高卒で採った社員を辞めさせない
群馬県の中小企業ができる定着の仕組み
求人倍率4.20倍の群馬県で、やっと1人採った高卒社員が半年で辞めた。「思ったのと違った」と言われた。何が違ったのかを聞いても、はっきりとは答えてくれなかった。
求人数9,186人に対して求職者は2,188人。1人を採るために学校訪問・職場見学・求人票作成に費やした手間を考えれば、確保した人材を失うことは、採用できないことと同じくらい——あるいはそれ以上に重い損失です。
全国データでは高卒就職者の3年以内離職率は37.9%(厚生労働省・令和4年3月卒)。約4割が3年以内に辞めています。群馬県の産業構造——製造品出荷額の31.6%が輸送用機械、SUBARUを頂点とする自動車産業の集積、中小企業が大半——を踏まえると、この問題は群馬県の企業にとって特に重い意味を持ちます。
この記事では、「なぜ辞めるのか」を群馬県の現場から考え、「従業員40人の会社でも明日からできること」を具体的に解説します。
群馬県の中小企業で、高卒社員が辞める理由
「ものづくり」のイメージと現場のギャップ
群馬県は製造品出荷額の31.6%を輸送用機械が占め、太田市のSUBARU群馬製作所を中心に、桐生のミツバ、伊勢崎のサンデンといった部品メーカーが集積しています。工業高校から製造業に就職する生徒にとって「ものづくり」は前向きなイメージです。
しかし現場で待っているのは:
- •交代勤務(2交代・3交代)のシフト。高校まで朝起きて夜寝ていた18歳にとって、生活リズムの激変は想像以上のストレスになります
- •ライン上での部品の組立・検査の反復作業。「クルマを作る」イメージと「同じ動作を8時間繰り返す」現実のギャップ
- •工場の騒音・油のにおい・夏の暑さ。求人票の文字情報では伝わらない感覚的な環境
面接で「交代勤務は大丈夫ですか?」と聞けば、18歳は「大丈夫です」と答えます。やったことがないので、本当の意味で想像できていない。これはミスマッチというより「体験の不足」です。
同期がいない孤立
SUBARUグループや大手部品メーカーは1度に数十人を採用します。同期がいる。同じ年齢の仲間と愚痴を言い合える環境がある。
一方、中小企業の高卒採用は1人か2人。入社初日から、周囲は全員年上です。「見て覚えろ」と言われても、何を見ればいいかわからない。わからないことを聞ける相手がいない。
群馬県の中小製造業は親会社・元請けの世代に合わせて平均年齢が高くなりやすく、10代と50代の間に20代・30代が薄い「年齢層の断裂」が起きている会社もあります。この環境で18歳が孤立しない方が難しいのです。
SNSで見える「別の人生」
入社して数ヶ月。SNSを開くと、大学に進学した友人がサークルで楽しそうにしている。他の会社に就職した友人が「うちの会社、土日完全休みで」と投稿している。
自分は交代勤務で土曜も出勤。手取りは額面より3〜4万円少ない(税金・社会保険の天引きを知らなかった)。「本当にこれでよかったのか」という気持ちが膨らむのは自然なことです。
県外への流出という、もう一つの離脱
群馬県は高校生の県内就職志向率が86.3%と高い県ですが、裏を返せば1割超は当初から県外を視野に入れています。高崎駅から新幹線で東京まで約50分という立地は、入社後に「都内のほうが時給も給料も高い」と気づいた若手社員が転職を考える後押しにもなります。
「地元で働きたい」と入社した社員が辞めるとき、辞める理由は仕事内容だけではありません。「この給料・この休みなら、わざわざ地元に残る理由がない」と感じさせない処遇と関係づくりが、群馬の企業には求められます。
いつ辞めるか — 危険なタイミングと見逃せないサイン
離職の多くは突然ではなく、予兆があります
GW明け(入社後1ヶ月)— 最も危険
4月に必死で頑張った反動と、GW中に高校時代の友人と会って「比較」してしまうこと。この2つが重なるGW明けが、最も離職リスクの高い時期です。
「辞めたい」の前に出る行動変化
- 1.朝の挨拶が小さくなる
- 2.休憩時間にひとりでスマホを見ている時間が増える
- 3.質問しても「特にないです」が増える
- 4.欠勤ではなく遅刻が増える(辞めたいが朝起きられなくなるのが先行サイン)
- 5.先輩や上司との雑談を避けるようになる
これらのサインが2つ以上見えたら、すぐに1対1で話す機会を作ってください。「何かあった?」ではなく、「最近、仕事で一番しんどいことは何?」と具体的に聞くことが重要です。
3ヶ月目 — 「成長していない」不安
試用期間が終わる頃。最初の緊張が解けて、逆に「自分は何もできるようになっていないのでは」という不安が芽生えます。製造業では、3ヶ月で一人前になれる仕事はほぼありません。本人がそのことを理解していないと、「自分には向いていない」と結論づけてしまいます。
対応:3ヶ月時点で「入社時にはできなかったけど今できるようになったこと」を一緒にリストアップする。本人は気づいていなくても、必ず成長している部分があります。それを言語化して見せることです。
6ヶ月目 — 友達との比較が深刻になる
手取り14〜15万円の生活に慣れてきた頃、大学進学した友人はバイトで同じくらい稼いでいる。他社に就職した友人が「ボーナス出た」と投稿している。自分の夏の賞与は寸志だった。
対応:半年間の昇給・賞与実績を見せたうえで、「3年後・5年後の年収モデル」を提示する。大卒が22歳でスタートするのに対し、高卒は18歳からキャリアを積んでいるという事実を、数字で見せると効果的です。
1年目の終わり — マンネリか、次のステージか
仕事に慣れてきた。しかし「慣れた」は「飽きた」に変わりやすい。とくに製造業のライン作業では、同じ工程を1年間繰り返した後のマンネリ感は深刻です。
対応:1年目の終わりに「次の担当」や「新しい工程」へのステップアップを用意する。あるいは後輩指導の役割を与える。「この会社で、来年は今年とは違うことができる」と思えるかどうかが、2年目を迎えられるかの分岐点です。
従業員40人の会社で、現実的にできること
大企業向けの教科書ではなく、群馬県の中小企業の現実に合わせた対策
「メンター」がいないなら、社長がやる
「メンター制度を導入しましょう」は正論です。でも入社3年目がいない会社で、誰がメンターになるのか。
答え:社長がやる。
中小企業の最大の強みは、社長が社員の顔を全員知っていることです。大手企業では不可能な「社長が新入社員と週1回15分話す」が、中小企業ではできます。
- •月曜の朝、「週末何してた?」と声をかける
- •月1回、昼食を一緒に食べる
- •「困ったことがあったらいつでも言ってくれ」ではなく、「今月一番大変だったことは何?」と具体的に聞く
「困ったことがあったら言ってね」は機能しません。18歳が社長に「困ってます」とは言えない。聞き方を具体的にすることが全てです。
面談で使える問いかけ — 「大丈夫?」は聞いたことにならない
「困ってない?」「大丈夫?」と聞いても、18歳は「大丈夫です」としか答えません。以下の問いかけに変えてください。
答えやすい問いかけの例
- Q.「先週、仕事で一番楽しかったことは何?」
- Q.「今、一番わからないことって何?」
- Q.「家に帰ってから何してる?」(生活リズムの異変をキャッチ)
- Q.「この会社に入って、思ってたのと違ったことってある?」
- Q.「もしうちの会社を友達に紹介するとしたら、何て言う?」
最後の質問で出てくる言葉が「別に…」なら危険サイン。ポジティブな言葉が出れば定着の兆しです。
4番目の質問をするときは、「違って当然だよ。自分もそうだった」と前置きしてください。「正直に答えていい」と思える空気がないと、本音は出てきません。
交代勤務のギャップを防ぐ — 入社前に体験させる
面接で「交代勤務は大丈夫ですか?」→「大丈夫です」。このやり取りは無意味です。やったことがないから「大丈夫」と言っている。
代わりにやること:応募前職場見学や内定後〜入社前の期間に、実際の交代勤務の時間帯に来てもらい、夜勤の作業環境を見せる。そのうえで「それでもこの会社で働きたいか」を本人に判断させる。
この体験で辞退する生徒が出る可能性はあります。それでも、入社後3ヶ月で辞められるよりはるかにマシです。採用活動の1年分のコストが無駄になるのと、内定辞退1人分のコスト。どちらが重いかは明白です。
手取りのギャップを防ぐ — 初任給シミュレーション
基本給17万円。でも手取りは14万円台。この3万円の差に、初任給日に失望する高卒社員は少なくありません。
内定後の懇親会やオリエンテーションで:
- •給与明細の見方を教える(額面・控除・手取りの仕組み)
- •先輩社員の手取り推移を見せる(1年目→3年目→5年目)
- •群馬県奨学金返還支援制度の対象企業であれば、その分の手取り増を具体的に説明する
「知らなかった」を「わかったうえで働く」に変える。それだけで、初任給日のショックは大幅に減ります。
保護者への「定着報告」— 辞める前のセーフティネット
高卒社員は18歳。「辞めたい」と最初に相談するのは、上司ではなく保護者です。そのとき保護者が「もう少し頑張ってみたら」と言えるか、「そんな会社辞めなさい」と言うかは、企業と保護者の関係がどれだけ構築されているかで決まります。
- •入社1ヶ月後に保護者へ「お子様の様子」を手紙で報告する
- •3ヶ月後に「できるようになったこと」を具体的に伝える
- •群馬県は地元の口コミが強い地域です。保護者が安心して周囲に「うちの子はいい会社に入った」と言える状態を作ることが、次年度の採用にも直結します
保護者対応の進め方はオヤカク完全マニュアルで解説しています。
入社1年目 — 時期別の定着アクション
先手を打つためのチェックリスト
| 時期 | リスク | 本人の状態 | やるべきこと |
|---|---|---|---|
| 内定〜入社前 | 中 | 期待と不安。「本当にこの会社でいいのか」 | 月1回のニュースレター / 交代勤務の事前体験 / 給与明細の見方説明 / 先輩社員との座談会 |
| 入社〜2週間 | 高 | 環境激変。「居場所がない」 | 歓迎ランチ / メンター(社長)初回面談 / 毎日の声かけ / 2週間のスケジュールを事前提示 |
| 1ヶ月(GW明け) | 最高 | 五月病。「やっぱり合わないかも」 | 週1回の1対1対話 / 保護者への状況報告 / GW明け翌日の特別フォロー / 小さな成功の承認 |
| 3ヶ月 | 高 | 「成長していない」不安 | 成長の棚卸し(入社時→今の比較) / 次の3ヶ月の目標設定 / 本採用決定の面談 |
| 6ヶ月 | 中 | 友達との比較。「あっちの方がよさそう」 | 昇給・賞与実績の提示 / 3年後の年収モデル提示 / 資格取得の提案 |
| 1年 | 中 | マンネリ。「このままでいいのか」 | 新しい工程・担当へのステップアップ / 後輩指導役 / 1年間の成果発表の機会 |
期待と不安。「本当にこの会社でいいのか」
- •月1回のニュースレター
- •交代勤務の事前体験
- •給与明細の見方説明
- •先輩社員との座談会
環境激変。「居場所がない」
- •歓迎ランチ
- •メンター(社長)初回面談
- •毎日の声かけ
- •2週間のスケジュールを事前提示
五月病。「やっぱり合わないかも」
- •週1回の1対1対話
- •保護者への状況報告
- •GW明け翌日の特別フォロー
- •小さな成功の承認
「成長していない」不安
- •成長の棚卸し(入社時→今の比較)
- •次の3ヶ月の目標設定
- •本採用決定の面談
友達との比較。「あっちの方がよさそう」
- •昇給・賞与実績の提示
- •3年後の年収モデル提示
- •資格取得の提案
マンネリ。「このままでいいのか」
- •新しい工程・担当へのステップアップ
- •後輩指導役
- •1年間の成果発表の機会
群馬県で活用できる定着支援
ジョブカフェぐんま(群馬県若者就職支援センター)
若年者の就職・定着支援を無料で提供。就職後のフォローアップ相談に加え、企業向けの「採用力向上相談」も利用できます。高崎市旭町。月・火・木・金・土 9:00〜18:00。
ジョブカフェぐんま(群馬県公式)ぐんま新卒応援ハローワーク
新卒者の就職支援と定着に関する個別相談に対応。企業向けには求人票の書き方セミナーも開催しており、初めての高卒採用でも相談できます。高崎市。
ぐんま新卒応援ハローワーク(群馬労働局)奨学金返還支援・各種認定など制度の詳細は群馬県の採用支援・補助金ガイドをご覧ください。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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採用コスト
50%削減
607万円 → 300万円607万円 → 300万円
内定辞退率
ほぼ0%
一人一社(二社)制一人一社制(一人二社制)で確実採用
採用満足度
81.1%
大卒採用より+3.5pt大卒採用より+3.5pt
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