広島県の若者流出とUターン採用戦略
人口270万人割れ時代に高卒人材を確保・定着させる方法
広島県の人口が約269万9,796人となり、令和7年6月に48年ぶりに270万人を割り込みました。中四国地方の中核である広島ですら、若年人口の減少に歯止めがかかっていません。高卒採用の現場では求人倍率4.65倍(過去最高)と、企業間の人材獲得競争が熾烈です。
一方で広島県の高校生は地元就職を選ぶ割合が高く、地元志向は根強い県です。つまり広島県の企業の課題は2つに集約されます——「そもそも少ない高卒求職者をいかに自社に引きつけるか」と「大学進学で県外に出た若者をいかにUターンで呼び戻すか」。本記事では、Go!ひろしまの活用や奨学金返済支援制度など、明日から動ける具体策を解説します。
広島県の「本当の課題」は2つある
広島県は中四国地方最大の都市圏を擁し、マツダ・中国電力・大創産業など大手企業の本社が立地しています。それでも東京圏・関西圏への若者流出が続き、人口は48年ぶりの270万人割れ。高卒求職者の絶対数は少子化で減り続けています。
課題1:少ない高卒者に選ばれる
求人倍率4.65倍の超売り手市場。求人10,650件に対し求職者は2,292人で、約8割の求人が充足できません。地元に残る高卒者にどう「ここで働く理由」を示すかが問われます。
課題2:県外に出た若者を呼び戻す
大学進学で東京・大阪に出た広島出身者を、卒業後にUターンで呼び戻す仕組みづくり。広島県のUIJターン支援を使えば、Uターン人材の獲得で競合に先行できます。
県内の人口移動 — 広島市への一極集中
県外流出だけでなく、県内での広島市圏集中も地方部の採用課題に
福山・呉・尾道・三次・庄原など県北部・東部の中小企業は、県外流出に加えて広島市圏との人材の奪い合いにも直面しています。自社がどの流出構造に置かれているかを把握することが、対策の第一歩です。
| 流出元エリア | 流出先 | 主な要因 | 影響を受ける産業 |
|---|---|---|---|
| 県北部(三次・庄原) | 広島市圏 | 商業施設・交通利便性・求人の多様性 | 農林業・中小製造業・サービス業 |
| 呉・東広島 | 広島市圏 | 通勤利便性・商業施設 | 造船・鉄鋼・自動車部品 |
| 福山・尾道・三原 | 広島市圏・岡山市圏 | 新幹線沿線・大学進学 | 鉄鋼(JFE)・造船・物流 |
| 県全域(大学進学時) | 東京・大阪・京都 | 大学の選択肢・都市への憧れ | 全業種(Uターン対象) |
要因:商業施設・交通利便性・求人の多様性
影響産業:農林業・中小製造業・サービス業
要因:通勤利便性・商業施設
影響産業:造船・鉄鋼・自動車部品
要因:新幹線沿線・大学進学
影響産業:鉄鋼(JFE)・造船・物流
要因:大学の選択肢・都市への憧れ
影響産業:全業種(Uターン対象)
福山エリアの特殊事情
福山市はJFEスチール西日本製鉄所を擁する鉄鋼の街です。岡山県との県境に位置するため、岡山市圏への人口流出も無視できません。福山エリアの中小企業は、広島市圏だけでなく岡山市圏とも人材を奪い合う「三方面作戦」を強いられています。
Uターン採用の4ステップ — Go!ひろしまと奨学金返済支援を活用する
大学進学で東京・大阪に出た広島出身者を呼び戻すUターン採用は、高卒者の絶対数が減り続けるなかで有効な人材確保策です。広島県のUIJターン支援を積極的に活用しましょう。
Go!ひろしまに企業情報を登録する
Go!ひろしまは広島県が運営するUIJターン支援サイトです。県外在住の広島出身者に向けて就職・移住・生活情報を発信しています。帰省シーズン(お盆・年末年始)はアクセスが増えるため、その時期に合わせた情報更新が効果的です。
奨学金返済支援制度を導入する
広島県は「Go!ひろしま奨学金返済支援制度導入企業応援補助金」で、奨学金返済支援を新たに導入する中小企業を補助します。奨学金を抱えたUターン人材にとって「返済を会社が支援してくれる」ことは就職先選びの決定打になり得ます。
オンライン選考と交通費支援を整える
県外在住者にとって面接のために広島へ戻る交通費と時間は大きな負担です。一次面接はオンライン、最終面接のみ来社としましょう。交通費支援を求人票に明記すると経済的ハードルが下がります。
広島の生活コスト優位性をアピールする
東京と比べ広島は家賃が低く、車があれば生活の自由度も高い。「都市部で手取り22万円(家賃8万円)」と「広島で手取り19万円(家賃4万円+車所有可)」のように、可処分所得ベースで比較すると説得力があります。
活用できる主な支援制度
| 支援制度 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| Go!ひろしま | UIJターン支援サイト(企業情報・移住情報発信) | 県外在住の広島移住希望者 |
| 奨学金返済支援制度導入企業応援補助金 | 制度を導入する中小企業を補助 | 中小企業 |
| ひろしましごと館 | 就職に関する総合相談窓口 | 求職者全般 |
| 広島わかものハローワーク | 若年層向けの就職支援 | 若年求職者 |
| ひろしまワークス | 県運営の求人情報サイト(企業情報の発信) | 高校生・保護者・求職者 |
UIJターン支援サイト(企業情報・移住情報発信)
対象: 県外在住の広島移住希望者
制度を導入する中小企業を補助
対象: 中小企業
就職に関する総合相談窓口
対象: 求職者全般
若年層向けの就職支援
対象: 若年求職者
県運営の求人情報サイト(企業情報の発信)
対象: 高校生・保護者・求職者
出典: Go!ひろしま / わーくわくネットひろしま
高卒人材の地元定着を促す企業施策5選
採用した後、辞めずに長く働いてもらうために
待遇の継続的な見える化
初任給だけでなく「3年後の月収モデル」「5年後のキャリアパス」「10年後の役職と年収」を具体的に提示しましょう。住宅手当・家族手当・資格手当を含めた「実質年収」で訴求すると、大手との単純比較を避けられます。
ワークライフバランスの数値化と発信
Z世代は給与と同等以上に「休みやすさ」「残業の少なさ」を重視します。年間休日数・月平均残業時間・有給取得率を数値で公開しましょう。広島はカープ観戦やしまなみ海道サイクリングなどレジャーが豊富。プライベートの充実度もアピールできます。
地域コミュニティとの接点をつくる
地元に根ざして働く中小企業の社員は地域コミュニティと深く関わります。地元の祭り、消防団、カープ応援企画などを通じた社員同士のつながりは、若手社員の居場所づくりに直結します。
住宅支援・通勤支援で「住み続ける理由」を提供
社員寮・借り上げ社宅・住宅手当は若手の定着に直結します。呉・尾道・福山など広島市外の企業は、自社周辺に安価な住居を確保できれば広島市圏の高い家賃との比較優位を示せます。マイカー通勤補助や駐車場無料も有効です。
スキルアップ支援で「成長できる」実感を与える
人材開発支援助成金活用支援補助金(社労士経費の一部を広島県が補助)を活用し、計画的な研修を整備しましょう。資格取得支援、外部研修への派遣、ジョブローテーションが「ここで成長できる」実感を生み、離職を防ぎます。
まとめ
人口270万人割れ、高卒求人倍率4.65倍という現実の中で、企業が取るべきアクションは明確です。県内の高卒人材には「ここで働く理由」を、県外のUターン候補には「広島に戻る理由」を、それぞれ具体的な数字と制度で提示すること。Go!ひろしまへの登録、奨学金返済支援制度の導入、求人票への支援制度の明記——できることから一つずつ積み上げていきましょう。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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