青森県の若者流出を止める
社会減少率全国最大の県で「残る理由」を作る方法
青森県の社会減少率は0.37%で全国最大。高校新卒者の43.7%が県外就職を希望しています。主要な流出先は東京326人と宮城155人。18歳人口は2024年から2033年にかけて15.8%減少する見通しで、これは全国平均7.8%の約2倍のペースです。
一方で、R6.3卒(2024年春卒)の就職率は100%(26年ぶり)。県内求人倍率は4.23倍で過去2番目の高水準です。「仕事がないから出ていく」のではなく、「ここにいる理由が見えないから出ていく」のが青森県の現実です。
この記事では、この構造的な課題に対して企業が取れる具体的な対策と、行政の支援制度の活用法を、青森の中小企業の人事担当者の目線で解説します。
なぜ青森の若者は出ていくのか
情報の非対称——県内企業の魅力が「見えていない」
SNSやメディアで東京の生活に触れる高校生にとって、青森県の日常は「退屈」に映りがちです。問題の本質は、都会が魅力的なことではなく、青森県内の企業や仕事の魅力が高校生に届いていないことです。
青森県内には食品加工(りんご加工14社以上)、八戸臨海工業地帯の非鉄金属(八戸製錬・世界最大ISP)、電子部品、建設業(求人1,070人で最多)、日本原燃のエネルギー産業など、多様で安定した雇用基盤があります。しかし求人票だけでは、それらの仕事の中身や成長機会は伝わりません。
保護者世代の「県外志向」——他県にはない構造
青森県には特徴的な課題があります。保護者世代にも「東京に出た方がいい」という価値観が根強い点です。集団就職の経験を持つ祖父母世代や、自身が県外就職を経験した保護者世代が「青森に残っても仕方ない」と助言するケースが少なくありません。子どもが「地元で働きたい」と言っても、家族の後押しを得られないことがあります。
これは多くの県では発生していない、青森固有の壁です。詳しくはオヤカク完全マニュアルで解説しています。
賃金水準と有効求人倍率の乖離
青森県の有効求人倍率は1.11倍で、全国平均1.19倍を下回ります。高卒求人倍率は4.23倍と高いにもかかわらず、全体の労働市場では依然として厳しい状況です。この数字のギャップが「青森県は仕事が少ない」というイメージを生み、若者の県外流出を後押ししています。
県外流出の内訳と引き戻しの鍵
| 流出先 | 人数 | 主な流出理由 | 引き戻しの鍵 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 326人 | 「都会で挑戦したい」「選択肢が多い」 | 生活コスト比較・UIJターン支援金の認知向上 |
| 宮城県(仙台) | 155人 | 「東北の中心で働きたい」 | 「八戸〜仙台 新幹線90分」を逆手に活用 |
| その他関東 | — | 「友人が行くから」 | 地元企業の魅力の言語化が不足 |
理由:「都会で挑戦したい」「選択肢が多い」
引き戻し:生活コスト比較・UIJターン支援金の認知向上
理由:「東北の中心で働きたい」
引き戻し:「八戸〜仙台 新幹線90分」を逆手に活用
理由:「友人が行くから」
引き戻し:地元企業の魅力の言語化が不足
出典: 青森労働局
本質的な問題:「仕事がない」のではなく「見えていない」
県内求人数4,380人に対して就職希望者は1,838人。求人倍率4.23倍が示す通り、青森県には仕事があります。問題は、高校生と保護者に県内企業の魅力が「見えていない」こと。企業側から情報を届ける努力が必要です。
活用すべき行政支援制度
青森県は若者流出を食い止めるため、充実した支援制度を整備しています。企業側がこれらを理解し、求人票や採用活動に組み込むことで、高校生と保護者への説得力が大きく変わります。
| 支援制度 | 支給額・内容 | 対象 | 企業の活用ポイント |
|---|---|---|---|
| UIJターン交通費助成 | 交通費1/2(上限18,000円)+宿泊1/2(上限5,000円) | 県外からの就職活動者 | 面接の交通費負担を求人票に明記 |
| 移住支援金 | 世帯100万円・単身60万円・子1人最大100万円加算 | 東京圏からの移住者 | 移住支援金対象法人に登録し求人票に明記 |
| 地方就職支援金 | 交通費1/2(上限18,000円)+移転費(上限108,000円) | 東京圏→県内就職者 | 引っ越し費用の負担軽減をアピール |
| あおもりジョブ | 県公式就職情報サイト(無料掲載) | 県内就職希望者 | 必ず求人を掲載し可視性を確保 |
| シューカツアオモリ | 就活アプリ(無料) | 青森県就職希望者 | アプリ上での企業情報発信を強化 |
交通費1/2(上限18,000円)+宿泊1/2(上限5,000円)
対象:県外からの就職活動者
活用:面接の交通費負担を求人票に明記
世帯100万円・単身60万円・子1人最大100万円加算
対象:東京圏からの移住者
活用:移住支援金対象法人に登録し求人票に明記
交通費1/2(上限18,000円)+移転費(上限108,000円)
対象:東京圏→県内就職者
活用:引っ越し費用の負担軽減をアピール
県公式就職情報サイト(無料掲載)
対象:県内就職希望者
活用:必ず求人を掲載し可視性を確保
就活アプリ(無料)
対象:青森県就職希望者
活用:アプリ上での企業情報発信を強化
企業が今すぐやるべき4ステップ
- •移住支援金対象法人に登録する(青森県庁に申請・登録費用ゼロ)
- •あおもりジョブ・シューカツアオモリに求人を掲載する(無料)
- •求人票に「UIJターン交通費助成対象」「移住支援金対象企業」と明記する
- •保護者向け資料に支援制度の一覧を添付する
出典: 青森県UIJターン就職支援
企業が打てる流出防止策5選
行政支援だけでなく、企業自身が「残る理由」を作る
1. 東京との生活コスト比較を採用ツールに組み込む
東京の家賃8万円vs青森2.5万円。通勤片道60分vs15分。食費・光熱費の差。これを具体的な数字で見える化します。
「東京手取り18万円 − 家賃8万円 = 自由に使える10万円」vs「青森手取り16万円 − 家賃2.5万円 = 自由に使える13.5万円」のように、可処分所得で比較すると青森の方が多いケースが見えてきます。実家暮らしなら貯金ペースは桁違いです。保護者への説得材料として最も効果的です。
2. 高校1〜2年生への早期接触(職場見学・出前授業)
3年生の7月に求人票を届けるだけでは遅すぎます。県外流出の意思決定は3年生の春〜夏に行われるため、その前に地元企業の存在を知ってもらう必要があります。
1〜2年生のうちから職場見学の受け入れや学校への出前授業を行い、「青森にこんな会社があるんだ」という認知を作ることが鍵です。高校1年生のときに見学した会社が、3年生になって求人票を見たときに「あ、あのときの会社か」となる効果は計り知れません。
3. 先輩社員の「地元を選んだ理由」を言語化して発信する
「東京に行こうと思ったけど、地元の会社に入って正解だった」。こうした先輩社員のリアルな声は、高校生に最も響くコンテンツです。
SNS(Instagram・TikTok)での短い動画発信、学校訪問時のパンフレットへの掲載、職場見学での座談会。「自分と同じ境遇の先輩が地元で輝いている」姿を見せることが流出防止の最善策です。先輩が「自分は東京を選ばなかった」と語ることに価値があります。
4. 仙台・東京とのアクセスの良さを逆手に取る
東北新幹線で八戸〜仙台は約90分、新青森〜仙台は約100分。「休日は仙台でショッピング」「県外研修は東京で」など、青森に住みながら都市圏のメリットも享受できることをアピールしてください。
青森の若者が抱える「閉じ込められる感覚」を解消することが、地元定着に直結します。「青森にいると都会から離れる」のではなく「青森にいても都会と行き来できる」というメッセージへの転換です。
5. ヤングジョブプラザあおもり・青森暮らしサポートセンターと連携する
ヤングジョブプラザあおもりはジョブカフェ・ハローワークヤングプラザ・サポートステーションが一体となった支援拠点です。東京・有楽町の青森暮らしサポートセンターでは対面・オンラインでの移住相談を受け付けています。
これらの窓口と連携し、UIJターン希望者の情報を早期にキャッチする仕組みを作ってください。一度東京に出た若者を3年後・5年後にUターンで取り込む長期戦略も有効です。
「出ていく理由」を消すのではなく「残る理由」を作る
「東京に行くな」と言っても効果はありません。必要なのは、高校生と保護者に「青森で働く具体的なメリット」を数字と事実で見せることです。
- •情報の非対称を解消する:県内に仕事はある(求人倍率4.23倍)。問題は「見えていない」こと。
- •生活コストの優位性を数字で示す:東京vs青森の可処分所得比較は保護者への最強の説得材料。
- •行政支援制度をフル活用する:移住支援金(世帯100万円)、UIJターン交通費助成、地方就職支援金を求人票に組み込む。
- •早期接触で「知らなかった」を防ぐ:高校1〜2年生への職場見学・出前授業で、県外流出の意思決定前に接点を作る。
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
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