働き方・生き方

「仕事を辞めたい」と思ったとき、衝動的に動く前にたどる 5 つの手順

ゆめスタ編集部
「仕事を辞めたい」と思ったとき、衝動的に動く前にたどる 5 つの手順

「仕事を辞めたい」。その言葉が、ふと頭をよぎる夜があります。

通勤の電車で。会議のあとの自席で。日曜の夜の寝室で。気持ちの大きさは日によって違っても、その問いだけは、消えてはまた戻ってきます。

このページは、「辞めるべき」「辞めないほうがいい」のどちらかをお伝えする記事ではありません。衝動のまま辞表を出して、半年後に「あのとき、もう少し考えてから動けばよかった」と感じることが、いちばん避けたい結果だからです。

ここでは、「辞めたい」と思った瞬間から、判断を一段冷ました状態に運ぶための、5 つの手順を整理します。公的な統計・公的な相談窓口・公的な制度を手がかりに、ご自身のペースで一段ずつ降りていける順序を考えていきます。

「辞めたい」と感じる人は、決してあなただけではありません

まず、いちど数字で現在地を確認します。「辞めたいと思っているのは、自分が弱いからではないか」という見方を、いったん横に置いてみるためです。

厚生労働省が令和 6 年(2024 年)に公表した「労働安全衛生調査(実態調査)」では、現在の仕事や職業生活で 強い不安、悩み、ストレス となっていることがあると回答した労働者の割合が、調査結果として継続的に高い水準で示されています[1]。内訳の上位には「仕事の量」「仕事の失敗、責任の発生等」「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が、複数年にわたって登場します。

仕事の悩みは、特定の業界や特定の年代だけが抱えているものではありません。同じ調査の中で、製造業・医療福祉・サービス業・情報通信業など、業種をまたいで「仕事の悩みを抱える労働者」が一定割合で観察されています[1]

厚生労働省「令和 5 年雇用動向調査結果の概況」では、転職入職者(前職を辞めて新たな職場に入った方)が前職を辞めた理由として、男女を問わず「個人的理由」が大きな構成比を占めています[2]。「個人的理由」の中には「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」「給料等収入が少なかった」「職場の人間関係が好ましくなかった」など、現場で多くの方が口にする悩みが含まれています。

「辞めたい」と思うこと自体は、特異な感情ではありません。むしろ、働く方の一定割合が、なんらかのかたちで似た問いを抱えています。だからこそ、衝動のまま動くのではなく、「自分にとっての最善の歩み方」を考える時間そのものが、辞める / 続けるの判断より先に来ます。

手順 1:「辞めたい」の種類を分解してみる

ひとくちに「辞めたい」と言っても、その中身は方によって違います。同じ会社の同じ部署にいる方どうしでも、辞めたい理由はそれぞれです。

厚生労働省「令和 5 年雇用動向調査結果の概況」が示す離職理由を手がかりに、「辞めたい」を 4 つのカテゴリに分けて考えてみます[2]

労働条件

中身の例:労働時間、休日、業務量、配置

手がかり:労働基準監督署、労働条件相談ほっとライン[3]

人間関係

中身の例:上司、同僚、取引先との関係性

手がかり:こころの耳、産業保健総合支援センター[4][5]

心と体の状態

中身の例:不眠、疲労感、気分の落ち込み

手がかり:5 分セルフチェック、産業医[6]

将来の方向性

中身の例:職務内容、キャリアの先行き、収入水準

手がかり:職業情報提供サイト「job tag」[7]、ジョブ・カード制度[8]

4 つは互いに重なります。労働条件のつらさが心と体の状態に影響し、それが人間関係をぎくしゃくさせ、結果として将来の方向性まで見えなくなる。順番に整理するというより、いま自分の中で「いちばん大きく出ているのはどれか」を、紙か携帯のメモで言葉にしてみる作業です。

編集部キャラクター

編集部メモ

「全部つらい」と感じるときほど、ひとつずつ言葉にする作業に意味があります。書き出してみると、いちばん重い荷物が、思っていたのと違うところにあると気づくことがあります。

手順 2:いまの自分の状態を、5 分で客観視する

辞めたいという気持ちが続いているとき、その背景には「気持ちの問題」だけでなく、心と体の状態の変化が含まれていることがあります。ところが、当の本人ほど、それに気づきにくいものです。

そこで、判断材料として、厚生労働省が公開している「5 分でできる職場のストレスセルフチェック」が使えます[6]。これは「職業性ストレス簡易調査票フィードバックプログラム」に基づく自己診断ツールで、運営は厚生労働省委託事業の「こころの耳」です。

  • 全 57 問・4 段階の回答肢で約 5 分
  • 4 つのステップ:仕事について(17 問)/最近 1 か月の状態(29 問)/周りの方々について(9 問)/満足度について(2 問)
  • 匿名・無料で利用可能

同じく「こころの耳」には、疲労蓄積度セルフチェック過労徴候度セルフチェック も公開されています[4]。「最近、よく眠れていない」「休んでも疲れが取れない」と感じるときに、まず自分の状態を見える化するのに使えます。

数字で見える化することの目的は、診断ではありません。「自分の中で起きていることに、名前をつけてあげる」ためです。気持ちのもやもやのままだと、辞める / 続けるの判断材料にしにくいものが、点数や段階で表示されると、「いまの自分はそこまで来ているのか」と、客観的に距離を取って眺められるようになります。

点数が高めに出たとしても、即座に何かを決める必要はありません。むしろ、結果は次の手順 3「話す相手を 1 人見つける」に持って行くための、共通言語になります。

手順 3:話す相手を、1 人だけ見つける

一人で抱え込んだまま判断すると、辞めたいという気持ちが事実より大きく見えたり、逆に「自分が我慢すれば済む」と縮めて見えたりします。ご家族や同僚に話せる場合は、そこから始めるのが自然です。けれど、いちばん近い方には話しにくい中身もあります。

そういうとき、第三者の窓口が使えます。すべて、公的または公益的な性格を持つ相談窓口で、利用料は無料です(電話・通信料を除く)。

こころの耳(厚生労働省委託事業)

「働く方のメンタルヘルス・ポータルサイト」として、厚生労働省が運営しています。電話相談SNS 相談メール相談 の 3 チャネルがあり、匿名で利用できます[4]。「辞めたいけれど辞められない」「眠れない日が続いている」など、仕事をめぐる悩みや不調を、専門家に話せる窓口です。

働く人の悩みホットライン(日本産業カウンセラー協会)

一般社団法人日本産業カウンセラー協会が運営する電話相談窓口です[9]。電話番号は 03-5772-2183、月曜日から土曜日の午後 3 時から午後 8 時まで(祝日・年末年始を除く)、1 人 1 日 1 回 30 分以内、相談料は無料(通話料は相談者負担)です。職場、暮らし、家族、将来設計など、働くうえでの悩みを、産業カウンセラーが話を聞いてくれます。

産業保健総合支援センター(さんぽセンター)

独立行政法人労働者健康安全機構が運営する、産業保健の支援機関です[5]。各都道府県に設置されており、メンタルヘルス相談、職場復帰支援、研修などを担当しています。会社に産業医がいない、いても話しにくい、という場合に、外部の専門家とつながる選択肢になります。

会社内の産業医・産業保健スタッフ

常時 50 人以上の労働者を使用する事業場には、産業医の選任が義務付けられています(労働安全衛生法第 13 条)[10]。産業医は、会社に対する独立性が確保された専門家で、面談の内容は守秘義務の対象です。会社の人事や上司に内容が直接共有されることはありません。「辞めたい」が心と体の状態と関わっていそうなときに、まず相談する選択肢になります。

いきなり全部の窓口に連絡する必要はありません。「いちばん話しやすそう」と感じた 1 か所に、まず 1 回だけ連絡してみる。そこから始めれば十分です。

手順 4:「辞める」「続ける」以外の選択肢を、いったん全部並べる

「辞めたい」と感じているとき、頭の中の選択肢は「辞める」と「続ける」の 2 つになりがちです。けれど、実際には、その間にいくつもの段階があります。それを知らないまま 2 択で判断すると、後から「もう一段ある選択肢に気づけなかった」となりかねません。

公的な制度として確立されているもの、社内で交渉できるもの、社外との関わりを少しずつ作るもの、を並べて整理します。

A. 業務量・配置を社内で見直す

中身:上司・人事への相談、業務範囲の再確認

手がかり:2024 年 4 月施行・労働条件明示ルール改正[11]

B. 部署異動・職種転換を申し出る

中身:社内公募、ジョブローテーション

手がかり:経済産業省・人材政策資料[12]

C. 休職制度を使う

中身:心身の不調があるとき・会社の就業規則で運用

手がかり:産業医面談・健康保険傷病手当金[13]

D. 副業・兼業を始める

中身:会社規定の範囲で、本業を続けながら次の働き方を試す

手がかり:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」[14]

E. 業務委託で外部とつながる

中身:小さな受託から取引関係を作る

手がかり:フリーランス・事業者間取引適正化等法[15]

F. 転職・独立に踏み切る

中身:会社員のまま他社へ、あるいは独立して取引関係へ

手がかり:厚生労働省「フリーランスとして働く方へ」[15]

A から F に進むにつれて、いまの会社との距離が遠くなります。けれど、いまの自分の状態に合うのが、必ずしも A や F とは限りません。手順 2 で出た自分の状態と、手順 3 で話した相手からの言葉を踏まえて、「いま自分に合いそうな段階はどこか」を見ていきます。

副業については、所属する会社の就業規則を必ず確認します。多くの会社が、近年は副業を認める方向に就業規則を改定していますが、業務時間、競業避止、機密情報の取り扱いなど、決まりの内容は会社ごとに違います[14]

業務委託は、独立した個人事業主として外部から仕事を受ける働き方です。2024 年 11 月 1 日施行の「フリーランス・事業者間取引適正化等法」によって、発注事業者にいくつもの義務が課されました[15]。「いきなり独立」までいかなくても、業務委託契約という選択肢を知っておくこと自体が、後の手順を増やします。

手順 5:判断を急がない — 法律と制度は、急がない方向を後押ししている

ここまでの 4 つの手順をたどってみて、それでも「やはり辞めよう」と感じる場合があります。逆に、「もう少し見直してから決めよう」と感じる場合もあります。どちらも自然な結論です。

ここで強調しておきたいのは、いま日本の法律と制度は、急いで判断しなくていい方向を後押ししているという事実です。

2024 年 4 月 1 日に施行された労働条件明示ルールの改正では、雇い入れ時や有期労働契約の更新時に、「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲」を明示することが義務付けられました[11]。これは、「自分はいま、どの範囲の業務を担うことになっているのか」を、書面で確認できる権利として整備されたものです。配置や業務の範囲に違和感があるとき、その違和感を整理するための公的な手がかりになります。

2024 年 11 月 1 日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」では、業務委託の発注事業者に対して 7 項目の義務が課されました[15][16]。主なものを挙げます。

  • 書面(または電磁的方法)による取引条件の明示
  • 給付を受領した日から原則 60 日以内の報酬支払い
  • ハラスメント対策のための体制整備
  • 6 か月以上継続する業務委託を中途解除する際の、30 日前までの予告

法律の整備が進んだことは、業務委託という働き方が、社会の中で「保護される働き方」として位置付けられたことを意味します。会社員という枠から外れたとしても、まったくの無防備な世界が広がっているわけではありません。

そして、すべての手順を踏んでもなお迷いが残るときは、「もう少し時間をかけて考える」も、立派な判断です。手順 1 で書き出した自分の言葉を、3 か月後にもう一度読み返してみる。手順 2 のセルフチェックを、季節が変わったタイミングで取り直してみる。それだけで、見えるものが変わってくることがあります。

まとめ — 衝動を 5 つの手順に置き換える

本記事は「辞めるべき」「辞めるべきでない」をお伝えする記事ではありません。「辞めたい」という気持ちが頭をよぎったとき、衝動のまま動いてしまわないために、判断を一段冷ます手順を整理する記事です。

  • 手順 1:辞めたいの「種類」を、労働条件・人間関係・心と体の状態・将来の方向性の 4 つに分解する
  • 手順 2:5 分でできる職場のストレスセルフチェック等で、自分の状態を客観視する[6]
  • 手順 3:話す相手を 1 人だけ見つける(こころの耳・働く人の悩みホットライン・産業医・さんぽセンター)[4][9]
  • 手順 4:辞める / 続ける以外の段階(A〜F)を並べて、自分の状態に合う段階を探す
  • 手順 5:法律と制度が「急がない判断」を後押ししている事実を踏まえて、必要なら時間をかける[11][15]

「辞めたい」を「辞める」か「続ける」かの 2 択にいきなり翻訳するのではなく、5 つの手順を通して、自分の中の言葉に丁寧に変えていく。それが、後悔の少ない判断につながる歩み方だと、ゆめスタは考えています。

編集部キャラクター

編集部メモ

急いで決めても、ゆっくり決めても、最後にその判断を持って歩いていくのはご自身です。だからこそ、5 つの手順を一段ずつ踏んでみる時間を、まずご自身に贈っていただけたら。本サイトのほかの記事も、その歩みのお供にしていただける内容を集めています。

手順 4 で挙げた「E 業務委託で外部とつながる」段階に関心が向いた方に、ひとつだけ、気づきにくいリスクを減らすヒントをお伝えしておきます。業務委託契約を、いきなり一人で始めるか、それとも先に走ってきた方の伴走を受けながら始めるかで、最初の半年〜 1 年の風景はかなり違ってきます。もしご興味あれば、ゆめスタの業務委託パートナー制度のことを、お気軽にのぞいてみてください。

出典

  1. 厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)令和 6 年」結果の概況https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_gaikyo.pdf
  2. 厚生労働省「令和 5 年雇用動向調査結果の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/index.html
  3. 厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/soudan/
  4. 厚生労働省「こころの耳:働く方のメンタルヘルス・ポータルサイト」https://kokoro.mhlw.go.jp/
  5. 独立行政法人労働者健康安全機構「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/97/Default.aspx
  6. 厚生労働省「こころの耳:5 分でできる職場のストレスセルフチェック」https://kokoro.mhlw.go.jp/check/
  7. 厚生労働省「職業情報提供サイト job tag」https://shigoto.mhlw.go.jp/
  8. 厚生労働省「ジョブ・カード制度」https://jobcard.mhlw.go.jp/comprehension.html
  9. 一般社団法人日本産業カウンセラー協会「働く人の悩みホットライン」https://www.counselor.or.jp/consultation/tabid/298/Default.aspx
  10. 厚生労働省「労働安全衛生法に基づく産業医制度について」https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
  11. 厚生労働省「2024 年 4 月から労働条件明示のルールが改正されます」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
  12. 経済産業省 産業構造審議会 新機軸部会「人材」資料https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/014_03_00.pdf
  13. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/
  14. 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
  15. 厚生労働省「フリーランスとして働く方へ」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00002.html
  16. 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法 特設サイト」https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/

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