高卒採用vs大卒採用徹底比較

コスト・離職率・戦力化期間・能力を実証データで分析

高卒採用と大卒採用、どちらが企業にとって有利なのか。この疑問に対し、JILPT(独立行政法人労働政策研究・研修機構)、厚生労働省、マイナビ、リクルート等の公式データを基に、6つの項目で徹底比較します。

1. 採用コスト比較

1-1. 直接採用コスト

項目高卒採用大卒採用
求人媒体費20-50万円80-295万円
合同説明会費不要(学校訪問)25-60万円/回
採用単価20-50万円約100万円

出典: マイナビ2026公式情報、リクナビ2026公式情報、合同企業説明会コスト調査レポート(2024年)

1-2. コスト削減効果

高卒採用の採用コストは大卒採用の20-50%です。大卒採用で100万円かかる場合、高卒採用では20-50万円で済むため、50-80%のコスト削減効果があります。

大卒採用の場合、マイナビやリクナビといった求人媒体への掲載料金が高額です。マイナビ2026の料金は以下の通りです。

  • バリュープラン: 80万円
  • 基本パッケージ: 160万円
  • プレミアムパッケージ: 295万円

さらに、合同企業説明会に出展する場合、1回あたり25-60万円の追加コストが発生します。年間4回出展すると160-240万円、6回出展すると240-360万円の投資が必要です。

一方、高卒採用では学校訪問が中心となるため、合同説明会費用は不要です。ハローワークへの求人票提出も無料です。

2. 離職率比較

2-1. 3年以内離職率

学歴3年以内離職率3年定着率
高校卒38.4%61.6%
大学卒34.9%65.1%
3.5ポイント3.5ポイント

出典: 厚生労働省「新規学卒者離職状況調査」(令和3年3月卒)

高卒と大卒の3年以内離職率の差はわずか3.5ポイントです。一般的に「高卒は離職率が高い」というイメージがありますが、実際のデータでは大きな差はありません。

2-2. 企業規模別離職率(高卒)

企業規模3年以内離職率
5人未満62.5%
1,000人以上27.3%

出典: 厚生労働省データ

離職率は企業規模に大きく影響されます。1,000人以上の大企業では27.3%と低い一方、5人未満の小規模企業では62.5%と高くなります。つまり、高卒採用の離職率が高いのではなく、小規模企業の離職率が高いというのが実態です。

2-3. 超早期離職(6カ月未満)

学歴6カ月未満離職率
高校卒11.8%
大学卒7.5%

出典: リクルートワークス研究所調査(2020年)

入社後6カ月未満での「超早期離職」は、高卒11.8%、大卒7.5%と高卒の方が高い傾向があります。これは、職場見学や企業研究の時間が限られている高校生が、入社後にミスマッチを感じるケースがあるためです。

3. 戦力化期間比較

学歴戦力化期間一人前期間
高校卒3ヶ月3-5年
大学卒1.6年3年
約1年短縮同等

出典: HR総研・マイナビ調査(2020-2024年)、JILPT 2005年報告書

戦力化期間は、高卒が約3ヶ月、大卒が平均1.6年です。高卒採用の方が約1年早く戦力化できます。

これは、高卒者が18歳という若い年齢で入社するため、企業文化への順応性が高く、柔軟に業務を吸収できるためです。大卒者は22歳で入社するため、大学生活で形成された価値観や働き方の固定観念があり、企業文化への適応に時間がかかる傾向があります。

一方、「一人前」になるまでの期間は、高卒が3-5年(JILPT調査では60.3%の企業が3-5年と回答)、大卒が3年と、大きな差はありません。

4. 25歳時点能力比較(高卒7年目vs大卒3年目)

JILPT 2005年報告書では、高卒7年目と大卒3年目の能力を9項目で比較しています。両者とも25歳時点での比較です。

能力項目高卒優位変わらない大卒優位
定型業務処理33.6%47.4%14.8%
専門知識・技能26.8%36.1%33.1%
達成意欲11.4%57.8%26.6%
思考の柔軟性5.5%45.5%44.8%
調整能力6.7%38.0%51.2%
理解能力9.1%48.0%38.9%
改善能力8.7%46.6%40.7%
指導能力7.6%45.2%43.1%
長期伸長可能性5.4%44.8%45.8%

出典: JILPT 2005年報告書「新規学卒採用の現状と将来」(調査対象: 2,332社)

4-1. 分析結果

ほぼすべての能力で「変わらない」が最多です。これは、25歳時点では高卒・大卒の差はほとんどないことを示しています。

  • 高卒が優位: 定型業務処理能力(33.6% vs 14.8%)
  • 大卒が優位: 調整能力(51.2% vs 6.7%)、思考の柔軟性(44.8% vs 5.5%)
  • ほぼ同等: 専門知識・技能、達成意欲、理解能力、改善能力、指導能力、長期伸長可能性

JILPT報告書では、「ほぼすべての能力であまり変わらない」と結論づけています。

5. 年収・人件費比較

5-1. 平均年収

学歴平均年収(2024年)
高校卒288.9万円
大学卒385.8万円
約97万円

出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2024年)

高卒と大卒の年収格差は約97万円です。企業にとっては、年間約100万円の人件費削減効果があります。

5-2. 年代別格差の拡大

  • 20代: 30-40万円差
  • 30代: 60-80万円差
  • 40代: 100万円超の差
  • 50代: 150-200万円差

年齢が上がるにつれ、学歴による年収格差は拡大します。ただし、20代では30-40万円程度の差であり、大きな差ではありません。

5-3. 3年間の人件費総額

学歴3年間人件費総額
高校卒約600-750万円
大学卒約900万円
約300万円

3年間で約300万円の人件費差が生まれます。これは企業にとって大きなコスト削減効果です。

6. 内定辞退率比較

学歴内定辞退率
高校卒0%
大学卒65.1%

出典: マイナビ企業新卒内定状況調査(2025年卒)

高卒採用の内定辞退率はほぼ0%です。これは、高卒採用が「1人1社制」という独自のルールで運用されているためです。

6-1. 1人1社制とは

高卒採用では、応募開始から一定期間(通常9月5日〜9月末)は、1人の生徒が同時に応募できる企業は1社のみです。内定を得た生徒は原則としてその企業に就職するため、内定辞退はほぼ発生しません。

6-2. 大卒採用の内定辞退リスク

大卒採用では、学生が複数企業から内定を獲得し、最終的に1社を選ぶため、内定辞退率は65.1%と非常に高いです。企業は内定辞退を見越して多めに内定を出す必要があり、採用計画が不安定になります。

6-3. 2025年卒採用充足率

マイナビ調査によると、2025年卒の採用充足率は70.0%(3年連続減少・過去最低)です。つまり、大卒採用では10人採用したくても7人しか採用できないという厳しい状況です。

一方、高卒採用では内定辞退がほぼないため、採用計画通りの人数を確実に確保できます。

まとめ: 高卒採用の5つの優位性

項目高卒採用の優位性
1. 採用コスト50-80%削減(20-50万円 vs 約100万円)
2. 離職率わずか3.5ポイント差(大きな差なし)
3. 戦力化期間約1年短縮(3ヶ月 vs 1.6年)
4. 25歳時点能力ほぼ同等(定型業務は高卒優位)
5. 内定辞退率ほぼ0%(大卒65.1%)

高卒採用は、採用コスト、戦力化期間、内定辞退率の面で大卒採用より明確に優れています。離職率は大きな差がなく、25歳時点の能力もほぼ同等です。

特に中小企業にとっては、採用コストを大幅に削減でき、内定辞退リスクがほぼない高卒採用は、戦略的に非常に有効です。

ただし、高卒採用には独自のルール(1人1社制、学校推薦制、職場見学等)があり、大卒採用とは異なる手法が必要です。詳細は以下の関連記事をご覧ください。

関連記事

高卒採用のご相談はゆめスタへ

ゆめスタは、高卒採用支援に特化したコンサルティングサービスを提供しています。採用戦略の立案から実行支援まで、トータルでサポートします。

お問い合わせはこちら