1. 工業高校の女子比率は約11%
文部科学省「学校基本統計」(平成30年度)によると、工業科の在籍者245,978人のうち、女子は26,907人。全体の約11%です。
工業科の在籍者
245,978人
平成30年度
うち女子
26,907人
約11%
女子比率
約11%
10人に1人
「工業高校に女子がいるの?」と驚く人もいるかもしれません。でも10人に1人は女子です。クラスに3〜4人いる計算になります。決して「いない」わけではありません。
ポイント
少数派であることは、就職市場ではむしろ希少価値になります。「工業の知識がある女性」は企業にとって貴重な人材です。
出典: 文部科学省「学校基本統計」平成30年度
2. 男子は半減、女子は約1割増——30年間の変化
内閣府「男女共同参画白書」のコラム4によると、1989年(平成元年)と2018年(平成30年)を比較した場合、工業科の男子は約半分に減少しました。一方、女子は約1割増加しています。
| 年度 | 男子 | 女子 |
|---|---|---|
| 1989年(平成元年) | 約44万人 | 約2.4万人 |
| 2018年(平成30年) | 約21.9万人 | 約2.7万人 |
| 増減 | 約50%減 | 約10%増 |
少子化の影響で工業高校の全体数は減っています。しかし、女子の人数はむしろ増えている。これは「工業高校=男子の学校」というイメージが少しずつ変わってきている証拠です。
なぜ女子が増えているのか
「手に職をつけたい」「就職率の高さに惹かれた」「ものづくりが好き」——理由はさまざまですが、性別に関係なく技術を学べる環境として工業高校を選ぶ女子が増えています。
出典: 内閣府男女共同参画白書 コラム4「職業学科における状況」
3. 学科別の女子比率
工業高校といっても、学科によって女子の割合は大きく異なります。内閣府「男女共同参画白書」コラム4によると、学科ごとの女子比率は以下のとおりです。
デザイン科
デザイン科は工業高校の中で唯一、女子が男子を上回る学科です。グラフィックデザインやプロダクトデザインなどを学べるため、「ものづくり × クリエイティブ」に興味がある女子に人気があります。
建築科・土木科
建築科は設計やインテリアに関わる分野があるため、女子の在籍率が比較的高い学科です。土木科も含め、建設業界全体で女性活躍推進が進んでいることが背景にあります。
機械科・電気科
機械科や電気科は工業高校の中でも男子比率が高い学科です。ただし、少数であるがゆえに企業からの注目度は高く、就職の際に有利に働くケースもあります。
ポイント
「工業高校の女子」と一括りにできないほど、学科によって女子比率は異なります。自分の興味がある分野で選べば、性別を理由に困ることはほとんどありません。
出典: 内閣府男女共同参画白書 コラム4「職業学科における状況」
4. 進学率42.6%——就職市場での希少価値
工業科の女子は、男子と比べて進学率が高い傾向にあります。文部科学省「学校基本統計」(平成30年度)によると、工業科女子の進学率は42.6%。男子の25.4%を大きく上回ります。
女子の進学率
42.6%
約4割が進学
男子の進学率
25.4%
約2.5割が進学
これは何を意味するか。工業科の女子26,907人のうち、就職を選ぶのは約57%。つまり約15,000人です。全国で年間約15,000人しかいない「工業の知識を持った高卒女性」は、企業にとって非常に貴重な存在です。
特に製造業では、ダイバーシティ推進の観点から女性社員の採用を積極的に行っている企業が増えています。「技術の知識がある女性」は、その両方の条件を満たす数少ない人材です。
希少=有利
工業高校の求人倍率は20.6倍(全工協 R05調査)。1人に対して20社以上の求人がある状態です。そこに「女性」という希少性が加わることで、選べる企業の幅がさらに広がります。
出典: 文部科学省「学校基本統計」平成30年度 / 全国工業高等学校長協会「R05卒業者調査」
5. 女子に人気の就職先3職種
工業高校の女子が就職を選んだ場合、どんな仕事に就いているのでしょうか。トモヤログ「工業高校女子の就職先」で紹介されている主な職種は以下の3つです。
製造業の開発設計職
製品の設計や開発に携わる仕事です。CADを使って図面を描いたり、試作品のテストを行ったりします。工業高校で学んだ製図やCADの技術がそのまま活きる職種です。
なぜ女子に向いているのか:細かい作業への集中力や、丁寧な図面作成が評価されるケースが多いです。「ものづくりが好き」という気持ちがあれば、性別に関係なく活躍できます。
メーカーの事務職(品質管理・コスト管理)
製品の納品書作成、コスト管理、品質データの集計など、技術知識が必要な事務業務を担当します。一般的な事務職と違い、製品や製造工程の知識があることが求められます。
なぜ女子に向いているのか:「現場は体力的に不安だけど、技術の知識は活かしたい」という人に最適です。デスクワーク中心で、工業高校で学んだ知識がダイレクトに役立ちます。
技術営業
自社の製品や技術について、お客様に説明・提案をする仕事です。一般の営業職と違い、製品の構造や性能を理解した上で説明する必要があるため、工業高校で学んだ技術知識が強みになります。
なぜ女子に向いているのか:コミュニケーション力と技術知識の両方が求められる職種です。「技術がわかる女性」という存在は、顧客からの信頼も得やすいと言われています。
出典: トモヤログ「工業高校女子の就職先」
6. CAD・品質管理も女子に人気
上の3職種以外にも、工業高校の女子が活躍している職種はあります。特にCADオペレーターと品質管理は、女性の割合が比較的高い職種です。
CADオペレーター
設計者の指示に沿って、CADソフトで図面を作成・修正する仕事です。建築・機械・電気など、あらゆる分野で需要があります。
特別な資格は不要。工業高校で学んだCADの基礎がそのまま実務に直結します。
品質管理
製品が基準を満たしているか検査し、不良品が出た原因を分析して改善策を考える仕事です。データ分析や書類作成が中心のデスクワーク職です。
品質管理検定(QC検定)を取得するとキャリアアップにつながります。
生産管理
「何を、いつまでに、どれだけ作るか」を計画し、進捗を管理する仕事です。需要予測やスケジュール調整など、パソコン作業が中心になります。
製造工程の知識があると即戦力として期待されます。
積算
建設工事にかかる費用を計算して見積書を作成する仕事です。積算ソフトを使うため、パソコンが得意な人に向いています。
建築科の女子に特に人気がある職種です。
「現場以外」の選択肢も豊富
「工業高校を出たら現場でしょ?」と思うかもしれませんが、デスクワーク系の職種もたくさんあります。工業高校で学んだ知識を、オフィスで活かすという働き方も十分に可能です。
7. まとめ——少数派だからこそ価値が高い
工業高校の女子は、少数派であることがそのまま強みになります。
女子比率は約11%。全国で年間約15,000人しかいない「工業の知識を持った高卒女性」は、就職市場では希少価値のある存在です。求人倍率20.6倍の工業高校卒の中でも、さらに選ばれやすいポジションにいます。
就職先は、開発設計、メーカー事務、技術営業、CADオペレーター、品質管理——。「現場だけ」ではありません。デスクワーク系の職種も充実しています。
1989年と比較して男子が半減する中、女子は約1割増加しています。デザイン科では女子が多数派です。「工業高校=男子の学校」というイメージは、もう古い時代のものです。
大事なのは「女子だから」ではなく、「自分が何を学びたいか」「どんな仕事をしたいか」で進路を選ぶこと。工業高校で学んだ技術は、性別に関係なく社会で通用します。
出典一覧
文部科学省「学校基本統計」平成30年度
内閣府男女共同参画白書 コラム4「職業学科における状況」
トモヤログ「工業高校女子の就職先」
全国工業高等学校長協会「R05卒業者調査」
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
