1. 建設業は7部門ある
「建設業=現場仕事」というイメージが強いかもしれません。でも実際には、建設業の仕事は大きく7つの部門に分かれています。現場で体を動かす仕事はその一部にすぎません。
施工管理
工事全体の管理・調整
設計
建物の図面を描く
営業
仕事を取ってくる
技術
専門技術で施工する
事務管理
経理・総務・人事
安全管理
現場の安全を守る
積算
工事費用を計算する
このうち「技術」部門が、みなさんがイメージするいわゆる現場の仕事です。でもそれ以外の6部門には、オフィスやデスクで行う仕事がたくさんあります。施工管理は現場とデスクが半々、設計・積算・事務管理はほぼデスクワークです。
建設業就業者は約503万人(総務省「労働力調査」2024年平均)。日本の全就業者の約7.4%を占める巨大な産業です。それだけの人が働いているのに、「全員が現場」なわけがありません。
出典: 国土交通省「建設業デジタルハンドブック」/ 総務省「労働力調査」2024年平均 / ConMaga「建設業の部門と職種」
ポイント
建設業には7部門あり、現場作業はその一部。設計・積算・事務管理などデスクワーク中心の仕事もたくさんあります。
2. デスクワーク① CADオペレーター
CADオペレーターは、設計士が描いたラフスケッチや手書きの図面を、CADソフト(AutoCAD・Jw_cadなど)を使って正式な図面に仕上げる仕事です。建物の平面図、立面図、断面図、設備配管図などを作成します。
必要な資格
不要
入社後にOJTで習得
学歴要件
高卒OK
建築科なら即戦力
ワークスタイル
完全デスク
空調のきいたオフィス
「CADなんて触ったことない」という人でも心配いりません。多くの会社では入社後の研修やOJT(先輩について実務で覚える)でCADの操作を教えてもらえます。工業高校の建築科でCADに触れた経験があれば、スタートダッシュが切れます。
CADオペレーターの年収は経験によって幅がありますが、平均年収は約411万円です(求人ボックス 2025年調査)。スキルアップすればBIM(3次元の建物情報モデリング)を扱えるようになり、さらに年収アップが見込めます。
出典: 求人ボックス「CADオペレーターの年収」2025年 / ConMaga「建設業のCADオペレーター」
こんな人に向いてる
細かい作業が好き。パソコンを使うのが苦にならない。図面やものづくりに興味がある。——そういう人にはぴったりの仕事です。
3. デスクワーク② 積算
積算は、工事にかかる費用を計算する仕事です。図面を見て「この工事には鉄骨が何トン必要で、コンクリートが何立米いる。人件費はいくらかかる」ということを一つずつ拾い出して、見積書を作成します。
必要な資格
不要
未経験から始められる
使うツール
積算ソフト
+Excel
ワークスタイル
ほぼデスク
現場確認はごくたまに
積算は「建設業の裏方」とも言われる仕事ですが、会社の利益を左右する重要なポジションです。見積もりが甘ければ赤字になるし、高すぎれば仕事が取れない。正確に計算する力が求められます。
積算に関する資格として「建築積算士」があります。公益社団法人 日本建築積算協会が認定する資格で、受験資格は17歳以上で学歴不問。高校在学中でも受けられます。合格率は約60〜70%で、建設業でキャリアを積むなら持っておいて損はない資格です。
出典: 日本建築積算協会「建築積算士 受験案内」/ ConMaga「積算の仕事内容」
ポイント
積算は「数字に強い人」「コツコツ正確に作業できる人」に向いています。建築積算士は17歳以上・学歴不問で受験できるので、高卒でもキャリアアップのルートがはっきりしている職種です。
4. デスクワーク③ 施工管理補助
「施工管理って現場の仕事でしょ?」——半分そうで半分違います。施工管理は工事の工程・品質・安全・原価を管理する仕事ですが、実は仕事の約半分はデスクワークです。工程表の作成、打合せ資料の準備、写真の整理、役所への書類提出など、やることはたくさんあります。
現場での仕事
- - 工事の進捗確認・指示出し
- - 安全管理(KY活動・巡回)
- - 施工写真の撮影
- - 職人さんとの打合せ
デスクでの仕事
- - 工程表・施工計画書の作成
- - 打合せ議事録・報告書
- - 写真台帳の整理
- - 図面チェック・修正依頼
高卒で入社した場合、まずは「施工管理補助」としてスタートするのが一般的です。先輩の施工管理技士の下について、書類作成や写真整理などのデスクワークを中心に経験を積みます。実務経験を積むと、2級施工管理技士の受験資格が得られます。
施工管理技士の資格を取ると、自分の名前で工事を管理できるようになります。建設業界では人手不足が深刻で、施工管理技士の需要は非常に高い状態が続いています。
出典: ConMaga「施工管理の仕事内容」/ 国土交通省「技術検定制度」/ 建築求人.jp「施工管理の学歴と年収」
こんな人に向いてる
「ずっとデスクだけも、ずっと外だけも嫌だ」という人にちょうどいいバランスの仕事です。人と話すのが好きで、段取りを考えるのが得意な人には特に向いています。
5. デスクワーク④ 設計補助 & ⑤ 建設事務
④設計補助
設計士のサポートをする仕事です。図面の修正、資料作成、役所への確認申請書類の準備など、設計に関わる事務作業を担当します。特別な資格は必要なく、高卒からスタートできます。
主な業務
CAD図面の修正、確認申請書類の作成、設計資料の整理、打合せの議事録作成
キャリアアップ
実務経験を積みながら二級建築士を取得すれば、自分で設計ができるようになります
⑤建設事務
建設会社の事務職です。一般的な事務(経理・総務・人事)に加えて、建設業ならではの業務があるのが特徴です。工事台帳の管理、建設業許可の更新手続き、安全書類の作成など、専門知識が身につく事務の仕事です。
一般事務との違い
建設業法に基づく書類作成、工事原価の管理、安全書類(グリーンファイル)の整備など専門性が高い
需要
建設会社には必ず事務スタッフが必要。ベテランの退職で若手の採用ニーズが高まっています
出典: ConMaga「建設業の事務職」/ 建築求人.jp「設計補助の仕事内容」
ポイント
設計補助も建設事務も、資格なし・高卒から始められるデスクワークです。建設業の専門知識が身につくので、経験を積むほど市場価値が上がります。
6. キャリアパスと年収
「建設業は稼げるの?」気になるところだと思います。結論から言うと、建設業はキャリアを積むほど年収が上がりやすい業界です。資格を取れば手当がつく会社が多いし、独立という選択肢もあります。
見習い(1〜3年目)
先輩の下について基礎を覚える時期。年収は約250〜350万円が目安です。
一人前(4〜7年目)
自分で仕事を回せるようになる時期。施工管理技士やCAD資格を取得。年収は約350〜500万円。
職長・主任クラス(8〜15年目)
後輩を指導する立場。1級施工管理技士を取得すると現場のトップに。年収は約500〜700万円。
管理職・独立
部長クラスや独立の道。一人親方の平均年収は597万円、大工で800万円、とび職で1,000万円に達するケースもあります。
| 職種 | 平均年収 | 備考 |
|---|---|---|
| CADオペレーター | 約411万円 | 求人ボックス 2025年調査 |
| 施工管理 | 約460万円 | 建築求人.jp 独自調査 |
| 一人親方(全職種平均) | 約597万円 | 全建総連 2024年賃金調査 |
| 一人親方(大工) | 約800万円 | GATEN職 調査 |
| 一人親方(とび職) | 約1,000万円 | GATEN職 調査 |
出典: 求人ボックス「CADオペレーターの年収」2025年 / 建築求人.jp「施工管理の学歴と年収」/ GATEN職「一人親方の年収」(全建総連東京都連合会 2024年賃金調査報告書を引用)
年収アップのカギは「資格」
建設業は資格を取るほど年収が上がる業界です。2級→1級施工管理技士、建築積算士、二級建築士など、ステップアップの道筋がはっきりしています。「学歴がないから給料が上がらない」ということはありません。
7. 女子でも働ける?
結論から言うと、デスクワーク職種なら性別はまったく関係ありません。CADオペレーター・積算・設計補助・建設事務は、性別に関係なく活躍できる仕事です。
建設業の女性就業者
約91万人
全体の約18%
女性技術者数
約4万人
10年で約2倍に増加
建設業で働く女性は約91万人(国土交通省「建設業デジタルハンドブック」)。技術者として働く女性も約4万人いて、この10年で約2倍に増えています。国土交通省も「もっと女性が活躍できるように」と業界全体で取り組みを進めています。
特にCADオペレーターと積算は、もともと女性の比率が高い職種です。体力は必要なく、正確さと集中力が求められる仕事なので、「建設業に興味はあるけど現場は不安」という人にはぴったりです。
出典: 国土交通省「建設業デジタルハンドブック」/ 国土交通省「建設業における女性活躍推進」
ポイント
「建設業=男の仕事」という時代は変わりつつあります。CAD・積算・設計補助・事務なら、性別に関係なく始められるし、キャリアも積めます。
8. まとめ
建設業には、パソコンに向かってする仕事もたくさんあります。
CADオペレーター、積算、施工管理補助、設計補助、建設事務——。どれも高卒・資格なしから始められて、経験と資格を積むほどキャリアが広がる仕事です。
建設業就業者は約503万人。日本を支える巨大な産業ですが、人手不足が深刻で若い人材を求めています。「建設業にはどうせ現場しかない」と思い込んで選択肢から外してしまうのは、もったいないことです。
大事なのは、「自分が何をしたいのか」を知ること。そして、「思い込みで選択肢を狭めない」こと。この記事が、あなたの進路選択の幅を少しでも広げるきっかけになれたらうれしいです。
もっと知りたい人へ
出典一覧
国土交通省「建設業デジタルハンドブック」
国土交通省「建設業における女性活躍推進」
国土交通省「技術検定制度」
総務省「労働力調査」2024年平均
日本建築積算協会「建築積算士 受験案内」
求人ボックス「CADオペレーターの年収」2025年調査
ConMaga「建設業の部門と職種」「積算の仕事内容」「施工管理の仕事内容」「建設業の事務職」
建築求人.jp「施工管理の学歴と年収」「設計補助の仕事内容」
GATEN職「一人親方の年収」(全建総連東京都連合会 2024年賃金調査報告書を引用)
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
