「高知に戻ったら仕事ない」を打ち消す
7割超が県外に出る高知県の、Uターン採用と地元定着戦略
高知県の高校卒業者は、進学時に54.5%が県外へ、就職時に19.3%(約230人)が県外へ出ます。合計すると7割超が高知を離れていくのが現実です。20代の転出超過は年間-2,002人、人口は64.8万人と統計開始以来最少を更新し続けています。
ただし、すべての若者が「高知から離れたい」と思って出ているわけではありません。Uターン希望者の62.1%が「条件に合う仕事の確保」を帰郷の条件に挙げています(高知県若年人口増加検討会資料)。「高知に戻りたいけど、仕事がないから戻れない」という人が多数存在するということです。
ところがこの「仕事がないから」というのは事実ではありません。高知県内の有効求人倍率(一般)は1.11倍、高卒求人倍率は2.63倍、県内に限れば3.83倍。仕事はあります。問題は、県外に出た若者まで情報が届いていないことです。
この記事では、「高知に戻ったら仕事ない」というUターン候補者の誤解を打ち消し、企業からUターン人材を呼び戻すための具体的な方法を解説します。
高知県の若者流出の実態
まず正確なデータで現状を整理します。
| 項目 | 数値 | 背景 |
|---|---|---|
| 県内就職割合 | 68% | 723人中493人 |
| 就職時の県外流出 | 19.3% | 約230人が県外就職 |
| 進学時の県外流出 | 54.5% | 大学・専門学校が県内に少ない |
| 卒業時の県外流出合計 | 7割超 | 就職と進学を合わせると |
| 20代転出超過 | -2,002人/年 | 深刻な若年層流出 |
| 県人口 | 64.8万人 | 統計開始以来最少 |
| 年間人口減少 | -1.1万人 | 自然減 + 社会減 |
| Uターン希望者の最重要条件 | 62.1% | 「条件に合う仕事の確保」(高知県若年人口増加検討会) |
723人中493人
約230人が県外就職
大学・専門学校が県内に少ない
就職と進学を合わせると
深刻な若年層流出
統計開始以来最少
自然減 + 社会減
「条件に合う仕事の確保」(高知県若年人口増加検討会)
「3重の流出」が高知県の構造
(1) 進学時に54.5%が県外へ → 母数が大きく減る/(2) 残った就職希望者の19.3%が県外へ → さらに減る/(3) 県内に残った人材を県内求人倍率3.83倍の中で県内企業同士で奪い合う ——この三重苦が高知県の現実です。Uターン採用の整備は、3つ目の課題への根本的な解決策になります。
「高知に戻ったら仕事ない」を打ち消す情報発信
事実と認識のギャップを埋める
県外に出た若者の頭の中には、こんな思い込みがあります。
- ×「高知には大手企業がほとんどない」(→ 技研製作所・ニッポン高度紙工業・旭食品など世界的企業が複数立地)
- ×「高知の給料は安すぎる」(→ 生活コストを考慮すると可処分所得は都市部より上のことが多い)
- ×「専門職の仕事はない」(→ 技研の精密機械、IT、医療・福祉、農業・水産加工、土佐和紙の伝統工芸など多様)
- ×「Uターンする経済的余裕がない」(→ 移住支援金100万円・奨学金返還支援180万円相当が使える)
これらの誤解を打ち消すには、企業からの情報発信が不可欠です。誤解は黙っていても解けません。
発信1:自社のSNSで「高知で働く現実」を発信する
Instagram・YouTube・TikTokで、自社の職場・社員の日常・年収モデル・休日の過ごし方を発信します。県外に出た若者はSNSで地元の情報を探しています。
- •「高卒5年目で年収400万円、家賃3万円、貯金は月5万円」みたいな数字
- •「休日は海でサーフィン、山でキャンプ、四万十川で釣り」
- •「東京の友達は満員電車で1時間、自分は車で15分」
- •ハッシュタグ:#高知就活 #Uターン高知 #高知で働く
発信2:求人情報に「Uターン歓迎」と具体的に書く
「Uターン歓迎」とだけ書いても響きません。具体的な金額を書きます。
- •「Uターン入社の方:移住支援金(単身60万円・世帯100万円)対象企業」
- •「奨学金返還支援:年間10〜30万円・最大6年(こうち奨学金返還支援事業対象)」
- •「面接交通費は県の助成制度を申請いただけます」
- •「オンライン面接対応可能」
発信3:高知県の移住ポータル「高知家で暮らす」に求人情報を登録
「高知家で暮らす」(kochi-iju.jp)は、高知県への移住・Uターンを検討する人が最初に見るポータルサイトです。ここに自社の求人情報を登録することで、明確に「Uターン希望」というセグメントにリーチできます。
県外に出た若者との接点を維持する
「3〜5年後のUターン候補」として関係を作る
Uターン採用は「いますぐ呼び戻す」よりも「3〜5年後の選択肢として残しておく」戦略が現実的です。22歳の大卒新人として都市部の会社に就職した人が、3〜5年後の25〜27歳になったときに「やっぱり高知で」と思えるかどうか。その時点で自社が候補に入っているかどうかが勝負です。
接点1:在学中の早期接触(1〜2年生のうちから)
高校1〜2年生のうちから、自社の職場見学・インターンを受け入れます。「県外進学する予定だけど、いったん地元の企業を見ておきたい」生徒は意外と多くいます。「将来戻ってくる選択肢があるよ」と18歳のうちに伝えることが、5年後のUターン候補を作ります。
接点2:帰省シーズンの企業見学・OB交流会
お盆(8月)・年末年始(12月〜1月)・GW(5月)は、県外に出た若者が高知に帰ってくるタイミングです。この時期に合わせて:
- •OB・OG交流会(卒業生が母校で集まる場に企業も参加)
- •Uターン相談会(高知県主催の合同相談会への参加)
- •自社の職場見学会(帰省中の若者向け)
- •地元のスーパー・カフェに自社のチラシ・ポスター(帰省者が目にする場所)
接点3:自社採用ページに「Uターン枠」を作る
通常の新卒・中途採用ページとは別に、「Uターン採用について」のページを自社サイトに用意します。
- •移住支援金・奨学金返還支援の活用方法
- •オンライン面接対応の旨
- •引越し費用補助・社宅の有無
- •過去のUターン入社者のインタビュー
接点4:地元の高校との継続関係
毎年学校訪問を続けている企業は、その学校の卒業生(県外進学者を含む)に対して「あの会社」として認知されます。卒業生がUターンを考えたとき、最初に思い出すのは「在学中に名前を聞いた地元の会社」です。
Uターン採用の選考実務
県外から応募してきた人材を逃さないために
Uターン応募者は、新卒採用とも一般中途採用とも違う扱いが必要です。
- •面接の段取り:初回面接はオンライン(Zoom等)で、2回目以降の現地面接の交通費は会社負担とする。県の交通費助成も活用できる
- •面接日程:本人の有給休暇に合わせて柔軟に。土日面接も可能にする
- •入社時期:4月入社にこだわらず、10月入社・1月入社も検討する(現職の退職タイミングに合わせる)
- •引越し支援:引越し費用補助・社宅提供・初月家賃補助など、移住の経済的負担を軽減
- •家族の意向確認:本人だけでなく配偶者・子どもの状況も丁寧にヒアリング。配偶者の就職支援まで踏み込めるとベスト
Uターンは「人生の大きな決断」です。新卒採用のような短期決戦ではなく、3〜6ヶ月かけて関係を作りながら進める覚悟が必要です。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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