1. 高卒の3年以内離職率は37.9%
厚生労働省が毎年発表している「新規学卒就職者の離職状況」によると、高卒で就職した人のうち37.9%が3年以内に離職しています(令和3年3月卒)。つまり、約3人に1人以上が3年以内に辞めている計算です。
高卒の3年離職率
37.9%
令和3年3月卒
大卒の3年離職率
34.9%
令和3年3月卒
最も辞めにくい業界
11.0%
電気・ガス・熱供給・水道業
ただし、この37.9%はあくまで「全業界の平均」です。業界別に見ると、最も低い業界は11.0%、最も高い業界は64.7%。同じ高卒でも、どの業界に就職するかで「辞めやすさ」は6倍近く違います。
ポイント
「高卒は辞めやすい」のではなく、「辞めやすい業界に高卒が多い」というのが正確な見方です。業界選びが、長く働けるかどうかに直結しています。
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」
2. 辞めにくい業界 TOP5
3年以内離職率が低い、つまり「入った人が辞めにくい」業界をランキングで紹介します。いずれも高卒の離職率データ(厚生労働省 令和3年3月卒)です。
| 順位 | 業界 | 3年離職率 |
|---|---|---|
| 1位 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 11.0% |
| 2位 | 鉱業・採石業・砂利採取業 | 20.3% |
| 3位 | 金融業・保険業 | 25.0% |
| 4位 | 運輸業・郵便業 | 26.0% |
| 5位 | 製造業 | 約19〜28% |
電気・ガス・熱供給・水道業(11.0%)
生活に欠かせないインフラを支える業界です。公共性が高いため経営が安定しており、福利厚生や研修制度が充実しています。電力会社、ガス会社、水道局関連の仕事が含まれます。
鉱業・採石業・砂利採取業(20.3%)
石灰石やセメント原料などの採掘を行う業界です。従業員数は少ないですが、専門的な技術を持つ人材が長く働く傾向があります。
金融業・保険業(25.0%)
銀行・信用金庫・保険会社などの業界です。給与水準が高く、福利厚生も手厚い企業が多いことが、離職率の低さにつながっています。
運輸業・郵便業(26.0%)
トラックドライバー、鉄道、倉庫管理などの業界です。物流は社会のインフラであり、安定した需要があります。大手企業では待遇改善が進んでいます。
製造業(約19〜28%)
自動車、食品、機械、化学など幅広い分野を含む業界です。大手メーカーほど離職率が低い傾向があり、研修制度が整っていて技術を身につけながら長く働ける環境が揃っています。
共通点
辞めにくい業界に共通しているのは、「安定した経営基盤」「充実した研修」「待遇の良さ」の3つです。入社後に「こんなはずじゃなかった」と思うことが少ない環境が揃っています。
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」
3. 辞めやすい業界 TOP5
次に、3年以内離職率が高い業界を見てみましょう。「辞めやすい=悪い業界」ではありませんが、入る前に知っておくべきデータです。
| 順位 | 業界 | 3年離職率 |
|---|---|---|
| 1位 | 宿泊業・飲食サービス業 | 64.7% |
| 2位 | 生活関連サービス業・娯楽業 | 61.5% |
| 3位 | 教育・学習支援業 | 53.6% |
| 4位 | 医療・福祉 | 49.2% |
| 5位 | 小売業 | 48.3% |
宿泊業・飲食サービス業(64.7%)
ホテル・旅館・レストラン・居酒屋などの業界です。不規則なシフト、土日祝の勤務、立ち仕事が多いことが離職の主な理由です。3人に2人が3年以内に辞めています。
生活関連サービス業・娯楽業(61.5%)
美容室、クリーニング、遊園地、映画館などの業界です。接客中心で体力が必要なうえ、給与水準が低い企業も多く、離職率が高くなっています。
教育・学習支援業(53.6%)
塾講師、スポーツインストラクターなどの業界です。高卒の場合、正社員としての配属先が限られることや、夜間・土日の勤務が多いことが離職につながっています。
医療・福祉(49.2%)
介護施設や病院の補助職などの業界です。人の命に関わるプレッシャー、夜勤、体力的な負担が重なり、精神的・身体的な理由で離職する人が多い業界です。
小売業(48.3%)
コンビニ、スーパー、アパレルなどの業界です。シフト制で不規則な生活になりやすく、接客ストレスもあるため、約半数が3年以内に辞めています。
「辞めやすい=ダメな業界」ではない
離職率が高い業界でも、働きがいのある仕事はたくさんあります。大事なのは「離職率が高いことを知ったうえで、自分に合うかどうかを判断する」ことです。
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」
4. なぜ業界で離職率にこれほど差が出るのか
電気・ガス業の11.0%と宿泊業の64.7%。同じ「高卒の3年離職率」なのに、6倍近い差があります。この差はどこから生まれるのでしょうか。JILPT(労働政策研究・研修機構)の調査などから、主に3つの要因が見えてきます。
1待遇の差(給与・福利厚生・労働時間)
JILPT「早期離職の背景と構造」によると、離職理由の上位は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」「賃金の条件がよくなかった」です。辞めにくい業界(電気・ガス、金融など)は、給与水準が高く、休日も安定しています。一方、辞めやすい業界(宿泊業、小売業など)は、シフト制で休みが不規則になりやすく、給与水準も相対的に低い傾向があります。
2入社前の情報量の差
高卒就職は「1人1社制」が基本です。限られた情報の中で就職先を決めるため、入社後のギャップが生まれやすくなります。特に、求人票だけでは伝わりにくい「職場の雰囲気」「実際の働き方」「人間関係」といった情報が不足しがちです。大手メーカーや金融機関は企業情報が豊富ですが、飲食やサービス業は「行ってみないとわからない」ケースが多くなります。
3スキルと仕事のミスマッチ
「自分が持っているスキル」と「仕事で求められるスキル」が合っているかどうかも、離職率に大きく影響します。工業高校卒が製造業に就職した場合の離職率が低いのは、学校で学んだことが仕事に直結しているからです。逆に、専門性のない状態でサービス業に就くと、「誰でもできる仕事」と感じてモチベーションが下がりやすくなります。
つまり
離職率の差は「根性があるかどうか」ではなく、「待遇」「情報量」「スキルの一致」という構造的な要因で決まります。自分の努力だけではどうにもならない部分があるからこそ、業界選びが重要なのです。
出典: JILPT「若年者の早期離職の背景と構造 ― 離職プロセスの観点から」/ 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」
5. 工業高校卒は離職率16.3% — 専門性のマッチが鍵
高卒全体の3年離職率が37.9%であるのに対し、工業高校卒の離職率は16.3%です(全国工業高等学校長協会 2020年度卒業者調査)。半分以下の水準です。
高卒全体の3年離職率
37.9%
工業高校卒の3年離職率
16.3%
なぜこれほど低いのか。それは、工業高校では在学中に専門的な技術・知識を身につけ、それを活かせる業界に就職するからです。学んだことと仕事内容がマッチしているので、「思ったのと違った」というギャップが起きにくい。
さらに、工業高校には企業との長年のつながりがあります。先生が企業の実態をよく知っていて、生徒に合った就職先を紹介できる。これも、ミスマッチを防いでいる大きな理由です。
工業高校に限らず言えること
「在学中に身につけた専門性」と「就職先で求められるスキル」が一致しているほど、長く続けられる可能性は高くなります。普通科の高校生でも、自分の強みや興味を把握してから就職先を選べば、同じ効果が期待できます。
出典: 全国工業高等学校長協会「卒業者の就職状況調査」(2020年度)/ 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」
6. 「辞めにくい」仕事を選ぶ3つのポイント
離職率データを見たうえで、実際に「長く続けられる仕事」を選ぶにはどうすればいいのか。具体的なポイントを3つ紹介します。
1求人票の「離職率」欄を必ずチェックする
高卒向けの求人票には「過去3年間の新卒採用者数」と「そのうち離職した人数」が記載されています。この数字を確認するだけで、その企業の「辞めやすさ」がある程度わかります。毎年採用しているのに定着していない企業は、何かしらの問題を抱えている可能性があります。
2「自分の得意」と「仕事内容」の一致度を確認する
工業高校卒の離職率が低いのは、スキルと仕事がマッチしているからです。同じように、自分が得意なこと・好きなことと、仕事で求められることがどれくらい重なるかを考えてみてください。「何となく良さそう」で選ぶのではなく、具体的な仕事内容を調べたうえで判断することが大切です。
3求人票に載っていない情報を集める
離職の原因は「給料」だけではありません。「職場の雰囲気」「人間関係」「実際の残業時間」など、求人票には載らない情報が重要です。企業見学、先輩社員の話、先生からの情報など、使えるチャネルはすべて使って、入社前のギャップを減らしましょう。
結局のところ
「辞めにくい仕事」を選ぶということは、「自分に合った仕事」を選ぶということです。業界の離職率データは、そのための判断材料のひとつ。データを見たうえで、自分で考えて選ぶ。その一手間が、3年後の自分を守ります。
7. まとめ
長く続けられる仕事は、入る前にちゃんと調べた仕事です。
高卒の3年離職率は37.9%。でも、電気・ガス業界なら11.0%、製造業なら約19〜28%。工業高校卒に限れば16.3%。業界やスキルマッチの状況によって、「辞めやすさ」はまったく違います。
逆に、宿泊業64.7%、生活関連サービス業61.5%。3人に2人が辞めている業界もあります。これは業界が「悪い」のではなく、入社前の情報不足やスキルのミスマッチが起きやすい構造があるということです。
「辞めにくい仕事」を選ぶために特別なことは必要ありません。離職率のデータを調べる。求人票をちゃんと読む。自分の得意と仕事内容を照らし合わせる。求人票に載っていない情報も集める。この地道な準備が、3年後も「この仕事でよかった」と思える未来につながります。
出典一覧
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」
JILPT(労働政策研究・研修機構)「若年者の早期離職の背景と構造 ― 離職プロセスの観点から」
全国工業高等学校長協会「卒業者の就職状況調査」(2020年度)
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
