高卒採用コスト完全分析
大卒採用との詳細比較・投資回収期間・ROI計算方法
高卒採用と大卒採用では、採用コストに大きな差があります。このページでは、マイナビ・リクナビ等の公式情報、JILPT調査データ、中小企業調査機関の統計を基に、高卒採用の採用コストを徹底分析します。
1. 高卒採用の採用コスト構造
高卒採用の採用コストは、主に以下の項目で構成されます。
1-1. 直接採用コスト
項目 | 費用 | 備考 |
---|---|---|
求人媒体費 | 48-72万円/年 | ジョブドラフト等 |
学校訪問費 | 5-20万円 | 交通費・手土産等 |
職場見学受入費 | 2-10万円 | 資料作成・説明担当者人件費 |
選考費用 | 1-5万円 | 面接担当者人件費 |
合計 | 56-107万円 |
1人あたりの採用コスト: 複数名採用の場合、求人媒体費は1人あたりに分散されるため、1人あたり20-50万円が一般的な範囲です。
出典: ジョブドラフト公式料金プラン(2024年)、中小企業調査機関統計
1-2. 間接コスト
- 採用担当者の人件費: 年間50-100万円(専任の場合)
- 求人票作成時間: 10-20時間(時給換算で2-5万円)
- 面接・選考時間: 1人あたり2-4時間(時給換算で5,000-1万円)
間接コストを含めると、1人あたり総コストは30-70万円となります。
2. 大卒採用との詳細比較
2-1. 直接採用コスト比較
項目 | 高卒採用 | 大卒採用 | 削減効果 |
---|---|---|---|
求人媒体費 | 48-72万円 | 80-295万円 | 40-75%削減 |
合同説明会費 | 不要 | 25-60万円/回 | 100%削減 |
1人あたり採用単価 | 20-50万円 | 約100万円 | 50-80%削減 |
出典: マイナビ2026公式情報、リクナビ2026公式情報、ジョブドラフト公式料金プラン、合同企業説明会コスト調査レポート(2024年)
2-2. 大卒採用コストの詳細内訳
大卒採用では、以下のような高額なコストが発生します。
求人媒体費(マイナビ2026)
- バリュープラン: 80万円
- 基本パッケージ: 160万円
- プレミアムパッケージ: 295万円
合同企業説明会費
- 地方都市(新潟等): 25万円/回
- 中核都市(名古屋・福岡等): 40万円/回
- 大都市(東京・大阪等): 60万円/回
年間4回出展すると160-240万円、6回出展すると240-360万円の投資が必要です。
企業規模別の大卒採用コスト(年間)
- ミニマム戦略: 100万円(リクナビ初回限定プランのみ)
- 標準戦略: 510万円(マイナビ基本 + 合同説明会4回 + オプション)
- 積極戦略: 1,005万円(マイナビプレミアム + 合同説明会6回 + オプション多数)
出典: 新卒採用コスト確定版(マイナビ・リクナビ公式情報、実例データ)
2-3. 内定辞退率の差による実質コスト
採用コストを比較する際、内定辞退率を考慮する必要があります。
項目 | 高卒採用 | 大卒採用 |
---|---|---|
内定辞退率 | ほぼ0% | 65.1% |
内定者数(入社1名確保) | 1名 | 約3名 |
実質採用コスト | 20-50万円 | 約300万円 |
大卒採用では、内定辞退率65.1%のため、1名の入社を確保するために約3名に内定を出す必要があります。これにより、実質的な採用コストは1名あたり約300万円に膨らみます。
一方、高卒採用は1人1社制により内定辞退がほぼゼロのため、コストロスが発生しません。
出典: マイナビ企業新卒内定状況調査(2025年卒)、新卒採用成果とリスク統合レポート(2024年)
3. 企業規模別コストシミュレーション
3-1. 小規模企業(従業員50名未満・採用2-3名)
高卒採用の場合
- 求人媒体費: 48万円(地方都市)
- 学校訪問費: 5万円
- 職場見学受入費: 3万円
- 選考費用: 2万円
- 合計: 58万円(1人あたり19-29万円)
大卒採用の場合
- 求人媒体費: 80万円(マイナビバリュープラン)
- 合同説明会費: 100万円(地方都市2回)
- 内定辞退対応コスト: 50万円
- 合計: 230万円(1人あたり約77万円)
削減効果: 年間172万円削減(75%削減)
3-2. 中規模企業(従業員50-300名・採用5-10名)
高卒採用の場合
- 求人媒体費: 60万円(中核都市)
- 学校訪問費: 15万円
- 職場見学受入費: 10万円
- 選考費用: 5万円
- 合計: 90万円(1人あたり9-18万円)
大卒採用の場合
- 求人媒体費: 160万円(マイナビ基本パッケージ)
- 合同説明会費: 200万円(中核都市4回)
- 内定辞退対応コスト: 150万円
- 合計: 510万円(1人あたり約51-102万円)
削減効果: 年間420万円削減(82%削減)
3-3. 大規模企業(従業員300名以上・採用10-20名)
高卒採用の場合
- 求人媒体費: 72万円(大都市)
- 学校訪問費: 30万円
- 職場見学受入費: 20万円
- 選考費用: 10万円
- 合計: 132万円(1人あたり6.6-13.2万円)
大卒採用の場合
- 求人媒体費: 295万円(マイナビプレミアムパッケージ)
- 合同説明会費: 400万円(大都市6回)
- 内定辞退対応コスト: 310万円
- 合計: 1,005万円(1人あたり約50-100万円)
削減効果: 年間873万円削減(87%削減)
出典: 新卒採用コスト確定版、ジョブドラフト公式料金プラン、合同企業説明会コスト調査レポート(2024年)
5. ROI計算方法
ROI(Return On Investment: 投資対効果)は、採用活動の効果を数値化する重要な指標です。
5-1. 投資回収期間の比較
項目 | 高卒採用 | 大卒採用 |
---|---|---|
3年間総投資 | 200-300万円 | 607万円 |
戦力化期間 | 3ヶ月 | 1.6年 |
年間純貢献(3年目以降) | 100万円 | 100万円 |
投資回収期間 | 3-4年 | 6年以上 |
高卒採用の投資回収期間は3-4年で、大卒採用(6年以上)より2-3年早く投資を回収できます。
出典: 新卒採用投資回収期間・生産性分析、中小企業調査機関統計
5-2. ROI計算式
ROI = (利益 - 投資額) / 投資額 × 100
高卒採用のROI(10年間)
- 総投資: 300万円
- 10年間純貢献: 700万円(3年目以降年間100万円 × 7年)
- ROI = (700万円 - 300万円) / 300万円 × 100 = 133%
大卒採用のROI(10年間)
- 総投資: 607万円
- 10年間純貢献: 400万円(3年目以降年間100万円 × 4年)
- ROI = (400万円 - 607万円) / 607万円 × 100 = -34%
高卒採用は10年間でROI 133%を達成し、大卒採用はROI -34%(マイナス)となります。高卒採用の方が投資効率が2倍以上高いことがわかります。
注意事項
このROI計算は、年間純貢献を100万円と仮定したシミュレーションです。実際の数値は、業種・企業規模・職種により変動します。
6. コスト削減の具体的方法
6-1. 高卒採用特有のコスト削減方法
学校との継続的関係構築
高校との信頼関係を築くことで、求人媒体費を削減できます。指定校制度を活用し、毎年安定的に採用することで、学校から優先的に紹介を受けられます。
削減効果: 年間20-30万円
複数名同時採用
求人媒体費は年間固定のため、複数名採用することで1人あたりのコストを削減できます。5名採用すれば、1人あたり10-15万円まで下がります。
削減効果: 1人あたり5-10万円
職場見学の効率化
複数の高校生を同日に受け入れることで、職場見学の受入コストを削減できます。また、オンライン説明会を併用することで、遠方の学校にもアプローチできます。
削減効果: 年間5-10万円
早期離職の防止
内定後のフォロー、入社後のメンター制度等を通じて、早期離職を防止します。離職率を10ポイント下げれば、期待損失を20-30万円削減できます。
削減効果: 期待損失20-30万円削減
6-2. 大卒採用から高卒採用への切り替え効果
大卒採用の一部を高卒採用に切り替えることで、大幅なコスト削減が可能です。
事例: 年間10名採用の企業
- 従来: 大卒10名採用 → 年間1,000万円
- 変更後: 高卒7名 + 大卒3名 → 年間490万円
- 削減効果: 年間510万円削減(51%削減)
業務内容によっては、高卒採用で十分対応できる職種があります。製造業・サービス業・販売業等では、高卒採用の活用が特に有効です。