1. 高卒採用のデジタル化動向
デジタル化の背景
高卒採用におけるデジタル化は、新型コロナウイルス感染症の影響を機に急速に進展しました。従来の対面中心の採用活動から、オンラインツールを活用した非対面型の採用活動へと移行が進んでいます。
企業のDX推進状況
中小企業白書(2024年版)によると、2019年から2023年にかけて企業のDX推進は年々増加しており、「ステージ3:業務効率化とデータ活用のためのデジタル化」に取り組む企業は、2019年の9.5%から2023年には26.9%へと約3倍に増加しました。
高卒採用DXの特徴
高卒採用のデジタル化には、以下の特徴があります。
- • 学校との連携を維持しながらオンラインツールを活用
- • 職場見学のオンライン化により、遠方の学校へのアプローチが可能に
- • 採用管理システム(ATS)による効率的な情報管理
- • SNSを活用した高校生への直接的な情報発信
出典: 中小企業庁「2024年版中小企業白書」第7節DX、日経xTECH「高校生や高卒社会人をDX人材に」
2. オンライン職場見学・説明会
オンライン職場見学の形式
オンライン職場見学は、主に以下の2つの形式で実施されています。
形式 | 特徴 | メリット |
---|---|---|
ライブ配信型 | リアルタイムで職場を案内し、質疑応答も可能 | 双方向のコミュニケーションが可能 |
録画型(360度VR) | 事前に撮影した360度動画を配信 | いつでもどこでも視聴可能 |
360度VRバーチャルツアー
360度VR動画を活用したバーチャル職場見学は、新型コロナウイルス感染症の影響で対面での会社説明会が困難になった際に急速に普及しました。
360度VRのメリット
- • 遠方の高校生も移動時間なしで職場を体験できる
- • 繰り返し視聴できるため、企業理解が深まる
- • 実際の職場の雰囲気を臨場感を持って伝えられる
- • 複数の職場を同時に見学できる
オンライン説明会の3つのメリット
- 1. 業務負担の軽減
事実情報をオンラインで伝えることで、説明会の準備・実施の負担を軽減できます。 - 2. より充実した対面説明会の実現
基本情報をオンラインで事前に伝えることで、対面説明会では深い質問や対話に時間を使えます。 - 3. 時間・場所の制約をなくす
高校生が自分の都合の良い時間にいつでもどこでも視聴できます。
出典: くるる360「就活に使える!新卒採用VR」、各社オンライン説明会サービス情報
3. Web面接の実施方法
Web面接の普及状況(2024年)
2024年3月卒業生を対象とした調査によると、60.4%の学生がライブWeb面接を経験し、21.2%が録画Web面接を経験しました。
Web面接導入率
- • ライブWeb面接: 60.4%
- • 録画Web面接: 21.2%
- • 最終面接は73.5%が対面のみで実施(2023年卒データ)
Web面接のメリット
対象 | メリット |
---|---|
企業側 | • コスト削減(月40万円削減の事例あり) • 遠方の高校生にもアプローチ可能 • 面接日程の調整が容易 |
高校生側 | • 移動時間・交通費が不要 • 慣れた環境で面接を受けられる • 複数企業の面接を効率的に受けられる |
Web面接の実施方法
高卒採用におけるWeb面接は、以下の流れで実施されます。
- 1. 学校との事前調整
Web面接の実施について学校と事前に調整し、承諾を得る - 2. ツールの選定
Zoom、Microsoft Teams、Google Meet等のWeb会議ツールを選定 - 3. 高校生への案内
学校経由で接続方法、注意事項を事前に伝達 - 4. 接続テスト
面接日の数日前に接続テストを実施 - 5. Web面接実施
通常の面接と同様の質問・評価基準で実施
ハイブリッド方式の採用
2023年卒のデータでは、最終面接は73.5%が対面のみで実施されています。これは、初期選考はWeb面接で効率化し、最終面接は対面で実施する「ハイブリッド方式」が主流になっていることを示しています。
出典: マイナビ「WEB選考(動画選考)の対策術」、人事部メディアHR NOTE「Web面接導入効果」
4. 採用管理システム(ATS)の活用
ATSとは
ATS(Applicant Tracking System:採用管理システム)とは、採用活動に関する情報を一元管理するシステムです。求人情報の掲載、応募者情報の管理、選考進捗の管理、内定者フォローまで、採用プロセス全体を効率化できます。
高卒採用特化型ATS「ジョブドラフト」
ジョブドラフトは、株式会社ジンジブが提供する高卒採用に特化したATSです。ジョブドラフトNaviは、高校生向け求人サイトとして利用者数・掲載社数でNo.1を誇ります。
ジョブドラフトの主要機能
- • 企業ページの編集・公開
- • 採用KPI設定(学校訪問数、求人票送付数)
- • 応募状況管理
- • ページビュー数の確認
- • 高卒採用市場の最新トレンド情報提供
ジョブドラフトのサービスプラン
プラン | 内容 |
---|---|
無料トライアルプラン | 基本的な求人掲載機能 |
スタンダードプラン | Navi完全掲載、マイページ利用可能 |
総合支援プラン | 採用戦略コンサルティング、求人票作成支援、学校情報提供、専任サポート付き |
ジョブドラフトFes
ジョブドラフトFesは、全国で開催される高校生向け合同企業説明会です。企業が高校生に直接PRできる機会として活用されており、参加生徒の69%が「訪問・応募したい企業が見つかった」と回答しています。
出典: 株式会社ジンジブ「ジョブドラフトとは」、ジョブドラフトNavi公式サイト
5. SNSでの情報発信
SNS採用の重要性
約2人に1人がSNSを利用して求職・転職活動を行っており、Z世代の約80%がTikTokで企業に興味を持ち、約60%が実際に応募しています。
SNS採用の現状(2024年)
- • SNS利用率: 約50%が求職・転職活動で利用
- • TikTokで企業に興味: Z世代の約80%
- • TikTok経由の応募率: 約60%
TikTok活用事例
TikTokを活用した採用活動で成功している企業事例を紹介します。
大京警備保障株式会社
警備業務とは一見関係のないコンテンツを投稿し、バズを獲得。現在9.7万人以上のフォロワーを持ち、このアカウントから数十件の応募があり、実際に1名の採用に成功しました。
三和交通株式会社
「辛いもの挑戦」「億万長者ゲームをプレイ」など、タクシー業務とは関係のないコンテンツで多くの求職者の心を掴み、応募を獲得しています。
ANA(全日本空輸)
TikTokで採用活動を実施し、日常の業務風景や職場の情報を投稿することで、航空業界をより身近に感じてもらう取り組みを実施しています。
Instagram活用事例
株式会社サイバーエージェント
新卒採用アカウントを運営し、事業紹介、新入社員紹介、選考プロセス情報、社員インタビューなどを投稿し、企業の雰囲気を伝えています。
JAL(日本航空)
Instagram限定の情報を投稿することで、Instagramアカウントへのアクセスを増やし、アカウントの価値向上に成功しています。
SNS採用のポイント
- • 企業文化や職場の雰囲気を伝えやすい
- • バズによる拡散で認知度向上が期待できる
- • 若年層(Z世代)にリーチしやすい
- • コメント・いいねなどでユーザーとのコミュニケーションが重要
出典: Nu Realize「TikTok×採用事例」、Nu Realize「SNS採用事例2025年版」、高卒採用Lab「中小企業のためのSNS採用」
6. デジタル化の課題と対策
課題1: 高校生のデジタル環境の差
すべての高校生が同じデジタル環境を持っているわけではありません。自宅にPCやタブレットがない生徒、Wi-Fi環境が整っていない生徒も存在します。
対策
- • スマートフォンでも利用可能なツールを選定
- • 学校のPC教室を利用した接続テストの実施
- • 対面とオンラインのハイブリッド方式を用意
課題2: 学校との連携
高卒採用では学校との連携が必須です。オンライン化においても、学校の理解と協力が不可欠です。
対策
- • オンライン実施の事前承諾を学校から得る
- • 学校経由で接続方法を丁寧に説明
- • 接続トラブル時の連絡体制を事前に構築
課題3: 企業の温度感が伝わりにくい
オンラインでは、対面と比較して企業の雰囲気や温度感が伝わりにくいという課題があります。
対策
- • 社員インタビュー動画の事前配信
- • 360度VR動画で職場の雰囲気を伝える
- • 最終面接は対面で実施(ハイブリッド方式)
7. 成功事例
事例1: Web面接でコスト削減
企業規模: 中小製造業
導入内容: 一次面接をWeb面接化
効果: 月40万円のコスト削減を実現
詳細: 遠方の高校生との一次面接をWeb面接に切り替えたことで、移動時間・交通費を大幅に削減。最終面接は対面で実施することで、企業理解を深める時間を確保しました。
事例2: ジョブドラフトで応募数増加
企業規模: 中小サービス業
導入内容: ジョブドラフトNaviへの求人掲載
効果: 求人票未送付校からの応募獲得
詳細: ジョブドラフトNaviに求人を掲載することで、これまで求人票を送付していなかった高校からの応募を獲得。Web上で企業情報を詳しく伝えられたことが成功要因でした。
事例3: TikTokでフォロワー9.7万人獲得
企業: 大京警備保障株式会社
導入内容: TikTokアカウント運営
効果: 9.7万人以上のフォロワー、数十件の応募、1名採用
詳細: 警備業務とは関係のないコンテンツでバズを獲得し、企業の認知度を大幅に向上。若年層からの応募が増加し、実際に1名の採用に成功しました。
出典: HR NOTE「Web面接導入効果」、ジンジブ「ジョブドラフト事例」、Nu Realize「TikTok採用事例」
8. よくある質問
Q1. Web面接だけで選考を完結できますか?
A. 可能ですが、2023年卒のデータでは73.5%の企業が最終面接は対面で実施しています。一次面接はWeb、最終面接は対面という「ハイブリッド方式」が主流です。高校生・保護者・学校の理解を得るためにも、最終面接は対面をおすすめします。
Q2. オンライン職場見学は学校の承認が必要ですか?
A. はい、高卒採用ではすべての活動において学校との連携が必須です。オンライン職場見学を実施する場合も、事前に学校に相談し、承認を得る必要があります。
Q3. ジョブドラフトの利用料金はいくらですか?
A. ジョブドラフトには無料トライアルプラン、スタンダードプラン、総合支援プランがあります。具体的な料金は株式会社ジンジブにお問い合わせください。無料プランでも基本的な求人掲載が可能です。
Q4. TikTokやInstagramでの情報発信は効果がありますか?
A. Z世代の約80%がTikTokで企業に興味を持ち、約60%が実際に応募しています。適切なコンテンツを投稿することで、若年層へのリーチと認知度向上が期待できます。ただし、高卒採用では学校推薦制が基本のため、SNSは補助的な情報発信手段として活用することをおすすめします。
Q5. デジタル化のコストはどのくらいかかりますか?
A. ツールにより異なります。Zoom等のWeb会議ツールは月数千円から利用可能です。360度VR動画制作は数十万円程度、採用管理システムは月数万円から利用できます。初期投資は必要ですが、長期的には移動費・人件費の削減効果が期待できます。
Q6. 高校生のデジタルリテラシーは十分ですか?
A. 現在の高校生は「デジタルネイティブ」世代であり、スマートフォンの操作には慣れています。ただし、PC操作やWeb会議ツールの使用経験は個人差があるため、事前の接続テストや操作説明を丁寧に行うことが重要です。
データ出典
- • 中小企業庁「2024年版中小企業白書」第7節DX
- • 日経xTECH「高校生や高卒社会人をDX人材に、就職支援のジンジブが目指す再挑戦可能な世界」
- • 株式会社ジンジブ「ジョブドラフトとは」
- • ジョブドラフトNavi公式サイト
- • マイナビ「WEB選考(動画選考)の対策術」
- • 人事部メディアHR NOTE「Web面接導入効果」
- • くるる360「就活に使える!新卒採用VR」
- • Nu Realize「TikTok×採用事例2025年版」
- • Nu Realize「SNS採用事例2025年版」
- • 高卒採用Lab「中小企業のためのSNS採用」