高卒採用とSDGs・ESG
企業の社会的責任と地域貢献・若年者雇用
SDGs(持続可能な開発目標)とESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から、高卒採用の社会的意義を解説します。2024年卒の約20%がSDGsを企業選定軸にするなど、若年者の価値観が変化しています。
SDGs(持続可能な開発目標)と高卒採用
就活生のSDGs意識
2024年卒の学生を対象とした就職活動アンケートでは、約5人に1人(19.1%)が「SDGsに対する姿勢や取り組み」を就職先企業選びで重視すると回答しました。
この回答をした方の91.7%が、企業のSDGsへの取り組みが企業選びに「とても影響する」または「少し影響する」と答えています。
出典:2024年学生就職意識調査
- SDGsを企業選定軸にする学生: 19.1%
- SDGsが企業選びに影響: 91.7%
- SDGs取り組み企業の志望度が上がる: 約7割
高卒採用とSDGs目標の関連性
目標4: 質の高い教育
高卒者への職業訓練・技能習得機会の提供により、若年者の能力開発に貢献します。
目標8: 働きがいと経済成長
若年者に安定した雇用を提供し、地域経済の活性化に寄与します。
目標10: 不平等の解消
学歴によらない能力主義の採用により、機会の平等を実現します。
目標11: 持続可能な都市
地域の若年者を雇用することで、地域社会の持続可能性に貢献します。
SDGsを重視する理由
SDGsへの取り組みを重視する学生の理由は以下の通りです。
出典:2024年学生就職意識調査
ESG(環境・社会・ガバナンス)のS(社会)と高卒採用
ESGのS(社会)における重点項目
ESGの「S(Social:社会)」において、人事部門が関わる重要な要素として以下の4つが挙げられます。
1. ダイバーシティ(多様性)
性別、年齢、学歴等にとらわれない多様な人材の採用・活用
2. 労働安全衛生
安全な職場環境の整備と従業員の健康管理
3. 人材育成
中長期的な視点での体系的な教育・訓練の実施
4. 雇用の安定
雇用形態にかかわらない適切な労務管理
働きやすい職場環境の重要性
2020年のESG/SDGs認知度調査(約1万人対象)では、ESG項目で最も魅力的だったのは「働きやすい職場環境づくり」(45.8%)でした。特に20-40代の働き世代に人気が高い項目です。
出典:2020年ESG/SDGs認知度調査
最も魅力的なESG項目:「働きやすい職場環境づくり」45.8%
高卒採用がESGに貢献する理由
- 1
多様性の促進
学歴にとらわれない採用により、組織の多様性が向上します
- 2
長期的人材育成
若年期からの計画的な教育・訓練により、企業文化の継承が可能です
- 3
雇用の安定化
高卒採用は離職率が低く、長期雇用につながります
- 4
地域社会への貢献
地域の若年者を雇用することで、地域経済の活性化に寄与します
企業の社会的責任(CSR)としての高卒採用
CSRとは
CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とは、企業が自社の利益だけを追求するのではなく、地域社会や環境への影響を考慮し、責任ある行動をとることを意味します。
企業は消費者、従業員、株主、地域社会、将来世代など様々なステークホルダーに対して責任を持ち、環境への影響も考慮する必要があります。
CSRにおける雇用面のメリット
経済産業省によると、CSRのメリットとして「優秀な人材の確保」と「従業員のモチベーション向上」が挙げられています。
CSRの雇用関連メリット
- ●優秀な人材の確保:社会貢献度の高い企業が人材を惹きつける
- ●従業員のモチベーション向上:社会的意義のある仕事への誇り
- ●企業イメージの向上:「社会の役に立ちたい」求職者を惹きつける
出典:経済産業省CSR関連資料
高卒採用の社会的責任としての意義
1. 地域人材の育成
地域の若年者に職業訓練の機会を提供し、地域経済の基盤を支えます
2. 教育機会の拡大
学歴に関わらず能力を伸ばす機会を提供し、社会的公平性に貢献します
3. 地域社会との共生
地域の高校・行政と連携し、地域全体の発展に寄与します
4. 雇用の安定化
若年者に長期的な雇用機会を提供し、社会の安定に貢献します
若年者雇用支援制度と地域貢献
厚生労働省の若年者雇用施策
厚生労働省は若年者雇用の促進のため、様々な支援制度を実施しています。
主要施策
- ●若年者雇用実態調査(令和5年実施):雇用状況の把握と政策立案
- ●若者雇用促進総合サイト:企業情報の公開と求職者支援
- ●ユースエール認定企業制度:若者雇用優良企業の認定
- ●中小企業向け技能向上訓練:地域の若者育成支援
出典:厚生労働省若年者雇用対策関係資料
2024年のデジタル人材育成施策
2024年、厚生労働省はデジタル分野の人材育成を重点施策として位置づけています。
職業訓練
7万人/年
デジタル分野の職業訓練受講者目標
企業支援
6.5万人/年
企業デジタル人材育成支援の参加者目標
出典:厚生労働省2024年デジタル人材育成施策
ユースエール認定企業制度
ユースエール認定制度は、若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況などが優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。
認定のメリット
- • 若者雇用促進総合サイトへの企業情報掲載
- • ハローワーク等での重点的PR
- • 認定マークの使用による企業イメージ向上
- • 若年者からの応募増加
高卒採用がもたらすSDGs・ESG効果
定量的効果
若年者雇用の創出
地域の18歳人口に対する雇用機会の提供
地域経済への貢献
地域内での雇用創出と経済循環の促進
人材育成の実現
職業訓練・技能習得機会の提供
雇用の安定化
長期雇用による従業員の生活基盤確立
定性的効果
- 1
企業イメージの向上
地域貢献企業としての認知度向上、SDGs・ESG取り組み企業としての評価
- 2
従業員満足度の向上
社会的意義のある仕事への誇り、働きがいの実感
- 3
地域社会との信頼関係構築
高校・行政・地域住民との良好な関係、地域の持続可能性への貢献
- 4
投資家からの評価向上
ESG投資の観点からの企業価値向上、持続可能な経営の証明
よくある質問(FAQ)
Q1. 高卒採用はSDGsのどの目標に貢献しますか?
A. 主に目標4(質の高い教育)、目標8(働きがいと経済成長)、目標10(不平等の解消)、目標11(持続可能な都市)に貢献します。若年者への職業訓練機会の提供、安定した雇用の創出、学歴によらない機会の平等、地域社会の持続可能性への寄与など、複数の目標達成に役立ちます。
Q2. ESGのS(社会)において高卒採用が重要な理由は?
A. ESGのS(社会)における4つの重点項目「ダイバーシティ」「労働安全衛生」「人材育成」「雇用の安定」すべてに高卒採用は貢献します。特に、学歴にとらわれない多様性の促進、長期的な人材育成、雇用の安定化により、企業の社会的責任を果たすことができます。
Q3. 就活生はSDGsをどの程度重視していますか?
A. 2024年卒の学生調査では、約5人に1人(19.1%)が「SDGsに対する姿勢や取り組み」を就職先企業選びで重視すると回答しています。また、約7割の学生が「SDGsに取り組む企業のほうが志望度が上がる」と答えており、若年者の企業選択においてSDGsが重要な要素となっています。
Q4. ユースエール認定企業制度とは何ですか?
A. 若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況などが優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。認定企業は若者雇用促進総合サイトへの掲載、ハローワークでの重点的PR、認定マークの使用などのメリットがあり、若年者からの応募増加が期待できます。
Q5. CSRとして高卒採用を行うメリットは?
A. 経済産業省によると、CSRのメリットとして「優秀な人材の確保」と「従業員のモチベーション向上」が挙げられています。社会貢献度の高い企業は「社会の役に立ちたい」と考える求職者を惹きつけ、従業員も社会的意義のある仕事に誇りを持つことができます。
Q6. 高卒採用の地域貢献とは具体的に何ですか?
A. 地域の若年者に雇用機会を提供することで、①地域人材の育成、②地域経済の活性化、③地域社会との共生、④若年者の地域定着を実現します。特に地域の高校・行政と連携することで、地域全体の持続可能な発展に寄与することができます。
Q7. 2024年のデジタル人材育成施策について教えてください
A. 厚生労働省は2024年、デジタル分野の職業訓練受講者目標を7万人/年、企業デジタル人材育成支援の参加者目標を6.5万人/年に設定しています。高卒採用においても、デジタルスキルの習得支援を通じて、若年者の能力開発と企業の競争力強化の両立が可能です。