和歌山県の若者流出とUターン採用戦略
29年連続人口減少。県内就職率77%を引き上げる地元定着戦略
和歌山県の総人口は約89.6万人。1985年のピーク108.7万人から約18%減少し、29年連続で人口が減り続けています。2024年の自然減は10,072人、社会減は1,931人。出生数は4,650人と初めて5,000人を割り込みました。高卒の県内就職率は約77%で、残り23%は主に大阪府へ流出しています。この記事では、行政の支援制度を最大限に活用しながら、高校生の地元定着とUターン採用を実現する具体策を解説します。
1. 和歌山県の人口減少の実態
和歌山県の人口減少は「自然減」と「社会減」の二重構造で進んでいます。特に若年人口(15〜19歳)は2015年の45,295人から2045年には推計26,360人へと約42%の減少が予測されており、高卒採用の「パイそのもの」が縮小していく深刻な状況です。
| 指標 | 数値 | 補足 |
|---|---|---|
| 総人口 | 約896,000人 | 29年連続減少 |
| ピーク人口 | 1,087,000人(1985年) | 約18%減少 |
| 自然減 | 10,072人(2024年) | 出生4,650人 - 死亡14,722人 |
| 社会減 | 1,931人(2024年) | 転出超過(主に大阪府へ) |
| 出生数 | 4,650人(2024年) | 初めて5,000人を割り込む |
| 15-19歳人口(2015年) | 45,295人 | 高卒採用候補の母数 |
| 15-19歳人口(2045年推計) | 26,360人 | 2015年比で約42%減 |
採用への影響:2045年には15〜19歳人口が現在の約6割に縮小する見通しです。高卒採用は今後ますます「早い者勝ち」の市場になります。今のうちから学校との関係構築と複数年採用計画を始めることが、10年後の採用力を左右します。
2. 若者はなぜ和歌山を離れるのか
和歌山県から流出する若者の主な行先は大阪府です。県内就職率77%は全国的にはやや低めの水準で、残りの23%が大阪を中心とした県外へ流出しています。その背景には複数の構造的要因があります。
大阪への近接性
和歌山市から大阪市中心部(なんば)までJR阪和線・南海線で約1時間。「通勤圏」として大阪の企業に就職する選択肢が常にあります。紀北エリア(橋本市)は南海高野線で大阪へ直結しており、大阪の生活圏に組み込まれています。
求人の業種構成の偏り
和歌山県の求人は基礎素材型産業(鉄鋼・化学など)と食品加工業が中心。IT・クリエイティブ・サービス業を志望する若者にとって、県内の選択肢は限られています。白浜のIT企業集積はまだ規模が小さく、高卒向け求人は多くありません。
「和歌山では何もできない」という思い込み
情報不足から「都会に出なければ成長できない」という先入観を持つ高校生・保護者が少なくありません。スペースポート紀伊の宇宙産業、白浜のIT企業、紀州漆器の伝統工芸など、和歌山ならではの成長機会を知らないまま県外を選んでいるケースが存在します。
保護者・家族の価値観
「大阪の大きな会社に入ったほうが安心」という保護者の助言が、地元就職の選択肢を狭めている場合があります。保護者世代が経験した就職氷河期のイメージから、「大企業=安定」「地元中小企業=不安定」という固定観念が根強く残っています。
3. 行政のUIJターン支援制度を企業が活用する方法
和歌山県は若者の流出対策として手厚いUIJターン支援制度を整備しています。企業がこれらの制度を「自社の採用ツール」として活用できるかどうかが、採用競争力を大きく左右します。
移住支援金(30市町村で実施)
| 対象者 | 支給額 |
|---|---|
| 世帯で移住 | 100万円 |
| 18歳未満の子ども1人につき加算 | +100万円 |
| 単身で移住 | 60万円 |
子ども2人の世帯であれば最大300万円の支給。30市町村で実施されており、県内ほぼ全域をカバーしています。
出典:和歌山県「移住支援金」
奨学金返還助成(理工系・情報系)
理工系・情報系を専攻した方が和歌山県内に就職した場合、奨学金の返還を最大100万円まで助成する制度です。Uターン就職を促進する目的で設けられています。
企業での活用法:「当社に就職すれば奨学金返還助成の対象になります」と求人情報に明記。大卒Uターン人材の採用に特に有効です。高卒採用でも、進学後のUターンを見据えた学校との関係構築に活用できます。
出典:和歌山県商工観光労働部
UIJターンお試し雇用補助金
県外から和歌山県内の企業に「お試し」で雇用される方を対象とした補助金制度。ミスマッチを防ぎながらUIJターン就職を促進します。
企業での活用法:「まず試してみてから決められます」というメッセージは、県外在住者の心理的ハードルを大きく下げます。お試し期間中に企業文化や地域の魅力を体感してもらいましょう。
高校生のためのわかやま就職ガイド
384社が掲載される県内最大の高校生向け就職情報誌です。和歌山県とUIわかやまが共同で制作し、県内全高校に配布されます。
企業での活用法:掲載企業の枠を確保し、写真付きの魅力的な企業紹介を掲載しましょう。384社中で目を引くには「社員の顔が見える写真」「具体的な数字(初任給・休日数)」が重要です。
4. 高校生の地元定着を促す5つの実践策
「和歌山で働く魅力」を可視化する
住居費月額42,054円(全国平均59,643円の約3割安)、通勤時間の短さ、自然環境の豊かさなど、和歌山で働く具体的なメリットをデータで示しましょう。
- •求人票に「大阪勤務との生活コスト比較」を添付する
- •「和歌山県で暮らす」パンフレットを自社で作成し、学校訪問時に配布
- •社員の「1日のタイムスケジュール」を公開(通勤15分・趣味の時間2時間など)
1〜2年生の段階から「地元企業との接点」を作る
3年生の夏に初めて地元企業を知るのでは遅すぎます。1〜2年生の職業体験・工場見学で早期接点を持ち、就職活動時に「知っている企業」として想起されるポジションを取りましょう。
- •高校の職業体験受け入れに積極的に手を挙げる
- •2年生向けの「業界研究セミナー」を学校と共催する
- •文化祭・体育祭への協賛で学校との日常的な接点を維持する
企業ガイダンス(4会場・365社参加)を最大限に活用する
和歌山県は高校生向け企業ガイダンスを4会場で開催しており、365社が参加しています。このイベントは生徒と直接対面できる貴重な機会です。
- •ブースでは求人票の説明ではなく「仕事のリアル」を体験型で伝える
- •若手社員(できれば高卒入社の先輩)をブース担当にする
- •ブース訪問者に後日フォローできるよう、学校名・学年を記録する
保護者を「地元就職の応援団」に変える
保護者が「大阪に出たほうがいい」と言えば、高校生は県外を選びます。保護者を味方にすることが地元定着の最大の鍵です。
- •保護者向けの「和歌山 vs 大阪 生活コスト比較表」を作成・配布する
- •職場見学に保護者を招待し、実際の職場環境を見てもらう
- •内定通知と同時に保護者宛の社長名義の手紙を送る
「進学後のUターン」を見据えた長期リレーション
県内就職率77%は、裏を返せば23%が県外に出るということ。進学のために一度県外に出た若者が戻ってくるUターンルートも重要な採用チャネルです。
- •16大学との就職支援協定を活用し、大学のキャリアセンターと連携する
- •高校時代にインターンを受け入れた生徒と進学後もSNSで緩くつながる
- •奨学金返還助成(最大100万円)をUターン採用の切り札として活用する
5. Uターン採用を成功させる3つのポイント
移住支援金を「採用広告」として使う
世帯100万円+子ども1人100万円の移住支援金は、Uターン希望者にとって大きなインセンティブです。求人広告や採用ページに「和歌山県の移住支援金対象企業です」と明記するだけで、応募の心理的ハードルが下がります。30市町村で実施されているため、ほぼ県内全域で活用可能です。
UIわかやまと連携して県外在住者にリーチ
UIわかやま(公式サイト)は和歌山県のUIJターン総合窓口です。企業情報の掲載、就職イベントへの参加、キャリアコンサルタントによるマッチングなど、県外在住者と企業をつなぐ仕組みが整っています。自社の求人情報を登録し、積極的に活用しましょう。
「はたらコーデわかやま」でキャリアコンサルタントを活用
はたらコーデわかやまは、キャリアコンサルタントが再就職・転職を支援する県のサービスです。Uターン希望者の相談にも対応しており、企業側がこのサービスと連携することで、自社にマッチする人材の紹介を受けやすくなります。
まとめ:29年連続人口減少の和歌山県で高卒人材を確保するには「待つ採用」から「攻める採用」への転換が不可欠です。住居費3割安の生活コスト優位性を武器に、行政の支援制度(移住支援金最大200万円・奨学金返還助成最大100万円)を「自社の採用ツール」として活用し、高校1〜2年生の段階から地元企業との接点を作ること。この3つを実行すれば、県内就職率77%を自社レベルでは大幅に引き上げることが可能です。
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