新潟県の若者流出とUターン採用戦略
県内就職率90.6%を維持しつつ、18歳人口-13.7%減少に備える
新潟県の高卒県内就職率は90.6%。全国でもトップクラスの地元定着率を誇り、高卒人材の大半が県内で就職しています。しかし、安心はできません。2024年度から2033年度にかけて、新潟県の18歳人口は-13.7%減少すると予測されています。求職者そのものが減る中、求人倍率は4.78倍まで上昇。高卒人材の「パイの奪い合い」は年々激しくなっています。
さらに注目すべきは、令和8年3月卒の県内就職内定構成率が84.6%まで低下した点です(前年比-1.9ポイント)。県外就職内定者は319人と前年比+4.6%で、若者の県外流出がじわじわと進んでいます。本記事では新潟県の若者移動パターンを分析し、Uターン奨学金返還支援(最大120万円)をはじめとする支援制度の活用法と、企業が打つべき具体策を解説します。
1. 新潟県の若者流出の実態データ
新潟県は「区分2:18歳人口減少率=高・地元残留率=高」に分類されるエリアです。高卒者の県内定着率こそ高いものの、そもそもの高校生マーケットが縮小していく構造的な課題を抱えています。
求職者数の急減が示すもの
令和8年3月卒の求職者数は2,131人で、前年比-8.6%と大幅に減少しています。10年前の平成28年3月卒(3,539人)と比較すると、約40%も求職者が減少しました。一方、県内求人数は10,188人で微増を続けており、需給ギャップは拡大の一途をたどっています。
| 年度 | 求職者数 | 県内求人数 | 求人倍率 |
|---|---|---|---|
| 平成28年3月卒 | 3,539 | 7,325 | 2.07倍 |
| 平成30年3月卒 | 3,390 | 8,788 | 2.59倍 |
| 令和2年3月卒 | 3,220 | 9,640 | 2.99倍 |
| 令和4年3月卒 | 2,483 | 8,100 | 3.26倍 |
| 令和6年3月卒 | 2,255 | 10,023 | 4.44倍 |
| 令和7年3月卒 | 2,321 | 10,159 | 4.38倍 |
| 令和8年3月卒(1月末) | 2,131 | 10,188 | 4.78倍 |
出典:新潟労働局「新規学校卒業者の求人・求職状況」各年度
県外就職の微増傾向
令和7年3月卒(確定)では県外就職者311人(前年比-2.2%)と減少しましたが、令和8年3月卒(1月末速報)では県外就職内定者319人(前年比+4.6%)と再び増加に転じています。県内就職内定構成率は84.6%で、前年の86.6%から1.9ポイント低下しました。
新潟県の「本当の課題」は何か
高卒者の県内就職率90.6%は全国トップクラスですが、根本的な問題は「母数の減少」です。18歳人口が-13.7%減少する中、県内求人は1万件を超えたまま。採用できずに残る求人は今後さらに増加します。加えて、県外就職のじわじわとした増加は、東京圏の企業が新潟の高校生にもリーチし始めていることを意味しています。
2. エリア別の若者移動パターン
新潟県は南北に約330kmと長く、エリアごとに産業構造や若者の流出パターンが大きく異なります。自社がどのエリアに位置するかによって、対策は変わります。
| エリア | 主な流出先 | 流出要因 | 影響を受ける業種 |
|---|---|---|---|
| 下越北部(新発田・村上) | 新潟市・東京圏 | 求人の多様性、都市の利便性 | 食品製造・水産加工 |
| 中越(長岡・三条・柏崎) | 新潟市・東京圏 | 大学進学後の非帰還 | 機械製造・金属加工 |
| 上越・糸魚川 | 長野・東京圏・富山 | 県境を越えた通勤・進学 | 化学工業・電子部品 |
| 魚沼・十日町 | 新潟市・東京圏 | 人口過疎・生活利便性 | 観光・繊維・農業 |
| 佐渡 | 新潟市・東京圏 | 高校卒業後の進学・就職移動 | 観光・水産・農業 |
新潟市エリアの「吸引力」に注意
新潟県内では新潟市への一極集中が顕著です。ハローワーク新潟管轄の求人が最も多く、商業施設・飲食店・交通の利便性を求めて若者が新潟市に流入する傾向があります。中越・上越・下越北部の中小企業にとっては、県外流出だけでなく「新潟市への県内流出」も見えない競争相手です。
3. Uターン採用戦略:充実した支援制度で若者を呼び戻す
高卒者の県内就職率90.6%は高いものの、大学進学時に県外へ出る若者は一定数います。東京圏の大学に進学した新潟県出身者を呼び戻すことは、優秀な人材を確保するもうひとつのルートです。新潟県はUターン支援制度が非常に充実しており、これを採用ツールとして活用しない手はありません。
活用すべきUターン支援制度
| 支援制度 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| Uターン促進奨学金返還支援 | 年間20万円 × 最長6年 = 最大120万円 | 県外からUターンし県内就業する方 |
| 移住支援金 | 最大100万円(東京圏から) | 東京圏から新潟県へ移住する方 |
| U・Iターン交通費・宿泊費補助 | 1回1万円 × 3回 | 県外学生が県内で就活する場合 |
| にいがた就職応援団ナビ | 新潟特化の就職情報サイト(無料掲載) | 県内で就職を希望する方 |
出典:新潟県「Uターン促進奨学金返還支援事業」、新潟県「U・Iターン学生交通費・宿泊費補助」、にいがた暮らし「移住支援金」
Uターン採用を成功させる3つのステップ
ステップ1:帰省シーズンにアプローチする
お盆・年末年始は新潟出身の大学生が帰省する絶好のタイミングです。この時期に合わせた工場見学会・会社説明会を開催しましょう。「にいがた就職応援団ナビ」への求人掲載、ジョブカフェにいがた(新潟市・長岡市・上越市の3拠点)でのイベント参加も効果的です。
ステップ2:オンライン選考フローを整備する
県外在住者にとって、面接のたびに新潟まで戻るのは大きな負担です。一次面接はオンライン、最終面接のみ対面とする柔軟な選考フローを整備しましょう。U・Iターン交通費補助(1回1万円×3回)の利用案内も求人票に明記します。
ステップ3:生活コストの優位性を数値で示す
「東京で手取り22万円 vs 新潟で手取り19万円+社宅+奨学金返還支援120万円」。東京との家賃差だけで月5〜8万円の差があり、可処分所得では新潟が上回るケースは多いです。「新潟なら30歳でマイホームも現実的」という生活設計を具体的に提示しましょう。
4. 高卒人材の地元定着を促す企業施策5選
県内就職率90.6%の高さは、裏を返せば「一度地元に就職すれば残ってくれる可能性が高い」ことを意味します。最初の就職先として選ばれ、そのまま定着してもらうための施策を紹介します。
住宅支援で「ここに住み続ける理由」を作る
特に地方部では、社宅・借り上げアパート・住宅手当の提供が定着の決め手になります。「月額1万円台の社宅完備」は求人票に明記するだけで応募率が変わります。実家から通える場合も、車通勤用の駐車場完備・ガソリン代支給は必須です。
資格取得支援で「成長できる環境」を約束する
高卒入社の若手は「このまま同じ仕事を続けるだけなのか」と将来に不安を感じがちです。技能検定・溶接資格・フォークリフト免許・危険物取扱者など、取得費用の全額補助+合格祝い金を制度化しましょう。キャリアパスを「見える化」することで、長期定着につながります。
メンター制度で「相談できる先輩」を配置する
高卒1年目は社会人経験ゼロからのスタートです。年齢の近い先輩(入社3〜5年目)をメンターとして配置し、週1回の定期面談を実施しましょう。仕事の悩みだけでなく、生活面(一人暮らし・お金の使い方など)の相談に乗れる関係性が離職防止に直結します。
地域の魅力を「福利厚生」として活用する
新潟県ならではの強みを福利厚生に組み込みましょう。スキー場リフト券の法人割引、地元温泉の利用補助、地元飲食店との提携割引など、「新潟に住んでいるからこそ得られる特典」は、都市部にはない魅力です。
「ジモクラ」と連携して地元での就職意欲を高める
新潟県には「ジモクラ」という高校生向け就職情報誌が7地域版で県内全域をカバーしており、全校配布されています。これは全国的にも珍しい取り組みです。ジモクラへの自社掲載を通じて、高校1年生の段階から自社の認知度を高め、「地元で働く選択肢」として刷り込むことが可能です。
5. まとめ:「減る市場」で勝ち残るために
- 県内就職率90.6%は「今の強み」であって「未来の保証」ではない。18歳人口-13.7%の減少は確実に訪れます。
- 県外就職の微増傾向(県内就職内定構成率84.6%、前年比-1.9P)は早期の警戒信号。東京圏の企業が新潟の高校生にリーチし始めています。
- Uターン支援制度(奨学金返還最大120万円、移住支援金最大100万円)を採用ツールとして活用する。制度の存在を知らない企業はまだ多いです。
- 住宅支援・資格取得支援・メンター制度で「入ったら辞めない」仕組みを整える。採用より定着がこれからの勝負所です。
- 「ジモクラ」と「にいがた就職応援団ナビ」を活用し、高校生への認知を早期に獲得する。
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データ出典:
- 新潟労働局「新規学校卒業者の求人・求職状況(令和7年3月末確定、令和8年1月末速報)」
- 進路情報研究センター ライセンスアカデミー「都道府県別県外就職率」
- 新潟県「Uターン促進奨学金返還支援事業」
- にいがた暮らし「移住支援金」



