って船のブロック組立の原理を体験
- 溶接・切断の技能体験:安全管理下でのアーク溶接やガス切断の基礎体験
- ベテラン技能者との対話:30年以上の経験を持つ職人から技術継承の話を聞く
サービス業・小売業(広島市・福山市エリア)
広島市中心部の商業施設や福山市の小売業、呉市の観光業など、サービス業の求人も多くあります。
- 接客ロールプレイング:実際の場面を想定した接客練習。先輩社員からのフィードバック付き
- バックヤード見学:普段は見えない裏側の業務を紹介し、仕事の全体像を理解させる
- 商品ディスプレイ企画:チームで売り場のレイアウトを考案し、プレゼンテーション
- お客様アンケート分析:データを読み解いて改善提案を考えるワークショップ
全業種共通のポイント:プログラムの比率は「説明3:体験7」を意識しましょう。座学ばかりでは退屈し、放置は不安を感じさせます。常に「手を動かす」「人と話す」時間を確保し、最後に「自分で何かを完成させた」という達成感を持ち帰ってもらうことが、志望度向上の鍵です。
5. 受入準備チェックリスト
インターンシップの成功は事前準備の質で決まります。以下のチェックリストで漏れのない受入体制を整えましょう。
実施2〜3か月前
- 受入目的の明確化(採用直結型 or 認知度向上型)
- プログラム内容・タイムスケジュールの策定
- メンター(指導担当者)の選定 ― 年齢の近い若手社員が理想
- 学校への受入申し出・進路指導担当の先生と打ち合わせ
- 保険加入の確認(傷害保険・賠償責任保険)
実施1か月前
- 安全管理マニュアルの整備・危険箇所の洗い出し
- 受入部署への周知・現場社員への協力依頼
- 名札・作業着・安全装備(ヘルメット・安全靴等)の準備
- 生徒向け事前資料(会社概要・当日の持ち物・服装案内)の作成
- 昼食の手配方法の決定
実施前日〜当日
- 受入スペース・会議室のセッティング確認
- 体験で使用する材料・工具・備品の最終チェック
- 全社員への「インターン生来社」の周知
- アンケート用紙・修了証の準備
- 緊急連絡先リスト(学校・保護者)の確認
注意:避けるべきNG行動
- - 雑用だけさせる:コピー取りや掃除だけでは職業体験になりません
- - 放置する:「自分で見ておいて」は厳禁。常にメンターが寄り添いましょう
- - 過度な業務負荷:高校生に長時間労働や危険作業は絶対に避けてください
- - 実質的な労働をさせる:教育目的を逸脱すると労働基準法上の「労働者」とみなされます
6. インターンシップから採用につなげるフォロー術
インターンシップは「終了後のフォロー」が採用につなげる最大のポイントです。やりっぱなしでは効果が半減します。
終了時アンケートで生徒の感想を収集
満足度・印象に残ったプログラム・改善点を聞き取り、次回のプログラム改善に活用します。生徒の率直な声が最も価値ある改善材料です。
お礼状と修了証を学校経由で送付
参加生徒には後日、お礼の手紙と修了証を送りましょう。手書きのメッセージを添えると、企業の誠実さが伝わります。
学校への報告・フィードバック
進路指導の先生に生徒の様子や取り組み姿勢をポジティブに報告します。「○○さんは集中力が高く、品質検査の工程で特に力を発揮していました」のように具体的に。
SNS・社内報での発信
インターンシップの様子をInstagramや自社ウェブサイトで発信します。「高校生を大切に受け入れる企業」というブランディングが、次年度の応募にもプラスに働きます。
応募前職場見学への再招待
インターン参加者の3年生には、正式な応募前職場見学への参加を学校経由で案内します。関係性ができているため、スムーズに選考プロセスへ移行できます。
7. よくある質問
Q. 広島県で高校生のインターンシップを受け入れるにはどうすればいいですか?
A. 広島県インターンシップ促進協議会やハローワークを通じて受入企業として登録する方法と、各高校の進路指導担当の先生に直接連絡する方法があります。わーくわくネットひろしまにも情報が掲載されています。工業高校は学校側が受入先を探しているケースも多いため、積極的にアプローチしましょう。
Q. 広島県の「応募前合同企業説明会」とは何ですか?
A. 広島労働局と広島県教育委員会が連携して開催する、高校生が応募先を決める前に企業と直接対話できるイベントです。広島・三次・福山の3会場で毎年7〜8月に実施されます。
Q. 製造業のインターンシップではどんなプログラムが効果的ですか?
A. 実際の製品の組立体験、溶接・旋盤加工などの技能体験、品質検査のワークショップが効果的です。「自分の手で何かを完成させる」達成感を提供することがポイントです。造船所のドック見学など広島県ならではのスケール感を活かすのも有効です。
Q. インターンシップの受入にかかる費用は?
A. インターンシップは教育目的のため賃金は発生しません。企業側のコストは材料費・保険料・昼食代・指導者の人件費が主です。人材開発支援助成金や広島県の採用力向上ハンズオン支援を活用すれば負担を軽減できます。
Q. 広島県の「採用力向上ハンズオン支援」とはどんな制度ですか?
A. 広島県が中小企業向けに実施している支援制度で、専門アドバイザーが企業を個別訪問し、インターンシッププログラムの設計や求人票の改善などを無料でサポートします。
まとめ|広島県でインターンシップを採用成功につなげる3つの鍵
- 広島県の支援制度をフル活用する
インターンシップ促進協議会への登録、応募前合同企業説明会(広島・三次・福山)への参加、採用力向上ハンズオン支援の利用。公的なリソースを最大限に活かしましょう。 - 広島県の産業特性を活かしたプログラムを設計する
自動車部品の組立体験、造船所のスケール体験、鉄鋼製品の品質検査――広島県ならではの「体験価値」を提供することが、大手との差別化になります。 - 終了後のフォローアップを徹底する
お礼状・学校への報告・SNS発信・応募前職場見学への再招待。継続的な接点が志望度を高め、内定承諾率を向上させます。
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データ出典:
- 広島労働局「令和8年3月新規高等学校卒業者の求人・求職・内定状況」
- わーくわくネットひろしま
- 広島県教育委員会
- 厚労省・文科省「新規高等学校卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等について」



