1. 就職活動の年間スケジュール
高校生の就職活動は、全国統一のスケジュールで実施されます。3年生の7月から本格的にスタートし、9月に選考、10月には内定が出るという非常にスピーディーな流れです。
時期 | 高校生の主な動き |
---|---|
3年生4-6月 | 自己分析、業界研究、進路相談 |
7月1日以降 | 高校で求人票公開、求人票閲覧開始 |
7月末-8月末 | 職場見学(夏休み期間に3社程度) |
8月末-9月初旬 | 応募企業を1社に決定、学校推薦を受ける |
9月5日 | 応募書類提出開始 |
9月16日以降 | 面接・筆記試験 |
9月末-10月 | 内定 |
10月-翌3月 | 内定者研修、入社準備 |
出典: 厚生労働省・文部科学省「高卒求人のルール」
一人一社制とは
9月5日から一定期間は、一人の生徒が応募できる企業を一社に限定する「一人一社制」が実施されます。これは、企業・高校生双方の負担を軽減し、ミスマッチを防ぐための制度です。
一定期間経過後は、複数社への応募が可能になる「二次応募」の期間に移行します。具体的な期間は都道府県により異なるため、進路指導の先生に確認しましょう。
2. 自己分析と業界研究
自己分析の重要性
自己分析は、自分に合った仕事を見つけるために必要不可欠です。業界研究を始める前に、まず自己分析を行うことで、自分に適した業界・職種を効率的に絞り込むことができます。
自己分析の3つのステップ
- 1. 自分の得意なこと・好きなことを書き出す
学校生活、部活動、アルバイト等での経験から、自分が得意なこと・好きなことをリストアップします。 - 2. 自分の性格・価値観を考える
どのような環境で働きたいか、何を大切にしたいかを考えます。 - 3. 将来のビジョンを描く
5年後、10年後にどうなりたいかを具体的にイメージします。
業界研究の方法
業界研究は、自分が働きたい業界を絞り込むために行います。高校生の就職活動は7月から9月と非常にタイトなスケジュールのため、事前の業界研究が重要です。
業界研究の情報収集方法
- 学校の進路指導室
過去の求人票、先輩の就職実績、企業パンフレット等が閲覧できます。 - インターネット
企業のホームページ、求人サイト、ニュースサイトで最新情報を収集します。 - 進路指導の先生
業界の特徴、企業の評判、先輩の活躍状況等を聞くことができます。 - 保護者や知人
実際に働いている人の話を聞くことで、仕事の実態を知ることができます。
出典: リクナビ・マイナビ就活準備ガイド、キャリタス就活ガイド
3. 求人票の見方
求人票とは
求人票は、企業がハローワーク経由で高校に提出する正式な募集情報です。労働条件、仕事内容、給料、休日等、企業で働く上で重要な情報がすべて記載されています。
求人票で必ずチェックすべき8項目
- 1. 職種・仕事内容
具体的に何をするのかを確認します。わからない言葉は先生に質問しましょう。 - 2. 就業場所
実際に働く場所を確認します。本社所在地と就業場所が異なる場合もあります。 - 3. 就業時間・休憩時間
1日の勤務時間と休憩時間を確認します。 - 4. 休日・休暇
週休二日制と完全週休二日制は異なります。週休二日制は「月に1回以上週2日の休みがある」、完全週休二日制は「毎週必ず2日の休みがある」という意味です。 - 5. 給料(賃金)
基本給、諸手当、総支給額を確認します。総支給額は税金・社会保険料を差し引く前の金額です。実際の手取り額は、総支給額の約80%が目安です。 - 6. 昇給・賞与
昇給の有無・時期、賞与(ボーナス)の有無・支給月数を確認します。 - 7. 社会保険
雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険の加入状況を確認します。 - 8. 試用期間
試用期間の有無・期間、試用期間中の労働条件を確認します。
給料の見方(具体例)
進路指導教員からの調査によると、高校生は基本給150,000円未満に抵抗を感じる傾向があります。しかし、基本給だけでなく、諸手当・賞与も含めた年収で判断することが重要です。
給料の計算例
月給内訳
- • 基本給: 150,000円
- • 通勤手当: 10,000円
- • 住宅手当: 5,000円
- • 総支給額: 165,000円
手取り額(目安)
165,000円 × 80% = 約132,000円
年収(賞与あり)
165,000円 × 12ヶ月 + 賞与(基本給 × 4ヶ月分)= 約258万円
出典: 厚生労働省「高卒求人票の見方」公式リーフレット、ジンジブ・ジョブドラフト、さんぽう「高校生のための就職マップ」
4. 職場見学のポイント
職場見学の重要性
職場見学は、求人票だけではわからない職場の雰囲気、実際の仕事内容、人間関係等を直接確認できる貴重な機会です。高校生は平均して3社の職場見学に参加します。
職場見学で確認すべきポイント
- 1. 職場環境
- • 職場は整理整頓されているか
- • 清潔で安全な環境か
- • 設備・機械は新しいか
- 2. 人間関係・雰囲気
- • 社員同士のコミュニケーションは良好か
- • 挨拶はしっかり行われているか
- • 先輩社員は優しそうか
- 3. 実際の仕事内容
- • 求人票と実際の業務内容は一致しているか
- • 自分にできそうな仕事か
- • 興味が持てる仕事か
- 4. 先輩社員の話
- • 入社前の不安と実際の感想
- • 研修制度・育成体制の実態
- • やりがいや大変なこと
職場見学時のマナー
- • 制服・スーツで清潔な服装
- • 時間厳守(10分前到着)
- • 明るく元気な挨拶
- • メモを取る姿勢
- • 積極的に質問する
- • 見学後、学校経由でお礼状を送る
質問の準備
職場見学では、気になることを積極的に質問しましょう。以下は質問例です。
- • 1日の業務の流れを教えてください
- • 新人研修はどのくらいの期間ですか
- • 困ったときに相談できる人はいますか
- • 残業はどのくらいありますか
- • 休日出勤はありますか
- • 有給休暇は取りやすいですか
- • 高卒の先輩社員は何人いますか
出典: ジンジブ「高卒採用Lab」、ジョブドラフト
5. 履歴書の書き方
高校生の履歴書の基本
高校生は「全国高等学校統一用紙」を使用します。この用紙は進路指導室で入手できるほか、厚生労働省・文部科学省のウェブサイトからダウンロードすることもできます。
履歴書作成の基本ルール
- 必ず手書きで作成
黒色のボールペンまたは万年筆を使用します。消せるペン(フリクション等)は絶対に使用してはいけません。 - 丁寧な字で書く
楷書体で丁寧に書きます。字の上手さよりも丁寧さが重要です。 - 修正液・修正テープは使わない
間違えた場合は、新しい用紙に書き直します。 - コピーを取る
提出前に必ずコピーを取り、面接前に内容を確認します。
写真の準備
- • 3ヶ月以内に撮影したもの
- • 制服着用(校章・校バッジ・襟・ネクタイに注意)
- • 帽子は脱ぐ
- • 明るい表情で正面を向く
- • 写真裏に氏名を記入
志望動機の書き方
志望動機は、履歴書の中で最も重要な項目です。以下の3つのポイントを盛り込みましょう。
志望動機の3つの要素
- 1. なぜこの会社を選んだか
職場見学で感じたこと、企業の魅力等を具体的に書きます。 - 2. 自分の経験・強み
学校生活、部活動、アルバイト等での経験と、それを仕事にどう活かせるかを書きます。 - 3. 入社後の目標
入社後にどのように働きたいか、どう成長したいかを書きます。
志望動機の例文
私が貴社を志望した理由は、職場見学で社員の皆様が明るく挨拶してくださり、温かい雰囲気を感じたからです。私は高校3年間、バスケットボール部でチームワークの大切さを学びました。この経験を活かし、貴社で周囲と協力しながら成長していきたいと考えています。入社後は、先輩方の指導を受けながら一日も早く仕事を覚え、会社に貢献できる人材になりたいです。
出典: さんぽう「高校生のための就職マップ」、Indeed・ジョブドラフト「高校生向け履歴書ガイド」
6. 面接対策
面接の基本マナー
面接は、企業が直接あなたの人物像を確認する重要な機会です。基本的なマナーを守り、自分らしさをアピールしましょう。
面接当日の流れ
- 1. 到着(10分前)
会社には10分前に到着します。トイレで身だしなみを最終確認します。 - 2. 受付
明るく元気に挨拶し、「本日○時から面接のお約束をいただいております、△△高校の□□と申します」と伝えます。 - 3. 待合室
静かに待ちます。スマートフォンは電源を切るかマナーモードにします。 - 4. 入室
ドアをノックし、「失礼します」と言って入室します。ドアは静かに閉めます。 - 5. 挨拶
椅子の横に立ち、「△△高校の□□と申します。本日はよろしくお願いいたします」と挨拶します。 - 6. 着席
「お座りください」と言われてから着席します。 - 7. 面接
面接官の目を見て、はっきりと受け答えします。 - 8. 退室
「本日はありがとうございました」と挨拶し、ドアの前で一礼して退室します。
よくある質問と回答例
Q1. 自己紹介をしてください
△△高校の□□と申します。私は3年間バスケットボール部で活動し、チームワークの大切さを学びました。貴社でもチームの一員として、周囲と協力しながら成長していきたいと考えています。本日はよろしくお願いいたします。
Q2. なぜ当社を志望しましたか
職場見学で社員の皆様が明るく挨拶してくださり、温かい雰囲気を感じたからです。また、先輩社員の方から丁寧な指導を受けられると伺い、自分も成長できる環境だと確信しました。
Q3. あなたの長所と短所は何ですか
長所は、最後まで諦めずに取り組むことです。バスケットボール部で厳しい練習を続けた経験から、困難なことでも粘り強く取り組む力が身につきました。短所は、慎重になりすぎて行動が遅くなることです。現在は、準備をしっかり行った上で素早く行動できるよう心がけています。
Q4. 入社後にやりたいことは何ですか
まずは一日も早く仕事を覚え、先輩方の力になれるようになりたいです。将来的には、後輩を指導できる先輩社員になることが目標です。
Q5. 最後に何か質問はありますか
入社までに勉強しておくべきことがあれば教えてください。
面接で避けるべきこと
- • 暗い表情、小さい声
- • 面接官の目を見ない
- • 「わかりません」だけで終わる
- • ネガティブな発言(前の会社の悪口等)
- • スマートフォンを見る
出典: ジンジブ・ジョブドラフト、さんぽう「高校生のための就職マップ」
7. 内定後の準備
内定おめでとうございます!
内定を受けたら、入社までの期間(10月-翌3月)を有意義に過ごしましょう。この期間に、社会人としての準備と基礎知識の習得を行います。
内定後にやるべきこと
- 1. 内定者研修への参加
企業から案内される研修には必ず参加します。社会人マナー、業務知識、先輩社員との交流等を学びます。 - 2. 社会人マナーの習得
挨拶、言葉遣い、電話応対、メールの書き方等を本や動画で学習します。 - 3. 業界・業務知識の習得
業界のニュース、会社の事業内容、商品・サービスについて勉強します。 - 4. 健康管理
規則正しい生活習慣を身につけ、体調を整えます。 - 5. 基礎学力の維持
漢字、計算、ビジネス文書等の基礎学力を維持します。
入社準備リスト
- • スーツ(男女とも黒・紺・グレーの無地)
- • ワイシャツ・ブラウス(白)
- • ビジネスシューズ(黒)
- • ビジネスバッグ
- • 腕時計
- • 印鑑(シャチハタ不可)
- • 通帳・キャッシュカード(給料振込用)
- • 筆記用具・メモ帳
入社3年以内離職を防ぐために
高卒3年以内離職率は38.4%(厚生労働省)です。このうち、6カ月未満の超早期離職が11.8%(リクルートワークス研究所)を占めています。
離職を防ぐための心構え
- 最初は誰でも失敗する
失敗は成長の機会です。失敗を恐れず、わからないことは素直に質問しましょう。 - 困ったら相談する
先輩社員、上司、学校の先生等、相談できる人を見つけておきましょう。 - 3年は続ける
仕事の面白さは、1-2年目ではわからないことが多いです。3年続けることで、本当のやりがいが見えてきます。 - 健康第一
心身の健康を保つことが最優先です。無理をせず、体調が悪いときは早めに相談しましょう。
出典: 厚生労働省「新規学卒者離職状況調査」、リクルートワークス研究所「高校生の就職になにが起こったのか」(2020年)
データ出典
- • 厚生労働省・文部科学省「高卒求人のルール」
- • 厚生労働省「高卒求人票の見方」公式リーフレット
- • 株式会社ジンジブ「高卒採用Lab」・「ジョブドラフト」
- • 株式会社さんぽう「高校生のための就職マップ」
- • リクルートワークス研究所「高校生の就職になにが起こったのか」(2020年)
- • リクナビ・マイナビ「就活準備ガイド」
- • キャリタス就活「就活ガイド」
- • Indeed・タウンワーク「履歴書ガイド」