福井県の学校訪問完全マニュアル
科学技術・敦賀工業・武生商工――大手と並んでも先生の記憶に残るには
福井県の高卒求人倍率は3.99倍。7月1日の求人公開直後、福井市の科学技術高校にはセーレン・熊谷組・日華化学を含む数百社の求人票が一斉に届きます。武生商工・敦賀工業も同じです。求人票を持って行っただけでは、先生の記憶にすら残らないのが現実です。
本記事は、福井県固有の「1 エリア 1 工業高校」の構造を踏まえた学校訪問の動き方を、4 月の関係構築から翌 3 月の内定者フォローまでの年間サイクルでまとめます。
1. 福井県の「1 エリア 1 工業高校」構造を理解する
福井県には工業系学科を持つ高校が 6 校あります。石川県・愛知県のように同一エリアに複数の工業高校がある県と違い、福井県は地理的に 1 エリア 1 校に近い分布です。これは訪問戦略に直結します。
| 学校名 | エリア | 主要学科 | この高校で勝負する企業層 |
|---|---|---|---|
| 福井県立科学技術高校 | 福井市 | 機械/電気/化学システム/情報工学/テキスタイルデザイン/都市・建築 | セーレン・日華化学・熊谷組と県内全工業中小が一斉集中。最大激戦 |
| 福井県立敦賀工業高校 | 敦賀市 | 電気/電子機械/情報ケミカル | 日本原電・関西電力協力会社・地元建設業 |
| 武生商工高校 | 越前市(丹南) | 機械/電気/建築/商業/情報ビジネス | 鯖江眼鏡メーカー・越前打刃物・地元機械 |
| 坂井高校 | 坂井市 | 機械/自動車/電気/食品/ビジネス | 自動車整備・電気工事・食品加工 |
| 奥越明成高校 | 大野市 | 機械/電気/生活福祉/ビジネス情報 | 奥越エリア地場企業 + 工業 + 福祉 |
| 若狭東高校 | 小浜市 | 電気・機械/ビジネス情報 | 嶺南西部の地元製造・建設 |
学科:機械/電気/化学/情報/テキスタイル/都市建築
勝負する企業層:セーレン・日華化学・熊谷組と県内全工業中小が集中。最大激戦
学科:電気/電子機械/情報ケミカル
勝負する企業層:日本原電・関西電力協力会社・地元建設業
学科:機械/電気/建築/商業/情報ビジネス
勝負する企業層:鯖江眼鏡メーカー・越前打刃物・地元機械
学科:機械/自動車/電気/食品/ビジネス
勝負する企業層:自動車整備・電気工事・食品加工
学科:機械/電気/生活福祉/ビジネス情報
勝負する企業層:奥越エリア地場 + 工業 + 福祉
学科:電気・機械/ビジネス情報
勝負する企業層:嶺南西部の地元製造・建設
読み方のポイント
工業系の採用なら「自社の事業所から通勤可能な高校 = 1 校」が基本。鯖江の中小は科学技術ではなく武生商工。敦賀の中小は科学技術ではなく敦賀工業。「とりあえず科学技術にも出す」をやめることで、訪問工数が地元 1 校に集中し、深い関係を築けます。
出典: 福井県教育委員会
2. 福井県の一人一社制と複数応募解禁日
全国共通の高卒採用の節目は 6/1(求人受付開始)・7/1(求人公開・学校訪問解禁)・9/5(応募書類提出開始)・9/16(選考開始)です。一人一社制から複数応募への切り替え日は都道府県ごとに違い、福井県は9 月 30 日まで一人一社制、10 月 1 日以降は複数応募可能に切り替わります(福井県新規高卒者就職問題検討会議の申し合わせ)。
企業側で抑えるべきは 2 点です:
- •9/16 の選考開始日以降は採否を 3 日以内(遅くとも 7 日以内)に通知する義務がある。中小はこのスピードで動けるかが採用力
- •9 月内に内定枠を埋めきれなくても、10 月 1 日以降の複数応募解禁で「2 次募集」のチャンスがある。9 月で諦めない
3. 学校訪問の年間サイクル――4 月から翌 3 月まで
7 月 1 日の解禁日 1 回だけ訪問する企業は、先生の記憶に残りません。4 月から年 4 回の訪問で関係を作るのが基本です。
| 時期 | 訪問の目的 | 持っていくもの・話すこと |
|---|---|---|
| 4~5 月 | 新年度の挨拶・進路指導主事の異動確認 | 前年度採用した卒業生の活躍報告。先生の異動先・新任先生への顔合わせ |
| 6 月 | 求人票準備・訪問先リスト確定 | 求人票案を先生に見せて「これで応募が来そうか」相談。7 月の訪問日程を仮押さえ |
| 7 月 1 日~最初の 1 週間(最重要) | 解禁日訪問。本格的に求人票を渡す | 求人票・会社案内・OB/OG 一覧・職場見学会案内チラシ。社長または役員が直接行く |
| 8 月 | 職場見学の受け入れ | 夏休み中の見学希望に対応。先生も一緒に呼ぶ。1~2 年生の参加も歓迎 |
| 9 月 | 9/5 応募受付開始・9/16 選考開始 | 応募書類確認・面接日程確定。採否は 3 日以内通知 |
| 10 月 | 複数応募解禁・追加募集 | 未充足の場合は再訪問。「2 次募集の枠あり」を伝える |
| 11~12 月 | 内定者の定期フォロー | 内定者に連絡・先生に「内定後の様子」を共有 |
| 1~3 月 | 次年度準備・入社準備・御礼 | 入社前研修案内。先生に 1 年の御礼。新任先生への引き継ぎを依頼 |
目的:新年度の挨拶・人事異動確認
動き:前年度卒業生の活躍報告・新任先生への顔合わせ
目的:求人票準備・訪問先確定
動き:求人票案を先生に見せて相談・7 月日程を仮押さえ
目的:解禁日訪問
動き:求人票・会社案内・OB/OG 一覧・社長または役員が直接
目的:職場見学の受け入れ
動き:先生も呼ぶ・1~2 年生も歓迎
目的:応募受付・選考
動き:採否は 3 日以内通知
目的:複数応募解禁・追加募集
動き:未充足なら再訪問・2 次募集枠アピール
目的:内定者フォロー
動き:先生に内定後の様子を共有
目的:次年度準備・御礼
動き:入社前研修案内・新任先生への引き継ぎ依頼
4. 7 月 1 日 解禁直後の動き方(最重要)
7 月 1 日に学校訪問が解禁され、求人票が公開されます。この日から 1 週間以内に何をやったかで、その年の採用は 8 割方決まります。
事前準備(6 月までに)
- •7 月 1 日のアポを電話で取る。電話は授業時間を避け、放課後(16:00~17:00 頃)。「7 月 1 日の解禁日に伺いたい」と伝える
- •求人票・会社案内・OB/OG リストを揃える。OB/OG リストはその高校の卒業生の在籍状況・現在の役割・昇進実績を 1 枚にまとめる
- •職場見学会の日程を 7 月中に 2~3 日確保。学校訪問の場で「7 月△日に見学会を開きます」と具体的日程で誘えるように
当日(7 月 1 日~7 日)
- •社長または役員が直接訪問。これが大手との最大の差別化。担当者だけでなく決裁権者が動く
- •持参物は必ず「先生用」「進路指導部用」の 2 セット用意。先生が個別に持ち帰れるように
- •「採用したい人物像」を抽象論ではなく「○○科で部活を頑張った子なら向いている」と具体的に伝える
- •会話の中で先生が話した内容(「今年は女子の就職希望が多い」「機械科は地元志向が強い」など)を必ず訪問記録ノートに残す
- •訪問終了後、24 時間以内に御礼メール。会話で出た内容を 1 行入れる
アポなし訪問は致命傷
求人倍率 3.99 倍の福井県では、解禁日直後の工業高校に数十~数百社が押し寄せます。アポなしの企業は受付で帰されるか、5 分の立ち話で終わります。先生の時間を奪う行為として今年だけでなく翌年・翌々年の関係にも傷がつきます。
5. 持ち物チェックリスト
必須持参物
- •求人票(ハローワーク受理済み・予備 3 部)
- •会社案内パンフレット(写真主体・職場の雰囲気が伝わる)
- •名刺(先生用 + 受付用・10 枚以上)
- •OB/OG 一覧(在籍状況・役割・昇進実績)
- •職場見学会の案内チラシ(具体的日程入り)
あると差がつく
- •1~3 年目社員の紹介シート(写真 + コメント)
- •入社後研修カリキュラム表(資格取得実績含む)
- •3 年後・5 年後の昇給ロードマップ
- •職場紹介動画 QR コード(YouTube/TikTok)
- •訪問記録ノート(前回の会話を必ず復習)
福井県ならではの追加項目
福井県は県内就職率 89.8% と地元志向が極めて強い県です。先生は「地元で長く安定して働けるか」を強く意識します。転勤の有無・マイカー通勤の可否・社宅/寮の有無・最寄り駅からのアクセスを求人票や会社案内に明示してください。「転勤なし」と書くだけで保護者の安心度が変わります。
6. セーレン・熊谷組と並んだときに記憶に残る 5 つのコツ
OB/OG 報告から始める
前年度採用した卒業生の活躍を先生に報告する。「○○さんが 3 年目でリーダー昇格しました」「資格を 2 つ取りました」。先生にとって教え子の活躍は最大の関心事。求人票を渡す前にこの会話で 5 分使う。
「生徒のメリット」だけ話す
「人手不足で困っています」は逆効果。「当社では○○の資格が取れます」「3 年目で月収○万円が現実的」と生徒視点で話す。先生は常に生徒の幸せが第一。
具体的数字で労働条件を伝える
「残業は月平均○時間」「年間休日 120 日」「初任給○万円」と数値で。特に保護者が気にする福利厚生(社会保険・退職金・寮の有無)は具体的な数字で。
先生に職場見学を一緒に提案する
生徒だけでなく先生を企業見学に招待。先生が現場を見ると、その後の生徒への推薦が変わる。「うちの会社を見てほしい」ではなく「現場を見ていただいた上で生徒さんに合うか判断してください」と伝える。
次回訪問の日程をその場で決める
帰り際に「次は 8 月の見学会か、10 月の定期訪問でお邪魔します」と次回日程をその場で確定。1 回で終わる企業ではなく「定期的に来る企業」として記憶される。
7. やってはいけない NG 行動
- •アポなし突撃訪問――先生の時間を奪う。今年だけでなく翌年・翌々年の関係も毀損する
- •「誰かいい子いませんか」――求める人物像を抽象的に丸投げするのは禁物。先生は推薦できない
- •求人条件を即答できない――給与・休日・勤務時間・転勤の有無は暗記必須
- •採用した生徒が辞めても連絡しない――早期離職を黙っていると翌年から推薦が来なくなる。離職した時こそ報告と改善策を伝える
- •求人時期だけの「年 1 回訪問」――4 月の挨拶、6 月の打合せ、7 月の解禁、9 月の選考、10 月以降のフォローで年 4 回以上行く
- •選考結果を遅延通知する――9/16 以降の採否は 3 日以内(遅くとも 7 日以内)通知が義務。遅延は法令違反 + 信頼失墜
8. よくある質問
Q. 学校訪問はいつから始めるべきですか?
A. 4 月の新年度開始直後から。進路指導主事は異動でメンバーが変わるため、4~5 月に挨拶訪問で新任先生に顔を覚えてもらう。7 月 1 日の解禁日に「初めまして」では遅すぎます。
Q. 福井県の一人一社制はいつまでですか?
A. 9 月 5 日から 9 月 30 日まで一人一社制。10 月 1 日以降は複数応募解禁。1 次募集で充足できなかった場合は 10 月以降の 2 次募集にチャンスがあります。
Q. 工業高校と商業高校、どちらを優先すべき?
A. 自社の業種・職種次第。製造業・建設業・技術職なら工業高校(科学技術/敦賀工業/武生商工/坂井/奥越明成/若狭東)。事務職・販売職・金融・サービスなら商業科併設校(武生商工/坂井/若狭東)か福井商業・敦賀商業。普通科にも就職希望者は一定数いるため、自社規模に合わせて訪問先を選定してください。
Q. アポイントは必須ですか?
A. 福井県の工業高校では必須です。求人倍率 3.99 倍で大手中小が殺到する 7 月直後にアポなしで行くと門前払いになります。電話は授業時間を避け放課後 16:00~17:00 にかけてください。
Q. 科学技術高校に大手と並んで勝てますか?
A. 正面から勝つのは難しいです。科学技術高校は 6 学科ありますが、機械・電気のような花形学科は大手集中。化学システム・テキスタイルデザインなど比較的少数学科に注力するか、事業所の地理的距離が近い高校(武生商工・坂井・敦賀工業)を主戦場にするのが現実的な勝ち筋です。
Q. OB/OG がいない高校にも行くべきですか?
A. 初年度は積極的に行く価値があります。OB がいないこと自体は不利ですが、その分「最初の卒業生をうちで育てたい」というメッセージは新鮮に響きます。先生も新規企業を歓迎するケースがあります。ただし初年度から 3 年は同じ先生・同じ高校に通い続ける覚悟が必要です。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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