長崎県の学校訪問完全マニュアル
キャリアサポートスタッフとの連携が採用成否を分ける
長崎県で高卒採用の学校訪問は、他県とは違うルールがあります。進路指導の先生に挨拶するだけでは不十分です。長崎県には公私立高49校に「キャリアサポートスタッフ(CSS)」が配置されており、CSSが生徒一人ひとりの就職活動を個別に支援しています。
県内就職率71.8%(過去2番目の高水準)は、このCSS制度が押し上げた成果と言われます。CSSに自社を覚えてもらえるかが、推薦の有無を左右します。CSSは生徒の適性・性格・家庭事情まで把握しており、「あの会社、あなたに合うんじゃない?」と声をかける立場にあるからです。
さらに長崎県は、五島・壱岐・対馬の離島と島原半島という地理的条件があります。離島の高校への訪問はフェリー・飛行機が必要で、本土の感覚で訪問計画を立てると現地に着く前に1日が終わります。
この記事では、「キャリアサポートスタッフとの関係構築」「離島・半島の高校訪問計画」「7月1日求人票公開直後のスケジュール」を中心に、明日から動ける具体策を解説します。
キャリアサポートスタッフ(CSS)とは — 長崎独自の49校配置制度
どんな人がCSSなのか
長崎県が2012年に導入した制度で、元教員等が公私立高49校に配置されています。進路指導の先生(教員)とは別ポジションで、生徒一人ひとりの就職活動を個別に支援する専門スタッフです。教員が授業・部活動・行事の合間に進路指導を行うのに対し、CSSは就職支援に専念できる立場です。
生徒の成績・性格・家庭事情・希望業種・通勤可能範囲まで詳細に把握しており、「この生徒にはこの会社が合いそうだ」というマッチング判断ができる人たちです。
なぜCSSとの関係構築が重要なのか
高校生は学校推薦で1社にしか応募できません(一人一社制・9月5日〜30日)。「どの会社を推薦するか」を決めるのは進路指導会議ですが、その会議の前段で、CSSが「○○さんはあの会社が合うと思う」と教員に伝えているケースが多くあります。
つまり、CSSに自社を覚えてもらえなければ、推薦候補にすら挙がりません。求人票だけで判断されることはほぼなく、CSSが「この会社の社長は誠実だった」「現場見学で社員が生き生きしていた」と判断した会社が推薦されます。
CSSとの関係構築の基本
- •初回訪問で必ずCSSに会わせてもらう。「進路指導の先生だけでなく、キャリアサポートスタッフの方にもご挨拶させてください」と明示的に伝える
- •CSSは生徒の側に立つ人。会社の都合ではなく、生徒の人生にとって自社で働くことがどう意味を持つかを語る
- •採用後もCSSに報告する。入社3ヶ月時点で「ご紹介いただいた○○さん、こんな様子です」と連絡すると、信頼が積み上がる
- •CSSは数年で異動・交代することがある。毎年訪問して新しいCSSとも関係を作り直す
訪問前の準備
訪問対象校の選定
自社の業種・職種に合った学科を持つ高校をリストアップします。長崎県の主要高校は次節の一覧を参照してください。「とりあえず近場の高校に訪問」ではなく、自社が求める人材像に合った学科がある高校を優先するのが鉄則です。
例:精密加工の中小企業なら、長崎工業(機械科)・大村工業(機械システム)・佐世保工業(機械)の3校に優先順位を絞る方が、10校に薄く訪問するより効果的です。
アポイントの取り方
訪問前に必ず電話で進路指導部にアポイントを取ります。7月の求人票公開直後は訪問が集中するため、6月中に予約しておくとスムーズです。
電話では「進路指導の先生だけでなく、キャリアサポートスタッフの方にもご挨拶できれば」と必ず伝えてください。CSSの在席日が決まっている学校もあり、事前確認が必要です。
初回訪問の場合は会社パンフレット・求人票の写しを事前郵送しておくと、当日の話が深まります。
離島の高校への訪問計画
五島列島(上五島高校)、壱岐(壱岐商業高校)、対馬(対馬高校)への訪問はフェリーまたは飛行機が必要です。1日で複数校を回るのは現実的に困難です。
- •五島:長崎港〜福江港のフェリーで片道約3時間。日帰り訪問は時間的に厳しく、宿泊前提が現実的
- •壱岐:博多港または唐津東港からフェリー。長崎本土からのアクセスはやや不便
- •対馬:長崎空港から飛行機で約30分。本土から最も時間距離が長い
離島の高校は訪問する企業数が本土に比べて圧倒的に少ないため、来校するだけで先生・CSSの印象に強く残るメリットがあります。本気で離島の生徒を採りたい企業にとっては、年1回の訪問でも効果が大きい投資です。
訪問当日の7ステップ
受付での挨拶
名刺と求人票・会社パンフレットを持参。受付で社名・訪問目的・アポイント時間を伝えます。
進路指導の先生との面談
自社の事業内容・職種・勤務条件を簡潔に説明。先生が知りたいのは「生徒がどんな仕事をするのか」「定着率はどうか」「卒業生の活躍状況」です。特に長崎では「離島・半島出身者への配慮(社宅・帰省支援)」が重要な判断材料です。
キャリアサポートスタッフ(CSS)との面談 — 最重要
長崎県独自の制度。CSSは生徒一人ひとりの適性・性格・家庭事情まで把握しています。自社の「人材像」を会社都合ではなく「どんな生徒に来てほしいか」「その生徒の人生にとって自社で働く意味は何か」という観点で語ると、CSSは深く聞いてくれます。
職場環境の具体的な説明
写真や動画を使って職場の雰囲気を伝えます。離島出身者向けには社宅・寮の有無、引越し支援、年2回の帰省交通費補助などを必ず明示します。半島出身者には「島原から通うのは厳しい場合の社宅対応」も伝えます。
過去の採用実績の共有
同校からの採用実績がある場合は、卒業生の活躍状況を具体的に伝えます。架空のエピソードではなく、実際にあったことを誠実に語ってください。実績がない場合は「これから関係を築かせてください」と素直に伝える方が信頼を得られます。
職場見学の案内
見学日程の候補を複数提示し、見学プログラムの概要を説明します。離島・半島からの参加者には交通費補助や宿泊先の案内も忘れずに。CSSにも見学に同行してもらえると、その後の推薦判断が変わります。
お礼と今後の連絡
訪問後は当日中にお礼の連絡を入れます。求人への応募があった場合の連絡窓口を明確にしておきましょう。年に1-2回の定期訪問を続けることで、CSSが異動しても新しいCSSと関係を作り直せます。
長崎県の主要高校
工業系9校・商業系16校・農業系4校・水産1校・私立各種。優先度Sは「絶対外せない」「人気校で訪問集中」
| 学校名 | 所在地 | 系統 | 優先度 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 長崎工業高校 | 長崎市 | 工業 | S | 県内最大規模・造船/半導体への就職実績 |
| 佐世保工業高校 | 佐世保市 | 工業 | S | 佐世保重工・SUMCO等への就職 |
| 大村工業高校 | 大村市 | 工業 | A | 県央製造業(ソニー諫早TC圏内) |
| 島原工業高校 | 島原市 | 工業 | B | 半島の製造業・食品加工 |
| 鹿町工業高校 | 佐世保市 | 工業 | B | 佐世保北部エリア |
| 上五島高校 | 新上五島町 | 工業 | C | 離島の工業教育拠点 |
| 長崎商業高校 | 長崎市 | 商業 | S | 金融・流通・事務職への就職 |
| 諫早商業高校 | 諫早市 | 商業 | A | 半導体集積地の商業校 |
| 佐世保商業高校 | 佐世保市 | 商業 | A | ジャパネット商圏 |
| 島原商業高校 | 島原市 | 商業 | B | 半島の商業校 |
| 壱岐商業高校 | 壱岐市 | 商業 | C | 離島・壱岐の唯一の商業校 |
| 対馬高校 | 対馬市 | 総合 | C | 離島・対馬 |
| 長崎鶴洋高校 | 長崎市 | 水産 | A | 県内唯一の水産系高校 |
| 瓊浦高校(私立) | 長崎市 | 工業/普通 | A | 長崎市の私立工業 |
| 佐世保実業高校(私立) | 佐世保市 | 工業 | A | 佐世保エリアの私立工業 |
| 創成館高校(私立) | 諫早市 | 工業 | A | 半導体集積地の私立工業 |
長崎市・工業
県内最大規模・造船/半導体への就職実績
佐世保市・工業
佐世保重工・SUMCO等への就職
大村市・工業
県央製造業(ソニー諫早TC圏内)
島原市・工業
半島の製造業・食品加工
佐世保市・工業
佐世保北部エリア
新上五島町・工業
離島の工業教育拠点
長崎市・商業
金融・流通・事務職への就職
諫早市・商業
半導体集積地の商業校
佐世保市・商業
ジャパネット商圏
島原市・商業
半島の商業校
壱岐市・商業
離島・壱岐の唯一の商業校
対馬市・総合
離島・対馬
長崎市・水産
県内唯一の水産系高校
長崎市・工業/普通
長崎市の私立工業
佐世保市・工業
佐世保エリアの私立工業
諫早市・工業
半導体集積地の私立工業
優先度の目安:S = 該当業種の最重要校 / A = 該当業種の主要校 / B = エリア限定で訪問推奨 / C = 離島・周辺校
訪問時のNG行動
CSSを「補助スタッフ」扱いする
「進路指導の先生に話せばいいから、CSSはいいです」と言ってしまうケース。CSSは生徒一人ひとりの推薦判断に深く関わる人。最大の失礼であり、その後の推薦から外れます。
アポなし訪問
特に7月〜9月の繁忙期は厳禁。先生もCSSも授業・面談・進路指導で多忙です。
生徒への直接コンタクト
高卒採用では学校を通じた採用が原則。生徒に直接スカウトする行為は信頼を失います。
他社の批判
競合企業や他の求人の批判は絶対にNG。ジャパネット・ソニーなどの大手と比較する場合も「うちは違う良さがある」という言い方に留める。
離島・半島出身者への配慮を欠いた発言
「島から出てきて大丈夫?」「半島から通えるの?」のような発言は、離島・半島の生徒と先生・CSSに対する配慮を欠いています。むしろ「離島・半島出身者への支援体制」を積極的にアピールしてください。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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