1. 「将来が見えない」から不安になる
高卒で就職するとき、多くの人が感じる不安があります。「5年後、自分はどうなっているんだろう」「大卒の人と比べて、ずっと差がついたままなのかな」——。
その不安の正体は、「先が見えないこと」です。大学に行けば4年間の猶予がありますが、高卒で就職するということは、18歳で社会に出るということ。先のことがわからないから、不安になるのは当然です。
でも、実は高卒就職の「5年後・10年後」には、ちゃんとしたキャリアパスがあります。しかも、業界によっては大卒を追い抜くことも珍しくありません。この記事では、業界別のリアルなキャリアパスと年収推移をデータで紹介します。
この記事でわかること
製造業・建設業・事務系・公務員の4つの業界で、高卒入社から5年後・10年後・20年後にどんなポジションにつけるのか、年収はいくらになるのかを具体的な数字で示します。
2. 製造業のキャリアパスと年収推移
製造業は高卒就職で最も多い業界です。「工場でずっと同じ作業をするだけ」と思われがちですが、実際はきちんとしたステップアップの道筋があります。
| 経過年数 | 年齢目安 | ポジション | 年収目安 |
|---|---|---|---|
| 入社時 | 18歳 | 一般従業員 | 約300万円 |
| 5年後 | 23歳 | 班長 | 約400万円 |
| 10年後 | 28歳 | 主任 | 約500万円 |
| 20年後 | 38歳 | 課長 | 650〜750万円 |
| 30年後〜 | 48歳〜 | 工場長 | 800〜1,000万円 |
製造業では、入社して最初の数年間は現場で技術を覚える期間です。ここで基礎を身につけた人が、5年目あたりから班長(数人のチームをまとめる役割)に昇格するのが一般的な流れです。年収は入社時の約300万円から、班長で約400万円に上がります。
10年後には主任クラスで年収約500万円。ここから先は、現場の管理職(係長→課長)ルートと、技術のスペシャリストルートに分かれます。課長になれば年収650〜750万円、工場長まで上がれば800〜1,000万円に達します。
ポイント
製造業の管理職は「現場を知っている人」が昇格する世界です。大卒で本社から配属された人よりも、高卒で現場を叩き上げた人のほうが工場長になりやすい、ということも珍しくありません。
出典: ベルジャパン「工場勤務のキャリアパスを年代別に解説」/ 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
3. 建設業のキャリアパスと年収推移
建設業は「手に職をつける」の代名詞です。高卒で入社して、資格を取りながらキャリアアップするか、独立して一人親方になるか。2つの道があります。
ルート1: 会社で昇進
ルート2: 独立(一人親方)
一人親方の年収(職種別)
| 職種 | 平均年収 |
|---|---|
| 一人親方(全職種平均) | 約597万円 |
| 大工 | 約800万円 |
| とび職 | 約1,000万円 |
一人親方の平均年収は597万円(全建総連東京都連合会 2024年賃金調査報告書)。大工で約800万円、とび職では約1,000万円という数字もあります。建設業は学歴よりも「技術力」と「資格」で勝負する世界です。
会社に残る場合も、施工管理技士の資格を取得すれば現場監督として年収アップが見込めます。高卒(指定学科)なら実務経験3年で2級施工管理技士、8年で1級施工管理技士の受験資格が得られます。
建設業の強み
建設業は「学歴不問・実力勝負」の世界です。10年で独立できる可能性があるのは、他の業界にはない大きなメリットです。
出典: CIC日本建設情報センター「施工管理技士の受験資格」/ GATEN職「一人親方の年収」(全建総連東京都連合会 2024年賃金調査報告書を引用)
4. 事務系のキャリアパスと年収推移
「事務職は給料が低い」と思われがちですが、キャリアを積めば管理職への道が開けます。特にメーカーの事務職(購買・生産管理・品質管理など)は、専門性が高いため年収も上がりやすい傾向にあります。
| 経過年数 | ポジション | 年収目安 |
|---|---|---|
| 入社〜5年 | 一般事務・担当者 | 250〜350万円 |
| 5〜10年 | 主任 | 350〜400万円 |
| 10〜15年 | 係長 | 450〜500万円 |
| 15〜20年 | 課長 | 600〜700万円 |
事務系職種の場合、入社時の年収は250〜350万円と低めですが、10〜15年で係長(450〜500万円)、15〜20年で課長(600〜700万円)に昇格するのが一般的なキャリアパスです。
事務系で年収を上げるポイントは、「何でもできる人」より「専門分野を持つ人」になること。経理なら簿記1級、人事なら社労士など、専門資格を取得すると昇格のスピードが上がります。
事務系の穴場
メーカーの購買部門や生産管理部門は、「モノの知識がある人」が求められます。工業高校卒で事務系に配属された場合、現場の知識を活かせるため昇格しやすいポジションです。
出典: ビズリーチ「役職別平均年収」/ 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
5. 公務員のキャリアパスと年収
高卒で公務員になれることを知らない人もいます。地方公務員(市役所・県庁)のほか、警察官や消防士も高卒で受験可能です。公務員は年功序列の要素が強いため、長く勤めるほど確実に年収が上がる安定型のキャリアパスです。
警察官の平均年収
約700万円
全国平均
消防士の平均年収
約652万円
全国平均
地方公務員の退職金
約2,100万円
勤続25年以上の平均
警察官の平均年収は約700万円(資格の大原)。消防士は約652万円(アガルート)。これは全年齢の平均値なので、若いうちは低くても、勤続年数に応じて確実に上がっていきます。
公務員のキャリアパスは「主事→主任→係長→課長補佐→課長→部長」が基本です。高卒で入庁した場合、大卒と比べて昇格のスピードは遅い傾向がありますが、最終的に課長級まで昇格する人も少なくありません。
公務員の強み
景気に左右されにくい安定した給与と、充実した福利厚生(退職金・年金・住宅手当)。「安定して長く働きたい」人にとって、公務員は高卒でも十分に選べる選択肢です。
出典: 資格の大原「警察官の年収」/ アガルート「消防士の年収」/ 総務省「地方公務員給与実態調査」
6. 「高卒だから出世できない」は本当?
結論から言うと、業界と職種による、です。
製造業(工場)
現場の叩き上げが管理職になる文化が根強い業界です。大卒は本社勤務、高卒は工場勤務という棲み分けがあるため、工場内の出世では高卒が有利な場合もあります。
建設業
資格と技術力がすべて。1級施工管理技士を持っていれば、学歴に関係なく現場所長になれます。独立すれば学歴は完全に無関係です。
IT業界
スキルと実績がものを言う業界です。高卒でプログラマーからスタートし、SEやプロジェクトマネージャーに昇格するケースは珍しくありません。
大手企業の総合職
大企業の総合職コースは大卒・院卒が前提のケースが多く、高卒では入りにくい領域です。ただし、高卒で入社してから夜間大学や通信制大学で学位を取得する道もあります。
「高卒だから出世できない」のではなく、「出世しやすい場所を選ぶかどうか」が大事。
製造業・建設業・IT業界では、学歴よりも経験と資格で評価される世界が広がっています。
7. 年収を上げる3つの方法
高卒就職後に年収を上げるための方法は、大きく分けて3つあります。
1資格を取る
資格は「学歴の代わり」になります。特に国家資格は、持っているだけで手当がつく会社もあります。
施工管理技士(1級・2級)
建設業のキャリアアップに必須。1級を取れば大規模現場の監理技術者になれます。
電気工事士(第一種・第二種)
電気工事に必要な国家資格。第一種を取ると担当できる工事の範囲が広がります。
フォークリフト運転技能
物流・製造業で重宝される資格。比較的短期間で取得可能です。
簿記(2級・1級)
事務系のキャリアアップに有効。経理・財務部門への異動や昇格に直結します。
2転職で年収を上げる
同じ業界でも、会社によって年収は大きく異なります。3〜5年の実務経験を積んだあと、より条件の良い会社に転職するのは有効な選択肢です。
転職のベストタイミング
入社3年目以降が目安です。3年未満だと「すぐ辞める人」と見なされるリスクがありますが、3年以上の実務経験があれば「即戦力」として評価されます。資格を取ってから転職すると、さらに有利です。
3独立する
建設業をはじめ、手に職がある業界では独立という選択肢があります。一人親方の平均年収は597万円ですが、職種によっては1,000万円を超えることもあります。
ただし、独立にはリスクもあります。仕事が途切れれば収入はゼロ。営業力、経理知識、体力——会社員時代にはなかった負担もかかります。「独立=成功」ではなく、「準備が十分にできてから独立する」ことが大切です。
8. まとめ——今の選択で未来は変わる
高卒で就職しても、5年後・10年後にどこにいるかは自分次第。
「学歴」で決まる時代は終わりつつある。
製造業なら、5年後に班長(年収約400万円)、10年後に主任(約500万円)、20年後に課長(650〜750万円)。建設業なら、10年で独立して年収600万〜1,000万円も現実的な数字です。
大事なのは、「何となく就職する」のではなく「この業界で何年後にこうなりたい」と考えて選ぶことです。キャリアパスが見えていれば、日々の仕事にも意味が生まれます。
この記事で紹介した数字は、あくまで「平均」や「目安」です。あなたがどこまで行けるかは、これからの行動次第。今の選択が、5年後・10年後の自分をつくります。
出典一覧
ベルジャパン「工場勤務のキャリアパスを年代別に解説」
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
CIC日本建設情報センター「施工管理技士の受験資格」
GATEN職「一人親方の年収」(全建総連東京都連合会 2024年賃金調査報告書を引用)
ビズリーチ「役職別平均年収」
資格の大原「警察官の年収」
アガルート「消防士の年収」
総務省「地方公務員給与実態調査」
Written & Edited by
漆畑 智哉
株式会社ゆめスタ CCO / 教育コーディネーター
