岩手県の高卒採用 学校訪問完全マニュアル
工業11校・商業6校を5エリア別に攻める
岩手県は南北約189kmに広がる、北海道に次ぐ全国2位の県土を持ちます。盛岡から久慈まで車で約2時間半、大船渡まで約2時間。1日で複数校を回るには同一エリアでまとめるのが鉄則です。
さらに、求人倍率は2.42倍でも内定率95.5%(全国5位)——12月までに9割が決着する市場です。7月1日の求人票公開直後の3週間で勝負が決まります。特に黒沢尻工業・水沢工業ではトヨタ自動車東日本・キオクシア岩手の分厚い資料が並ぶ中、中小企業の求人票が「先生の記憶に残る」訪問が必要です。
このマニュアルでは、岩手の工業11校・商業6校を5エリアでまとめ、移動コストと訪問深度のバランスをとった現実的な攻め方を解説します。
なぜ岩手県では学校訪問が決定的か
高卒採用は「学校斡旋」が基本で、生徒の応募先は進路指導の先生が主導して決まります。求人票を出すだけでは応募ゼロに終わるリスクが大きい——岩手県では特に以下の3つの理由でこの傾向が強まります。
広大な県土による情報格差
岩手県は面積が北海道に次ぐ全国2位。盛岡から久慈まで車で約2時間半、大船渡まで約2時間と移動距離が長く、都市部と沿岸・県北で企業情報の到達度に大きな差が生まれます。訪問によって直接情報を届けることの価値が高い県です。
トヨタ・キオクシアとの採用競争
トヨタ自動車東日本(金ケ崎町)・キオクシア岩手(北上市)といった大手企業が県南内陸エリアに集積しています。中小企業がこれらの大手と同じ高校から人材を獲得するには、訪問回数と先生との関係構築で差をつける必要があります。
県内就職率約74%・先生の口添えが効く
4人に1人は県外に出ますが、残った高校生のうち先生の薦めで地元就職を選ぶ生徒は多いのが岩手の特徴です。先生が「この会社がいいよ」と背中を押すかどうかで進路が大きく動きます。
エリア別・訪問先高校リスト
岩手県を5つのエリアに分け、訪問優先度を整理しました。自社の所在地や採用したい職種に応じてターゲット校を絞ります。
| エリア | 学校名 | 所在地 | 主要学科 | 訪問のポイント |
|---|---|---|---|---|
| 県央 | 盛岡工業高校 | 盛岡市 | 機械/電気/電子情報/電子機械/建築デザイン/土木 | 県内最大規模・6学科。県央エリアの製造業・建設業就職の中核 |
| 県央 | 盛岡商業高校 | 盛岡市 | 商業/会計/情報 | 商業系就職の中核校。金融・流通・事務職を採用したい場合の第一候補 |
| 県央 | 盛岡市立高校 | 盛岡市 | 商業/普通 | 商業科を中心に地元企業への就職実績あり |
| 県央 | 北桜高校 | 紫波郡 | 総合学科(工業含む) | 紫波・矢巾近郊の生徒の進路選択校 |
| 県南内陸 | 黒沢尻工業高校 | 北上市 | 機械/電気/電子/電子機械/土木 | キオクシア岩手・トヨタ自動車東日本に直結。県南内陸の最重要校 |
| 県南内陸 | 水沢工業高校 | 奥州市 | 機械/電気/設備システム/インテリア | 水沢・奥州エリアの製造業とのパイプ。中小企業の訪問先 |
| 県南内陸 | 水沢商業高校 | 奥州市 | 商業/情報システム/会計ビジネス | 県南の商業系中核校 |
| 県南内陸 | 花北青雲高校 | 花巻市 | 商業含む | 花巻エリアの商業系就職者 |
| 県南東 | 一関工業高校 | 一関市 | 機械/電気電子/土木 | 一関・平泉エリアの工業人材を輩出。電子部品サプライヤー向け |
| 県南東 | 一関高専 | 一関市 | 5年制高専 | 高卒求人対象は本科3年修了時。半導体・電子部品関連企業の重点訪問先 |
| 県南東 | 千厩高校 | 一関市 | 工業含む | 一関市東部エリアの工業就職者 |
| 県南東 | 大東高校 | 一関市 | 商業含む | 一関市北部エリアの商業就職者 |
| 沿岸 | 宮古商工高校 | 宮古市 | 機械/電気/商業/情報 | 沿岸エリアの中核。水産加工・建設業の就職先が多い |
| 沿岸 | 釜石商工高校 | 釜石市 | 機械/電気/商業 | 鉄鋼のまち・釜石。日本製鉄関連への就職実績 |
| 沿岸 | 大船渡東高校 | 大船渡市 | 工業/農業/家庭 | 気仙エリアの職業系教育の拠点 |
| 県北 | 久慈工業高校 | 久慈市 | 機械/電子機械/建設環境 | 県北の工業人材供給源。地元企業との結びつきが強い |
| 県北 | 久慈翔北高校 | 久慈市 | 商業含む | 県北の商業系就職者。食品加工・流通向け |
盛岡市
学科:機械/電気/電子情報/電子機械/建築デザイン/土木
県内最大規模・6学科。県央エリアの製造業・建設業就職の中核
盛岡市
学科:商業/会計/情報
商業系就職の中核校。金融・流通・事務職を採用したい場合の第一候補
盛岡市
学科:商業/普通
商業科を中心に地元企業への就職実績あり
紫波郡
学科:総合学科(工業含む)
紫波・矢巾近郊の生徒の進路選択校
北上市
学科:機械/電気/電子/電子機械/土木
キオクシア岩手・トヨタ自動車東日本に直結。県南内陸の最重要校
奥州市
学科:機械/電気/設備システム/インテリア
水沢・奥州エリアの製造業とのパイプ。中小企業の訪問先
奥州市
学科:商業/情報システム/会計ビジネス
県南の商業系中核校
花巻市
学科:商業含む
花巻エリアの商業系就職者
一関市
学科:機械/電気電子/土木
一関・平泉エリアの工業人材を輩出。電子部品サプライヤー向け
一関市
学科:5年制高専
高卒求人対象は本科3年修了時。半導体・電子部品関連企業の重点訪問先
一関市
学科:工業含む
一関市東部エリアの工業就職者
一関市
学科:商業含む
一関市北部エリアの商業就職者
宮古市
学科:機械/電気/商業/情報
沿岸エリアの中核。水産加工・建設業の就職先が多い
釜石市
学科:機械/電気/商業
鉄鋼のまち・釜石。日本製鉄関連への就職実績
大船渡市
学科:工業/農業/家庭
気仙エリアの職業系教育の拠点
久慈市
学科:機械/電子機械/建設環境
県北の工業人材供給源。地元企業との結びつきが強い
久慈市
学科:商業含む
県北の商業系就職者。食品加工・流通向け
出典: 岩手県教育委員会
訪問スケジュールの組み方
7月第1週(訪問解禁直後)
最重点校への1回目訪問。求人票・会社案内を持参し、進路指導主事に挨拶。県南内陸ならまず黒沢尻工業・水沢工業、県央なら盛岡工業・盛岡商業を優先
7月中旬〜下旬
2番手グループの学校への訪問。1回目訪問校への電話フォロー(求人票を見てもらえたか確認)
8月上旬
職場見学の受入実施。最重点校への2回目訪問(職場見学後のフィードバック共有)
8月下旬
応募前の最終フォロー訪問。9月の応募に向けた情報提供
10月以降
未充足の場合、追加の学校訪問。二次募集の案内(複数応募解禁後)
岩手県の移動計画のポイント
盛岡から北上・花巻は車で約1時間、一関は約1時間半、宮古は約2時間、久慈は約2時間半。1日で複数校を回る場合は、同一エリア内でまとめるのが鉄則です。県南内陸エリア(北上・水沢・一関)は1泊2日でまとめて訪問する方法も現実的です。沿岸・県北は遠方のため、年に1〜2回でも継続訪問が学校との関係構築に効きます。
持ち物チェックリストと訪問マナー
持ち物チェックリスト
- •求人票のコピー(進路指導室用+予備)
- •会社案内パンフレット(職場の写真付きが理想)
- •職場の写真・動画のQRコード(スマホで見られるもの)
- •先輩社員の声(同校OB/OGがいれば最強のアピール材料)
- •名刺(進路指導主事+学年主任分)
- •職場見学の日程候補表
手土産は公務員倫理規程により受け取れない学校が多いため、原則不要です。
訪問時のマナー
事前アポを取る
必ず電話で事前にアポイントを取ってから訪問してください。「進路指導のご担当の先生に、高卒採用の求人のご案内でお伺いしたい」と伝えます。飛び込みは絶対NGです。
訪問時間は15〜20分
先生は多忙です。要件を簡潔に伝え、長居しないようにしましょう。聞かれたことに答え、質問がなければ15分程度で切り上げます。
服装はスーツ
製造業でも訪問時はスーツが基本です。作業着での訪問は避けましょう。
先生の名前を覚える
進路指導主事の先生の名前は必ず覚え、次回訪問時に名前で呼びかけましょう。信頼関係構築の基本です。
進路指導の先生に伝えるべき5つのポイント
先生は「生徒を安心して送り出せるか」を見ています。以下を整理して伝えましょう。トヨタ・キオクシアと差別化するうえでも、この5点の準備が分かれ道です。
入社後の教育体制・研修制度
「入社後3ヶ月間のOJT研修あり」「先輩社員によるマンツーマン指導」など、高校生が安心して成長できる環境を具体的に伝えます。
過去の採用実績・定着率
「過去3年間で高卒5名採用、全員在籍中」のように数字で示すと説得力が増します。離職者がいる場合も正直に伝え、改善策を説明しましょう。先生が最も重視する情報です。
具体的な仕事内容
「自動車部品の組立ラインで、ロボットを操作して部品を取り付ける仕事です」のように、高校生でもイメージできる言葉で説明します。「キオクシアのサプライヤー」「トヨタ系部品メーカー」と立ち位置が伝わる表現も有効です。
先輩社員の声(同校OB/OGが最強)
同じ高校の卒業生が在籍していれば、その社員のコメントや写真を持参しましょう。先生にとって最も安心できる情報です。
職場見学の案内
「いつでも職場見学を受け入れます」と伝え、具体的な日程候補を提示します。岩手は移動コストが大きいため、オンライン職場見学のオプションを併設すると沿岸・県北の生徒の参加率が上がります。
訪問後のフォローアップ
学校訪問は「訪問して終わり」ではありません。継続的なフォローが次年度以降の安定した採用につながります。岩手は採用人数が少ない年でも、来年の関係を切らさないことが命綱です。
訪問翌日:お礼の電話
訪問の翌日に「先日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございました」とお礼の電話を入れましょう。
1週間後:追加資料の送付
先生から質問があった内容の回答や、追加の会社案内資料を郵送します。
8月:職場見学のお礼
職場見学に生徒が来てくれた場合、学校経由でお礼を伝えましょう。生徒の様子もフィードバックすると好印象です。
翌年2〜3月:入社後の報告
採用した生徒の入社後の様子を先生に報告しましょう。「元気に頑張っています」の一言が、翌年の推薦につながります。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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