高卒で採った社員を辞めさせない
静岡県の中小企業ができる定着の仕組み
求人倍率3.62倍の静岡県で、やっと2人採った高卒社員のうち1人が半年で辞めた。「思ったのと違った」と言われた。何が違ったのかを聞いても、はっきりとは答えてくれなかった。
この経験をした企業は、静岡県では珍しくありません。18,435件の求人の中から自社を選んでもらい、学校訪問を重ね、面接をし、保護者にも説明して——その全てのコストが、半年で消える。
全国データでは高卒就職者の3年以内離職率は37.9%(厚生労働省・令和4年3月卒)。約4割が3年以内に辞めています。静岡県単独の離職率データは公表されていませんが、静岡県の産業構造——製造品出荷額全国3位で高卒の45%が製造業に就職、さらに東京まで新幹線1時間という地理——を考えると、「全国平均より低いから安心」とは言い切れません。
この記事では、「なぜ辞めるのか」を静岡県の現場から考え、「従業員80人の工場でも明日からできること」を具体的に解説します。
静岡県の中小企業で、高卒社員が辞める理由
交代勤務のギャップ——特に製紙工場と自動車部品
静岡県の高卒求人の45%は製造業。富士市の製紙工場は24時間365日操業が基本で、3交代制は避けられません。浜松市の自動車部品工場もスズキ・ヤマハの生産ラインに合わせた交代勤務が多い。
高校まで朝7時に起きて夜11時に寝ていた18歳にとって、生活リズムの激変は想像以上のストレスです。
- •夜勤明けの土曜日。友達はSNSで遊びに行っている。自分は昼まで寝ている。「なぜ自分だけ」と感じる
- •日勤→夜勤の切り替え週。体が慣れる前に次のシフトが来る。慢性的な睡眠不足
- •面接で「交代勤務は大丈夫?」と聞けば「大丈夫です」と答える。やったことがないから、本当の意味で想像できていない
これはミスマッチではなく「体験の不足」です。入社前の職場見学で交代勤務を体験させない限り、このギャップは防げません。
「ものづくり」のイメージと反復作業の現実
浜松工業や科学技術高校で「ものづくり」を学んだ生徒にとって、製造業は前向きなイメージです。自分の手で何かを作る。形になる。達成感がある。
しかし中小製造業の現場で待っているのは、同じ部品の検査を8時間繰り返す仕事かもしれません。油のにおい。工場の騒音。夏場の暑さ。求人票の文字情報では伝わらない感覚的な環境。
「思ったのと違った」の正体は、多くの場合これです。嫌なのではなく、知らなかった。
同期がいない孤立
スズキやヤマハ発動機は1度に数十人を採用します。同期がいる。同じ年齢の仲間と愚痴を言い合える。
従業員80人の自動車部品工場では、高卒の新入社員は1人か2人。入社初日から周囲は全員年上。中小製造業では平均年齢が高く、10代と50代の間に20代・30代がほとんどいない「年齢層の断裂」が起きている会社も少なくありません。
この環境で18歳が孤立しない方が不自然です。
SNSで見える「別の人生」——そして新幹線1時間の東京
入社して数ヶ月。SNSを開くと、大学に進学した友人がサークルで楽しそうにしている。東京に就職した友人が「渋谷でランチ」と投稿している。
自分は交代勤務で土曜も出勤。手取りは額面より3〜4万円少ない(税金・社会保険の天引きを入社して初めて知った)。
静岡県には他県にないリスクがあります。東京まで新幹線で約1時間。「いつでも行ける」距離にある東京は、入社2〜3年目の若者にとって常に比較対象です。「一度は東京で働いてみたい」という気持ちが膨らむのは自然なことです。
伊豆エリアの宿泊業:季節波動という特殊事情
伊豆・熱海の宿泊業では、宿泊業・飲食サービス業の3年以内離職率は全国平均で64.7%と突出して高い数字が出ています(厚労省・令和4年3月卒)。
繁忙期(GW・夏休み・年末年始)は長時間労働、閑散期は収入減。友人が休んでいるときに自分は働き、友人が働いているときに自分は暇——このリズムのずれが、若い社員を精神的に追い詰めます。
いつ辞めるか — 危険なタイミングと見逃せないサイン
離職の多くは突然ではなく、予兆があります
GW明け(入社後1ヶ月)— 最も危険
4月に必死で頑張った反動と、GW中に高校時代の友人と会って「比較」してしまうこと。この2つが重なるGW明けが、最も離職リスクの高い時期です。
「辞めたい」の前に出る行動変化
- 1.朝の挨拶が小さくなる
- 2.休憩時間にひとりでスマホを見ている時間が増える
- 3.質問しても「特にないです」が増える
- 4.欠勤ではなく遅刻が増える(辞めたいが朝起きられなくなるのが先行サイン)
- 5.先輩や上司との雑談を避けるようになる
これらのサインが2つ以上見えたら、すぐに1対1で話す機会を作ってください。「何かあった?」ではなく、「最近、仕事で一番しんどいことは何?」と具体的に聞くことが重要です。
3ヶ月目 — 「成長していない」不安
試用期間が終わる頃。最初の緊張が解けて、逆に「自分は何もできるようになっていないのでは」という不安が芽生えます。製造業では3ヶ月で一人前になれる仕事はほぼありません。本人がそのことを理解していないと、「自分には向いていない」と結論づけてしまいます。
対応:3ヶ月時点で「入社時にはできなかったけど今できるようになったこと」を一緒にリストアップする。安全靴の紐を結ぶスピード、工具の名前を覚えた、図面が読めるようになった——本人は気づいていなくても、必ず成長している部分がある。それを言語化して見せることです。
6ヶ月目 — スズキ・ヤマハとの比較が深刻になる
手取り14〜15万円の生活に慣れてきた頃、浜松工業の同級生でスズキに就職した友人が「ボーナス出た」とSNSに投稿している。自分の夏のボーナスは寸志だった。
対応:半年間の昇給・賞与実績を見せたうえで、「3年後・5年後の年収モデル」を提示する。「今は差があるけど、うちは資格を取るたびに手当がつく。3年後にはこの金額になる」と具体的な数字で将来を見せることが、比較のダメージを和らげます。
1年目の終わり — マンネリか、次のステージか
仕事に慣れてきた。しかし「慣れた」は「飽きた」に変わりやすい。特に製造業のライン作業では、同じ工程を1年間繰り返した後のマンネリ感は深刻です。
対応:1年目の終わりに「次の担当」や「新しい工程」へのステップアップを用意する。あるいは後輩指導の役割を与える。「この会社で、来年は今年とは違うことができる」と思えるかどうかが、2年目を迎えられるかの分岐点です。
従業員80人の工場で、現実的にできること
大企業向けの教科書ではなく、静岡県の中小企業の現実に合わせた対策
「メンター」がいないなら、社長がやる
「メンター制度を導入しましょう」は正論です。でも入社3年目がいない会社で、誰がメンターになるのか。
答え:社長がやる。
中小企業の最大の強みは、社長が社員の顔を全員知っていることです。大手企業では不可能な「社長が新入社員と週1回15分話す」が、中小企業ではできます。
- •月曜の朝、「週末何してた?」と声をかける
- •月1回、昼食を一緒に食べる
- •「困ったことがあったらいつでも言ってくれ」ではなく、「今月一番大変だったことは何?」と具体的に聞く
「困ったことがあったら言ってね」は機能しません。18歳が社長に「困ってます」とは言えない。聞き方を具体的にすることが全てです。
入社前に「交代勤務の現実」を体験させる
静岡県の製造業で最も効果的なギャップ対策は、職場見学で交代勤務を実際に見せることです。
- •職場見学を日勤帯だけでなく、夜勤帯の開始時刻(例:22時〜)にも設定する
- •「3交代制ってこういうシフトです」を紙で説明するのではなく、夜勤で働いている先輩の姿を見せる
- •工場の騒音・油のにおい・夏場の暑さも含めて見せる。求人票の文字では伝わらない「感覚」を体験させる
「これを見た上で来てくれた人」は、入社後のギャップが小さい。結果的に定着率が上がります。正直に見せることが、最も効率的な離職防止策です。
「東京流出」を防ぐ——可処分所得で勝負する
「東京で働きたい」と考える若手に対して、「静岡はいいところだよ」という感情論では防げません。数字で示すのが効果的です。
東京 vs 静岡 — 可処分所得比較(高卒3年目のモデル)
| 項目 | 東京(板橋区) | 静岡(浜松市) |
|---|---|---|
| 手取り月収 | 約22万円 | 約19万円 |
| 家賃(1K) | -7.5万円 | -4.5万円(社宅なら-1.5万円) |
| 駐車場 | -(車なし) | 無料(会社駐車場) |
| 通勤時間 | 片道50分(満員電車) | 片道15分(マイカー) |
| 自由に使えるお金 | 約14.5万円 | 約14.5〜17.5万円 |
手取り月収
家賃(1K)
駐車場
通勤
自由に使えるお金
※ 一般的な目安としての概算。実際の金額は企業・地域により異なります
この比較表を社内掲示板やLINEグループで共有するだけで効果があります。「手取りが低い」と感じている若手に、「生活コスト込みで考えると負けていない」ことを数字で見せてください。
保護者を味方にする
18歳が「辞めたい」と最初に相談するのは、上司ではなく親です。親が「もう少し頑張ってみたら」と言うか、「辞めていいよ」と言うかで結果が変わります。
- •入社1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月で保護者に手紙を送る。「お子様はこんなことができるようになりました」を写真付きで
- •保護者向け工場見学会を年1回開催。「うちの子がどんな場所で働いているか」を実際に見てもらう
- •資格取得の報告も保護者に。「フォークリフトの免許を取りました」は親にとっても嬉しいニュース
保護者が「あの会社はちゃんとしてる」と思えば、子供が「辞めたい」と言ったときに「もう少しやってみたら」と応援してくれます。詳しくはオヤカク完全マニュアルで解説しています。
「次のステップ」を見せる——キャリアの階段を作る
「この会社にいても将来が見えない」は、離職の最後の引き金になります。逆に「来年はこれができるようになる」「5年後にはこのポジションに就ける」が見えていれば、目の前のつらさを乗り越えるモチベーションになります。
- •年収モデルの提示:「高卒1年目:手取り○万円 → 3年目:○万円 → 5年目:○万円」を具体的に見せる
- •資格取得支援:受験費用全額負担+合格祝い金+資格手当の3点セット。取れる資格のリストを入社時に渡す
- •ジョブローテーション:1年ごとに新しい工程・部署を経験させ、「飽き」を防ぐ
- •高卒入社で管理職になった先輩の実例:社内にロールモデルがいるなら、その人のキャリアパスを言語化して新人に見せる
よくある質問
Q. 高卒就職者の3年以内離職率はどれくらいですか?
A. 全国平均で37.9%です(厚労省・令和4年3月卒)。静岡県単独のデータは公表されていません。ただし静岡県は製造業の就職比率が高く(45%)、製造業の離職率は他業種より低い傾向にあります。一方で宿泊・飲食サービス業は64.7%と突出して高く、伊豆エリアの企業は注意が必要です。
Q. 入社1年目で最も離職リスクが高い時期は?
A. GW明けの入社1ヶ月目が最も危険です。4月の緊張の反動と、GW中に友人と比較してしまうこと。次に危険なのが試用期間終了の3ヶ月目。この2回のタイミングで1対1の面談を必ず入れてください。
Q. 静岡県特有の離職リスクは?
A. 東京まで新幹線で約1時間という距離感から、入社2〜3年目に「一度は東京で」と考える若手がいます。感情論ではなく、可処分所得の比較(生活コスト込みの手取り比較)を数字で示すことが最も効果的な対策です。
Q. 従業員80人の工場でもメンター制度は可能ですか?
A. 入社3年目の社員がいなくても対応できます。社長や工場長が週1回15分の対話をする方法が中小企業では最も現実的です。「困ったことは?」ではなく「今月一番大変だったことは何?」と具体的に聞くのがコツです。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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